2016年7月13日水曜日

AutoTech(8) Google Carの狙い(1)! 
     -Android Autoがカーナビ市場に挑戦!-

オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)の開発競争は熾烈である。米自動車メーカーではFordが先行し、そしてUberと協業する。GMはCruise Automationを買収してLyftと組むこととなった。気になるのは、これまで大きな注目を集めてきたGoogle Carだ。このオートノマスビークルはこの先どのように展開するのだろうか。GoogleがTeslaのように自ら車を作ることはないだろう。しかし、彼らの戦略によって世界が変わることだけは確かだ。今回はあくまでも、私見として、Google Carの今後を推測して見ようと思う。

=地図情報の戦い!Google Maps .vs. HERE=
オートノマスビークルにとって地図情報は命綱と言っても良い。
地図がカーナビ(英語ではHead Unit、以下HU)のナビゲーションに重要なのは言うまでもないが、地図上には建造物やショップ、ガソリンスタンドなど多様な情報が示されて便利このうえない。イスラエルのスタートアップで人気のコミュニティー交通情報サイトWazeもGoogle Mapsに組み込まれた。これを使えば、取締り情報や道路の込み具合などコミュニティーメンバーが提供した情報をもとにベストなルート選択が出来る。そして地図情報のもうひとつの重要な役割が自動運転だ。地図は今や3Dマップとなり、HD(High Definition)の航空写真やストリートビューを付帯する。LiDARで得た認識情報を高度な3Dマップに重ね合わせれば、どの道路のどのレーンを走っているのか、さらにその先のレーン状態も分かる。オートノマスビークルは、夜間でも、雨や雪などの悪天候でも自分の位置を正確に見極めなくてはいけない。そのための重要な道しるべが進化した3Dマップだ。Googleはこの地図分野のトップランナーである。つまり各社がオートノマスビークルを開発しても、このままではGoogleに牛耳られてしまう。対抗策として、昨年8月、Nokiaの地図情報部門HEREをDimlar、BMW、Audiの3社が$3B(約3,000億円)で買収して、独立会社として運営し、均等に情報提供を行うことが発表された。日経の報道ではToyotaにも出資の打診があったが断った模様である。

=Android Autoはカーナビ(HU)の標準を目指す!=
GoogleはこのGoogle Mapsを強力な武器に仕上げようと考えている。
核となるのはAndroid Autoだ。流れを追ってみよう。2014年1月、Googleの主導で、Audi、GM、Honda、Hyundaiの自動車メーカー4社、そしてGPUのNVIDIAが賛同してOpen Automotive Allianceが動き出した。目的はAndroidスマホの成功モデルを自動車にも持ち込み、車にもAndroidプラットフォームを適用しようというものである。同年3月、Appleからまず車載InfotainmentCarPlayが登場し、5月のGoogle I/O 2014では、アライアンスの成果としてAndroid Autoが姿を現した。CarPlayはiPhoneを使い、Android AutoはAndroid、共にスマホとHU(カーナビ)を連携させるテレマティックスである。この2つが発表されると、HU各社は、これらに淘汰され、彼等自身は単なるハードウェアの提供屋になるのではないかと危惧した。それから2年、それは現実のものになりつつある。今年のGoogle I/OでAndroid Autoは強化された。狙いは、優位に立つMapsを使い、より完全で標準なナビゲーションシステムに仕立てることである。以下のビデオを見ると、操作性の向上や3rdパーティーアプリの統合、各種のカスタマイズ方法などが解る。実際の画面(下)の下段には、左から、Maps、TEL、インフォメーション、ミュージック、ダイアグノスティックの5つのボタンがある。Mapsは勿論、ナビゲーション用だ。表示は運転の安全性を考慮してスマホより簡素化された。表示マップ上の建物などをタップすれば、詳しい情報を知ったり、電話もかけられる。インフォメーションボタンは現在聞いている音楽や家までの距離、天気予報などをタイル表示し、次のステップへタップもできる。音楽を聞くアプリやインターネットラジオを選び、プレイさせるにはミュージックボタン。ダイアグノスティックボタンはメーカー対応だが、タイヤの空気圧などの診断のためだ。

 
 
=カーナビ(HU)はガラパゴス携帯と同じだ!=
国によってHUの事情は異なる。まず、Android Autoが狙うのは米国市場の標準となることだ。これが出来れば、主導権を奪うことが出来る。現在のHUの仕様を見ると、OSはLinuxやQNXWindows Embedded、Androidなど多様だ。アプリも独自のものや3rdパーティーものが彼らの判断で組み込まれ、ナビゲーションに至っては、そのインプリも様々である。しかも、車の純正品では、全ての仕様の決定権は自動車メーカーが持ち、市販品(英語ではAfter Market)ではHU各社が持っている。まさに携帯メーカーと大手のキャリアが共同で作り上げてきた日本のガラパゴス携帯と同じ構図だ。Googleの戦略が功を奏し、Android Autoが標準プラットフォームとなれば、その上でメーカーの独自アプリや3rdパーティーアプリが統合される。こうなれば、Androidスマホと同様、そのメリットは計り知れない。そして、HUメーカー各社はAndroid Auto仕様のハードウェアの進化にのみ、しのぎを削ることになる。

