8月4日付Wall Street JournalがRackspaceとPrivate Equity Firmの取引が近いことを報じた。Private Equity Firmとは個人投資家などから集めた資金-Private Equity Found-を運用する投資会社だ。この記事が出たのは4日の夕方、前日の株価は$23.16、その日は$26.55、翌5日は跳ね上がって$29.27となった。この約26%の株価アップは、同社の現在のMarket Capを約$3.5Bとすると、これをプレミアム付きで押し上げ、$4.4Bとなった格好でもある。
Rackspaceは2014年5月、既報1、2、3のようにMorgan Stanleyを顧問にホワイトナイト探しをしたことがあった。多くの会社が候補にあがったが、しかしこのExitは条件がきつかったこともあって上手く行かなかった。その後、2015年9月、同社はMicrosoftと提携し、Azureユーザーの有償導入支援サービスのMicrosoft Azure Fanatical Supportを開始し、10月にはAmazonユーザー向けに同様のFanatical Support for AWSもスタートさせた。理由は大手Public Cloud Providerである4社(Amazon、Microsoft、Google、IBM)の競争が激化し、マネージドやエンジニアリングサポート付きのOpenStackベースクラウドだけではビジネスが厳しくなったからである。この有償サポートは、Rackspaceの生き延びるためのビジネスモデルとして機能したが、他方、十分なサポートエンジニアを持たないAmazonやMicrosoftにとっても都合が良いものであった。そして今年4月、これも既報のように、この2社のどちらかではないかという買収の噂が持ち上がった。 結果は不発だったが、今回は3度目の正直となるかもしれない。そして5日のReutersの続報によって、相手はApollo Global Managementだと解り、またまた大騒ぎとなった。実はこれら一連の買収報道より先の先月29日、CNBCがApollo Global ManagementとCarlyle Group、さらにKKRの3社が組んでHP Enterpriseの買収を仕掛けるのではないかと報じていた。さらに8日になって、VentureBeatやTechCrunchなど各紙がRackspaceのWeb Hosting部門Cloud Sitesの売却を報じた。相手はLiquid Webである。事態は混とんとしているが、今度こそ動くかもしれない。
=動き出したToyota Research Institute!= さて今年1月、ToyotaはシリコンバレーにAIに関する先端研究とその商品企画のためのToyota Research Institute(TRI)を開設した。所長には昨年9月、Toyotaがスカウトした元DARPAのロボット工学の権威Gill Pratt氏が就任。氏は2012年から昨年までDARPA Robotics Challengeを推進してきたプログラムマネージャーだ。このプログラムは2005年から始まったオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)レースDARPA Grand ChallengeとUrban Challengeを引き継いだものである。氏をヘッドとするTRIは、MITやスタンフォードの研究所と連携して、複数のプロジェクトを立ち上げる。勿論、最大のテーマはオートノマスビークル開発だ。Toyotaにとって、オートノマスビークルとOAAの関係は無縁ではないだろう。だからこそ、Toyotaはアライアンスへの参加に慎重なのだ。GoogleはAndroid AutoでHUのスマホ化を目指し、その先ではオートノマスビークルでも市場をリードしたい。片やあくまでも自動車会社が主導権を持ちたいToyota。戦いの2幕は既に始まっている。
=近未来のHU(カーナビ)とは!=
Google I/O 2016では新Android Autoを搭載した展示車があった。 Maserati Ghibliだ。これにはセンターコンソールとなる15inの4K対応タッチスクリーンが縦型に置かれている。ステアリングの向こうにはデジタル表示のインスツルメントパネル(インパネ)があり縦型センターコンソールと連動する。この縦型画面は上下に2区分して使うことも可能だ。搭載OSはAndroidの次期リリースAndroid N。Tesla Model Sをご存知の人は、2つの車がデザイン的にそっくりなことを知っている。Tesla人気の礎となった初代のTesla Roadsterがあの名車Lotus Eliseのボディーを使っていたように、このModel SはMaseratiがモデルだ。そして、Model Sのコックピットを覗けば、センターコンソール用の縦型で大型の17inディスプレイが目に飛び込んでくる。次世代HUではこちらが本家だ。Googleが展示したMaseratiのデモ版は、この模倣だが、これぞまさしくGoogleが考える近未来のHU-Digital Infotainment-である。実際のところ、Tesla Sで使っている地図はGoogle Mapsを共同で適用したものだ。
