2013年8月25日日曜日

時代の流れ!(2) -AWSとRackspace-


前回の補足を続けようと思う。
今回はAWSRackspaceの売り上げ分析だ。
まず何故クラウドプロバイダーとして、この2社にこだわるのか、その疑問に答えよう。

 1) 何故、AWSとRackspaceを比較するのか
AmazonのクラウドサービスAWSは、一昔前の巨人、IBMと同じで外せない。
Gartnerの資料(Magic Quadrant)で見ても、AWSは実行力とビジョンを併せ持ったリーダーだ。今やAmazonはMicrosoftやOracleはもとより、GoogleやAppleを凌ぐという声さえ聞こえてくる。つまりAWSの売り上げ推移が読めれば、米クラウド市場の規模予測に自信が持てる。これに続く2番手グループは、SAVVISやTerramark、CSCなどの大手計算センターだ。ここ数年、彼らは生き残りをかけて、独自路線組と米キャリアなどとの統合組に分かれた。これらの動きは次回報告する。
この流れの中で、注目はRackspaceだ。
高価なメインフレーム時代からの受託業務という歴史を持つ大手計算センターとは異なり、Rackspaceは1996年ISPとしてスタート、1998年にCustom ApplicationベースのWeb Hostingに転進し、2006年から実験事業Mossoを始めた。これが2008年から始まったRackspace Cloudの原型だ。つまり、RackspaceはただのISPやHosting屋ではなく、優秀な技術陣とビジョンを持った経営陣からなるスタートアップである。だからこそ、徹底したオープンサービスで顧客の心を掴んできた。NASA Amesと共同開発したオープンソースクラウドプラットフォームのOpenStackは、今年4月、7度目のリリースGrizzlyを行った。プロジェクトには500名以上の開発者が参加、200以上の機能追加がなされた。このOpenStackが多くの企業に採用される時代が来れば、それらを連携したグローバルベースのクラウドネットワークが見えてくる。


2) AWSの売り上げは幾らか?
Amazonに立ち向かうのは大手計算センターではない。それはRackspaceだ。前回述べたようにクラウドビジネスの基本はオープンスタンダードである。だからこそ、大勢のユーザーがオンプレミスから自由に移り住むことが出来る。AWSはその上に独自機能を加味してきた。対するRackspaceは徹底したオープン化で対抗してきた。
そして結果は数字に表れる。 
AWSの売り上げは幾らだろうか。
Amazonから正式な数字の発表はない。しかし、年次決算報告書Amazon.com Annual Reportから類推することは出来る。報告書(下表)には地域別(North America-北米、International-国際、Consolidated-合計)と商品別(Media-メディア、Electronics and Other General Merchandise-電子機器と物販、Others-その他)のデータがある。ここで、地域別の北米はともかく、国際とはその他の国々を指し、合計は2つの合算値となる。商品別のメディアはコンテンツ販売を意味するが、AWSは電子機器や一般の物販とも異なるので、下表の(1)に記述があるように“その他”の項に含まれる。決算報告書の“その他”の項の合算値は、2012年度は$2.523B、2011年は$1.586B、2010年は$953Mとなっている。注釈によると、問題はこの“その他”にはAWSだけでなく、販促関連や他サイト売り上げ、そしてクレジットカード(Co-Branded-共同ブランド)の売り上げが含まれている。前2つは無視できるとして、クレジットカードによる収入はそれほど小さくはない。
つまりAWSの昨年度売り上げは、$2.5B(約2,500億円)を上限とするが、実際には$1.5B~$2.0Bの範囲にあるだろう。本レポートでは、諸条件を勘案し、昨年度AWS売り上げを$2.0B(約2,000億円)と推定した。

 

3) Racksspaceの売り上げは幾らか?
Rackspaceについても同様の分析を試みよう。 Rackspaceの2012年次報告書Rackspace Annual Reportには、Dedicated CloudとPublic Cloudに分かれたデータがある。前回の報告ではAWSとの比較のためにPublic Cloudのデータのみに注目した。Rackspaceのそれは$300M(約300億円)だった。しかし、通常のHosting業務も仮想化技術の適用によって、現在はDedicated Cloudと呼ぶ時代となった。これは調査会社を含めて一般的な傾向である。この報告書でも、過去を遡るとManaged Hostingとされていた分野は現在はDedicated Cloudとなり、昨年度のPublic Cloudは$304.074M、Dedicated Cloudは$1,005,165M、合計$1.3B($1,309,239M)だ。邦貨換算では約1,300億円となる。単純比較をすると、Public CloudだけのAWSが$2B、Public/Dedicated Cloudの2つをサポートするRackspaceは$1.3Bとなる。同社の課題はこの2つをどこまで伸ばすことが出来るかだ。
AWSもRackspaceも、主な顧客セグメントは企業内の部門やSMB(Small & Medium Business-中小企業)だ。両社ともクラウド環境の整備には余念はないが、それだけでは売り上げはもう伸びない。事実、AWSは過去19回、価格を下げてきた。 ここで鍵となるのはCSB(Cloud Service Broker)だ。先進的ユーザーがクラウド移行した後、需要はあってもIT要員のいないSMBをどうやってクラウドに誘導するか、その鍵を握るのが新しいクラウド向けのSIer、サービスブローカーである。

2013年8月5日月曜日

時代の流れ!(1) -あれから2年-

しばらくクラウドの実務から離れていたが、米国で起きている状況は注視していた。
この間の変化を精査すると、時代の流れが読める。

1) 快調に飛ばすAWSとRackSpace!
米クラウドではAmazon Web Service(AWS)とRackspaceが相変わらず好調だ。
これについては別途詳しく述べるが、Amazonのクラウド度売り上げは昨年度$2B超(約2,000億円)と見込まれる。AWSが始まった2006年度が$250M(約250億円)と推定されるので約8倍の成長だ。
対するRackSpaceのパブリッククラウド売り上げ(ここではAWSとの比較上、パブリッククラウドのみ)は昨年度$300M(約300億円)だ。今やクラウドの巨人となったAmazonに比べ、小企業のRackSpaceはHostingビジネスから転進した。クラウドを新しいビジネスチャンスと見た同社はAWSと同じ2006年に実験事業を始めたが、本格開始は2008年である。その年の売上げは$25M、5年で12倍に急成長した。AWSに比べれば数字は小さいが大健闘である。周知のようにクラウドビジネスは基本的にオープンスタンダードに準拠しなければ上手くいかない。Amazonの戦略はその上で独自機能を加味したものだ。一方のRackspaceは徹底したオープン化で対抗してきた。結果は大善戦だ。

