2015年4月10日金曜日

HPからアプライアンスなど続々・・・
          -Hellion Rack、Cloudline、Content Depot!
                -Helion Public Cloudは?

HPから3月末、OpenStackベースのアプライアンスHP Helion Rackが出た。
これはハイブリッド化の動きを睨みながら、その前提となるプライベートクラウド市場に向けたものである。Helionは昨年5月からスタートして約1年となるクラウド戦略ブランド名だが、その前身はConverged Cloudだ。HPの判断はクラウド戦略を完全にOpenStackベースにすることだった。その回答がHelionである。

=プライベートクラウド向けのHP Helion Rack=
HP ProLiant DL360
今回登場したHelion RackはProLiantにIaaSとしてHelion OpenStack、PaaSにCloud Foundaryをプリコンフィギュアードしたものである。対応するラックサーバはHP ProLiant DLだ。このサーバにOenStackとCloud Foundaryを組み合わせ、工場でインストールとチューン/テストを実施して出荷する。これによって企業ユーザは導入からPrivate Cloudの展開までを大幅に短縮できる。ユーザの期待は、①クラウドネイティブアプリの開発が出来ること、勿論、②迅速なインフラ展開が必須、そして、③安全で各種の標準化に準拠してワークロードの拡張性ができることなどだ。導入にあったては DLシリーズのどのモデルにするか、構成はどの程度かなど、まずはHPのコンサルティングを受けることがよさそうだ。 

=OCP仕様のプロバイダ向けHP Cloudline=
HPはHelion Rackより先の先月初めにはHP Cloudlineも発表している。目指すはサービスプロバイダ向けのテイラードシステムである。このサーバは台湾のFoxconnとの間で設立した合弁会社のODM製品である。一般にOEM(Original Equipment Manufacturing)は委託者の設計で受託者が製造、委託者ブランドで出荷する。対して、ODM(Original Design Manufacturing)は設計から製造まで受託者が行い、委託者ブランドで出荷する。つまり、Cloudlineは設計から製造までHPは関与せず、Foxconnに任せた格好だ。そのCloudlineの最大の特徴はOCP(Open Compute Project)に準拠していること。そしてプロバイダ向けのため、各ユニットに電源やファンはなく、それらはプロバイダのラックから供給される設計だ。製品ラインナップは命令処理主体のコンピュート向け、ストレージ依存度の高いものなどがある。 

=HP Helion Content Depot= 
HPからは既にHP Helion Content Depotも出ている。今日、データの90%は人間のインタラクションから発生すると言われている。これら膨大なデータ管理の痛みを和らげるのがHelion Content Depotだ。このアプライアンスはバックエンドシステムとしてOpenStack Swift(オブジェクトストレージ)を搭載し、フロントのOpenStackベースのHelionと連携する。企業ユーザはこれを自社データセンタ内に設置するだけでなく、HPパートナのデータセンタに置くことも出来る。



=Helion Public Cloudは?=
以上見てきたように、Helion関連サーバの拡販に力が入ってきた。
HPファンやOpenStackファンなら、これらの製品を選ぶかもしれない。ただ、市場には多くのアプライアンスが出回っている。古くはVMwareを搭載したVCEこれは進化してVCE Foundation for Federation Enterprise Hybrid Cloudとなった。最近ではMicrosoftがDellと組んで始めたCloud-in-a-BoxのCloud Platform Systemなどだ。しかし、HPのこのようなアプライス化の動きは、何か戦略変更の予感がする。折も折、4月7日、Helionビジネスを統括するSVPのBill Hilf氏はNew York Timesのインタビューに、「ユーザが我々からコンピュータを買うように、クラウドでも借りてくれると考えていた“We thought people would rent or buy computing from us,”」、しかし、「そう短絡的ではないことが解る“It turns out that it makes no sense for us to go head-to-head.”」と答えた。思い出してほしい。昨年10月、CEO Meg Whitman女史はHPを2つの会社に分離することを発表した。ひとつはPCやプリンタを扱うコンシューマ向けのHP Inc.、もうひとつはエンタープライズ向けのHP Enterpriseだ。冷静に考えると、このような大転換期では、Helionは、ビジネスとして成り立ち難いPublic Cloudよりも、アプライアンス化に向かうことが必然なのかもしれない。次なる変化を注目したい。

 

2015年3月31日火曜日

ホステッドプライベートクラウドのプレイヤー達!

