2016年4月10日日曜日

Dell-EMCの合併はこれからが正念場だ(2)!
              -鍵を握るVMware株-


第1回ではDell-EMC買収の仕組みと資金調達について状況を整理した。
その中で、VMware株価の重要性について触れた。昨年10月、DellによるEMCの買収発表後、EMCが81%を保有するVMwareの株価は大きく下げ、現在も低迷状態にある。発表時に$80強だった株価は、4月8日現在、$52だ。2月23日にはFTCの反トラストがクリアーされ、1回目の資金調達が始まった。このめどが立てば、合併の目鼻がつくかもしれない。問題はVMware株である。今回はこのVMware株について考えてみたい。

=両社が抱える特殊事情!=
今回の合併は何が大変なのだろうか。
通常の企業買収では、買収先の株式を評価し、1株当たりいくらと決めて現金で買い取る。手元資金が少なければ、自社株を買収先の株主に配布してバランスをとる。つまり、買収先のマーケットキャップ( 時価総額)がどの程度なのか、それによって資金を用意し、資金不足があれば差額を自社株で補てんする仕組みだ。しかし今回の買収は少し事情が違う。買収側のDellは、2003年のBuyoutによって、現在は未上場企業である。よって株式の補てんは出来ず、買収後はEMCも非上場となる予定だ。この2社間だけを考えると、EMCの時価総額は発表時点で$53.4B(約6兆4千億円)なので、これにプレミアをつければ良い。しかし、Dellから提示された買収額は$67B(約8兆円)だ。この金額は高すぎると思うかもしれない。そうではない。何故かというと、買収されるEMCには、81%を保有するVMwareという優良企業がある。つまり、EMCを買い取るということは、間接的にはVMwareも手に入れることになる。買収時のVMwareのマーケットキャップは$33.2B(約4兆円)。この部分をどう評価するかだ。2社のマーケットキャップの単純合計は$86.6B、EMCのVMware持ち分の8賭けをした計算では、約$80B(約9兆6千億円)となる。しかしDell側は資金的にこれ以上買い取り価格を引き上げられない。買収完了後、VMwareはそのまま上場企業として存続する。だからと言って無視し、EMCのマーケットキャップだけを対象とすることは出来ない。そこで考え出された方法が、EMCの株式に1株当たり$24.05を支払い、且つVMware業績連動株(Tracking Stock)を0.111株提供するという案である。
=VMwareの対応!=
報じられているによると、EMC分の1 株当たり$24.05は固定されている。買収発表時に提示されたEMC1株当たり$33.15という評価額は、この$24.05とVMwareの当時の株価$82に業績連動株の割り当て率0.111を賭けた$9.1を加えたものである。しかし現在、VMware株は大きく下げている。4月8日現在で$52.00だ。この値に割り当て率0.111を乗じると$5.77となり、このままでは合計で$29.82となってしまう。これではほとんどプレミアが無いに等しい。これが株価対策が急がれる理由である。この状況認識の上で、年初めCEOのPat Gelsinger氏は「2016年は大きくシナリオを変える年である」と宣言した。手始めに打った手は$55M~$65Mに相当する800人のリストラだ。これで利益を押し上げる。さらに役員人事にも手をつけた。これまでCFOだったJonathan Chadwick氏の交代を3月1日付で実施。後任CFOはZane Rowe氏が就任した。財務改善が狙いである。Rowe氏はこれまでEMCのCFOを長年務め、その実績を買われてVMwareに送り込まれてきた。EMCの発表では、EMCの後任CFOにDenis Cashman氏が内部昇格。これで組織構造の改革は形がついた。

