2016年8月8日月曜日

Rackspaceの新たな模索!

8月4日付Wall Street JournalがRackspaceとPrivate Equity Firmの取引が近いことを報じた。Private Equity Firmとは個人投資家などから集めた資金-Private Equity Found-を運用する投資会社だ。この記事が出たのは4日の夕方、前日の株価は$23.16、その日は$26.55、翌5日は跳ね上がって$29.27となった。この約26%の株価アップは、同社の現在のMarket Capを約$3.5Bとすると、これをプレミアム付きで押し上げ、$4.4Bとなった格好でもある。
Rackspaceは2014年5月、既報1のようにMorgan Stanleyを顧問にホワイトナイト探しをしたことがあった。多くの会社が候補にあがったが、しかしこのExitは条件がきつかったこともあって上手く行かなかった。その後、2015年9月、同社はMicrosoftと提携し、Azureユーザーの有償導入支援サービスのMicrosoft Azure Fanatical Supportを開始し、10月にはAmazonユーザー向けに同様のFanatical Support for AWSもスタートさせた。理由は大手Public Cloud Providerである4社(Amazon、Microsoft、Google、IBM)の競争が激化し、マネージドやエンジニアリングサポート付きのOpenStackベースクラウドだけではビジネスが厳しくなったからである。この有償サポートは、Rackspaceの生き延びるためのビジネスモデルとして機能したが、他方、十分なサポートエンジニアを持たないAmazonやMicrosoftにとっても都合が良いものであった。そして今年4月、これも既報のように、この2社のどちらかではないかという買収の噂が持ち上がった。
結果は不発だったが、今回は3度目の正直となるかもしれない。そして5日のReutersの続報によって、相手はApollo Global Managementだと解り、またまた大騒ぎとなった。実はこれら一連の買収報道より先の先月29日、CNBCがApollo Global ManagementとCarlyle Group、さらにKKRの3社が組んでHP Enterpriseの買収を仕掛けるのではないかと報じていた。さらに8日になって、VentureBeatTechCrunchなど各紙がRackspaceのWeb Hosting部門Cloud Sitesの売却を報じた。相手はLiquid Webである。事態は混とんとしているが、今度こそ動くかもしれない。


2016年8月3日水曜日

AutoTech(9) Google Carの狙い(2)!-   
           - ロボットが車を運転する -

前回と今回の2回に分けて「Google Carの狙い」、つまり、Gogleが今後どう動くのかについて、私見を纏めてみた。あくまでも個人的な意見である。その第1ステップが前回のスマホ成功モデルをカーナビ(英語ではHead Unit、以下HU)市場に持ち込んだAndroid Autoだ。その普及を進めるGoogle主導のアライアンスOAA(Open Automotive Alliance)には殆どのメーカーが名を連ねている。無いのはToyotaとBMWだけだ。BMWとAppleの関係が進んでいることは周知の事実。気になるのはToyotaである。現在、HUの仕様は純正品の場合、自動車メーカーが握り、市販品はHUメーカーが決める。自動車メーカーがAndroid Autoを初期段階の今はともかく、最終的にどう扱うのかが今後のポイントとなる。
=動き出したToyota Research Institute!=
さて今年1月、ToyotaはシリコンバレーにAIに関する先端研究とその商品企画のためのToyota Research Institute(TRI)を開設した。所長には昨年9月、Toyotaがスカウトした元DARPAのロボット工学の権威Gill Pratt氏が就任。氏は2012年から昨年までDARPA Robotics Challengeを推進してきたプログラムマネージャーだ。このプログラムは2005年から始まったオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)レースDARPA Grand ChallengeUrban Challengeを引き継いだものである。氏をヘッドとするTRIは、MITやスタンフォードの研究所と連携して、複数のプロジェクトを立ち上げる。勿論、最大のテーマはオートノマスビークル開発だ。Toyotaにとって、オートノマスビークルとOAAの関係は無縁ではないだろう。だからこそ、Toyotaはアライアンスへの参加に慎重なのだ。GoogleはAndroid AutoでHUのスマホ化を目指し、その先ではオートノマスビークルでも市場をリードしたい。片やあくまでも自動車会社が主導権を持ちたいToyota。戦いの2幕は既に始まっている。
=近未来のHU(カーナビ)とは!=
Google I/O 2016では新Android Autoを搭載した展示車があった。
Maserati Ghibliだ。これにはセンターコンソールとなる15inの4K対応タッチスクリーンが縦型に置かれている。ステアリングの向こうにはデジタル表示のインスツルメントパネル(インパネ)があり縦型センターコンソールと連動する。この縦型画面は上下に2区分して使うことも可能だ。搭載OSはAndroidの次期リリースAndroid NTesla Model Sをご存知の人は、2つの車がデザイン的にそっくりなことを知っている。Tesla人気の礎となった初代のTesla Roadsterがあの名車Lotus Eliseのボディーを使っていたように、このModel SはMaseratiがモデルだ。そして、Model Sのコックピットを覗けば、センターコンソール用の縦型で大型の17inディスプレイが目に飛び込んでくる。次世代HUではこちらが本家だ。Googleが展示したMaseratiのデモ版は、この模倣だが、これぞまさしくGoogleが考える近未来のHU-Digital Infotainment-である。実際のところ、Tesla Sで使っている地図はGoogle Mapsを共同で適用したものだ。
関連記事 :スマホ化する車(Telematicsの世界)