2) オープンソースの躍進!
クラウドビジネスの第2幕は、これからである。
市場の動きを良く見ると、AWSやMicrosoft Azure、更にはGoogle App Engine等の大手は自らの影響力を最大限に活かしながら、得意とする技術で顧客を引き寄せようとする。VMwareCitrixの戦いも然りだ。しかしクラウドがもて囃されるのは、ソフトウェア技術(OSやミドルウェア、アプリケーション)やハードウェア(サーバー、ストレージ、ネットワーク機器)などを抽象化するからだ。それによって、ユーザーはハードとソフトの縛りから解き放たれる。つまりクラウドビジネスは、抽象化技術によって、ユーザーに自由な空間を、どれだけ安価に、どれだけ容易に提供できるかがポイントである。
しかし大手ベンダーたちは、クラウド・クラウドと声高に叫びながらも、実はユーザーを自社の得意分野に誘い込む。昔ながらの戦略だ。クラウドがビジネスである限り、先に大きなパイを取った方が勝であることは昔も今も変わらない。このような大企業戦略と併走しながら、真にユーザー利益を追い求める次世代オープンソースクラウドが動き出している。トップバッターはRackspaceがNASAと始めたOpenStack、そしてSunのJavaエンジニアが興したCloud.comベースのアパッチCloudStack、最近ではVMwareからスピンアウトしたCloud Foundryなどだ。
彼らがクラウド第2幕の演者たちとなる日も近い。

3) 消えた会社!
この数年の間にクラウドでは多くの会社が統合され、市場から消えていった。
これら多くの買収劇は市場が草創期から成長期に移る際に見られるいつもの現象だ。初期には沢山のスタートアップが登場し、次にそれらの統合が起こり、市場が新たな段階に進む。買収する側はどうやって自社を本流にするかを模索し、される側はまさに投資対効果のエキジットストーリーとなる。しかし、その多くは流れを作り出すことは難しい。下記は主な買収であり、別途、分析を試みる。
  • CAによるグリッドOS 3Tera買収(2010/2)
  • ストレージのNetAppが分散型ストレージGRIDのBycastを買収(2010/4) 
  • 全米5位の通信事業者CenturyLinkが3位のQwestを買収(2010/4)
  • EAIツールCast IronをIBMがインテグレーションツールとして買収(2010/5)
  • クラウドストレージParascaleはHitachi Data Systemsに吸収(2010/8)
  • HPが仮想ストレージベンダー3Par買収(2010/9)
  • DellがインテグレーションクラウドのBoomiを買収(2010/11)
  • ストレージクラウドのZumoDriveをMotorola Mobilityが買収(2010/12)
  • SalesforceがRubyクラウドのHerokuを買収(2010/12) 
  • VerizonがクラウドプロバイダーTerramarkを買収(2011/1)  
  • HPがビッグデータ分析のVertica買収(2011/2) 
  • CenturyLinkSAVVIS買収(2011/4)
  • NovellSuSEAttachmateに売却(2011/4)
  • Dimension DataがクラウドプロバイダーOpSource買収(2011/6)
  • バックアップCarboniteがフォト/ビデオ共有のPhanfare買収(2011/6)
  • CitrixがCloudStackのCloud.comを買収(2011/7)
  • バックアップCarboniteがフォト/ビデオ共有のPhanfare買収(2011/11)
  • HPがウェブプリントの独Hiflexを買収(2011/12)
  • GoogleがクラウドオフィスツールQuickoffice買収(2011/6)
  • RightScaleがクラウドコスト分析のPlanForClaoudを買収(2012/7)
  • VMwareがネットワーク仮想化のNicira買収(2012/7)
  • VMwareがクラウド自動化ソリューションのDymanicOpsを買収(2012/7)
  • MicrosoftがクラウドストレーレジベンダーStorSimpleを買収(2012/10)
  • Citrixがモバイルデバイス管理Zenpriseを買収(2012/12)
  • バックアップCarboniteがオープンソース同Zamanda買収(2012/12) 
  • VMwareはストレージ仮想化のVirstoを買収(2013/2) 
  • GoogleTalaria買収(2013/3) 
  • Microsoftがクラウドパフォーマンス管理MetricsHub買収(2013/3)
  • Delllがエンタープライズクラウド管理ツールのEnstratius買収(2013/5)
  • IBMがクラウドプロバイダーSoftLayer買収(2013/6)

2011年8月30日火曜日

次世代クラウドコンピューティング (7)
                  -がんばれニッポン!-

◆ 成熟からの脱皮
産業の成熟化に伴い、中核となる企業の多くは、その地位確保のため、経営の多角化や総合化を推進する。しかし、それだけで大丈夫だろうか。
歴史に見る幾つかの事例では、その先に凋落があった。
コンピュータ産業も例外ではない。
その意味で低迷する日本のコンピュータ産業が、再度、成長曲線に乗るには、明確な目的をもった企業への変身、それに伴う企業の分割、そして動きの軽いスタートアップの育成、さらには他産業からの市場参入など多面的な努力を必要とする。
勿論、グローバル化は前提だ。しかし現実をみると、日本には米IBMのような巨大SIerが5指ほどもあり、その傘下に全てのIT関連企業が組み込まれているような錯覚に陥る。ユーザー企業のIT部門も彼らと付き合う以外に、当面の手立てはなく、まさに閉塞感が漂う。この構図からの脱皮こそが活路である。