=ToyotaとBMWは積極的ではない?=
この流れを作り出したOpen Automotive Alliance(OAA)は、Androidスマホを成功させたOpen Handset Allianceがモデルである。OAAは2014年始めGoogleを入れてたった6社でスタートした。それから半年後のGoogle I/O 2014で29パートナー(ブランド)となり、現在は66パートナーと急増している。

◆ カーナビ(HU)メーカーは殆どが参加
HUを主体としたテクノロジーパートナーはGoogleを含めて以下の20社。この中で日本のHUメーカーは7社。他はHarman(米)、LG(韓)、Parott(仏)の3社だけ。現在のところ、市場では日本勢に圧倒的な存在感がある。課題は今後Android Autoを全面的に採用するかである。そうなれば市場構造が大きく変わる公算が大だ。

Alpine、Clarion、Cloudcar(Self Driving Solution)、Continental(Tire)、Delphi(Parts)、Denso(HU & Parts)、Freescale(Semiconductors)、Fujitsu Ten、Harman、JVCKenwood、LG、MediaTek(Semiconductors)、Magneti Marelli(Parts)、NVIDIA(Semiconductors)、Panasonic、Parott、Pioneer、RENESAS(Semiconductors)、Visteon(Parts)
()内は当該企業の製品分野を示す。()無しはHU専業企業

◆ 自動車メーカーも勢ぞろい
自動車メーカーもOAAの参加には積極的だ。
現時点でメーカーの参加を車のブランドでカウントすると46となる。実際には1社で複数ブランドを持つので、社数はこれよりも少ない。世界の殆どの自動車がOAAに名を連ねている。ここに名前がないのはToyota(Toyota、Lexus)とBMW(BMW、Mini)だけだ。BMWがAppleと特別な関係にあることは知っている。OAAには加盟していないものの、BMWは対外的に、Apple CarPlayが先(今年後半出荷)で、次にAndroid Autoをサポートすると報道されている。しかし、OAAには直系のDensoが参加しているけれど、気になるのはToyotaだ。Goolgeによれば、Android Autoは、7月13日から日本にも投入され、当初はAudi、Honda、Nissan、Maserati、Panasonic、VWが対応するという。

Abarth、Acura、Alfaromeo、Audi、Bentley、Buick、Cadillac、Chevrolet、Chrysler、Citroen、Dodge、Driveds、Fiat、Ford、Genesis、GMC、Holden、Honda、Hyundai、Infiniti、Jaguar、Jeep、KIA、Lamborghini、Landrover、Lincoln、Mahindra、Maserati、Mazda、Mersedes-Benz、Mitsubishi、Nissan、Opel、Peugeot、Ramtrucks、Renault、Renaultsamsungm、SEAT、Skoda、SsangYong、Subaru、Suzuki、Tata、Vauxhall、Volkswagen、Volvo。

以上は冒頭お断りしたようにあくまでも私見である。
昨年、Android Autoには、送信されるデータにプライバシーの不安があるという声があった。Googleはこれに関して公式に否定しているが、他にも課題があるのかもしれない。HUの主導権を得たいGoogle。鍵を握るのは純正品の仕様決定権を持つ自動車メーカーがどう動くかである。

2016年7月3日日曜日

AutoTech(7) Local MotorsからOlli登場!
        -IBM Watosonがバスガイド-

6月16日、3Dプリンターカー(Printed Car)のLocal MotorsChandler, AZ)オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)の12人乗りコミュニティーバスOlliを発表した。場所はワシントンDCからチェサピーク湾に流れ込むポトマック川沿いのメリーランド州National Harborここの市内観光を兼ねたコミュニティーバスとして活躍の予定だ。このOlliはEV(Electric Vehicle-電気自動車)仕様だが、注目される3Dプリンターカーとはどのようなものだろうか。

=IBM Watsonがガイドする!=
このOlliにはIBM Watsonが利用されている。とは言っても、Watsonが自動運転のAIエンジンとして使われているのではない。バスガイドとして、乗客との行先案内などの会話に適用されている。つまり、ユーザーエクスペリエンスの向上だ。具体的には、Watson IoTとして、Olliの車体に埋め込まれた30以上のセンサー情報を分析しながら学習する。実際の会話は、Watson APIで音声のテキスト化(Speech to Text)や逆のテキストの音声化(Text to Speech)、さらに自然言語のクラス分類化(Natural Language Classifier)や固有表現の抽出(Entity Extraction)などを実行しながら、会話を進めるというわけである。

