2009年6月23日火曜日

HPがクラウドのコンサルテーション提供へ 

クラウドビジネスでは比較的傍観者的な立場だったHPは、6月23日、これまでの企業IT部門向けコンサルテーションの一環としてクラウド・コンサルテーション・サービスを7月から開始すると発表した。提供されるサービスは「HP Cloud Discovery Workshop」と「HP Cloud Roadmap Service」の2つ。調査会社のIDCによると、企業は、今日、クラウドのベネフィットは十分理解しているものの、どのように既存IT資産と融合させるのかという問題に向かい合っている。HPの今回のサービス提供は、この点に回答を導き出すもののようだ。

まず「Cloud Discovery Workshop」では、クラウドを戦略的なサービス(Cloud as a Strategic Service)として捉え、クラウドを加えた複数のサービスデリバリーに伴うユーザー教育や、クラウドの潜在的なリスク、実行に当たってのプロセスと技術的な提案などをワークショップを行いながら導き出す。

Workshopの次に行うサービスが「Cloud Roadmap Service」。
このサービスでは、どのようにユーザーにクラウドを使って貰うかをサービス提供戦略(Service Delivery Strategy)の視点から分析し、具体的にスケジュールを伴った提案仕様に落とす。その上で、これらの仕様を実現に移すプログラムモデルやガバナンスを規定。これらの提案を受けた企業は、その上で作業を実行プロジェクトに移行する。

このように、HPのクラウド・コンサルテーションは、企業IT部門と一緒になってクラウド戦略を立案し、実行の道筋を描き出すものである。このようなサービスはIBMなども提供しているが、ベンダーの提供するコンサルテーションはややもすると自社技術や製品の押し付けになりかねない。HPにおいても近年の企業買収、特にMercury InteractiveやOpswareなどで、システム運用管理「OpenView(現Oeprations Center)」の守備範囲を大幅に拡大してきた。この延長でいずれは、計画中のプライベートだけでなく、ハイブリッドクラウドを扱うことは想像に難くない。また、HPが昨年5月に買収したEDSは、HPのクラウド担当責任者でCTOのRuss Daniels氏がEDSのCTOにも就任(6/24)した。これは、買収後、これまでの分野を守って沈黙してきたEDSがクラウドで動き出す兆候に見える。ただ、今のところ、HPはクラウドでは、システム運用管理以外に特にプロダクトを持たず、ニュートラルだ。この2つ(製品を持つか、持たないか)は、HPの戦略上、二律背反である。ハードウェアを主として扱い、ソフトウェアではニュートラルな地位が良いとしてきたこれまでの流れを変え、ソフトウェアも提供してビジネス拡大を目指すべきなのか、ユーザー企業の期待とHPの戦略がどう交差するか、今後の動向を見守りたい。