一 方、米国のコンピュータ産業を見ると、Appleを筆頭に、Microsoftも、HPやDellも、さらにOracleに至るまで企業の活動フィールドは限定的で、それ故、企業目的はかなり明確だ。その中でどうやって売上を拡大し、利益率を高めるか、それが勝負処である。
例外はIBMだけ。
米国市場におけるIBMの存在は、今やハードからソフトまでを提供する巨大なSIerだ。それを望むユーザーだけが彼らを必要としている。しかし市場はもう新しいテクノロジーが彼らから出てこないことを知っている。クラウドでは完全なフォローワーとなった。つまり、過去、イノベーティブな会社として尊敬され、技術と製品で市場をリードしてきたIBMは、時代の変遷の中で、トップの座にこだわる余り、企業拡大に固執し、SI事業に偏重した。まったくのところ、会社の定款が変わってしまったに等しい。それでもIBMは寄らば大樹的なユーザー需要と、健全化が進む本流のIT企業群のおかげで、その勢力を未だ保っている。

◆ ピンチからチャンスへ-ネットワークの仮想化
クラウドは仮想化技術から始まった。
初期の仮想化はサーバーに始まり、次にストレージ、そして今、一番ホットなのがネットワークの仮想化だ。この分野が整備されれば飛躍的な向上が望める。構造的な問題を抱える日本のコンピュータ産業にとって、クラウドで世界に認められるにはどうすれば良いのか。ネットワークの仮想化はピンチを切り替えるチャン スでもある。

=Virtualized Networkを搭載したミドクラのクラウド!
Midokuraとはミドリのクラウドという意味です」
幸運にもMidokuraのファウンダー兼CEOの加藤隆哉さんにインタビューする機会があった。同社のミッションを尋ねると、「健全で先進的なクラウドをどう提供するか」、そのためには「グローバルオペレーションとネットワークの仮想化は欠かせません」と即答する。混沌とする現クラウド世界の解決法が見えているという印象だ。
Midokuraの戦略ポイントは2つ。
ひとつは、まずグローバル化。クラウドの成功にはこれなくしてはあり得ない。
共同設立者兼CTOのダン・ミハイ・ドミトリウ氏は元Amazonのエンジニアだし、サンフランシスコにはGoogle出身者を置き、ヨーロッパにもエンジニアを抱えている。小さいながらも世界中にエンジニアとオフィスを展開し、英知の結集とグローバルネットワークの構築を進める。目指すはグローバルコミュニ ティーとの連携だ。

2つ目は、勿論、提供するクラウドインフラのMidoStack。
このインフラはRackspaceNASA Amesの協力で始めたOpenStackがベースとなった日本発のディストリビューションである。OpenStackディストリビューションについては前回記事「OpenStackの進撃が始まった!」 で述べたように、もっとも活発なのはCitrixだ。これには買収されたCloud.comも含まれる。さらにUbuntuとInternapが続き、 Midokuraはこれらと戦略的にも製品的にも十二分に戦える。
特に、これを端的に示すのがMidoNetと呼ばれるネットワークの仮想化だ。
ネットワークの仮想化とは、物理層と論理層の間にネットワーク専用のハイパーバーザーが介在すると思えばよい。
この分野では米スタートアップのBig SwitchNiciraなどがいるが、MidoNetはISO Reference ModelのL2/L3、さらにファイヤーウォールやロードバランサーなどを対象とするL4もカバーする。競合する彼らはまだL2が基本でやっとL3に手が伸び始めたところだ。同社にとって、MidoNetこそがコアテクノロジーである。

仮想化ネットワーク(Virtualized Network)は多くのメリットを提供する。Web全盛の今日、幾つものIPアドレスも持ったアプリケーション群を新設データセンターやクラウドに移行することは容易ではない。しかし、この技術が確立されれば、アプリケーション移行もネットワーク変更も画期的に簡素化される。インタビューの最後に、加藤さんはぽつりと、「L2、も しくはL3も時期を見てオープンソースにしても良いかもしれない」とつぶやいた。
Virtualized Networkもそんな時代に入り始めているのだ。MidoNetを搭載した同社製品は近々、βとなる。並行して、大手iDCのBit Isleと組んだパフォーマンステストが進んでおり、全てが順調に推移すれば、そのままMidoStackベースのクラウドプロバイダーが登場する。

NECの挑戦-Programmable Flow=
NECもこの世界の開拓を目指している。
ことの始まりはStanford大学のNick McKeown教授が提唱したOpenFlowだ。
この考え方は、 これまでのISO Reference Modelを前提としながらも、実際のネットワーク構成を大きく簡素化し、これまでのスイッチやルーターをひとつの平面として扱う。つまり、従来のレイ ヤーを基本とする縦型のネットワーク構造に対して、OpenFlowではL1からL4までのレイヤーを論理的に一纏めにし、フローと呼ばれる概念で処理する。これを同社のProgrammble Flow製品でみると、実際にフローを処理するスイッチ部と、そのスイッチ部にどのようなフロー処理を行わせるかを指示するコントローラー部(制御)に分かれる。言い換えると、データのパケット転送にはOpenFlow対応のスイッチがあり、経路制御はサーバー上にソフトウェアを載せたアプライアンスの専用コント ローラーがある。
ここで要となるフローとは、各レイヤー毎のアドレス/タグの組み合わせによって、通信トラフィックを識別して特定するルールであり、このルールの取り扱いをOpenFlowではアクションと言う。これによってエンド・トゥ・エンドの通信が可能となる。

実際のところ、前述のMidokuraもネットワークの仮想化には、このOpenFlowを基本としている。つまり、同じOpenFlowの核となるコントロール部の開発において、NECはネットワーク機器に軸足を置き、Midokuraはそれをクラウドに組み込もうという試みである。NECはOenFlowメンバーの中で、先頭きってスイッチ&コントローラー開発を手がけてきた。その同社を追って、大手CiscoJuniper、さらにIBMやHP、Brocade、Dellなども動き出した。前述の米スタートアップでもコントローラー開発が進み、市場にはオープンソースのNoxもある。大手が本格参入すれば、市場再編は一触即発だ。その前に先行するNECやMidokuraの活躍が浸透すれば、大きなチャンスが生まれる。今年2月末、OpenFlowプロトコルは1.1となり、参加メンバーも40社を超えた。
いよいよ戦闘開始である。