=クラウド事業をどうするか!=
EMC/VMware連合にはもうひとつ悩みがある。
昨年5月、EMCが買収したVirtustreamの取扱いだ。この会社はクラウドプロバイダーとして、ユーザーに代わって運用管理を行うマネージドサービスが専門だ。買収動機ははっきりしている。VMwareの成長曲線を維持するためである。そして昨年10月12日、DellがEMCの買収を発表した直後の20日、このVirtustreamをEMCグループの総合的なクラウドビジネス企業とすると発表した。具体的にはEMCとVMwareが共同出資して新生Virtustreamとし、EMC独自のクラウドサービスやVirtustream自身のサービス、さらにVMwareが展開中のvCloud Air事業を統合する。しかしこの計画は昨年末、Dellの意向により撤退となった。巨額の買収資金の捻出を巡り、優良子会社であるVMwareの株価に悪影響を及ぼすからだという。ただ、この問題は解決したわけではない。仮想化ソフトが浸透した今、VMwareの判断は成長のためにはクラウドへの参入は欠かせなかった。そして始まったのがvCloud Airだ。しかしvCloud Airは普及が進まず、AWSやAzureに水を開けられている。この苦境を打開するために、今年2月にはIBMのSoftLayerと提携した。これは苦肉の策である。Virtustreamの買収金額は$1.2B(1,440億円)、EMCはこの対応に頭を痛めている。

=問題の本質は何か!=
こうしてEMCグループの戦略とDellの買収発表後の流れが交錯した。
果たしてこの買収は上手く行くだろうか。当面注力しなければならないのは、VMwareの株価を持ち直させことである。しかし真にVMwareの成長を考えるなら、要員カットや役員交代だけでは終わらない。仮想化市場は成熟し、投資家の目から見ると、ほとんどの企業に導入が進んだように見える。この状況を打開しなければならない。買収発表後、株価が大きく下げたのは、投資家の興味が薄れ始めたタイミングとたまたま重なったのか、それともDellによる買収が影響しているのか、それを解き明かす必要がある。これまでVMwareはEMCの保護のもと、順調に成長してきた。Joe Tucii氏率いるEMCは、人材的にも、戦略的にもVMwareを育てることに努力を惜しまなかった。今度はDellが、その役割を果たさなければならない。

2016年4月7日木曜日

Rackspaceに買収の噂!

Rackspaceに買収の噂が浮上した。
報じたのはCRNだ。周知のように、2010年RackspaceはNASAと共にOpenStackを始め、元祖としてOpenStackベースのクラウドサービスを提供するプロバイダーである。Amazonが市場をリードし、MicrosoftやGoogle、IBMが追撃する厳しい市場にあって、独自路線を貫いてきた。ただ同社は、既報1のように2年前の2014年5月、投資会社をハイヤーしてホワイトナイト探しをした経緯がある。その時は、良縁が見つからず、その後はサービスを武器に多面的な提携戦略を推進してきた。

CRNによると、今回の買収は大手テックジャイアントだという。
候補にあがっているのは、Amazon、Microsoft、HP、そしてIBMだ。このニュースが流れた3月31日以降、下図のように同社株は上昇に転じた。ただこれには4月6日に発表されたGoogleとRackspaceが参加するOpenPOWERの影響も重なっている。4月6日現在、$23.65だ。しかし同社株は、昨年の今頃は50㌦前後、5月13日には$43に急落し、その後もだらだらと下げ続け、今年の2月11日には$16.76まで下げた。こういう状況が今回の噂の背景になっている。

ただ、今回も条件が折り合わず事業をそのまま継続するということも大いにありうる。Rackspaceの業績は決して悪くない。売り上げも利益も順調に伸びている。2015年度は年間売上げが$2B(2,200億円…$1=¥110換算)に達し、年間成長率は14%となった。問題はそのスピードだ。トップを走るAWSは昨年度売り上げ$7.9B、年間成長率69%、売り上げはRackspaceの約4倍、成長率は5倍である。このままでは離されるばかりで、いずれ潰されてしまう。
まったくの私見だが、今回の買収があるとすれば、最有力はAmazonかMicrosoftのように思う。CRNの候補に挙がっていたHPとIBMは過去にもチャンスがあった。IBMが2013年にSoftLayを買収した際にはRackspaceも俎上に挙がっていたし、HPは2014年のRackspace主導によるホワイトナイト探しの際も候補だったが、HPはEucalyptusを買収した経緯がある。余程のことがなければこの2社の再挑戦はないだろう。残るはAmazonとMicrosoftだ。Rackspaceは既に両社と提携して、定評ある徹底的なサービスのFanatical Supportを提供している。Rackspaceからこのサービスを受けながらAWSやAzureを使うユーザーは確実に増えている。直接のサービス部門を持たないAmazonとMicrosoftにとって、Rackspaceは欲しいに違いない。もしAmazonが手に入れれば一段と飛躍し、市場はAmazonの天下となるのは確実だ。またMicrosoftが獲得すれば、完全にAWSは射程圏内となる。いずれにしても、ここ1-2週の問題である。