Maserati Ghibli (L)              Tesla Model S (R)   
Google's Demo Maserati Ghibli
Tesla Model S

=次世代HU、NVIDIAとQualcommの戦い!=
Google戦略の第2ステップがこのデジタルインフォテイメントである。
Android Autoが一般化すれば、次にGoogleはこれまでのカーナビ(HU)からタッチスクリーンでよりインテリジェンスのある次世代HUに誘導するだろう。各種のメータ類が並ぶインパネは既にかなりデジタル化されている。次世代HUでは、このデジタルインパネと連動するだけでなく、ステアリングやエアコン、オーディオ周りの各種操作ボタンなどがセンターコンソールの大型タッチスクリーンに統合される。このHUのエンジンを支えるのはNVIDIAとQualcommだ。前述のように、この分野の先輩格はTesla Model S。そのセンターコンソールのOSはLinux。そしてCPUはNVIDIAのTegra 3。メータークラスターにはTegra 2が搭載されている。一方、Googleのデモ車のインパネには720pのNVIDIA Digital Instrument ClusterセンターコンソールにはQualcommSnapdragon Automotive Processor 820が乗っている。OSは前述の通り、Android Nだ。こうしてみると、センターコンソールは第2ステップの狙いであったデジタルインフォテイメントからさらに進化しドライバーが操作する全てを統合した中央制御装置に見えてくる。
=HUがロボットドライバーになる!=
ここまで次世代HU(カーナビ)の進化を推測してきた。
いよいよ第3ステップだ。Googleの開発している自動運転ソフトウェアはChauffeurという。英語では「お抱え運転手」という意味である。まさにロボットソフトだ。筆者はGoogleがパワーアップした次世代HU上でこのChauffeurを動かすのではないかと考えている。もうひとつ大事な要素がある。クラウド上で動くAIエンジンだ。Google Carではクラウド上でAI処理した結果データをダウンロードして車を走らせる。これには現在2つ見えている。ひとつはGoogleが開発したものだ。GoogleはAlphaGo使用しているDeep LearningライブラリーTnesor Flowを昨年オープンソースとして公開し、今年5月のGoogle I/Oで既報のようにこのライブラリー向け専用AIプロセッサーTPU(Tensor Processing Unit)を発表した。もうひとつはNVIDIAが発表したNVIDIA DGX-1だ。これには8基のメモリーとストレージ内臓のGPUアクセラレータNVIDIA Tesla P100が搭載され、AIシステム開発のツールも用意されている。 (関連記事:データセンターOSは普及するか

Chauffeurの稼働するHUには、LiDARやレーダー、カメラ、GPSなど、さらにステアリング、アクセル、ブレーキのデジタルインターフェースが接続される。 勿論、インターネットは常時接続。そして、クラウドからは運転に必要なAI処理情報をダウンロードしたり、さらに運転結果などをアップロードする。後は人間が指示すれば、Google Chauffeurがロボットになって車が動き出す。

 