◆  ピンチからチャンスへ-Telematicsの世界
ピンチをチャンスに切り替えるもうひとつの要素は、大きな発想を持ったユーザーかもしれない。特にグローバルビジネスの最前線にいる自動車会社への期待は大きい。彼らは色が染まっていない異業種だからだ。一時期、家電製品ネットワークが話題となったが人気先行で進まなかった。今、クラウドとの関連では自動車業界のテレマティックスが注目だ。これまで、テレマティックスは車載機上のカーナビを核とした交通情報提供として発達してきた。米国勢のGM OnStarFord SYNC、日本のHonda InterNaviToyota G-BOOKNissan CarWingsなどだ。
しかし今後は、スマートフォーンやPHV/EVの普及を睨んだ多様なサービスが中心となる。その核にクラウド利用が浮上する。第1弾として、本場米国ではスマホと車載機を連携させたGM-MyLink、Ford-MyFordを追加、欧州勢ではBMW Connect、SaaB IQonなども登場し始めた。

トヨタの挑戦=
北米トヨタではこのような状況を睨んで、北米市場で販売予定のPrius-V(日本名プリウスα)にEntuneを搭載する予定だ。北米トヨタはこれまでロードアシスタントとして、SafetyConnect(日 本ではG-BOOK)を提供してきた。Entuneはこれに追加する形となり、車載機がスマホ連携のマルチメディアシステムとなる。
インターネット接続のiPhoneと車載機はBluetoothで接続、実際のアプリはiPhoneで動く。しかし、iPhone同様のUIタッチスクリーンが車載機画面に現われるので、ドライバーには車載機にアプリがあるように見える。

このEntuneが発表されたのは今年始めのCES 2011だった。
Microsoftの検索エンジンPingも搭載予定で、これを使えば、最寄のコーヒーショップやガソリン/チャージスタンドを音声で探し出すことも出来る。次いで4月にはMicrosoftの開発中のスマートグリッドシステムMicrosoft Hohmを利用し、PHVやEV向けのクラウドを2015年から運用すると発表した。このシステムはWindows Azureがベースだ。さらに5月末、今度はSalesforce.comと提携、企業向けソシアルネットワークChatterを利用したToyota Friendを発表。このToyota FriendではPHVやEVとオーナー、それにサービスセンターが相互にチャットをしながら、バッテリーのチャージや点検などの的確な処理を目指す。稼働は早ければ来年からだ。



今回述べてきたように、日本のコンピュータ産業は構造的な問題を抱えている。
しかし、これをブレークする糸口が無いわけではない。トヨタに触発されて、MicrosoftやSalesforceも動き出した。同様に、自動車会社だけでなく、他産業でも追従の動きが見えてくれば面白い。また、 Midokuraのように、グローバルな視点で活動するベンチャーも見逃せない。環境の厳しい日本のベンチャーにとって、彼らが日本を抜け出す前に、改革が進む大手ITベンダーなどの支援が欲しい。
それはピンチを切り替える3つ目のチャンスでもある。


2011年7月27日水曜日

次世代クラウドコンピューティング(6)       
            -OpenStackの進撃が始まった!-

◆ プロジェクトの始まり
RackspaceNASA Amesが協力してオープンソースクラウド基盤のOpenStackプ ロジェクトが始まった。昨年7月19日のことである。瞬く間にメンバーが集まり、たった1年で80社となった。ことの始まりは2009年7月、Tim O'Reilly氏率いるOSCN(Open Source Convention)でのことだ。この会議でRackspaceは、これまで自社クラウド基盤のAPIを公開してきたが、ついにコードの公開に踏み切ると宣言。すぐにCloud Filesの書き換えが始まった。2010年にはCloud Serversも書き換えた。一方、この時期、NASAでもNebulaのオープンソース化が進んでいた。NebulaはOpen Governmentの資金で構築が始まったプロジェクトだ。Rackspaceのソースコードは昨年3月、Nebulaは5月にリリース。そしてすぐに両者のコードを組み合わせてク ラウド基盤を作る話が持ち上がった。
プロジェクトは瞬く間に動き出した。
NASAが提供するのはコンピュートのエンジンだ。NASAは当初、Eucalyptusのインフラ適用を試行したが、途中で断念してNovaプロジェクトをスタートさせた。提供するコンピュートエンジンは、このNovaで作成されたものである。NovaをリードしたのはAnso Labsだった。今年2月、RackspaceはそのAnso Labsを買収、OpenStackの強力なメンバーとして組み入れた。Rackspaceからはオブジェクトストレージのエンジンが提供され、昨年10月末にはOpenStackの最初のリリース(コードネーム:Austin)が始めて姿を現した。動き出してたった3ヶ月の早業だ。

以下、OpenStack主要メンバーの取り組みを紹介しよう。

 Cloud.comが選んだOpenStackとの共存
Cloud.comはSunのJVMエンジニアが立ち上げた会社だ。同社の開発したCloudStackとOpenStackは立場が似ている。共にクラウドインフラであり、オープンソースだ。
そして製品のリリース時期(CloudStackは2010年9月、OpenStackは同10月)もほぼ同じである。違いはCloud.comが独自開発してきたのに対し、OpenStackは前述のようにRackspaceとNASAの協力から産み落とされた。
両者は本来競合関係にあるはずだが、実際にはCloud.comはOpenStackのファンディングメンバーとして協調しながら開発を進めている。周知のようにOpenStackは仮想化技術としてXenやKVM、QEMUなどをサポートしているが、VMwareやMicrosoft Hyper-Vには対応していない。しかしCloud.comはOpenStack初期版のリリース直後、Microsoftとパートナーシップを進めると発表。内容はWindows Server Hyper-V上でCloudStackをサポートするためのテクニカルアシストをMicrosoftが提供するというものだ。この技術を利用して、Cloud.comはさらにHyper-V上でOpenStack をサポートするコードを開発、それをOpenStack コード・リポジトリーに加える計画だ。つまり間接的なサポートだが、結果、OpenStackがHyper-V上で動くことになる。
同社に関する詳細は<IaaSプラットフォームCloud.comの選択>を参照されたい。

