2015年1月24日土曜日

クラウド各社の戦略再設定(7)! -2015年を占う-

昨年来、シリーズで各社のクラウド戦略再設定について分析してきた。
それらのレポートはEMCCiscoIBMRackspaceMicrosoftAmazonである。そこで今回はこれらを総合的に比べ、2015年を占ってみようと思う。ただ、きっちりとしたデータがあるわけではないので、あくまでも私見として一瞥頂きたい。

=なぜ、戦略再設定が必要なのか=
まずシリーズで取り上げてきた戦略再設定とは何かを確認したい。
クラウド市場を俯瞰すると、Public Cloudの成長は続いているものの鈍化傾向が見え始め、対して、次第にPrivate Cloudが台頭しつつあることが解る。これは、これまで個人、ないしは企業内デベロッパーが、本番業務も多いが、多くは試行と称して取り組んできたPublic Cloud利用が一段落し、Private Cloudによって本格化するという兆しだ。まさに次の時代への狭間に我々はいる。かつて仮想化が企業内ITに浸透したように、これからはPrivate CloudがIT基盤として一般化し、従来からのオンプレ業務はこの上に移行され、さらに繁忙期にはPublic Cloudとハイブリッドとなって、全体的なITコストは大きく低減するというシナリオである。クラウドプロバイダーから見ると、このような流れに沿うためには、これまでの低コスト化とサービス機能拡大という戦略だけでなく、新たな視点での戦略が必須となる。これが戦略再設定の意味するところだ。端的に言えば、Private Cloudに手をつけるのか否か、つけるとすれば何を、どのような方法で提供するのか。またハイブリッド化は特定の範囲内だけなのか、それとも、制限はあるものの広域化させるのか。このような事柄が戦略再設定のポイントである。

=ポジションマッピング!=
上記に関して、昨年度、クラウド各社の動きは慌ただしかった。
ただ全てが明らかになったわけではない。現状では、一部を行動で見せたプロバイダー、ブループリントを提示したところ、今考えられる全体像を一部製品とともに発表したベンダー、未だ検討中の企業など、状況は様々だ。ここでは過渡的ではあるものの、個々の新たな戦略的位置関係がどうのようになっているのかを図示してみようと思う。クラウドを使う企業にとっては、現在利用しているクラウドプロバイダーが今後どのように進展し、他はどう動くのかを見極める手がかりとするためだ。これは今後の自社ITインフラを決めるとても重要な要素となろう。下図において、横軸は中央を境に、右がオープン指向(Openness)、左 は独自指向(Proprietary)を指し、縦軸はサービス領域(IaaSPaaSSaaS)を示している。

Position Mapping for Cloud Players
ポイント1; プロプライエタリーかオープンか? (横へ)
個々のベンダーについては後で述べるとして、戦略再設定による動きの一番目のポイントは上図の横軸である。左は独自色のプロプライエタリー(Proprietary)領域を示し、右は開放性 (Openness)を意味するオープン領域を示す。注目すべきは、これまでの戦略、特に独自性の高かったプロバイダーがそのままの位置を維持するのか、はたまた軌道修正するのかである。ここではプロプライエタリー領域に入るものとしてMicrosoftAmazonGoogleEMC/VMwereをあげ、右側のオープン領域には、いづれもOpenStackとの関連性の高いRackspaceCiscoIBMHPを分類した。

ポイント2; IaaSからPaaS、さらにSaaSへ(縦へ)
もうひとつのポイントは上位サービスへのシフトだ。周知のように初期の間は殆どがIaaS領域で戦った。この領域ではサポートOSの範囲やリソースの細かな単位化、それに伴う費用などの優位性をユーザに訴え、さらに細かな機能追加などが競われた。次にIaaS利用拡大の大きなステップになったのはPaaSだ。各社共、開発実行環境をPaaSとして整備し、アプリ開発を促進させて勢力拡大に大いに貢献した。しかしPaaSは開発実行環境だけにとどまらない。各社の戦略再設定を注意深く見ていくとそのことが解る。例えばBigDataを見ると、解析のための基本ツール群やデータベース、プラットフォームなどはPaaS領域とし、SaaS領域では固有のアプリを規定する傾向が強い。CRMERPなども同様に捉えることもできる。つまり、大規模アプリケーションでは常にカスタマイズが伴い、それをPaaS領域で調整し、SaaSで実行するという流れだ。勿論、汎用アプリでもあまり大がかりでないものはSaaS領域だけで完結する。 ともあれ、時代が進み、今やPaaSSaaS領域にどう取り組むのかは戦略再設定の重要なポイントである。