2016年7月21日木曜日

Dell-EMCの合併はこれからが正念場だ(6)!
          -Dellによる買収承認!ー

現地時間の7月19日午前10時、DellによるEMC買収の承認を決める特別シェアーホルダーミーティングが開かれた。場所はEMC本社(176 South St., Hopkinton, MA)である。 所要時間はたったの12分だ。その結果は投票の98%が賛成だった。投票は発行済み株式の74%に当たり、実質、94%の株主が承認したことになる。 昨年、DellがEMC買収を発表したのは10月12日。総額$67B(約6.4兆円-105円/㌦換算)という史上最大のディールであった。発表時点でEMCの株主は、DellがEMCの評価を$33.15としたことで、当時の株価より高いメリットを受けとるはずであった。今回の投票の基準日は5月13日、株価はかなり下がり$27.25、結果、総額$62B(約5.9兆円)に向けての投票となった。投票日前日(7/18)の株価は$27.54、当日(7/19)の終値は$28.11と上がり、今日(7/20)は$28.17となっている。
ともあれ、これで一件落着した。新社名はDell Technologies、非上場企業となる。扱う製品はデスクトップやサーバー、ストレージなどだ。そして、今年秋には、傘下に公開企業のVMwareやSecureWorks、非公開のPivotalやRSA、Virtustreamを擁する巨大企業が誕生する。事業領域の明確化を進めるIBMやHP。やや似た事業環境にあるのはOracleだ。どこが巨大企業として生き残るのか、結果が見えるのはまだ数年先のようである。

2016年7月13日水曜日

AutoTech(8) Google Carの狙い(1)! 
     -Android Autoがカーナビ市場に挑戦!-

オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)の開発競争は熾烈である。米自動車メーカーではFordが先行し、そしてUberと協業する。GMはCruise Automationを買収してLyftと組むこととなった。気になるのは、これまで大きな注目を集めてきたGoogle Carだ。このオートノマスビークルはこの先どのように展開するのだろうか。GoogleがTeslaのように自ら車を作ることはないだろう。しかし、彼らの戦略によって世界が変わることだけは確かだ。今回はあくまでも、私見として、Google Carの今後を推測して見ようと思う。

=地図情報の戦い!Google Maps .vs. HERE=
オートノマスビークルにとって地図情報は命綱と言っても良い。
地図がカーナビ(英語ではHead Unit、以下HU)のナビゲーションに重要なのは言うまでもないが、地図上には建造物やショップ、ガソリンスタンドなど多様な情報が示されて便利このうえない。イスラエルのスタートアップで人気のコミュニティー交通情報サイトWazeもGoogle Mapsに組み込まれた。これを使えば、取締り情報や道路の込み具合などコミュニティーメンバーが提供した情報をもとにベストなルート選択が出来る。そして地図情報のもうひとつの重要な役割が自動運転だ。地図は今や3Dマップとなり、HD(High Definition)の航空写真やストリートビューを付帯する。LiDARで得た認識情報を高度な3Dマップに重ね合わせれば、どの道路のどのレーンを走っているのか、さらにその先のレーン状態も分かる。オートノマスビークルは、夜間でも、雨や雪などの悪天候でも自分の位置を正確に見極めなくてはいけない。そのための重要な道しるべが進化した3Dマップだ。Googleはこの地図分野のトップランナーである。つまり各社がオートノマスビークルを開発しても、このままではGoogleに牛耳られてしまう。対抗策として、昨年8月、Nokiaの地図情報部門HEREをDimlar、BMW、Audiの3社が$3B(約3,000億円)で買収して、独立会社として運営し、均等に情報提供を行うことが発表された。日経の報道ではToyotaにも出資の打診があったが断った模様である。