◆ Citrixと協業するGigaSpces
GigaSpacesのクラウドはJavaSpaces仕様が特徴だ。
JavaのアプリケーションサーバーではJ2EEが有名だが、もうひとつJavaSpaces仕様がある。これは複数のJVM上のオブジェクトを共用する仕組みとして制定された。同社eXtreme Application Platform (XAP)上の個々のオブジェクトは、この仕様実装によって、どのJVM上にあろうとも自由にシステム内をアクセスすることが出来る。このメカニズムを使って、システム管理者やプログラムから、スタック化されたシステムをオブジェクトとして追加・削除する。つまり、負荷の増減に応じて、並行処理システムをオブジェクトに見立てて、数を変え、システムの総合的なダイナミズムを確保する。そして今年4月、GagaSpacesはCitrixが進めるOpenStackベースのインフラ上に、同社のアプリケーションサーバーXAPをPaaSの形で提供すると発表した。


◆ 始まったCitrixのProject OlympusとCloud.comの買収
Citrix SystemsがOpenStackベースのProject Olympusを 発表したのは今年5月末。同社はCloud.comと共にOpenStackのファンディングメンバーであり、共にオープンソースを基本としたサービスプロバイダー/企業向けのソリューションを目指している。このプロジェクトで注目すべきは、XenServer以外にMicrosoft Windows Hyper-VやVMware vSphereもサポートすることだ。
そして、同プロジェクトのEary Access Programの参加登録が始まったばかりの7月12日、CitrixはCloud.comを買収すると発表した。これは何を意味するのだろう。
発表では今後時間をかけて、Cloud.comのCloudStackと開発途上のOpenStackのギャップを埋めて行くという。想像できることは、 Project Olympusを手早く仕上げるためにCloud.comを買収したということだ。開発が進み既に市場実績のあるCloudStackとOpenStackを統合する。それよって、Cloud.comのユーザーを安全に新プラットフォームに誘導し、一方でOpenStackの機能強化したディストリビューションをProject Olympusを通して提供する。これが上手く行けば、念願のVMwareをキャッチアップできるかもしれない。
 
◆ UbuntuはEucalyptusからOpenStackへ切り替え
Ubuntuを主催するCanonical、今年5月のUbuntu Developer SummitでクラウドインフラをEucalyptusからOpenStackに切り替えると発表した。実際のところ、最新版のUbuntu 11.04(4月リリース)からOpenStackがテクニカルレビューとして登場していたので、この戦略変更は既定路線であった。理由はOpenStackの扱いやすさと対応範囲にある。そして今年10月には、次期版Ubuntu 11.10(Oneiric Ocelot)でOpenStackは正式にリリースの予定だ。こうしてCanonicalが2009年のUbuntu 9.04からサポートしてきたEucalyptusはあっけなく幕を閉じることになった。大きな流れの節目である。

◆ InternapからDual Hypervisor Stack
企業向けインターネットプロバイダーのInternap Network ServicesもOpenStackとVMwareによる2つのクラウドスタックを提供する予定だ。同社によると、多くの企業では既にVMwareが導入されており、一方でOpenStackへの期待も高い。このような環境から、同社では既にVMwareベースのプライベートクラウドをホスティングサービスとして提供し、今年始めからは、OpenStack利用のストレージクラウド(XipCloud elastic storage)を開始した。そして、今年下期にはOpenStackベースのパブリッククラウドを登場させる。これによって、ユーザー企業は異なる2つのHypervisorから選んで利用することが可能となる。

◆ Facebookの始めたOpenCompute
FacebookからもOpenStackに関する話題がある。OpenComputeだ。
このプロジェクトの目的は、Facebookの持つデータセンターノウハウと
クラウドインフラのOpenStackを統合して、クラウドセンター運営をハード/ソフトの両面から支援するものである。Facebook初のデータセンター建設はオレゴン州プラインビルで昨年初めから始まった。
2008年、Facebook設立当時の外部委託サーバー数は約1万台、現在では膨張するデータ量から4万台を超え、費用対効果を改善する狙いで自営センター建設に踏み出した。プラインビルは長方形のオレゴン州のほぼ中央の高度874mの内陸に位置し、省エネ型データセンターには欠かせない良好な気候がある。 新センターでは年間の60~70%は外気を取り入れた冷却方式となり、夏の間だけ、特別な冷却装置が稼働する。プロジェクトでは、この新設センターの図面や設置するサーバー仕様をメンバーと共有し、さらにOpenStackの参加を得て、新興国などで需要の多い効果的なクラウドデータセンター建設に役立てる。

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以上のように、OpenStackはたった1年で大きく飛躍を見せ始めた。
OpenStackへの期待、それはある意味ではっきりしている。
コンピュータ産業は成熟し、技術は民主化したというのに、クラウドではまたまた技術が乱立気味だ。このようなことはユーザーは望まない。インターネットが公共性の徹底で成功したように、クラウドでも同じような環境整備が望まれている。
OpenStackの飛躍によって、多くのクラウドが共通の基盤上でビジネスを展開することになれば、新たな道が拓ける。その上でのビジネス競争こそが、ユーザーの望むとこ ろだ。特に急展開が期待されるのは発展途上国市場だ。これらの国々では、携帯電話が膨大な設備投資を必要とする固定電話を飛び越して、一挙に普及 したように、企業のIT化において、クラウドがオンプレミスを抑えて、ブレークする可能性は極めて高い。その視点で見れば、Facebookの始めたOpenComputeは発展途上国のクラウドセンター建設に大いに役立つ。今回紹介した企業だけでなく、最近始まったPiston Cloudや日本のベンチャーなどから、今年後半、幾つかOpenStackベースのディストリビューションが登場する。