前回は注目のBlue Boxクラウド(詳細はここ)について述べた。
Blue Boxは‟Hosted Private Cloud”に特化したプロバイダである。周知のように、Public CloudではAmazon Web ServiceMicrosoft AzureIBM SoftLayerが追撃中だ。そしてこのところはOpenStackを中心としたPrivate Cloud市場が立ち上がりつつある。このような市場環境の中、今、注目を集めているのがPrivate Cloudをホスティングしてくれる-ホステッドプライベートクラウド-だ。

=Forrester Waveレポート=
調査会社のForresterから、この市場を分析したレポートForrester Wave Hosted Private Cloud, 4Q '14が出ている。これまでPrivate Cloudを構築するには、①商用Private Cloud Softwareや、②既成のConventional Software、③アプライアンス化されたCoverged Solution、さらには、④オープンソースの利用などがあった。しかし運用管理の煩わしさから、出来れば、データ管理の絶対化(主権)や自由なシステム環境制御など、Private Cloudならではの特徴あるクラウドサービスが求められていた。それがHosted Private Cloudだ。実際のところこのサービスには2つある。ひとつはPrivate Cloudのホステッド(Hosted)版、もうひとつはPublic Cloudを使ったデディケーテッド(Dedicated)版だ。この市場は始まったばかり、カスタマイズやハイブリッド化、自動化などの課題もある。

=市場のツートップは独立系=
市場をリードしているのはVirtustreamとDatapipeの2社だ。両社は共に独立系でデータセンタやホスティング業から進展した経緯から、企業ニーズを熟知している。以下、概要を示す。
  • Virtustream ・・・ Virtustreamはメリーランド州のベセスダ(Bethesda)で2009年にスタート。すぐにエンタープライズに特化したビジネスを開始。独自開発したクラウドソリューションのフラッグシップxStreamではμVM上でアプリを稼働させる。また、このプラットフォームはパフォーマンス計測技術とリソース管理技術に特徴を持ち、多くの企業ユーザを獲得。現在、米国と欧州にデータセンタを開設し、ComputeとStorageの両方共にホステッドとデディケーテッドを提供している。今年2月初めには日本のCTCとの提携も発表。
  • Datapipe ・・・ Datapipeは1998年にWebホスティングとしてニュージャージ州のホーボーケン(Hoboken)で創業。その後、ドットコムバブルで急成長して、マネージドホスティングに転身。そしてクラウド時代が到来し、自社開発のクラウドソリューションの提供を開始した。同社のフラッグシップStratosphereはApache CloudStackをベースとしたものでVirtustream同様、ComputerとStorage共にホステッドとデディケーテッドを提供している。同社はまた2010年末より、Amazonユーザ向け運用代行のマネージドサービスManaged Cloud for AWSをスタート。今年1月20日にはMicrosoft AzureにファミリアなプロバイダGoGrid買収してAzureのマネージドサービスManaged Cloud for Microsoftも開始した。
=追う第2グループ!=
VirtustreamとDatapipeを追う第2グループはCSC、HP、Del、Blue Box、Joyentだ。CSCは独自開発のプラットフォームBizCloud VPE and BizCloud Dedicated、HPはOpenStackベースのHellion Managed Private Cloud、DellはVMware vCloud Directorを使ったDell Cloud DedicatedBlue BoxはOpenStack、JoyentはOpenSolaris系アプリ対応の独自プラットフォームSmartDataCenterを提供している。うちBlue BoxとCSC、Dellの3社は、Computeではデディケーテッド、Storageはデディケーテッドとホステッドの両方をサポート。HPはComputeは両方、Storageはデディケーテッドのみ、JoyentはComputeとStorage共に両方をサポートしている。

=米3大キャリアはVMware基盤=
第3グループを構成するのは主に米3大キャリアだ。
そして何と、AT&T Private CloudCenturyLink Dedicated CloudVerizon Enterprise Cloud Private Editionの3つ共にVMwareのvCloud Directorがプラットフォームである。Verizonはクラウド進出にあたり、2011年1月にTerremark Worldwideを、Centurylinkは同2011年7月にSavvisを買収して体制を整えた。TerremarkもSavvisもクラウドを既に手掛けていたデータセンタだ。ここでAT&TとCenturyLinkの2社はComputeはデディケーテッド、Storageはデディケーテッドとホステッドの両方、VerizonはComputeとStorage共にデディケーテッドをサポートしている。
=欧州のホステッドプライベートクラウド市場=
Forresterのレポートでは米国だけでなく、普段、あまり馴染みのない欧州のクラウドについても触れられている。フランスからは最大キャリアのOrange (旧フランステレコム)がこのHosted Private Cloud市場に参入。同社のクラウドプラットフォームOrange Private Cloud Solutionsは米BMC(ヒューストン)Cloud Lifecycle Management がベースで、ComputeとStorage共にデディケーテッドのサポートだ。 英国ではCanopy(ロンドン)とロンドンの南、ケント州ビンターズ・パークのVooServersがこの市場に参入している。CanopyのプラットフォームはVMware vCloud Dirctorベースで、VooServersは英国製のOnApp(ロンドン)だ。