(関連記事 :スマホ化する車(Telematicsの世界)
Maserati Ghibli (L) Tesla Model S (R)
Google's Demo Maserati Ghibli
Tesla Model S
=次世代HU、NVIDIAとQualcommの戦い!=
Google戦略の第2ステップがこのデジタルインフォテイメントである。
Android Autoが一般化すれば、次にGoogleはこれまでのカーナビ(HU)からタッチスクリーンでよりインテリジェンスのある次世代HUに誘導するだろう。各種のメータ類が並ぶインパネは既にかなりデジタル化されている。次世代HUでは、このデジタルインパネと連動するだけでなく、ステアリングやエアコン、オーディオ周りの各種操作ボタンなどがセンターコンソールの大型タッチスクリーンに統合される。このHUのエンジンを支えるのはNVIDIAとQualcommだ。前述のように、この分野の先輩格はTesla Model S。そのセンターコンソールのOSはLinux。そしてCPUはNVIDIAのTegra 3。メータークラスターにはTegra 2が搭載されている。一方、Googleのデモ車のインパネには720pのNVIDIA Digital Instrument Cluster、センターコンソールにはQualcommのSnapdragon Automotive Processor 820が乗っている。OSは前述の通り、Android Nだ。こうしてみると、センターコンソールは第2ステップの狙いであったデジタルインフォテイメントからさらに進化し、ドライバーが操作する全てを統合した中央制御装置に見えてくる。
=IBM Watsonがガイドする!=
このOlliにはIBM Watsonが利用されている。とは言っても、Watsonが自動運転のAIエンジンとして使われているのではない。バスガイドとして、乗客との行先案内などの会話に適用されている。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上だ。具体的には、Watson IoTとして、Olliの車体に埋め込まれた30以上のセンサー情報を分析しながら学習する。実際の会話は、Watson APIで音声のテキスト化(Speech to
Text)や逆のテキストの音声化(Text to
Speech)、さらに自然言語のクラス分類化(Natural Language Classifier)や固有表現の抽出(Entity
Extraction)などを実行しながら、会話を進めるというわけである。
=Local Motorsという会社!=
Local Motorsの設立は2007年。本社は当初ボストンだったが、その後、現在のアリゾナ州に移った。車の製造拠点はテネシー州のKnoxville、近くに3Dプリンターの研究に造詣の深いOak Ridge National Labがあるからだ。同社のファウンダー兼CEOはJohn Rogers氏。氏はHarvard
Business Schoolの出身で、6年間のUS Marineでの経験もある。この会社のオペレーションは、原則、クラウドファンディングのようなものである。そして、プロジェクトで作るものは3Dプリンターを使った各種の自動車だ。3Dプリンターを使えば簡単に物作りができる。そこで、3Dデータから車体のスケルトン部品を作り、組み立て、これにボディーカバーを被せれば出来上がり。エンジンやEV用モーターなどの主要部品は外部から調達する。なぜこのような方法で自動車を作るのか。現在の大量生産方式の自動車産業はコミュニティーバスや特殊レジャーカーのような少量多種製造には向かない。そこがこの会社の狙いである。小型のマイクロファクトリーと呼ぶ組み立て工場を全米に数ヶ所開設して、新規需要の迅速な対応に応える予定だ。新規開発のプロジェクトには、同社の社員以外にクラウドでメンバーを募集し、アイディアを出してもらう。それらの提案を共同で検討して最終案を決定する。原案が決まればプロトタイプを制作して、投資を募るという手順だ。そして開発に入る。一緒に作業した外部参加メンバーには、ロイヤリティ収入が入る仕組みだ。さて、Olliの場合は、開発構想から約1年、実際の制作はたった3ヶ月だったという。このバスの前後にはVelodyne製のLiDARとカメラが取り付けられている。Olliの設計上の最高速度は時速25マイル(40キロ)。走るのは限定されたエリア内だけ。つまり、オートノマスビークルとしての技術レベルは高くはない。しかし、実用性は高く、年内にはマイアミのデイド郡やラスベガスでも走り始めるという。ただ、どうやってLocal MotorsがOlliのAIを開発したのかは今のところ謎のままである。