=Local Motorsという会社!=
Local Motorsの設立は2007年。本社は当初ボストンだったが、その後、現在のアリゾナ州に移った。車の製造拠点はテネシー州のKnoxville、近くに3Dプリンターの研究に造詣の深いOak Ridge National Labがあるからだ。同社のファウンダー兼CEOはJohn Rogers氏。氏はHarvard Business Schoolの出身で、6年間のUS Marineでの経験もある。この会社のオペレーションは、原則、クラウドファンディングのようなものである。そして、プロジェクトで作るものは3Dプリンターを使った各種の自動車だ。3Dプリンターを使えば簡単に物作りができる。そこで、3Dデータから車体のスケルトン部品を作り、組み立て、これにボディーカバーを被せれば出来上がり。エンジンやEV用モーターなどの主要部品は外部から調達する。なぜこのような方法で自動車を作るのか。現在の大量生産方式の自動車産業はコミュニティーバスや特殊レジャーカーのような少量多種製造には向かない。そこがこの会社の狙いである。小型のマイクロファクトリーと呼ぶ組み立て工場を全米に数ヶ所開設して、新規需要の迅速な対応に応える予定だ。新規開発のプロジェクトには、同社の社員以外にクラウドでメンバーを募集し、アイディアを出してもらう。それらの提案を共同で検討して最終案を決定する。原案が決まればプロトタイプを制作して、投資を募るという手順だ。そして開発に入る。一緒に作業した外部参加メンバーには、ロイヤリティ収入が入る仕組みだ。さて、Olliの場合は、開発構想から約1年、実際の制作はたった3ヶ月だったという。このバスの前後にはVelodyne製のLiDARとカメラが取り付けられている。Olliの設計上の最高速度は時速25マイル(40キロ)。走るのは限定されたエリア内だけ。つまり、オートノマスビークルとしての技術レベルは高くはない。しかし、実用性は高く、年内にはマイアミのデイド郡やラスベガスでも走り始めるという。ただ、どうやってLocal MotorsがOlliのAIを開発したのかは今のところ謎のままである。
 
 

2016年7月1日金曜日

AutoTech(6) そしてクラウドに繋がる!
  -ライドシェアリング(Lyftの場合、そしてGettは?)-2-

車は所有する時代から、利用する時代に変わり始めた。
ライドシェアの配車サービスがこの流れをけん引している。そして、彼らと自動車メーカーの協業が動き出した。前回紹介したUberの場合はFordと組んだ。Reutersによると、オートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車-Self Driving Car)開発の噂のあるAppleも今年5月、中国のライドシェアリングDidi Chuxingに$1B(約1,100億円)という巨額投資を行った。今回紹介するLyftの相手はGMである。

=LyftにはGMが$500Mを投資!=
Lyftの創業は2012年、本社はUberと同じサンフランシスコだ。何故だろう。それは、この地域がRide Sharingに馴染んでいるからである。ライドシェアは最近始まったことではない。カリフォルニア州だけではないが、特にベイエリアのように、人口密度が高く、多くの人々が働く地域では、フリーウェイの乗り合い自動車レーンCar Poolが発達している。日本のバスレーンのようなもので、決められた時間帯は2人以上の乗車でなければ走れない。シリコンバレーの工場の操業は朝6時。移民系の従業員は車を融通し合って、早朝、フリーウェイの専用カープールレーンを飛ばしてやってくる。飛行場には乗り合いの廉価なシャトルバスもあり、同じ方向の客を乗せて、次々に下ろしながら目的地に送ってくれる。こうした背景から、ライドシェアリングとスマホが融合するのは自然の流れだった。後発のLyftの狙いは2つ。利用者にはUberより低額で便利であること。ドライバーにはUberより稼げることだ。既存のタクシー料金の殆どはドライバーの人件費だという。これまでのタクシーより安く利用が出来て、ドライバーには自由な時間に自分の車で稼いでもらう。実際のところ、契約したドライバーの多くがUberとLyftを掛け持ちしていると聞く。そしてLyftの取る手数料はUberよりやや低めの設定だ。
さてUberとFordの協業を横目に、LyftとGMの新しい関係が始まった。今年1月のCES 2016でGM CEOのMary Barra女史が$500M(約550億円)を投資すると発表。続いて3月にはExpress Drive Programをリリースした。このプログラムはLyftのドライバーに向けたもので、当初はシカゴ、その後はボストンやワシントンDCなどに拡大され、車の保険やメンテナンスを含めて週$99(約1万円)でGMのレンタカーが借りられる。これでアルバイトをしてくれというわけである。さらにドライバーが週65回以上、Lyftのお客を乗せればGMのレンターカー代はタダとなる。そして5月10日、ついにオートノマスビークルに関するLyft提携が発表された。適用車種は本年下期出荷のGM Chevrolet Boltだ。少しややこしいがGMには2011年モデルとして発表されたChevrolet Voltという車種がある。エンジンとモーターを積んだHybrid EV(Electric Vechicle-電気自動車)だが、日本でおなじみのハイブリッドと違い、エンジンはバッテリー充電のみに使い、車自体はモーターだけで動く。つまり基本はEVだ。この技術はその後Cadillac ELRに引き継がれたが、今は生産停止である。今回、Lyftに提供するBoltはこれらの流れの受けながら、しかし完全なEV車として登場する。Wall Street Journalによると、Boltの自動運転技術の詳細は検討中とのことだが、想像できるのは、3月にGMが買収したCruise Automationの技術の採用だ。そして、新型Boltによるオートノマスビークルのテスト地は、Uberがピッツバーグなら、Lyftは本社があり、配車サービスの発祥の地のサンフランシスコとなるかもしれない。