=変わるクラウド市場!=
クラウド市場ははっきり変わってきた。
Public Cloud市場は一段落し、Private Cloudが浸透し出した。そして2つを連携するHybrid Cloudの重要性が叫ばれている。成熟の域に達しだしたPublic Cloudに対し、Private Cloudはまだまだこれからだ。この市場を活性化させるサービスが今回取り上げたHosted Private Cloudである。このサービスが普及すれば企業の負担は解消され、Private Cloudの普及に弾みがつく。これまで乱立してきたプロバイダーは立ち位置を問われている。Public Cloudでビジネスを継続するのか、Private Cloudをサポートするのか。となれば、SIerとして生きるのか、ホステッドビジネスに転じるのか、さもなければ、淘汰されるのみだ。

2015年3月11日水曜日

Blue Boxのホステッドプライベートクラウド!
                            -Private Cloud as a Service-

日本では馴染みが薄いが、今回は、今、注目されているBlue Boxについて紹介して見ようと思う。というのは、昨年下期は大手企業による中堅クラウド企業の買収が幾つかあったEucalyptusCloudscalingMetaCloudなどだ。オープンソースのEucalyptus以外は、今や人気のOpenStackベースである。しかし、彼らには事業継続の資金が集まらなかった。市場はPrivate CloudではOpenStackだという流れが鮮明になっているにも関わらずである。投資家たちはこれらスタートアップを育てる時期が終わったと見て、売り抜けたのだ。彼らは市場は大手数社の手の内にあり、Eucalyptusを買ったHP(詳細はここ)やMetaCloudのCisco(詳細)、さらにはCloudscalingのEMC(詳細)などはチャレンジャーだという認識だ。そのような中にあってBlule Boxは違っていた。 

=これまでに集めた資金は30億円超!=
同社の創業は2003年8月。iTunesが流行り出した頃だった。開発には紆余曲折があった。そして辿り着いたのがOpenStackによるPrivate Cloudだ。2012年1月のSeries-Aは$4.3M(5.16億円)。2013年10月にもSeries-Aで$1.5M(1.8億円)。2014年3月にはDebt Fainancingで$3,3M(3.96億円)。Sries-Bは昨年10月に$10M(12億円)、続いて今年1月に$4M(4.8億円)が追加され、総計$26.6M(約32億円)となった。中堅他社が資金繰りから買収される中で、昨年秋から年初めにかけて$14M(16.8億円)を集めたのだ。(1㌦=120円換算)

=Blue Box Cloudとは何か!=
 ではBlue Boxの戦略はどうなっているのか。左図のように彼らのポジションはPublic CloudとPrivate Cloudの中間だ。Public Cloudは周知のように、①弾性(Elasticity)があり、②経済的(Open Economics)で、③使い易く(Easy of Use)、④適用が短時間(Time to Implement)で済む。一方、Private Cloudはこれらの要素には難があるが、自営センター内であるため、①データの主権(Data Sovereignty)や、②システムの環境制御(Environmental Control)は十分であり、③コストの予測性(Cost Predictability)があること、さらに、④センター内のLAN速度並みのハイブリッド化(Hybrid Capabilities with LAN Latency)が出来る。つまり、Blue Box Cloudは、Public CloudとPrivate Cloudの難点を補うクラウドサービスを目指している。キャッチフレーズは‐Private Cloud as a Service(PCaaS)‐、狙いはPrivte Cloudをサービス提供しようというものである。 