=戦略的位置はどうなったか!=
さて、次にクラウド各社の位置がどのように再設定で動くのか個別に追ってみよう。

◆ プライベートクラウドでAmazonは動かない?
前回のブログでAmazonの取り組みについて述べた。同社はこれまでPublic Cloudこそが王道で、Private Cloudについては否定的だ。このポリシー上のサービスがVPCであり、その適用形がCommunity Cloudである。今年はこれらの拡大がテーマだ。CIA同様のフラッグシップPrivate Cloudを手掛けるのかは未知数。多分、Amazonの立ち位置はプロプライエタリー領域から動かず、縦にはERPやBig Dataなどを今以上に加速させる予感がする。

◆ CiscoのInterCloudは成功するか!
Ciscoについては、昨年提唱したInterCloudがどう進むのか、今年は注目だ。ワークロードをクラウド間で移動させるという構想が、どのようなメリットを参加パートナーとユーザに与えるのか、その中でCiscoの役割とは何か、この辺の共感を呼び込むことが出来るかが鍵だ。今年は具体的な形が見えてくる(別途、報告予定)。同社の立ち位置はオープン領域であり、インフラベースの横展開である。

◆ EMC/VMware連合の行方!
VMwareはハイブリッド時代を見据え、2013年5月、Public Cloud(現VMware vCloud Air)を発表。これによってユーザは同一技術でHybrid化が可能となったが、一種の囲い込みでもあった。現在β版のVIOはOpenStackの主要部を統合するものとして注目に値する。また親会社のEMCもSDS対応が急務となり、これらの状況を打開すべく、昨年10月末、EMC Enterprise Hybrid Cloudを発表した。これまでのグループ各社の個別戦略から、全体をシャッフルして連合製品として拡大させる意向のようである。(詳細はここ

◆ Googleは新事業展開に賭けるのか?
このところやや元気の見えないGoogleがどう動くのかは気になるところだ。幾つか戦略再設定と関わる動きがある。ひとつはBig Dataへの傾斜だ。Hadoopよりも高速なBigQueryが登場し、時はまさにIoTのBigData時代へと進む。もうひとつは新事業への加速だ思う。次回、詳しく述べるが、これはAmazon対抗として、またクラウド利用の新分野開拓という面を合わせ持つ。Googleの立ち位置は決してオープンではないが、今年は上位シフトは鮮明になる筈だ。 
◆ HPのHelionはTake Offへ!
HPにとって今年は正念場である。 動き始めたHelionをまずは軌道に乗せなければならない。クラウド事業は、HPにとって、ハードビジネスだけに頼らない次世代中核ビジネスとしての意味がある。HPの立ち位置は完全なオープンだ。全ては、現CTOMartin Fink氏(EVP)、Rackspaceから開発部門の責任者として参加したMark Interrante氏(SVP)、さらにEucalyptusの売却に伴って移籍したビジネス部門GMのMarten Mickos氏(EVP)が上手く機能するかにかかっている。

◆ IBMはオンプレでどう戦うか!
クラウドもいよいよオンプレ市場が戦いの場となってきた。これまでの企業IT資産をどのようにクラウドに移行し、さらに今後はどのように開発を進めるかがポイントだ。IBMはそのためPaaSの開発実行環境としてBluemixの整備を急いできた。IaaSはSoftLayerとし、PaaSはこれまでのIT資産の継承ツールとしてだけでなく、ますます重要となるモバイルやBigData領域もカバーする。その意味でIBMの狙いは上位シフトだ。後はOpenStackによるPrivate Cloud対応が機能するかである。

