Oracle OpenWorld 2014開催直前のことである。思えば、AppleのSteve Jobs氏は3年前の2011年10月、闘病生活から立ち直ることなく56歳の若さで世を去った。MicrosoftのBill Gates氏は2000年1月に45歳でCEOを降り、自らがChief Software Architectとなって製品全体の方向性に目を光らせた。その後は新しい時代の流れに沿うべく、2006年6月、Ray Ozzie氏にその職を委ねて、徐々に身を引いた。そのOzzie氏が最も力を入れたのがMicrosoftのクラウドAzureである。
他方、Elison氏は今年8月で70歳。

=Oracle OpenWorld 2014=
さて今年のOracle OpenWorldはどうだったか。


=Oracleのオープン化の足取り=
さて、ここでOracleのオープン化について触れておこう。

◆ Oracle Linux
そのOracleがRed Hat Enterprise LinuxをベースにしたOracle Linuxを発表したのは2007年。2010年のSun買収以前のことだ。これはUnixからLinuxへの急激な流れの中で、OS移行に伴うユーザ流出の防衛策のように見えた。
◆ Oracle Exadata/Exalogic
2009年に発表したデータベースアプライアンスOracle Exadataは、HPと共同開発したもので、OLTP(Transactional)とOLAP(Analytical)に対応し、OSにはOracle Linuxを採用した。この成功がSun買収の伏線となったのだろう。買収の翌2011年、Sunのストレージをベースとした高性能のExadata 2が登場。これにはオープンソースとなったZFSが搭載され、OSはSorarisかOracle Linux。平行してSunのハードウェアにWebLogicを乗せたOracle Exalogic も現れた。
◆ Oracle Engineered System
これらはその後、Oracle Big Data Appliance、Oracle SupperCluster、Oracle Virtual Compute Applianceを加えて、一般にアプライアンスと呼ばれるものよりも、ソフトウェアとハードウェアをより効果的に統合したEngineered System(エンジニアドシステム)として成長した。
◆ OpenStack
Oracleが次に手を打ったのがOpenStackである。その前触れが昨年3月に買収したNimbulaだった。同社はAWS開発の初期メンバーが創設した会社である。こうしてクラウド関連技術とエンジニアを吸収し、昨年12月にはOpenStack Foundationの企業スポンサーとなって、Oracle Solaris、Oracle Linux、Oracle VM、Oracle Virtual Compute Appliance、Oracle ZFSなどへのOpenStack適用を表明した。そして今年5月、Atlantaで開かれたOpenStack Summitで2つOpenStack製品を発表。ひとつはSolarisにOpenStackを統合したOracle Solaris 11.2、もうひとつはx86向けのOpenStack Distributionである。
こうしてみると、Ellison氏の考え方は時間と共に変化しているのかもしれない。
しかしStackAlyticsで見るとOracleのJuno開発貢献度は86位だ。貢献度トップHPのレビュー数は24,857件、Red Hat(同2位)、Mirantis(3)、Rackspace(4)、ここまでは10万件以上、5位のIBMが9,989、Ciscoは4,614(6)、NECが3,392(7)、SUSEは2,589(10)、これらの企業は全てOpenStackのディストリビューションを製品化している。これに対してOracleはたったの19件だ(10/7現在)。これはOracleの体制がまだ始まったばかりだからなのかも知れない。ただ、今言えることは、貢献を通してビジネスを組み立てる多くのメンバー企業とは異なるということである。
=後継者は誰か=
Oracleは新トロイカ体制となったが、Ellison氏はこれまで通りなのだろうか。
それとも、総務畑のCatz氏はともかく、Hurd氏をいずれ後釜にするのだろうか。
残された時間はそう長くはない。周知のようにHurd氏はNCRの営業から身を興し、同社の1部門だったTeradataを成功させてCEOに登り詰めた人である。その手腕を買われてCarly Fiorina女史後のHP CEOとなり、そしてOracleにスカウトされた。その彼の最初の仕事がTradataの成功体験を生かしたExadataだった。その意味で、氏がSunの再生、とりわけ、Engineered Systemをビジネス軌道に乗せたことは大いに評価される。しかしOracleは基本的にはソフトウェアの会社である。勿論、Linuxもクラウドもソフトウェアだ。彼はどちらかというとマーケティングやハードビジネスが得意である。本当に彼が後継者となるのだろうか。不安もある。過去、後継者と思われる人物が現れる度にEllison氏との仲が問題となった。1992年に入社し、1996年にCOOとなったRaymond Lane氏は、当時の競合SybaseやInformixに打ち勝って大きく業績を伸ばして後継者と言われたが、2000年、突然退社した。その後、2003年、社長にスカウトされたCharles Phillips氏も、PeopleSoftやBEA、Hyperion,、Siebelなどの買収に貢献し、大きく売り上げを伸ばした。その彼も2010年、Oracleを去った。今度こそHurd氏が後継者として選ばれるのか。
新トロイカ体制はその試金石である。