=Blue Boxの仕組み!=
次にBlue Box Cloudの仕組みについて見てみよう。
Blue BoxはPublic Cloud as a Seriveのために、①OpenStackをインフラとし、②専用ハードウェア-Dedicated Hardware上で、③シングルテナント-Single Tenantとして提供される。ユーザは自社のアプリケーションを開発するだけ、後は彼らがこのクラウド上に展開してくれる。Blue Boxのサービスはオーケストレーション技術を使い、ネットワークもデータベースも注文通り、仮想化だってKVMでも人気のDockerだって構わない。個々のユーザニーズに応じたオーダーメイドで、Public Cloudのセルフサービスとは大違いだ。つまり自社センタのクラウドがBlue Boxに移動したような気になる。昨年11月のOpenStack Summit Parisでは、①SwiftベースのObject Storage、②Nimble StorageによるCinderのBlock Storage、③Tesoraの技術によるOpenStack TroveのDBaaS(DataBase as a Service)、④Juniper NetworksのFirewallなどが追加された。

=この路線を突っ走れるか!=
Blue Boxは本社のあるシアトル(西海岸)とアシュバーン(東海岸)、チューリッヒ(欧州)の3センターで現在、PCaaSを運営する。この2月には米大手SIerのAlliance Technology Ggroupと提携し、ターンキーのソリューション提供も開始した。しかしこの分野はDatapipeやVirtustreamなどが先行している。Blue Boxの強みは、このところPrivte Cloudで人気のOpenStackだ。 先月の25日には、HPのOpenStackクラウドHelionにとって初の大型取引がドイツ銀行との間で決まった(プレス発表)。独自OpenStackディストリビューションでSIビジネスを走るMirantisは、何と$100M(120億円)という投資をSeries-Bで集めた(プレス発表)。Blou Boxがこの流れに上手く乗ることが出来ればレースから抜け出せる。



2015年2月26日木曜日

IBMのSDS-IBM Spectrum Storage登場!

IBM InterConnect 2015がLas Vegasで開催(2/22-26)された。例年この時期はIBMユーザ会のPulseが行われていた頃である。ITの世界の企業活動は複雑だ。シリコンバレーのスタートアップのように最先端技術を追うもの、またIBMのように沢山の企業ユーザ向けに技術サービスを提供する会社もある。前者は限られた分野のファーストトラックを走り、後者はセカンドトラックだが、確かな技術を総合的に持ち合わせなければいけない。しかし、現代はクラウドやモバイル、IoTBig Dataなどがすさまじい勢いで動いている。IBMとてアクセルを踏んでカッティングエッジの領域に踏み込まなければならない。それが装いもあらたにIBM InterConnectとなった背景であろう。カンファレンスでは多くの発表があった。それらは代表的なプレゼンターによるプレスカンファレンスのビデオがあるので参照されたい。



=IBM Spectrum Storage!=
さてカンファレンスの期間中、筆者がもっとも注目していたのは直前に発表されたIBM Spectrum Storageである。何故かと言うと、前述の我々を取り巻く新たなIT諸現象は、爆発的に増え続けるストレージ問題を内在しているからだ。ストレージデバイスはHDDだけでなくSSDが浸透し始めたが、一部では未だ磁気テープも利用されている。そしてデバイスの位置もオンプレのセンター内だけでなく、クラウド上であったり、一部はモバイルなどの機器内にある。我々はこれらを総合的に効率的に運用管理する必要性に迫られている。このような課題解決を試みる取り組みが今回発表されたIBM Spectrum Storageである。

=モデルとなったIBM XIVとは!=
このシステムのモデルとなったのは同社のインテリジェントストレージIBM XIVだ。この製品は2002年創業のイスラエルのXIVが開発したもので、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたグリッドアーキテクチャー型ストレージである。今日でいうSDSの走りと言ってもよい。XIVは3年後の2005年にNextraという製品名で出荷を開始、そのXIVをIBMが2007年末$350Mで買収した。初期のXIV製品をGen1(Generation-1)と言い、IBMの買収後、2008年にはアーキテクチャはそのままで、ディスクドライブやコントローラなどのハード部分をIBM製品に置き換えたGen-2をリリース、さらに2011年にはより大型のディスクドライブのGen-3、2012-13年にはSSDや10GbEなどが追加されている。