=Android Autoはカーナビ(HU)の標準を目指す!=
GoogleはこのGoogle Mapsを強力な武器に仕上げようと考えている。
核となるのはAndroid Autoだ。流れを追ってみよう。2014年1月、Googleの主導で、Audi、GM、Honda、Hyundaiの自動車メーカー4社、そしてGPUのNVIDIAが賛同してOpen Automotive Allianceが動き出した。目的はAndroidスマホの成功モデルを自動車にも持ち込み、車にもAndroidプラットフォームを適用しようというものである。同年3月、Appleからまず車載InfotainmentCarPlayが登場し、5月のGoogle I/O 2014では、アライアンスの成果としてAndroid Autoが姿を現した。CarPlayはiPhoneを使い、Android AutoはAndroid、共にスマホとHU(カーナビ)を連携させるテレマティックスである。この2つが発表されると、HU各社は、これらに淘汰され、彼等自身は単なるハードウェアの提供屋になるのではないかと危惧した。それから2年、それは現実のものになりつつある。今年のGoogle I/OでAndroid Autoは強化された。狙いは、優位に立つMapsを使い、より完全で標準なナビゲーションシステムに仕立てることである。以下のビデオを見ると、操作性の向上や3rdパーティーアプリの統合、各種のカスタマイズ方法などが解る。実際の画面(下)の下段には、左から、Maps、TEL、インフォメーション、ミュージック、ダイアグノスティックの5つのボタンがある。Mapsは勿論、ナビゲーション用だ。表示は運転の安全性を考慮してスマホより簡素化された。表示マップ上の建物などをタップすれば、詳しい情報を知ったり、電話もかけられる。インフォメーションボタンは現在聞いている音楽や家までの距離、天気予報などをタイル表示し、次のステップへタップもできる。音楽を聞くアプリやインターネットラジオを選び、プレイさせるにはミュージックボタン。ダイアグノスティックボタンはメーカー対応だが、タイヤの空気圧などの診断のためだ。

 
 
=カーナビ(HU)はガラパゴス携帯と同じだ!=
国によってHUの事情は異なる。まず、Android Autoが狙うのは米国市場の標準となることだ。これが出来れば、主導権を奪うことが出来る。現在のHUの仕様を見ると、OSはLinuxやQNXWindows Embedded、Androidなど多様だ。アプリも独自のものや3rdパーティーものが彼らの判断で組み込まれ、ナビゲーションに至っては、そのインプリも様々である。しかも、車の純正品では、全ての仕様の決定権は自動車メーカーが持ち、市販品(英語ではAfter Market)ではHU各社が持っている。まさに携帯メーカーと大手のキャリアが共同で作り上げてきた日本のガラパゴス携帯と同じ構図だ。Googleの戦略が功を奏し、Android Autoが標準プラットフォームとなれば、その上でメーカーの独自アプリや3rdパーティーアプリが統合される。こうなれば、Androidスマホと同様、そのメリットは計り知れない。そして、HUメーカー各社はAndroid Auto仕様のハードウェアの進化にのみ、しのぎを削ることになる。

=ToyotaとBMWは積極的ではない?=
この流れを作り出したOpen Automotive Alliance(OAA)は、Androidスマホを成功させたOpen Handset Allianceがモデルである。OAAは2014年始めGoogleを入れてたった6社でスタートした。それから半年後のGoogle I/O 2014で29パートナー(ブランド)となり、現在は66パートナーと急増している。

◆ カーナビ(HU)メーカーは殆どが参加
HUを主体としたテクノロジーパートナーはGoogleを含めて以下の20社。この中で日本のHUメーカーは7社。他はHarman(米)、LG(韓)、Parott(仏)の3社だけ。現在のところ、市場では日本勢に圧倒的な存在感がある。課題は今後Android Autoを全面的に採用するかである。そうなれば市場構造が大きく変わる公算が大だ。

Alpine、Clarion、Cloudcar(Self Driving Solution)、Continental(Tire)、Delphi(Parts)、Denso(HU & Parts)、Freescale(Semiconductors)、Fujitsu Ten、Harman、JVCKenwood、LG、MediaTek(Semiconductors)、Magneti Marelli(Parts)、NVIDIA(Semiconductors)、Panasonic、Parott、Pioneer、RENESAS(Semiconductors)、Visteon(Parts)
()内は当該企業の製品分野を示す。()無しはHU専業企業