2011年7月8日金曜日

次世代クラウドコンピューティング(5)
                        -Apacheの憂鬱-

クラウド市場の活況と裏腹に標準化は進まない。
仮想化技術ではVMwareが先行、Xenが追い、さらにMicrosoft Hyper-Vが登場し、そしてLinux KVMも現れた。クラウドプロバイダーではAmazonが先行、RackspaceやSAVVIS、Terremark、GoGrid、Verizon、 続いてOpSource、Hosting.comなどが追う形となった。ここでAmazon、Rackspace、GoGridなどがXen採用組であ り、VMware採用組は、SAVVS、Terremark、Verizon、OpSourceなどである。仮想化技術が違えば、イメージファイル形式は 異なり、互換性はない。標準化としてはDMTFが制定したOVF(Open Virtualization Format)があるが、これとてラッパーであり、中身を解いて、変換しなければ相互運用ができない。
さらにクラウドプラットフォーム分野を見る と、Cloud.com、Enomaly、Eucalyptus、Nimbus、OpenNebula、OpenStack、Nimbusなどがある。 ユーザー企業はこれらのプラットフォームを利用してプライベートクラウドを構築し、加えて複数のパブリッククラウドと連携しなければいけない時代となっ た。まさにクラウドの世界は乱立状態だ。

◆ 理想と現実
Apache Software Foundationのメンバーと話す機会があった。
Apache コミュニティーの存在意義は主要なソフトウェア領域において、ベンダーロックインを解き離すために、Apache Licenseによるオープンソース化を実行し、利用者に使用と改造の自由を与えることにある。しかしクラウド分野は、ユーザーが望まない乱立状態が現実 だ。
このような状況では、Apacheが得意とする大型プロジェクトによるプラットフォーム開発の余地は無い。それよりも状況を緩和し、これらの連携を円滑化する方が賢明だ。
Apacheにはこのためのプロジェクトが3つある。各クラウドプロバイダーやインフラソフトは運用管理のために独自のAPIを提供している。これらバラバラなAPIを共通化することがプロジェクトの目的だ。

◆ LibcloudとCloudkick
Pythonのライブラリーとして共通API化を進めるLibcloudの歴史は古い。
2009 年11月にApacheのインキュベーションステージ入りし、今年5月25日、TLP (Top Level Project)に昇格した。一番の有望株である。このプロジェクトはAlex Polvi氏がリードし、Dan Di Spaltro氏らが参加して始まった。この2人はCloudkickのファウンダーでもある。同社はLibcloud 技術を使い、複数クラウド上で稼働する仮想マシンモニタリングと管理サービスをSaaSとして提供している。Libcloudがカバーするクラウドは、 Amazon、Dreamhost、GoGrid、IBM Cloud、OpSource、Rackspaceなど、クラウドプラットフォームではEucalyptus、OpenNebula、OpenStack など合計20にのぼる。LibcloudのAPIを利用することで、デベロッパーは複数クラウドサービスを共通に管理が可能となった。
プロジェクトは、今後、クラウド上の仮想マシン管理だけでなく、ストレージや負荷分散などにも焦点を当てる予定だ。そして、昨年末、この注目のCloudkickをRackspaceが買収した。


 DeltaCloudとRed Hat
DeltacloudはRed Hatが2009年9月に始めたプロジェクトである。
提 供するAPIはRESTベースでセルフサービスポータルから複数の異なるクラウド上の仮想マシンを管理できる。昨年5月、同プロジェクトはRed HatからApacheに移管されインキュベーションステージ入りした。現在のところ、DeltaCloudがカバーするのはAmazon、IBM Cloud、OpenNebula、Rackspace、Terremarkなど、そして忘れてはならないのはRHEV-M(Red Hat Enterprise Virtualization Manager)をサポートしていることだ。Red Hatが仮想化技術でKVMの正式実装を発表したのは2009年夏のこと、翌年11月にRHEL 6が出荷された。Red Hatにとって、この時期はやっとKVMを実装し、先行するVMwareやCitrix/Xenを追撃する体制が出来た頃だ。DeltaCloudは Red Hatが整備を進めるクラウド基盤と共に追撃の重要な武器である。2010年8月、同社はDeltacloudをDMTF (Distributed Management Task Force)に標準化として申請し、Working Groupに参加すると発表した。この辺りの事情は<共通APIでクラウド連携を目指すDeltaCloud>に詳しく書いたので参照されたい。


 Nuvemプロジェクト
Nuvemプロジェクトは3つの中では一番若く、昨年6月、インキュベーション入りした。
目的はLibcloudやDeltacloudのように外部から持ち込まれたものではなく、Apacheの独自性発揮にある。プロジェクトはSOAの実装仕様SCA(Service Component Architecture)準拠Apache Tuscanyのサンドボックスとして開発中だ。当面の目標はAmazonやGoolge App Engine、Microsoft Azureとの連携だ。

この流れには夢がある。
SOAの実装ではSunが主導していたJBI(Java Business Integration)、そしてIBMなどのSCAと2つの流れがあるが、はっきり言ってSCAが優勢だ。これらはクラウドと共存する。既存システムは 徐々にだが着実にクラウドに移行し、一方でSCA準拠のビジネスプロセス開発が進む。これは企業ユーザーにとって朗報である。一般企業やISVによって開 発されたSOAコンポーネントは、いずれ、クラウド上に登場し、コードやプロセスの統合が可能となるだろう。上手く行けば、この次世代シリーズ(2)で述 べたプロセス拡張型仮想マシンに最適な組み合わせになるかもしれない。

Apacheの憂鬱はユーザーと共有している。
過去、多くのコンピュータメーカーが独自技術を競い合い、ユーザーは混乱した。
しかし時間の経過と共にそれらは収斂し、さらに共通化が進んでLinuxが登場した。
これらは時代の要請であり、我われが既に学習してきたことだ。
だというのに、クラウドはまたまた乱立だ。Apacheの悩みはここにある。
乱立クラウドの自然淘汰までには時間がかかる。
だとすれば、当面はこれらの相互運用の円滑化こそが大事だ。
そう考えるApacheの方針は将来を見据えている。

2011年6月15日水曜日

次世代クラウドコンピューティング(4)      
                  -拡張型仮想マシンの時代へ-

この次世代クラウドシリーズでは ①ハード機能連携型仮想マシン、②プロセス拡張型仮想マシン、③クラウド型ユニバーサルDB について、ここまで述べてきた。これは表現を変えると、仮想マシンの<ハードウエア強化>、<ソフトウェア強化>、そして<データベース強化>についての考察である。今回はこれらの推論のまとめをしようと思う。