IBM XIV Storage System Architecture and Implementation
もう少し詳しく見ていこう。
XIVのストレージは上図のようにInterface ModuleとData Moduleの2つのタイプがある。それらは汎用のCPUやメモリー、ディスク(含むキャシュ)などをもったコモディティコンピュータだ。2つの構成は同じだが、Interface Moduleは、さらにホストインターフェースやリモートミラーリング、データマイグレーションのためのFibre ChanneliSCSIのインターフェースを持つ。これらはグリッド配置となってInfiniBandでスイッチングされる。利用にあたって、従来型ストレージでは複数台のディスクからなる論理ボリュームを定義するが、XIVではボリュームを1MBのチャンク(塊-Chunk)に分割してモジュール上に均等配布する。XIVはさらにこのチャンクを2つ以上の異なるモジュール上にコピーし、信頼性の向上を図っている。

=激化する開発競争!=
ここまで見てくると、XIVは昨今話題のスケールアウトNASの一種だと気付くだろう。
先行するのはEMC Isilonこれも2010年にEMCがIsilonを買収したものだ。さらにNetAppもこの分野には全力投球しているこうして、従来型専用ストレージの一部はSDS指向製品へ向かい始めた。一方ではRed Hatが買収したCephGluster、独立系のRiakCloudian国産ではIzumoなど専用SDSソフトウェアも花盛りだ
発表によれば、Spectrum Storageには700項目の特許が含まれており今後5年間で$1B(1,200億円)が投入される。そして目玉はSpectrum Accelerateだった。これはXIVのインテリジェンス部分をソフトウェアとして抜出したもので、今後、XIVではないユーザが保有する汎用機器への適用やクラウド上への展開も可能となる予定だ。SDS開発競争は熾烈化を極めている。専業ハードベンダにとっては死活問題であり、新興ソフトベンダにとっては絶好のチャンスだ。この開発競争からIBMがどう抜け出てくるか見届けたい。

2015年2月24日火曜日

OpenStackをめぐる新たな戦い! -Virtulization-

今年、クラウドの戦いは新たな段階に差し掛かっている。
これまでのPublic Cloudの戦いは、AWSAzureSoftLayerが激しく追い上げGoogle Cloud PlatformRackspace、更にVMware vCloud AirHP Helionが続いている。そして今年はPrivate Cloudの戦いが本格化する。エンタープライズ市場が得意なのはIBMとMicrosoftだ。AmazonはこれまでPublic Cloudこそがクラウドだとし、Private Cloudには無関心を装ってきた。彼らの答えはAWS上に展開するAmazon VPC(Virtual Private Cloud)だ。ただ、多くの企業がより安全なシステムを求めてPrivte Cloudの構築に動き出している。MicrosoftはWindows Azure Pack(WAP)、その他の殆どがOpenStackをサポートする。

=もうひとつの戦い!=
Privte Cloudの陰には隠れたもうひとつの戦いがある。
それはServer Virtulization(サーバ仮想化)、つまりCloud Platformの下のインフラ部分だ。何を今さらというかもしれない。しかし、企業がPrivate Cloudの採用にあたって、仮想化技術を再検討するのは重要だ。勿論、仮想化提供ベンダーにとっては死活問題だが、ユーザにとっても、今後長期にわたって利用するPrivte Cloudのインフラを再考する良いタイミングでもある。下の2つの図を見てほしい。上段は2003年来の主要Hypervisorの伸びを示し、下段は2013年度の出荷状況である。この調査ではVMware ESXが全体の64.1%を占め、以下Microsoft Hyper-Vは13.2%、Red HatのKVMは11.3%、CitrixのXenは5.7%となった。解ってはいたものの、こうしてみるとVMwareの圧倒的強さが再認識される。

 
=OpenStack向けのKVM!=
さて、この状況は変わらないのだろうか。
昨年10月に出されたIDC Report(KVM-Open Source Virtulization for the Enterprise and OpenStack Cloudによれば、共にオープンソースのKVMとOpenStackの親和性は高く、OpenStack人気と連動したKVMの今後の伸びが期待される。報告書では2014年度のLinux出荷は520万本、2017年には720万本、これらの新規出荷サーバーには、2014年度で80%、2017年度には88%の仮想化技術が導入され、伴なってLinuxに組み込まれたKVMは成長するという。そして同レポートでは、OpenStackとの共存共栄ポイントとして、①管理ソフトウェア、②トレーニング&ドキュメンテーション、③ハード&ソフトのエコシステム④クラウドをあげている。