◆ エンタープライズ市場を切り崩せるかMicrosoft!
今年、Microsoftにとって重要なことは、IBMと共にエンタープライズ市場への切込みがどの程度進むかである。切り札はAzure Pack。これによってPrivate Cloudを加速させる。この戦略の成否はパートナー各社の努力にかかっている。IBMとPaaS領域で多面的な提携もした(発表)。さらにOffice 365Dynamics CRMなどで上位シフトを強め、Amazonを追う(詳細はここ)。先週、MicrosoftはWindows 10をWindows 7以降のユーザに限り無償アップグレードが出来ることを発表した。クラウドを戦略の中心に置く同社とって、これはすそ野を広げる種まきのひとつと見られる。

◆ Rackspaceはフリーハンドだ!
Rackspaceはホワイトナイト探しの後、急速に立て直しを図ってきた(詳しくはここ)。大きな戦略再設定のひとつは、MicrosoftのコラボサーバExchangeLyncSharePointManaged HostingやGoogle Appsの代行管理サポートに見られる上位シフトだ。もうひとつはHybrid Cloudである。これについて、同社はPublicとPrivateを繋ぐだけでなく、Dedicated Serverの接続も重要だと考えている。その仕組みがRackConnectだ。この3つが揃ってこそ、企業にとって安全で廉価なオンプレ対応クラウドが出来上がる。昨年11月にはMicrosoftと提携してAzure Packの適用検討も始まった。VMwareのHosting経験もある。横展開が目指すのはユニバーサルクラウドかもしれない。 
=2015年を占う!=
2015年は新たな戦いの始まりである。「エンタープライズ市場の戦い」と「プロプライエタリーとオープンのせめぎ合い」だ。エンタープライズ市場ではIBMとMicrosoftが先行するAmazonにどれだけ肉薄できるのか、「プロプライエタリーとオープンのせめぎ合い」では新たな構図が見えるかがポイントである。ポジションマッピング図で示したように、先行するAmazonやMicrosoftはプロプライエタリー領域にいる。しかしIBMはどちらかと言えばオープン領域だ。今年から本格化する第2ラウンドでは、Hybrid CloudやInterCloudのようにクラウド間接続が大きな技術要件だ。そのためにはオープン性が欠かせない。OpenStackを御旗にして、この領域のCiscoやHP、Rackspace、そしてIBMが結束すればAmazonやMicrosoftに対抗できる。IBMはPrivate Cloudで既にOpenStackを提案することを決めた。IBMが柔軟に、リーダーシップを発揮して、OpenStackとの共存を進めれば、全体の構図に変化が起こるかもしれない。

2015年1月13日火曜日

クラウド各社の戦略再設定(6)! -Amazon-

これまで独走とみられていたAmazonの前にMicrosoftやIBMが立ちふさがり始めている。エンタープライズ市場の壁だ。この壁にどう挑むのか、それには大きな戦略の再設定が必要である。 しかしAmazonには両社のようなエンタープライズ市場での実績がない。同社がこれまで採った戦略は閉ざされていたこの市場をPublic Cloudに引きずり出すことだった。Amazonの採った戦略は成功し、独走態勢に入ったかに見られた。しかしクラウドの民主化に伴って、流れは一段落し、オンプレの本格的なクラウド化はPrivate Cloudへ、そしてHybrid Cloudへと動き出しつつある。Amazonは今後どう動くのだろうか。 