◆ 仮想 マシンだからこそ出来るハード能力の強化
GPUやHPCをクラウド強化機能として提供するプロバイダーが出てきたことは述べた。
これらを利用すれば高性能WSなどを持たずにエンジニアリングの仕事ができる。
さらにハード機能強化の上にソフトウェアを搭載するベンダーも現れた。AutoDeskだ。 同社ではクラウド上でGPUを搭載したHPC利用のProject CumulusとProject Centaurの試行を昨春からスタートさせている。
Cumulusは同社のプラスティック部品射出成形シミュレーションのMoldflowをクラウド上で実行させる。もうひとつのCentaurは、製作の前工程としての製造工程設計に伴うビジュアライゼーションやシミュレーションを行うもので、同社製品のInventorがクラウド上で稼働すると思えばよい。AutoDeskのビジネスモデルは変わり始めつつある。
これまでユーザーはWSを購入し、高価なCAEソフトウエアをライセンスしてきた。
しかし、クラウドサービスが軌道にのれば、もうその必要はなく、通常のPCで構わない。AutoDesk製品はクラウド上で動き、使用量ベースのユティリティー課金となる。


◆ ソフトの再利用からプロセス連携へ
ソフトウエア開発の分野も変わる。
ク ラウド上でアジャイル開発を進めるJenkinsCloudBeesは活況だ。
アジャイルはプロジェクト運営論だが、どのように開発するかという方法論と両輪となる。
開発方法論の核のひとつは、一度作ったソフトウェアをどのように再利用するかだ。これは永遠のテーマでもある。そのための技術がSOA(Service Oriented Architecture)だった。そのSOAの考え方に近似し、クラウドとなって登場したのがAmazonのブロック方式である。このブロック結合は、後にAmazon EvangelistのJeff Barr氏によって、COA(Cloud Oriented Architecture)と名付けられた。

SOAとCOAの違いは、SOAがあくまでも物理的なソフトウェアモジュールをベースとしているのに対し、COAはプロセスをベースとした連携である。つまり、処理(実行)となるプロセスをつなぎ合わせることで、システム開発の短縮と実行の簡素化を図る。
クラウドならではの仕組みだ。このような動きは COAだけでなく、複数のBIベンダーなどで活発なことは述べた。目的は、開発の効率化とアプリケションの柔軟性の追求である。
(参照:アジャイル開発クラウドのCloudBees

◆ ソシアルネットワーク型データベース
データベース分野でも新たな変化が始まっている。
政府や自治体などの情報開示が進み、これらのクラウド公開が米国ではかなり進んだ。
そして何よりも肝心なことは、このデータを加工して表示するツールが提供されていることである。これによって、一般ユーザーでもインタラクティブで好みの加工ができる。さらにAPIやデータベースのダウンロード機能などの提供で、デベロッパーは自分のシステムの中に組み込むことも可能となった。それらのアプリはスマートフォン同様、マーケットプレイスに登録されて、一般ユーザーにも開放されている。データ ベースの世界でこのようなことはこれまで無かったことだ。ソシアルネットワーク型データベースの登場である。


◆ これまでの仮想マシンとは何だったのか
振り返ってみると、これまでの仮想マシンとは何だったのだろうか。
物理マシンが無くなり、それはクラウドに移った。インターネット接続で仕事をする通常のクライアントから見れば、相手のサーバーがどこにあっても構わない。しかし、サーバーがクラウドに移ったことで、IT部門の役割には大きな変化が起きた。開発はオンサイトで行い、それをクラウドの仮想マシンに移して実行する。仮想マシンのセットアップもインターネット越しに行わなければならず、遅くて煩わしい。代替案としてソフトウェアのアプライ アンス化が進んだ。それでも面倒くさい。
システムの運用管理も複雑になった。プライベートクラウドでは、物理マシンと仮想マシンの両方の管理が必要だ。これまでの運用管理システムに加え、仮想化技術ベンダーから提供されるツールを天才的なテクニックで使いこなさなければいけない。この煩雑さと初期投資のリ スク回避から、多くの企業はパブリッククラウドをトライアルに選んだ。しかし、仮想マシン自身の管理は利用部門の仕事となった。
これらと引き 換えに得たものは何か。
ROI(Return of Investment)だ。つまり、費用対効果がこれまでより優れている。
噛み砕く と、クラウド利用ではハード/ソフト購入などのIT初期投資が殆どない。導入に要する時間も大きく短縮された。引き換えに、そのしわ寄せの殆どはIT部門に来た。この現象をコンピュータ産業全体で見れば、近視眼的には、仮想化技術とパブリッククラウドなどの集約性向上で、産業全体はやや圧縮されたと言って良いだろう。
中長期的な視野に立てば、コンピュータ利用が廉価でより簡便化されて大きく進む。
ここまでが現状である。

◆  拡張型仮想マシンの時代へ
しかし、大事なことはもっと先を見ることである。
これまでの多くの努力で、仮想マシンの<ハードウエア強化>、<ソフトウェア強化>、そして<データベース強化>は進んだ。これらを統合すれば、新しい世界が拓ける。
これまで高価で手が出なかったWSも仮想マシンなら簡単に増強が可能だ。HPCだってクラウドで借りればよい。今後はもっと色々なハードウェア機能を提供するサービスプロバイダーが現れるに違いない。ビジネスプロセンスも同様だ。APIを介して、好きなプロ セスを統合できる時代が来る。そして、データベースも一部ではあるが、ソシアル化が加速する。


そろそろ、第一段階は卒業の時期である。
時代はクラウドだからこそ出来る「拡張型仮想マシンの時代へ」に差し掛かっている。その先の自立型仮想マシンの議論も散見されはじめた。第一段階のクラウドは煎じ詰めればROIが全てだったかもしれない。しかし、コミュニティーのデベロッパーや企業で働く多くのエンジニアはその先にある何かを感じ取っていた。だからこそ、多大な努力が積み上げられてきた。これからがクラウドの本領発揮である。