=Red Hat 対 VMware!=
KVMがLinuxにマージされたのは2007年だった。開発したのはイスラエルのQumranetだ。翌2008年、Red HatはKVM強化のため同社を買収し、KVMサポート環境の整備に力を入れてきた。2013年6月には、OpenStack Distributionを発表。以来、Red Hat Enterprise Linux環境下での仮想化とクラウドの総合管理、ユーザ教育、最大パフォーマンスの発揮を目指してきた。まさに前述のIDC Reportが指摘した共存共栄策の実行である。 一方のVMwareも仮想化技術では約65%の絶大な実績がある。何としてもこの実績を確保したい。そのために2012年、同社はOpenStackファンデーションへの参加を決めた。全ディストリビューションでみた貢献度は、①Red Hat、②HP、③Rackspace、④Mirantis、⑤IBM、⑥VMwareと、6位につけている。VMwareの参加当時、驚く声が多かった。しかし、彼らは着実に力をつけてきた。次期版Kiloでは、プロジェクト要員の多くをNova(43%)とNeutron(32%)につぎ込んでいる。これらは今月初めに正式版となったVIO(VMware Integrated OpenStack)のためだった。VIOはvShapre基盤上にOpenStackを乗せたディストリビューションだ(詳細は前回レポート)。

=何が決め手か!=
果たしてLinuxの雄、Red HatはKVMと共にOpenStack市場で伸びるのだろうか。初期のOpenStack適用ではKVMの人気は高かった。しかし昨年7月のGartner Report(Magic Quadrant for x86 Server Virtulization)では大よそ半分だという。そしてRed Hatが出したOpenStackディストリビューションもなかなか普及が進まない。対するVMwareのESXは仮想化市場2位のMicrosoftに約5倍の大差をつけている。そして今回仕掛けたVIOは、vSphare Enterprise Plusユーザには無償(サポートは有償)だ。これまでOpenStackはエンタープライズ市場で低価格を武器にVMwareを置き換えるものだと考えられてきた。VIOはこの神話への挑戦である。もしこれまで慣れ親しんできたVMware製品の上でOpenStackが利用できるのなら、それでPrivate Cloudを構築しようという企業が増えるかもしれない。ただ、これはこれまで推進してきたvSphereクラウド戦略の変更でもある。寡占的な仮想化技術の上にVIOを出荷するVMware、Red HatはKVM内臓のEnterprise Linux上のOpenStackで迎え撃つ。もうひとつの戦いが熾烈さを増してくる。


2015年2月15日日曜日

VMwareがOpenStackに向けて動き出した!

=One Cloud、Any Application、Any Device!=
2月2日、VMware Integrated OpenStack(VIO)がβを抜け正式版となった。VMware vSphere 6とセットになった発表である。いよいよVMwareもオープン指向に踏み出した。同社CEOのPat Gelsinger氏はプレス向けに、‟One cloud, any application, any device, all built on VMware”を強調した。つまり、新たなvSphereを基盤とすれば、どのようなデバイス(ストレージ)でも、アプリでも、ひとつのクラウドとして扱うことが出来る。

=vSphere基盤上でOpenStackが動く!=
このvSphere 6には650の改良が施されたという。しかし実際の目玉は同時リリースされたOpenStackディストリビューションのVIOだ。このディストリビューションはvSphereと完全にインテグレートされ、アプリはOpenStack APIを使ってvSphere基盤で動き出す。勿論、vCloud Airとのハイブリッドが可能だ。統合の構成要素は4つ。コンピュートとネットワーク、ストレージ、そしてマネージメント。OpenStackのコンピュートNovaはvSphere、ネットワークNeutronはNSX、ストレージのCinderやマシンイメージのGlanceはvSANと連携して実行される。それら全体を管理するのはvCenterだ。
このVIOはVMware基盤の上にOpenStackがテナントとなる。下図のようにテナントとなるOpenStack(VIO)には、vSphere/NSXなどVMware製品のドライバが既に組み込まれており、ファイルを展開するだけで連携が可能となる。またテナント側にあるvCAC-vCloud Automation Center (現vRealize Automation)は、他クラウドとのオーケストレーションを司るものだ。

=vCloud Airとは何か!=
VIOを用いたハイブリッド化を論ずる前にVMwareが運営するVMware vCloud Air について説明しよう。このサービスは2013年5月、同社のPublic CloudとしてvCloud Hybrid Service名で登場し、昨年8月にvCloud Air(以下Air)にリブランドされた。そして現在、全世界8ヵ所の同社データセンタと世界中に散在するパートナーを結ぶvCloud Air Networkに進展している。AirはユーザのvSphereクラウドのHybrid Cloud化が目的だ。サービス形態は、①専有サーバーにユーザのvSphereクラウドをホスティングするDedicated Cloud、②マルチテナントのひとつとしてAir上に同様のユーザクラウドをホスティングするVirtual Private Cloud、③オンプレ運用のvSphereクラウドをAirへレプリケーションするDisaster Recoveryの3つ。つまり、ユーザのvSphereクラウドの一部を専用サーバーか論理サーバーかを選択してAir上に置き、それとオンプレvSphereクラウドをハイブリッド化させる。