◆ 自動車メーカーも勢ぞろい
自動車メーカーもOAAの参加には積極的だ。
現時点でメーカーの参加を車のブランドでカウントすると46となる。実際には1社で複数ブランドを持つので、社数はこれよりも少ない。世界の殆どの自動車がOAAに名を連ねている。ここに名前がないのはToyota(Toyota、Lexus)とBMW(BMW、Mini)だけだ。BMWがAppleと特別な関係にあることは知っている。OAAには加盟していないものの、BMWは対外的に、Apple CarPlayが先(今年後半出荷)で、次にAndroid Autoをサポートすると報道されている。しかし、OAAには直系のDensoが参加しているけれど、気になるのはToyotaだ。Goolgeによれば、Android Autoは、7月13日から日本にも投入され、当初はAudi、Honda、Nissan、Maserati、Panasonic、VWが対応するという。

Abarth、Acura、Alfaromeo、Audi、Bentley、Buick、Cadillac、Chevrolet、Chrysler、Citroen、Dodge、Driveds、Fiat、Ford、Genesis、GMC、Holden、Honda、Hyundai、Infiniti、Jaguar、Jeep、KIA、Lamborghini、Landrover、Lincoln、Mahindra、Maserati、Mazda、Mersedes-Benz、Mitsubishi、Nissan、Opel、Peugeot、Ramtrucks、Renault、Renaultsamsungm、SEAT、Skoda、SsangYong、Subaru、Suzuki、Tata、Vauxhall、Volkswagen、Volvo。

以上は冒頭お断りしたようにあくまでも私見である。
昨年、Android Autoには、送信されるデータにプライバシーの不安があるという声があった。Googleはこれに関して公式に否定しているが、他にも課題があるのかもしれない。HUの主導権を得たいGoogle。鍵を握るのは純正品の仕様決定権を持つ自動車メーカーがどう動くかである。

2016年7月3日日曜日

AutoTech(7) Local MotorsからOlli登場!
        -IBM Watosonがバスガイド-

6月16日、3Dプリンターカー(Printed Car)のLocal MotorsChandler, AZ)オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)の12人乗りコミュニティーバスOlliを発表した。場所はワシントンDCからチェサピーク湾に流れ込むポトマック川沿いのメリーランド州National Harborここの市内観光を兼ねたコミュニティーバスとして活躍の予定だ。このOlliはEV(Electric Vehicle-電気自動車)仕様だが、注目される3Dプリンターカーとはどのようなものだろうか。

=IBM Watsonがガイドする!=
このOlliにはIBM Watsonが利用されている。とは言っても、Watsonが自動運転のAIエンジンとして使われているのではない。バスガイドとして、乗客との行先案内などの会話に適用されている。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上だ。具体的には、Watson IoTとして、Olliの車体に埋め込まれた30以上のセンサー情報を分析しながら学習する。実際の会話は、Watson APIで音声のテキスト化(Speech to Text)や逆のテキストの音声化(Text to Speech)、さらに自然言語のクラス分類化(Natural Language Classifier)や固有表現の抽出(Entity Extraction)などを実行しながら、会話を進めるというわけである。

=Local Motorsという会社!=
Local Motorsの設立は2007年。本社は当初ボストンだったが、その後、現在のアリゾナ州に移った。車の製造拠点はテネシー州のKnoxville、近くに3Dプリンターの研究に造詣の深いOak Ridge National Labがあるからだ。同社のファウンダー兼CEOはJohn Rogers氏。氏はHarvard Business Schoolの出身で、6年間のUS Marineでの経験もある。この会社のオペレーションは、原則、クラウドファンディングのようなものである。そして、プロジェクトで作るものは3Dプリンターを使った各種の自動車だ。3Dプリンターを使えば簡単に物作りができる。そこで、3Dデータから車体のスケルトン部品を作り、組み立て、これにボディーカバーを被せれば出来上がり。エンジンやEV用モーターなどの主要部品は外部から調達する。なぜこのような方法で自動車を作るのか。現在の大量生産方式の自動車産業はコミュニティーバスや特殊レジャーカーのような少量多種製造には向かない。そこがこの会社の狙いである。小型のマイクロファクトリーと呼ぶ組み立て工場を全米に数ヶ所開設して、新規需要の迅速な対応に応える予定だ。新規開発のプロジェクトには、同社の社員以外にクラウドでメンバーを募集し、アイディアを出してもらう。それらの提案を共同で検討して最終案を決定する。原案が決まればプロトタイプを制作して、投資を募るという手順だ。そして開発に入る。一緒に作業した外部参加メンバーには、ロイヤリティ収入が入る仕組みだ。さて、Olliの場合は、開発構想から約1年、実際の制作はたった3ヶ月だったという。このバスの前後にはVelodyne製のLiDARとカメラが取り付けられている。Olliの設計上の最高速度は時速25マイル(40キロ)。走るのは限定されたエリア内だけ。つまり、オートノマスビークルとしての技術レベルは高くはない。しかし、実用性は高く、年内にはマイアミのデイド郡やラスベガスでも走り始めるという。ただ、どうやってLocal MotorsがOlliのAIを開発したのかは今のところ謎のままである。
 