=Amazonの基本戦略=
Amazon Economic Cycle
Amazonがこれまで採ってきた基本的な戦略は右図のようなものだ。まず徹底的にインフラを整備し、それによって利用価格を下げてユーザを呼び込む。AWSの初期には本業Online Shop向けのデータセンタ内に機材を共存させたりもした。ユーザが増えると、次々に便利な機能を提供して利用を促進させる。それらの収益でさらにインフラを増強する。勿論、増強した設備の効率化を図り、さらにコストを下げる。これが基本戦略だった。同社はこれまでこのエコノミックサイクルを回して価格改定を40数回行ってきた。ユーザは機能強化と低価格化に引き寄せられるように増え続けた。規模を切れ目なく時間をかけずに大きくするこのやり方は、小売業から学んだものだ。しかし昨年3月、Googleが価格競争を仕掛け、30~85%という大幅なPrice Cutを断行。グローバルなデータセンタ展開なら負けるわけがないという自負からだ。その翌日にはAmazonからも新価格が出た。そしてMicrosoftもこの価格競争についてゆくと宣言。こうして低価格競争は完全な三つ巴戦となり、さらにHybridへの流れが加速し始めた。
=先手を打ったAmazon VPC =
Hybrid Cloudの議論が起こる以前に、実際のところAmazonは今日で言うPrivate Cloud、ないしはその関連ですでに幾つかの取り組みをしていた。この辺りはさすが見事である。表に出てきたのは3つ。2011年夏に発表したAmazon VPC(Virtual Private Cloud)がトップバッターだった。VPCとはユーザが設定した仮想ネットワーク内で動くEC2などのAWSである。AWS独自のVPN(Virtual Private Network)機能と考えて良い。勿論、オンプレとVPCを本来のVPNで繋ぐことも出来るし、さらにはVPC同士をピアリングPeering)することも可能だ。この形は現在でいうPrivate Cloudとは、クラウドそのものの物理的な位置が違うが、論理的にはプライベートな空間を作り上げている。つまりPublic Cloud上に論理的なPrivate Cloudを構築する。実際問題、この形態で満足できるユーザはかなりある様子だし、何よりもHybrid Cloud構築は容易である。

 =Nasdaq向けFinQuloudのその後=
次に2012年9月、AmazonはNasdaqを運営するNasdaq OMXの要請を受け、
ユーザ(ブローカー&ディーラー)向けサービスFinQuloudを発表した。このシステムはNasdaq市場に参加するユーザとAWS上に作り上げた取引データの保存&分析サービスを前述のVPCで構築したCommunity Cloudである。FinQuloudはNasdaqのデータセンタとAmazon Direct Connectによって接続され、アップロードされるユーザデータは暗号化されて、高度な気密性を保つ設計だ。こうして鳴物入りでスタートしたFinQuloudだったが、1年半の運用の結果、残念なことに上手くいかず、昨年春にクローズとなった。理由は明らかにされていないが技術的なことよりも金融業務という特殊性にあるようだ。

=CIA向けAWSの受注、これはPrivate Cloudだ!= 
2013年始め、CIAのクラウドビジネスにおけるAmazonとIBMの戦いの噂が流れた。これが3つ目である。結果はIBMの提案価格が低かったにも関わらずAmazonの勝利となった。しかし当初、米会計検査院GAO(Government Accountability Office)がAmazonの提案は基準を満たしていないという懸念を示していたことから、IBMはこの決定に異議申し立てを行った。これを受け、同年6月6日付で米会計検査院GAO(Government Accountability Office)から精査報告書が出た。それによると評価価格はIBMが年間$93.9M、対するAmazonは$148.06Mと約1.5倍も高かった。

Consensus Evaluation for IBM & Amazon 

しかし報告書は上表のように、Amazonの提案は素晴らしく(superior technical solution)、IBMの評価費用の優位性をも相殺するとした。つまり費用よりも技術的な部分を重視したということである。以降、両サイドから提訴が繰り返されたが、結果は覆らなかった。IBMのショックは計り知れない。この敗北がSoftLayerの$2B買収に繋がったと見るのは穿ちすぎだろうか。さて、ここで大事なことがある。このCIAのクラウドはPrivate Cloudだ。つまり、AWSと同等のシステムをCIAのデータセンタに構築運営することになる

=Amazonはどう動くか!=
3つのケースを見てきた。これまでAmazonはPrivate Cloudには冷ややかだった。Public Cloudこそ、クラウドだと主張してきた。企業を超えたPublic Cloudでなければ大きなコスト削減はできない。しかし、市場はHybrid Cloudに向かう気配だ。彼らはどう動くのだろうか。VPCはこれまでの主張に沿うサービスである。FinQuloudは例外として、Community Cloudは優れた戦略だ。CIAのAWSクラウドも昨年7月末、約10ヶ月の作業を経て動き出した。これらを踏まえ、Amazonが市場に新たな提案をするのか、今年は目が離せない。