2016年4月1日金曜日

Dell-EMCの合併はこれからが正念場だ(1)!
             -買収の仕組みと資金調達-

今年の秋を目標としたDellとEMCの合併作業が一歩進んだ。
2月23日、連邦取引委員会FTC(US Federal Trade Commission)の審査が終了したからだ。しかし両社の合併作業はこれからが正念場である。当面の課題は膨大な買収資金の調達だ。次に新生Dell-EMCの資産をどのように生かして、どのように運営していくのだろうか。1回目は買収の仕組みと資金調達ついて見て行こう。

=巨額資金の調達は上手く行くのか=
昨年10月12日、Dellが$67B(約8兆円)という史上最大規模の金額でEMCを買収すると発表した。この買収でEMCの株主は、DellがEMCの評価を$33.15としたことで、当時の株価より高いメリットを受けとるはずであった。内訳はEMC株1株当たり$24.05の現金とEMCの子会社VMwareの業績連動株(Tracking Stock)の0.111株を加えたものである。当時のEMC株は約$24程度で、VMware株は$82位だった。しかし現在の株価は違う。EMC株は昨年9月29日の$23.13を底に、発表当日の10月12日には$28.35まで跳ね上がり、そしてゆるやかに下降し、1月27日は$23.90、その後は持ち直して3月31日現在$26.65である。問題なのはもう一方のVMware株だ。同社株は発表前の10月6日は$81.28、当日の12日は$82まで値をつけたが終値は$72.27と下がり、その後10月21日に$55.42、今年2月9日には$43.84と下がり続け、3月31日現在で$52.28と低調なままだ。

この状況はEMCの株主をやきもきさせる以上に買い手のDellにとっては大問題だ。というのは、Dellは優良会社のVMwareを武器に資金調達をしなければならないからである。この買収では、Dell側はMichael Dell氏の資金(MSD Capital)を使い、さらに投資会社Silver Lake Partnersと組んでいる。このSilver Lakeとは2013年、Carl Icahn氏などの投資家からDellが買収を仕掛けられた時、MBOで対抗して乗り切った相手である。しかしDellとVCが組んだとはいえ、$67Bは桁外れな金額だ。2月11日付のNew York Postによれば、Dell側は、現時点で$45B(5兆4千億円)の外部資金が必要だという。そのうち、まず最初の$10B(1兆²千億円)の調達が始まった。しかしJP Morgan筋の情報として、ハイテク株の不調、特にVMware株の低調から、すぐにはまとまらず10日間の延長となったらしい。これと並行して、米大統領候補にもなったRoss Perot氏からDellが買収したPerot Systems(現Dell Systems)の売却も動いていた。Dell側は当初$5B(6,000億円)を見込んでいたが、有力見込先だった仏Atosとの交渉は上手く行かず、その後インドのTataとNTT Dataのオークションとなり、結果は報道されたようにDell Service部門の3社(Dell Systems、Dell Technology & Solutions、Dell Services)をNTT Dataが買収金額$3.05B(約3,660億円)で競り落とした。この取引を見ると、Dellは資金調達にやっきである。なにしろ2009年に$3.9Bで買ったPerot Systemsにおまけを付けて、それらを約20%もディスカウントして売ったのだから。。。