=VMwareのクラウド戦略の変遷!=
VMwareにとって、クラウドの第1期は、AWSAzureなど他Public Cloudを横目に見ながら、もっぱらPrivate CloudとしてvSphereを拡販することだった。しかしHybrid Cloud時代が到来し、Public Cloudが無視できなくなった。そこでこれまで築いてきたパートナー網を活用したvCloud Airが登場。ここまではPrivate CloudもPublic Cloudも共にvSphere基盤のクラウドだ。これが第2期だ。さらに模索してきたVIOが今回正式版となり、ユーザにOpenStackのオプションを提供することとなった。第3期の始まりである。クラウドは本格的なエンタープライズ市場の開拓を目指して動き出した。この市場ではMicrosoftとIBMがAmazonを迎え撃つ。ここまでが3強だ。VMwareファンから見ればAirの登場が遅すぎた感がある。もっと積極的に動かなければいけない。VIOがどれほどの効果をあげるのかは解らない。しかしOpenStackがPrivate Cloud基盤として主力となりつつあることは衆目の一致するところだ。VIOの発表、それは守りから攻めへ、VMwareが久々に見せた画期的な一手である。

2015年2月8日日曜日

Googleは新たな戦いに向かう!

Googleのクラウド戦略再設定については詳しく述べなかった。
事情が他とは違い、その方向性も異なるように思えたからだ。本稿ではそのあたりを筆者の推測を交えながら探ってみようと思う。 

=Googleクラウドは本業と共通の基盤だ!=
このところ、日本でもGoolge Cloud Platform(GCP)の人気が高まりを見せ、GCP認定トレーニングコースやユーザーグループのGCPUGが盛んになってきた。振り返れば、GoogleがApp Engineを発表したのは2008年4月のこと。PythonベースのWebアプリ開発用だった。これは本業で利用しているものを一般化したものだ。その時も今もGoogleは自社用とクラウドビジネス用を特別に分けることはしない。それが彼らの流儀である。このような環境によって得られるGCPのアドバンテージは、何と言ってもGoogleが持つデータやサービスとのリアルタイムインテグレーションだ。さらにグローバル展開のデータセンタを高速で繋ぐファイバーネットワークGoogle Fiber、そしてGoogle Global Cacheによって高速コンテンツデリバリーも保証されている。ユーザとクラウドアプリはまさにGoogleシステムと一体化され、巨大なセンターとなって動き出す。
 
Googleクラウドが現在の名称Google Cloud Platformとなったのは2012年5月。最新の機能は以下の通り。 
Compute        Compute Engine/App Engine/Container Engine 
 Storage         Cloud SQL/Cloud Storage/Cloud Datastore 
● Networking    Load Balancing/Interconnect/Cloud DNS 
● Big Data         BigQuery/Cloud Dataflow/Cloud Pub/Sub 
● Services         Translate API/Prediction API/Cloud Endpoints 
● Management  Cloud Deployment Manager 

=Googleは新事業展開に賭ける!=
他クラウドプロバイダーの快進撃に隠れて、Googleはやや元気がないのではという声もある。そうだろうか。あのGoogleがこのまま流される筈はない。彼らの動き全体を観察するためにスパンを少し引き延ばしてみよう。そうすれば全体の流れが見えてくる。