 

2016年7月1日金曜日

AutoTech(6) そしてクラウドに繋がる!
  -ライドシェアリング(Lyftの場合、そしてGettは?)-2-

車は所有する時代から、利用する時代に変わり始めた。
ライドシェアの配車サービスがこの流れをけん引している。そして、彼らと自動車メーカーの協業が動き出した。前回紹介したUberの場合はFordと組んだ。Reutersによると、オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)開発の噂のあるAppleも今年5月、中国のライドシェアリングDidi Chuxingに$1B(約1,100億円)という巨額投資を行った。今回紹介するLyftの相手はGMである。

=LyftにはGMが$500Mを投資!=
Lyftの創業は2012年、本社はUberと同じサンフランシスコだ。何故だろう。それは、この地域がRide Sharingに馴染んでいるからである。ライドシェアは最近始まったことではない。カリフォルニア州だけではないが、特にベイエリアのように、人口密度が高く、多くの人々が働く地域では、フリーウェイの乗り合い自動車レーンCar Poolが発達している。日本のバスレーンのようなもので、決められた時間帯は2人以上の乗車でなければ走れない。シリコンバレーの工場の操業は朝6時。移民系の従業員は車を融通し合って、早朝、フリーウェイの専用カープールレーンを飛ばしてやってくる。飛行場には乗り合いの廉価なシャトルバスもあり、同じ方向の客を乗せて、次々に下ろしながら目的地に送ってくれる。こうした背景から、ライドシェアリングとスマホが融合するのは自然の流れだった。後発のLyftの狙いは2つ。利用者にはUberより低額で便利であること。ドライバーにはUberより稼げることだ。既存のタクシー料金の殆どはドライバーの人件費だという。これまでのタクシーより安く利用が出来て、ドライバーには自由な時間に自分の車で稼いでもらう。実際のところ、契約したドライバーの多くがUberとLyftを掛け持ちしていると聞く。そしてLyftの取る手数料はUberよりやや低めの設定だ。
さてUberとFordの協業を横目に、LyftとGMの新しい関係が始まった。今年1月のCES 2016でGM CEOのMary Barra女史が$500M(約550億円)を投資すると発表。続いて3月にはExpress Drive Programをリリースした。このプログラムはLyftのドライバーに向けたもので、当初はシカゴ、その後はボストンやワシントンDCなどに拡大され、車の保険やメンテナンスを含めて週$99(約1万円)でGMのレンタカーが借りられる。これでアルバイトをしてくれというわけである。さらにドライバーが週65回以上、Lyftのお客を乗せればGMのレンターカー代はタダとなる。そして5月10日、ついにオートノマスビークルに関するLyft提携が発表された。適用車種は本年下期出荷のGM Chevrolet Boltだ。少しややこしいがGMには2011年モデルとして発表されたChevrolet Voltという車種がある。エンジンとモーターを積んだHybrid EV(Electric Vechicle-電気自動車)だが、日本でおなじみのハイブリッドと違い、エンジンはバッテリー充電のみに使い、車自体はモーターだけで動く。つまり基本はEVだ。この技術はその後Cadillac ELRに引き継がれたが、今は生産停止である。今回、Lyftに提供するBoltはこれらの流れの受けながら、しかし完全なEV車として登場する。Wall Street Journalによると、Boltの自動運転技術の詳細は検討中とのことだが、想像できるのは、3月にGMが買収したCruise Automationの技術の採用だ。そして、新型Boltによるオートノマスビークルのテスト地は、Uberがピッツバーグなら、Lyftは本社があり、配車サービスの発祥の地のサンフランシスコとなるかもしれない。