2015年1月4日日曜日

クラウド各社の戦略再設定(5)! -Microsoft-

クラウド戦略再設定の5回目はMicrosoftについてである。
初期名称Windows Azure(現在はMicrosoft Azure)が発表されたのは2008年10月のこと。Amazonから遅れること2年だった。このプロジェクトを率いたのはBill Gates氏からChief Software Architectを引き継いだRay Ozzie氏だ。2010年、噂では、氏はAzureを巡ってSteve Ballmar氏と衝突、そして退社。その後、Azureは低迷したかに見えたが、現CEOのSatya Nadella氏のもとで見事に復活した。

=好調なAzure、AWSとツートップへ=
3Q決算が出そろった昨年10月29日、お馴染みのSynagy Reaserchからクラウドプロバイダー競合分析が出た。図の縦軸は年間成長率、横軸はマーケットシェアだ。これによるとAmazonが市場をリードしているものの、Microsoftが最も高い成長率を示した。Azureの年間成長率は136%、3Q時のシェアは10%、対するAmazonは売り上げ低迷から3Qでやや持ち直し、シェアは27%だ。Microsoftがこのままの成長率を維持できれば来年度はAmazonに肉薄する可能性は高く、ツートップ時代の到来となる。他方、この2社に続くIBMはシェア7%、Googleは成長率で追い上げているもののシェアは5%程度、大手に伍して独立系のRackspaceも食い下がっている。(関連記事:快進撃Microsoft Azure、その深層に迫る!


=戦略再設定が進むAzure!=
Azureの進撃の秘密は勿論、戦略の再設定にある。これには幾つかある。まず大きな出来事は一昨年6月に発表したIaaSの開始。これによってWindowsの世界からの脱皮を宣言した。次にOffice 365Dynamics CRMの推進、つまりSaaS領域の拡充である。(関連記事:Office 365は新生Microsoftを救えるか! 実際のところ、四半期ごとのAzure売上げを見るとこの部分が大きく伸びていることが解る。3番目は昨年7月からMicrosoft PartnerによるAzure Open Licensing Programの開始だ。これによって代理店の抱える法人ユーザは、事前に割引価格でAzure利用枠を買うことが可能となった。

=Azure Packに込められた狙い!=
これらの動きにさらに先立って、一昨年8月28日、Microsoftは標準機能としてBlogでWindows Server 2012 R2にWindows Azure Pack(WAP)を提供することを明らかにした。これはパブリックなAzureと企業内のWindows Serverをシームレスにするもので、初期の狙いは、PaaS上で開発したアプリをクラウドでもオンプレミスでも自由に展開させるものだった。しかし良く考えると、これはHybrid Cloud構築の有効なツールでもある。このAzure Packを用いて企業内クラウドを展開し、Azureと連携させれば全てのアプリは自由に行き来出来る。Microsoftはこれらの総仕上げとしてCloud OSとその支援組織Cloud OS Network発表。Cloud OSはオンプレのWindowsを取り込み、クラウド時代にふさわしいハイブリッドを前提とした複数製品からなるコンセプトだ。具体的にはプライベートAzureを構築するための各種API群とWindows Server 2012 R2+Hyper-V、System Centerなどから構成される。普及にはCloud OS Networkパートナーの協力が欠かせない。そのためSIer、Dtatacenter、Cloud Provider、ISVなどを積極的に勧誘し、Azureとユーザ、さらには外部企業も含めた統一環境を目指し始めた。この延長線上で10月21日、Microsoftは「Cloud  in a box」のAzureアプライアンスCloud Platform Systemを発表した。最初の製品はDELLと組んだもので、Azure環境の全てがプリインストールされている。これを用いれば、簡単にPrivate Azureを立ち上げることが出来るという訳だ。

=今年こそ勝負だ!=
Microsoftの目指す方向ははっきりしてきた。
Azure ExpressRouteを使えば他システムとの接続も出来るが、 Microsoftの基本的な狙いは、パブリックもプライベートもAzureで固めることだ。勝ち抜くためにはAzureの世界をグローバルに広げること、それが火急のテーマである。そのための鍵は既存パートナーの活用と拡充だ。もうひとつはOffice 365やDynamincs CRMなどSaaS領域の開拓である。Microsoftには各種の企業向けServer製品がある。これらの一部は今年、クラウド化されるだろう。こうして、Microsoftの持つアセットの殆どがAzureを基盤としたクラウド上に向かう。Microsoftはクラウドで生まれ変わる。今年こそ勝負の年だ。