=これからどうなるか!=
Dell-EMCの合併は反トラストはクリアーした。しかし欧州や中国などはこれからだ。さらにEMCの株主からの訴訟も幾つか起こっている。これらは何とか収まるだろう。難関はやはり資金調達だ。買収発表時と異なりVMwareの株価は大きく下がった。最近の株価を$52.28と仮定すると現在のマーケットキャップは$22.15B、約35%の下落である。こうなると、EMC株主の不満はともかく、調達予定のCredit SuisseやBarclays、Bank of America、Citi、Goldman Sachs、JP Morgan、Deutsche Bankなどの反応は鈍くなる。つまり、これら銀行団にとっては優良企業のVMwareが担保のようなものだからだ。VMware株価の低迷で資金調達の行方が見えにくくなってきた。

2016年3月26日土曜日

Googleクラウドの新戦略が見えてきた!

既報のようにGoogleのSVPとなったDiane Greene女史が本格的に動き出した。
女史はVMwareの草創期をCEOとして成功させ、昨年、Google Cloud Platformの責任者になった人だ。そして初の公式行事が始まった。3月23日-24日の2日間、サンフランシスコで初めて開いたGoogle Cloud Platform Next 2016である。このカンファレンスではAWSなどとのハイブリッド化に対応したマルチクラウドモニタリングStackDriverのβ版やCloud Machine Learningのα版、データ分析ツールData Studio 360のβ版などが発表されたのは報道の通りである。

=全世界展開のデータセンター強化!=
キーノートの後の記者会見で、エンタープライズクラウド部門を率いるGreene女史は「私たちはこのビジネスについて、とても真剣で “We are dead serious about this business”」、データーセンターについて「出来る限り多くの仕事のために強化するつもりだ “we’re going to put them to work as much as we can.”」と言及した。これを裏付けるようにカンファレンスでもCEOのSundar Pichai氏や現会長で元CEOだったEric Schmidt氏などからも女史を支援する発言が続いた。クラウドビジネスはAmazonとMicrosoftがリードし、Googleは追う立場にいる。上記のような新サービスの強化だけでは立ち向かえない。これに対する答えのひとつが女史が記者会見で言及したデータセンター強化である。周知のように、ここ数年、データーセンター強化によるコスト引き下げで、価格競争が続いてきた。これに対応できなければ勝ち目は無い。しかし、現在、データセンターを設置するGCPのリージョンは4つしかない。米東部のSouth Carolina、米中部のIowa、欧州のBelgium、アジアではTaipeiだ。カンファレンス期間中、これに米西部のOregonと東アジアのTokyoを本年末までに追加すると発表。さらに2017年にかけて、全部で10以上のリージョンをオープン予定としている。翻って、トップを走るAmazon Web Servicesは米政府機関向けを含めて12リージョンを持ち、2017年末までに5つを増強予定だ。Amazonを追う2位のMicrosoft Azureも22リージョンを稼働させ、さらに5つが作業中である。クラウドは成熟してきた。これからの勝負の重要な要素は、ファシリティーの大きさ、リージョン数だ。そのことを女史は肝に銘じているようである。
=始まるか、スタートアップ買収!=
もうひとつ、GCPビジネス強化にとって重要な情報が聞こえてきた。
クラウド関連スタートアップの買収だ。クラウドビジネスにおいて、Googleには2つの側面がある。GCPインフラそのものとGoogle Appsに代表されるアプリケーションだ。この両方からのアプローチが効果的であることは言うまでもない。伝えられる報道によれば、現在、Googleはアプリケーション分野の買収予定スタートアップを調べ上げ、一部交渉を開始した模様だ。以下はその候補と推測されるものである。 
  • Metavine - Automated software creation and delivery
  • Shopify - Canadian e-Commerce company
  • CallidusCloud - Sales talent management system
  • Xactly - Sales performance management system
  • Namely - All-in-one HR system
これらの買収がどうなるかは解らない。しかし上手く行けば、GCPと相まって大きな力になる。カンファレンスのキーノートやディスカッションでは、最近、GCPのユーザーに加わったWalt DisneyやHome DepotSpotifyも登壇した。さらに今月16日にはAppleがiCloud用にGCPとサインしたと報じられている。Grenne女史の活躍でGCPの巻き返しが進む。それはクラウド業界に新たな競争をもたらし、ユーザーにとって、嬉しい話である。

