=NTTコムの優位なポジション=
クラウドプロバイダーの立ち位置は重要だ。
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=国際標準のクラウドへ=
このようなNTTコムへのユーザの期待とは何か。
それはクラウド採用時の短期的満足度だけではない。勿論、サポートや料金は重要である。しかしユーザが安心して長期に亘って使えることこそ、真に重要なポイントである。オンプレミスのシステムがクラウドに移行し、目の前からデータセンターが見えなくなった。今や業務システムだけでなく、開発環境もPaaSへ移行し始めている。全てがクラウドに向い抽象化が進む。ユーザにとってセンター運用の負担が減った分、不安も大きい。数年先には実際のサーバーを動かし たことが無いIT部員が増えてくる。彼らが頼るのは最早コンピュータメーカーではない。サービスプロバイダーだ。そのためには基幹技術や製品が長期間の利用に耐えるものでなければならない。これが基本だ。国際的な諸活動に積極的に参加し、コントリビュータとなって働き、「Bizホスティングこそがもっとも国際規格やデファクトに準拠している」とアピールできれば素晴らしい。それには、現在のベースとなっているCloudStackと進展著しいOpenStackとの調整がいるのかもしれない。ユーザにとって、国際標準に忠実であるという理解が進めば“Global Cloud Vision”の達成は見えてくる。
=価格競争はこれからだ=
説明会に先立って、NTTコムはクラウド料金を最大約37.5%値下げすると発表した。これは大きな弾みとなる。しかしAmazonの価格改定が20回近くに及ぶように、価格競争はこれからが本番だ。そのための鍵は要員とデータセンターである。これを改善しなければ世界では勝てない。まずキャリアとしてのアセットを活かした電話やテレビ会議、チャットなどのサポートを徹底すべきである。もうひとつの課題はデータセンター関連コストだ。有馬社長はnetmagicやRagingWireなどの買収の結果、最大手Equinixが約50万㎡(推定)程度なのに対し、NTTコムも約25万㎡になったと胸を張った。しかし、世界で戦う彼らのコスト意識は厳しい。これに対抗するには、国内外のセンターを全て自営として使うのではなく、何らかの工夫をしてスクェアコストを引き下げる模索がいる。関連して、ネットワーク機器への積極的なSDNやNFVの採用も急務である。
=NTTグループの総合力=
もうひとつ気になることがある。
それはNTTグループ全体としての動きである。NTT Dataは独自クラウドを運営しているし、親会社のNTT Holdingsも海外ではDimension Dataに投資している。南アフリカを本拠とする該社は世界展開の大手データセンターだ。2011年7月にはシリコンバレーのクラウドプロバイダーOpSource を買収してクラウドビジネスを本格化させた。勿論、種々事情はあるのだろう。しかし、これらがすぐには統合できなくても、少しずつグループとしての全体像が見えてくれば、ユーザの理解は進み、大きく前進できる。
=目指すは世界!=
IBMのCEO Ginni (Verginia) Rometty女史は2013年度決算速報時(1/21)に、2013年のクラウド関連売り上げは$4.4B(約4,400億円)、そして2015年の目標を$7B(約7,000億円)にすると説明した。これは全世界展開の数字である。翻って、NTTコムの売り上げは、2012年度が960億円(2013年度は未発表)、2015年度は2,000億円を目指す。これが達成できれば世界のIBMが見えてくる。繰り返して述べよう。そのためには「ベンダーニュー トラル」の維持と「国際標準クラウド」の推進、そして「キャリアとしてのアドバンテージ」を活かし、「NTTの総合力」発揮が必要である。