2011年6月2日木曜日

次世代クラウドコンピューティング(3)  
               -クラウド型ユニバーサルDB-    

シリーズ1回目はGPUやHPCなどを仮想マシンに連携する方法、2回目は外部プロセス連携について述べた。今回はクラウド型ユニバーサルデータベースについて話そう。

◆ 連邦政府が始めた情報公開サイト (Data.gov)
Data.govは連邦政府CIOのVivek Kundra氏が就任後、実行した3つ(Apps.gov、Data.gov、 Federal TI Dashboard)のうちの1つだ。目的は連邦政府や州政府などが持つ膨大な情報を多面的に開示して利用してもらうこと。Data.govの構成は、①生データカタログ(Raw Data Catalog)、②分析ツールカタログ(Tool Catalog)、③地域別データカタログ(Geo Data Catalog)からなる。ユーザーとなる市民や団体は、目的のデータをカタログから探し出し、インタラクティブでサーチ/ソート/フィルタリング/アナライズなどを施して、データをグラフ化したり、地図とマッピングして、より直截的に見ることができる。
次にデベロッパー向けの対応では、多様なフォーマットへのデータダウンロードが出来るし、提供されるAPIを使い、システムの一部として組み込むことが可能だ。こうして出来上がったアプリケーションは多くの人に使ってもらうためData.gov上に登録できる。現在、政府内部で作られたものが900個以上、民間が開発したものが200個以上利用可能だ。下図の事例FlyOnTime.usは、旅行者向けの航空機発着情報サイトである。このサイトで利用されているデータには ①運輸統計局のAirline Performance 、②連邦航空局のAirport Conditions、③ 国立海洋大気圏局のHistorical Weather Reports、④ナショナルウェザーサービスのCurrent Weather Conditions、さらに ⑤サイト利用者から飛行場セキュリティーでの所用時間をスマートフォンやtwitterで知らせてもらうAirport Security Line Wait Timesなどがある。

Data.gov には現在40万件近いデータが登録されている。
これには連邦政府の全省庁の172部局からデータが提供され、州では初期のワシントンDCやカリフォルニア州、ユタ州などから段階的に広がり、現在では29 州、都市ではニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ボストン、アトランタなど11都市、国際間ではイギリス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、 ニュージーランド、ノルウェイーなど16ヵ国、さらに国連が参加各国の協力のもとに集めた総合データサイトundataや、欧州連合のEuropean Environmental Agencyも参加している。参考のために連邦政府の主だったデータは以下のようなものがある。

   • Airline Performance航空)
   •
National Weather Services(気象)
   •
Patent Grant Bibliographic Data特許)
   •
Residential Energy Consumptionエネルギー消費)
   •
Census Data国勢調査)
   •
Toxics Release Inventory有毒排出)
   •
U.S.A. Spending Contracts and Purchases政府購買)
   •
U.S. Geographic Data(地理)
   • Crime in the U.S.犯罪)
   •
Medicare Medicaid Statistical Supplement(医療)
   • Census of Agriculture(農業)
   •
Open Government Datasets(オープンガバメント)など

◆ Windows Azureのデータマーケットプレイス (DataMarket) 
MicrosoftからもWindows AzureのサービスとしてDataMarketが提供されている。
しかし、こちらはパブリックな公開データもあるが、民間企業の持つデータベー スも提供され、それらのくは有償である。DBカテゴリーには ①ビジネス&ファイナンス、② 人口統計、③エンターテイメント&メディア、④ヘルス関連、⑤位置情報サービス、⑥ニュース&イベント、⑦不動産、⑧小売業、⑨気象などがある。ユーザーは必要とするデータベースを探し出し、それをMicrosoft OfficeやPowerPivotに展開して、より効果的に加工処理することが出来る。さらにVisual Studioにダウンロードすれば、C#によるアプリケーションに組み上げたり、Windows Phone 7対応にすることも可能だ。以下はデータの一部である。

   • Axiom InfoBase X-Geo地理)
   •CCH CorpSystem(売上税)  
   • Digital Map地理)
   • Dun & Bradstreet(企業情報)
   • Energy Statistic Database UN国連エネルギー統計)
   •
European Greenhouse Gas Emissions(欧州温室ガス)
   •StockViz(インド金融市場)
   •CCH CorpSystem(売上税)  
   •
Practice Fusion(メディカル)
   •Super MicroCast(気象情報)
   •Zillow(不動産)など

◆ アマゾンのパブリックデータセット (Public Data Sets on AWS)
Amazonの場合は、公に供する詳細なデータベー スを無償で提供している。特に有名なのはヒトゲノム・データベースEnsemblプロジェクトのミラーリングだ。もうひとつバイオ関連では、遺伝子や発現配列標識で有名なUniGeneも提供されている。また、米国勢調査ではCensus 2000など過去の調査も含めた詳細なデータベースが利用できるし、世界最大の無償利用のデータベースFreebaseもある。これらのデータベースは提供側の維持管理もさりながら、膨大なアクセスに耐えるシステム提供が大変だ。研究者やデベロッパーは、これらホスティングデーターベースのスナップショットをAWSに取り込んで利用する。利用可能なDBは以下の通り。

  
 • Freebase Data Dump(オープンDB
   • Human Genomeヒトゲノム)
   •
Census国勢調査)
   •
UniGeneバイオテック)

◆ 飛び立つユニバーサルDB
ここで紹介した3つは、単なるデータベースの公開とは違う。
これらのデータベースはユーザーがインタラクティブで活用したり、デベロッパーのプログラムに組み込むことが前提だ。そのためのダウンロード手順やツール、APIなどが整備されている。Data.govでは連邦や州政府、地方自治体、さらに多様な公益団体の データベースを開放し、Amazonではパブリックドメインのデータベースを手がける。これらを利用すれば、これまでにないアプリケーションが出来上がる。
さらに注目すべきはMicrosoftのDataMarketだ。
民間データベースを有償で提供する試みは素晴らしい。データベースの営利サービスはもとより、一般企業においても社内利用のデータを公共の益に照らし合わせて、積極的に公開する時代が来るだろう。
プログラムのオープンソース化で時代が変わったように、データベースのオープン化は分析業務の性能を格段に向上させる。
こうして、クラウド型データベースはユニバーサルな世界に飛びたった。