2016年3月19日土曜日

IoT/M2Mネットワークオペレータの統合が始まった!
       Kore WirelessによるWyless買収 ーIoT(7)

3月9日、独立系大手IoT/M2Mネットワーク・オペレータKore Telematicsのホールディング・カンパニーKore Wireless Groupが同じ独立系の Wylessを買収すると発表した。両社合わせた売り上げ高は、$250M(約300億円)、従業員350名、ユーザー企業は3,000社、接続サブスクライバ-は600万となる。


 =Koreの成り立ちと合併の効果!=
今回の買収母体Kore Wireless Groupの始まりはPalm Treo向けeメールサービスだった。Palmとは、HPの子会社として初期のスマートフォンをけん引した会社だ。その後、Palmがダメになると、キャリアからネットワークインフラを借りてスマホビジネスをするMVNOに転身。そして、2000年代初頭、M2Mの台頭に伴って、キャリアとアプリケーションプロバイダー間のミドルプロバイダーとなるべく再度の方向転換。2003年、Zero Gravity Wirelessを買収して橋頭保を作り、その後、米国AT&TやVerizon、カナダRogers Wirelessなどとパートナー契約を結び、2007年には北米全体をカバーするm2mSecureLinkの提供を開始した。2009年には新たなカスタマーポータルPRiSMProを導入。現在は北米だけでなく欧州やアジアにも拡大、シンガポールに事務所を持ち、日本でもMicro Technologyと独占パートナー契約をしている。今回の買収によって、多様な接続方式や接続地域(世界110ヶ国)の拡大、さらには利用形態の幅を広げるEmbedded-SIMe-SIM)やIMSIを多重化するMulti-IMSIが可能となった。Koreはまた、今回の買収より先の2014年11月同じ独立系M2MオペレータのRaco Wirelessも買収している。日本ではKore TelematicsとMicro Technologyの提携だけでなく、一方のWylessも2012年、NECとの間で製品協業発表している。
 

=キャリアか、独立系か=
今回の買収の結果、Koreは世界市場の6位のM2Mオペレータとなった。世界中のキャリアやMVNOがM2M/IoT市場を狙っている。キャリアの常連組は、米AT&TとVerizon、独Deutsche Telekom、スペインTelefonica、英Vodafoneの5社だ。その他、中国China Mobile、蘭KPN、NTT DoCoMo、仏Orange、加Rogers、伊Telecom Italiaなどが追い、独立系ではKore Wirelessの他にAerisArkessaCoSwitchedNumerexTelitTransatelVimpelComなどがある。今後、独立系の更なる事業統合が行われ、体力強化が進むだろう。迎え撃つキャリアの力は強大だ。しかし、ひとつのキャリアがカーバーする領域は決まっている。キャリアはこれまでEDIASPCloud Computingなどのテーマがでる度に飛びついてきた。しかし上手く行っているとは言い難い。一方、独立系は彼らから借り受けたネットワークに付加価値をつけて世界展開をする。この広域ネットワークと関連アプリケーションの組み合わせが進めば、ビジネスは大きく広がるかもしれない。鍵となるアプリケーションプロバイダーはキャリアと独立系の両にらみだ。果たして、この戦いの行方はどうなるのか。


2016年3月9日水曜日

2016年エンタープライズクラウド調査!