=欧州Gettの米上陸、VWが$300M投資で傘下に!=
もう1社、気になる会社がある。ヨーロッパを中心にライドシェアサービスを展開してきたイスラエル生まれのGettだ。2009年から開発が始まり、当時の社名はGetTaxi。その後、2011年にはテルアビブで試行が始まり、すぐにロンドンで正式にローンチして、モスクワへ、そして2012年ニューヨークに上陸し、本社もニューヨークに移設した。このGettからビッグニュースが飛び出した。5月末、独Volkswargen(以下、VW)が$300M(約330億円)を投資したのである。同社への投資を見ると、創設資金となった2010年のシーズは$2M、2011年はSeries-Aで$7M、以降2014年のSeries-Dまでの累計は$200M、昨年は$20M追加され、総額$220Mとなった。今回の投資額はこれを大きく上回る。つまり、実質は買収による子会社化である。勿論、VWグループもオートノマスビークルには大きな関心を寄せている。今年3月のGeneva Motor ShowでVW CEOのMatthias Müller氏は、自動運転車のようなデジタル車開発を加速するため、ドイツ、米国、中国にある3ヶ所の開発センター投資を増やすと説明し、2025年までに何とか出荷したいとの意欲を示した。
=そしてクラウドに繋がる!=
UberやLyftなどの配車サービスはすでに多くの顧客を獲得し始めた。
彼らが目指す次なる戦略は、オートノマスビークルの導入だ。それによって一段と利用料金の引き下げを狙う。こうして普及競争は、Uberを筆頭とするライドシェアリング会社とGoogleなどのIT企業、さらにはGMやFordなどのメーカーが三つ巴の様相となってきた。各グループ共何としても主導権を握りたい。Uberは独自技術の付加を模索し、GoogleはAIを武器にFordは実際の車づくりでのアドバンテージを主張する。IT企業はGoogleだけではない。噂のAppleやLocal Mortorsと組んでIBMはWatosonを提供(関連記事はここ)し、さらにはMicrosoftだって何らかの参入を狙っている。実用化はもう足元までやって来た。最後の壁は、LiDARによる全天候型の認識技術と高度なDeep Learningを駆使したAIだ。高性能なLiDARは何万というスポットを広角度で高速にスキャンし、車の目となる。視界から見えるものを確実にし、安全な運転に結びつけるには、LiDARだけでなく、外部からの天気や交通情報などの取り込みが必要となる。出来ればその路線を走るドライバーの運転傾向や事故情報も欲しい。これらをクラウドから取り込んでAIで処理し、その結果はクラウドに戻す。こうして、Cloud Connected Carは、データ蓄積と学習を繰り返しながら、真の自律システムへと進化する。

2016年6月15日水曜日

AutoTech(5) 所有する車から利用する車へ!
      -ライドシェアリング(Uberの場合)-1-

ここまで自動運転車/オートノマスビークル(Autonomous Vehicle)について見てきた。今回(Uberの場合)から2回(次回はLyftなど)、最近ニュースの多い配車サービス/ライドシェアリングRide Sharingについて考えてみようと思う。

配車サービスのインパクト
最近のThe Economistの記事によると、1990年代のドットコムバブル華やかなりし頃、Ford CEOだったJacques Nasser氏は「車の組み立てなどの仕事は外注化し、インターネット時代にふさわしい新しいビジネスモデルのモビリティーカンパニーを目指す」と宣言した。氏がモビリティーカンパニーの定義やその確固たる実行プランを持っていたわけではない。新しい時代に立ち向かう覚悟を示したものである。あれからインターネット時代はクラウドへ、そしてスマートフォンの急速な普及が進み、とうとうそのうねりは本気で自動車産業も巻き込み始めた。スマホを使った配車サービスUberが登場したのは2009年。彼らは自動車屋ではない。スマホのアプリ屋だ。最初それがNasser氏の予感を実現する手段になるとは誰も気づかなかった。ただのはやりのシェアリングビジネスの一種だと。しかし若者の自動車離れは着実に進んでいる。ハイブリッドや燃料電池車の開発も大事だが、何か別なことを考えなければいけない時代に入って来た。アウトソーシングとかシェアードサービス/ビジネスというビズワードがある。最早、会社の仕事を外注するアウトソーシングは当たり前、各社の共通な仕事を共有するシェアードサービスも発達した。共に会社経営の効率化のためだ。上図はMorgan Stanleyの資料だが車の出荷は伸び悩み、一方でシェアード車が2030年には15%以上を占める。Nasser氏の考えは時代を先取りし過ぎていたが、とうとうその時代がやって来た。今や自動車メーカーの多くがライドシェアリングとの提携を急いでいる。彼らは単なるスマホのアプリ屋ではない。輸送サービスを手掛けるテクノロジー企業である。現在のタクシー料金のほとんどはドライバーの費用だ。それをライドシェアで下げる。自動車メーカーは彼らと契約したドライバーにリースで車を提供する。彼らはドライバー向けのリースや保険、さらには通信料金など割引プログラムを提供する。たったひとつのスマホアプリが膨大な資金を集め、多様な企業を巻き込んで新たな世界を作り出す。これこそNasser氏の夢見たモ ビリティーサービスかもしれない。