=LyftにはGMが$500Mを投資!= Lyftの創業は2012年、本社はUberと同じサンフランシスコだ。何故だろう。それは、この地域がRide Sharingに馴染んでいるからである。ライドシェアは最近始まったことではない。カリフォルニア州だけではないが、特にベイエリアのように、人口密度が高く、多くの人々が働く地域では、フリーウェイの乗り合い自動車レーンCar Poolが発達している。日本のバスレーンのようなもので、決められた時間帯は2人以上の乗車でなければ走れない。シリコンバレーの工場の操業は朝6時。移民系の従業員は車を融通し合って、早朝、フリーウェイの専用カープールレーンを飛ばしてやってくる。飛行場には乗り合いの廉価なシャトルバスもあり、同じ方向の客を乗せて、次々に下ろしながら目的地に送ってくれる。こうした背景から、ライドシェアリングとスマホが融合するのは自然の流れだった。後発のLyftの狙いは2つ。利用者にはUberより低額で便利であること。ドライバーにはUberより稼げることだ。既存のタクシー料金の殆どはドライバーの人件費だという。これまでのタクシーより安く利用が出来て、ドライバーには自由な時間に自分の車で稼いでもらう。実際のところ、契約したドライバーの多くがUberとLyftを掛け持ちしていると聞く。そしてLyftの取る手数料はUberよりやや低めの設定だ。 さてUberとFordの協業を横目に、LyftとGMの新しい関係が始まった。今年1月のCES
2016でGM CEOのMary Barra女史が$500M(約550億円)を投資すると発表。続いて3月にはExpress Drive Programをリリースした。このプログラムはLyftのドライバーに向けたもので、当初はシカゴ、その後はボストンやワシントンDCなどに拡大され、車の保険やメンテナンスを含めて週$99(約1万円)でGMのレンタカーが借りられる。これでアルバイトをしてくれというわけである。さらにドライバーが週65回以上、Lyftのお客を乗せればGMのレンターカー代はタダとなる。そして5月10日、ついにオートノマスビークルに関するLyft提携が発表された。適用車種は本年下期出荷のGM Chevrolet Boltだ。少しややこしいがGMには2011年モデルとして発表されたChevrolet Voltという車種がある。エンジンとモーターを積んだHybrid EV(Electric Vechicle-電気自動車)だが、日本でおなじみのハイブリッドと違い、エンジンはバッテリー充電のみに使い、車自体はモーターだけで動く。つまり基本はEVだ。この技術はその後Cadillac
ELRに引き継がれたが、今は生産停止である。今回、Lyftに提供するBoltはこれらの流れの受けながら、しかし完全なEV車として登場する。Wall Street Journalによると、Boltの自動運転技術の詳細は検討中とのことだが、想像できるのは、3月にGMが買収したCruise Automationの技術の採用だ。そして、新型Boltによるオートノマスビークルのテスト地は、Uberがピッツバーグなら、Lyftは本社があり、配車サービスの発祥の地のサンフランシスコとなるかもしれない。
=欧州Gettの米上陸、VWが$300M投資で傘下に!=
もう1社、気になる会社がある。ヨーロッパを中心にライドシェアサービスを展開してきたイスラエル生まれのGettだ。2009年から開発が始まり、当時の社名はGetTaxi。その後、2011年にはテルアビブで試行が始まり、すぐにロンドンで正式にローンチして、モスクワへ、そして2012年ニューヨークに上陸し、本社もニューヨークに移設した。このGettからビッグニュースが飛び出した。5月末、独Volkswargen(以下、VW)が$300M(約330億円)を投資したのである。同社への投資を見ると、創設資金となった2010年のシーズは$2M、2011年はSeries-Aで$7M、以降2014年のSeries-Dまでの累計は$200M、昨年は$20M追加され、総額$220Mとなった。今回の投資額はこれを大きく上回る。つまり、実質は買収による子会社化である。勿論、VWグループもオートノマスビークルには大きな関心を寄せている。今年3月のGeneva Motor ShowでVW CEOのMatthias Müller氏は、自動運転車のようなデジタル車開発を加速するため、ドイツ、米国、中国にある3ヶ所の開発センター投資を増やすと説明し、2025年までに何とか出荷したいとの意欲を示した。