2012年設立の若い.アナリストハウスClutchから興味あるクラウド調査が発表された。2016 Enterprise Cloud Computing Surveyである。回答があったのは従業員100人以上の中規模から大企業までの300社だ。以下、同社の調査とコメントを参考に纏めてみた。

=どのクラウドが良くと使われているか!=
企業は実際のところ、どのクラウドサービスを利用しているのか。今回の調査では、Microsoft Azureがトップの23%、Amazon Web Servicesは22%、Google Cloudが21%、そしてIBM Cloudが17%と続いた。IBMがやや遅れているものの、これらトップ4社で83%を占める状況だ。残りはOracleがERPアプリを中心に6%、VDIを武器とするCitrixが5%、VMwareはvShpereプライベートとハイブリッドとなるvCloud Airで3%となった。

ここで、お馴染みのSynergy Research報告を引用しよう。
昨年7月時点のSynergy Research Report(左下)では、Big Fourプロバイダーは同じだが、順序がが違う。AWSが30%で独走し、Microsoft Azureが10%で追い、そしてIBMは7%、Google5%の順だった。それら4社」の総計は約54%だ。さらにBig Fourの勢いを経年で比べてみると、2013年は41%、2014年が46%と年を経る毎に強くなっていることが解る。しかしClutchとSynergy Research調査の違いは何に起因するのだろうか。多分、母集団の大きさや特性によるものと思われる。つまり、ClutchよりSynergy Researchの調査対象が大きいと推察される。また、Amazonは使い易さや機能面で優れているが、そのこととは別に、自社アプリがMicrosoftやIBM製品との依存度が高ければ、それらを選ぶ傾向にある。

=効率性が最大のベネフィット!= 
さてクラウドに対するユーザ各社のベネフィットとは何か。
各社のトップ3を集計すると、1位となった効率向上(Increased Efficiency)は全体の約半分となる47%だ。次いでセキュリティが45%、3位はデータストレージで41%の順となった。1位となった効率性とは、まさにクラウド特有の拡張性や柔軟性の賜物であり、3位のデータストレージは、比較的重要度の低いものを中心に利用が進んでいることをうかがわせる。しかし2位のセキュリティは意外だった。クラウドに対する精神的なセキュリティ不安が薄れ、一方で中小企業にとっては、オンプレのセキュリティで頭を悩ますより、整備が進んだクラウドの方が総合的に上なのかもしれない。

=クラウドのファイルストレージが人気!=
次は各社がどのような仕事でクラウドを使っているのかだ。
それによると、70%がファイルストレージとダントツとなった。2位はバックアップ/ディズアスターリカバリー62%、3位はアプリ開発で50%、アプリテスト/開発が46%、以下、モビリティー、コラボレーションの順だ。直接のファイル利用だけでなく、バックアップや障害対策(Disaster Recovery)などの利用が圧倒的である。次いでアプリの開発やテスト。こうしてみると、アプリ開発やテストはクラウドだが、本番業務は依然としてオンプレで実行し、ストレージとして利用できるのもはクラウドに出すという状況が見て取れる。

=社内人材によるクラウド適用か外部専門家の利用か!=
さて実際のクラウド適用に当たって、自社IT部門が独自で行うか、 外部コンサルティングなどを使うかを決めなければならない。調査では53%が外部を利用し、自社内は47%となった。まさに賛否両論である。パブリックにしろ、プライベートにしろ、外部企業を利用すれば、程度の差こそあれロックインは避けられない。一方、自社だけでは不安もある。大手コンサルティング会社は費用がかさみ、中小は色が付いているという悩みがある。


=2016年のクラウド費用は!=
費用についてはどうだろうか。今年度のクラウド費用については、90%の企業が前年並みか増加すると回答した。もっとも多かったのは、昨年度より11-30%増加するとした企業で全体の42%、次いで前年並みが27%、31-50%の伸びが予想されるとした企業が14%、50%以上の増加予定は7%となった。前年より低減すると回答した企業も7%あった。



2016年3月1日火曜日

IBMとVMwareが戦略的なパートナーへ!