◆ Google Checkout ・・・ まず思い出すのはGoogleがeCommerceに向けて発表したGoogle Checkoutだ。2006年6月のことだった。これは店頭からオンラインへと販売手法が変わり、その決済代行のPayPalを追って投入したサービスだ。使用できるカードはクレジットとデビット(キャッシュ)で事前登録が必要。初期は無料、その後は低手数料を武器にGoogle Playや様々な販売サイトに適用されたが、出遅れがたたってPayPalの足元にも及ばなかった。
◆ Google Wallet ・・・ Google Checkoutと並行的して、2011年9月にモバイルペイメント用のGoogle Wallet(米国版おサイフケータイ)が出た。これはスマートフォンに装備されたNFC機構と専用端末によって非接触で決済を実行するもの。米国では当時クレジット会社が小売り店頭に専用端末(Visa payWaveMaster PayPass)の導入を進めており、Google Walletはこの流れに呼応したものだった。しかしなかなか普及しない。問題は標準化とアプローチだ。そのような中、Googleは2013年11月、Checkoutを終了させGoogle Walletに統合することを決めた。昨年9月にはAppleからもiPhoneに同様の機能をつけたApple Payが出た。流れは徐々に大きくなり始めている。そして先月中旬、GoogleがSoftcardと独占買収交渉を行っているというWSJ Newsが流れた。Softcardは米3大ワイヤレスキャリア(AT&T、Verizon、T-Mobile)が共同運用するモバイル決済会社でSIMに決済情報を記録する。Google Walletはこれと異なり、決済情報を直接スマホ内部に持つ。この差異をどうするかはともかく、この買収が決まればモバイルペイメントは本格的に動き出すかもしれない。

◆ Google Shopping ・・・ 次にGoogle Shoppingについて説明しよう。この歴史は長い。2002年末から始まったFroogleが最初だ。FroogleはGoogle得意のWeb Crawlerを使ってベンダサイトから商品データを集めAdWordsでマネタイズしたものだ。その後Google Product Searchと改称。2012年には、AdWordsからベンダサイトへの広告誘導方式に変更してGoogle Shoppingとなった。現在、このサービスは日本も含め世界20数ヶ国で提供されているが、これもパッとしない。そしてついにGoogle Shopping Expressが登場した。

◆ Google Express ・・・ 2013年3月、Googleは同日配送(Same Day Delivery or Overnight)のオンラインショッピングGoogle Shopping Express(その後Google Expressに改称)を発表。このシステムは迅速配送のAmazon Primeに対抗するもので、サンフランシスコとサンノゼで実験システムがスタートした。Google Expressサイトに提携小売業者の商品を掲載し、利用者は商品をカートに入れた後、Google Walletで決済する。以前、シリコンバレーに住んでいた筆者にとって、エレクトロニクスのFry'sや食品スーパーのNob Hill、スポーツ用品のSports Authorityなど懐かしい店が並んでいる。滑り出しは上々昨年10月には小売業者(右)を増やし、適用エリアもシカゴ、ボストン、ロスアンジェルス、マンハッタン、ワシントンD.C.に拡大した。この同日(ないしオーバーナイト)配送サービスを受けるには会員とならなければならない。先行するAmazon Primeは年会費が$99、学生は$49。これに対し、Google Expressではやや低く$95/、ないし$10/月。学割は無し。ただ会員でなくても都度$4.99を支払えば同一サービスを受けられる。アルコール類は非会員が$3プラス、会員は¢10追徴される。
=目指すはGoogle Commerceか!=
Amazonの設立は1994年、書籍販売から始まり、徐々に商品を拡大してきた。遅れること実に10年超。幾つかのトライアルと改良を経て、Google戦略の姿が見えてきた。オンラインシステムの開発経験からクラウドに進出したAmazon。Googleは検索のためのプラットフォームを改良しながらその上でクラウドを提供し、そしてコマースビジネスを模索してきた。一般情報はGoogleで検索し、商品はAmazonで検索する人たちが増えている。これはGoogleにとって積年の課題である。今やTwitter BuyボタンFacebook Buyボタンによるトライアル販売も始まった。果たして、Google Walletと組み合わせたGoogle Expressは成功するだろうか。専門家の目は、ラストワンマイルの配送に注がれている。ここをどうするかが今後の勝負だ。Amazon物流の基本は、大小物流センターを全米に配置し、そこからは3PLを利用する。しかしこれではダメだ。そこで昨年末、マンハッタン地区で日本でいうバイク便のような1時間配送Amazon Prime Nowが始まった。さらに今年はドローン(小型無人飛行機)を利用した30分以内の配送サービスAmazon Prime Airを目指すという。一方、Googleのアプローチは堅実だ。日本の宅配便のように、カバーエリアに小型物流センターを数多く配置してエコカーデリバリーを推進する。Googleはここ数年で全米中小3PLの組織化や買収を進め、物流の世界に躍り出るかもしれない。そして得意のIT技術を使い、Google ExpressのエコカーがMapsやAndroidと連携し、さらには鋭意開発中の自動運転技術Google Driverless Carと組み合わされて走り回る日も遠くない。