=Uber、Googleは投資、Fordは協業、そしてToyotaは提携!=
世界的な自動車メーカーにとって、残念ながら、この世界の主導権は今のところライドシェアの会社側にある。しかし、GoogleがUberに258M(約283億円)を投資したのは、少し前の2013年、Series-Cだった。そしてGoogle SVPDavid Drummond氏がUberのボードに就任。Google Carを開発しながらのことである。当時のForbesによると、GoogleはGoogle CarとUberを組み合わせたキラーアプリを目指していた。ただ、その後の状況は変わった。Uberはオートノマスビークルについて、後述のように独自路線を歩みだし、Googleも独自のライドシェアリングテストを開始した。Uberはまた、 6月2日、サウジアラビア政府系公共投資ファンドからの$3.5B(約3,800億円)という巨額投資を受け入れた。これ集めた資金総額は14.11B(約1.5兆億円)。その評価額は$68B(約7.5兆円)となって、設立からたった7年のUberが100年以上の歴史のあるGMやFordのマーケットキャップを抜き去った。

この巨費をどのように使うのか。それは全世界の市場開発だけではない。彼らは自動運転車/オートノマスビークルに興味津々だからだ。昨年2月、ピッツバーグのカーネギーメロン大学と組んでATC(Advanced Technologies Center)構想を発表。この組織を核に同社向けのオートノマスビークルを開発する。この話はその際、同大学から大勢のロボット関連の教授を含むスタッフを引き抜いたことで物議を醸し出しもした。しかし、自力開発はそう簡単ではない。5月19日、Uberの計画が姿を現した。結局のところ、Fordと提携してFord Fusion Hybridをつかったロードテストをピッツバーグ市内で開始すると発表した。つまり他社開発のオートノマスビークルにATCで開発した機能を組み合わせ、Uberとして使い勝手の良いものに仕上げようというわけである。これによって、主導権は渡さないというこのなのだろう。同じ5月24日、トヨタもUberとの戦略的な提携覚書MOUを交わした。これは将来の投資含みながら、当面はUberドライバーに対するリースプログラムに向けたものである。

=車は所有から利用へ!=
車は所有する時代から、利用する時代に変わりつつある。
好きな車を買って、ドライブを楽しむことがステータスだった時代は過ぎた。それよりも好きな時に、早く、安く移動できればいい。ライドシェアリングのドライバーも専業ではない。自分の都合の良い時間に自分の車を使って働くアルバイト気分だ。これらの需要と供給を結びつけるのがインターネットアプリである。つまり、配車サービスはインターネット時代のタクシー会社だ。勿論、安全性や法規制など色々な課題はある。4月26日、GoogleやGM、Ford、Uber、Lyftなどがオートノマスビークルの交通基準を整えるよう米政府に働きかけるSelf-Driving Coalition for Safer Streetsを設立した。狙いの第1段は、実用化が近いオートノマスビークルをまずはセミプロの彼らのドライバーに合法的に使って貰うことだ。これはライドシェアの会社にとっても大きなプロモーションになる筈だ。そして将来は、顧客自らが提供されるオートノマスビークルを操作する時代が到来するだろう。