毎年恒例になったIBM InterConnect 2016がLas Vegasで開かれた。
もっとも注目されたのは、2月22日、IBMとVMwareの2社が発表 した戦略的パートナーシップだった。具体的には、VMwareユーザーのvSphereを使ったSoftware-Defined Data Center指向のオンプレとIBMのパブリッククラウドSoftLayerをハイブリッド化させるというものだ。これによって、VMwareユーザーは、自社ワークロードを自由にSoftLayer上に移動させることが出来る。クラウドでは両社ともに課題を抱えている。IBMはAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureに水をあけられていて、何とかキャッチアップしたい。VMwareにとっては、Amazonなどに流れそうになる既存ユーザーをしっかり確保しなければならない。果たして、今回のパートナリングは両社の悩みに答えを見出せるだろうか。

=IBMの狙い!=
まず登壇したのはIBMのクラウド責任者でSVPのRobert LeBlanc氏(左)。そしてVMwareのプレジデント兼COOのCarl Eschenbach氏(右)が現れると固い握手を交わした。IBMとしてはぶっちぎりのAmazonに追いつきたい。それにはMicrosoft Azureに肉薄し、何としても2位につけたいところだ。しかしSynergy Research Reportから解るように、AWSの伸び率は年率63%、Azureは何と124%、IBMは57%、そして4位のGoolgeが107%と激しく追いあげている。この状況を打開するためには秘策が要る。それが今回のパートナリングだった。これによって、VMwareユーザーからのワークロードを上乗せできれば、少なくとも、3位はキープが出来る。これまでのIBMクラウド戦略の柱は、開発環境を提供するPaaSのBlueMixである。つまり、古くからのIBMユーザーの既存アプリだけでなく、開発案件もBlueMixを使って、クラウドに誘導する。しかし、これだけでは限りがある。そこにVMwareユーザーが加わってくれば2位も夢ではない。IBMはまた、今回のカンファレンスでGitHubとのパートナリングやAppleのプログラミング言語Swiftのサポート発表した。それによって、新たなデベロッパーを呼び込もうという作戦である。

=VMwareの思惑!=
さて、今回のパートナリングにおけるVMware側の思惑は何だろうか。
VMwareの大きな悩みはクラウドサービス事業だ。VMwareはこれまで企業の自営クラウドを推進し、成功してきた。しかし自営クラウドの拡大と共にユーザーからはワークロードの平準化や分散化のためのハイブリッド化要請が大きくなった。これに応えるため、提携企業のデータセンターを利用して、2013年8月から始めたクラウドサービスがVMware vCloud Hybrid Servicesである(翌2014年8月にVMware vCloud Airにリブランド)。VMwareはこうして自らソフトウェアベンダーとサービスプロバイダーの2足のワラジを履くこととなった。しかし、クラウドプロバイダー業界は、Amazonを筆頭に競合が激しく、データセンターの世界展開と多様なサービス提供は容易ではない。そこで親会社のEMCは昨年5月、マネージドサービス付きクラウドプロバイダー最大手のVirtustreamを買収し、EMCの行っていた幾つかのクラウドサービスとvCloud AirをVirtustreamのサービスと統合して新会社とすべく発表 した。このアナウンスは、DellがEMCを買収すると発表した昨年10月12日の直後の10月20日のことである。しかし、昨年末、この計画はDell側の了解を得られず撤退となった。そこで次の候補として挙がったのがIBMであろう。Fortune 100にリストされる殆どの大企業がVMwareユーザーだ。もしIBMのSoftLayerとハイブリッド化が出来れば、IBMがクラウド向けに運営する全世界の45のデータセンターが利用できる。勿論、SofyLayerのユーザーも増え、両社にとってハッピーな話である。こうしてSoftLayer上で、VMwareが推進するSoftware-DefinedのSDNのVMware NSXやSDSVirtual SANなどを動かす話がまとまった。もうひとつ、VMwareには考えられる思惑がある。それはIBMのプライベートクラウド戦略の不明瞭さだ。IBMはパブリッククラウドでは独自のSoftLayerプラットフォームを提供し、プライベートではOpenStackを提供する方向だ。これではユーザーには解り難いし、実際のハイブリッド化も煩わしい。VMwareから見れば、それならいっそ、今回のパートナリングの成果を一般化したいとの思惑がある。プライベートはVMware、パブリックはIBMとする棲み分けが出来れば共にハッピーだ。存外、IBMもそれを望んでいるのかもしれない。