=欧州Gettの米上陸、VWが$300M投資で傘下に!=
もう1社、気になる会社がある。ヨーロッパを中心にライドシェアサービスを展開してきたイスラエル生まれのGettだ。2009年から開発が始まり、当時の社名はGetTaxi。その後、2011年にはテルアビブで試行が始まり、すぐにロンドンで正式にローンチして、モスクワへ、そして2012年ニューヨークに上陸し、本社もニューヨークに移設した。このGettからビッグニュースが飛び出した。5月末、独Volkswargen(以下、VW)が$300M(約330億円)を投資したのである。同社への投資を見ると、創設資金となった2010年のシーズは$2M、2011年はSeries-Aで$7M、以降2014年のSeries-Dまでの累計は$200M、昨年は$20M追加され、総額$220Mとなった。今回の投資額はこれを大きく上回る。つまり、実質は買収による子会社化である。勿論、VWグループもオートノマスビークルには大きな関心を寄せている。今年3月のGeneva Motor ShowでVW CEOのMatthias Müller氏は、自動運転車のようなデジタル車開発を加速するため、ドイツ、米国、中国にある3ヶ所の開発センター投資を増やすと説明し、2025年までに何とか出荷したいとの意欲を示した。
=そしてクラウドに繋がる!=
UberやLyftなどの配車サービスはすでに多くの顧客を獲得し始めた。
彼らが目指す次なる戦略は、オートノマスビークルの導入だ。それによって一段と利用料金の引き下げを狙う。こうして普及競争は、Uberを筆頭とするライドシェアリング会社とGoogleなどのIT企業、さらにはGMやFordなどのメーカーが三つ巴の様相となってきた。各グループ共何としても主導権を握りたい。Uberは独自技術の付加を模索し、GoogleはAIを武器にFordは実際の車づくりでのアドバンテージを主張する。IT企業はGoogleだけではない。噂のAppleやLocal Mortorsと組んでIBMはWatosonを提供(関連記事はここ)し、さらにはMicrosoftだって何らかの参入を狙っている。実用化はもう足元までやって来た。最後の壁は、LiDARによる全天候型の認識技術と高度なDeep Learningを駆使したAIだ。高性能なLiDARは何万というスポットを広角度で高速にスキャンし、車の目となる。視界から見えるものを確実にし、安全な運転に結びつけるには、LiDARだけでなく、外部からの天気や交通情報などの取り込みが必要となる。出来ればその路線を走るドライバーの運転傾向や事故情報も欲しい。これらをクラウドから取り込んでAIで処理し、その結果はクラウドに戻す。こうして、Cloud Connected Carは、データ蓄積と学習を繰り返しながら、真の自律システムへと進化する。

2016年6月15日水曜日

AutoTech(5) 所有する車から利用する車へ!
      -ライドシェアリング(Uberの場合)-1-

ここまで自動運転車/オートノマスビークル(Autonomous Vehicle)について見てきた。今回(Uberの場合)から2回(次回はLyftなど)、最近ニュースの多い配車サービス/ライドシェアリングRide Sharingについて考えてみようと思う。

配車サービスのインパクト
最近のThe Economistの記事によると、1990年代のドットコムバブル華やかなりし頃、Ford CEOだったJacques Nasser氏は「車の組み立てなどの仕事は外注化し、インターネット時代にふさわしい新しいビジネスモデルのモビリティーカンパニーを目指す」と宣言した。氏がモビリティーカンパニーの定義やその確固たる実行プランを持っていたわけではない。新しい時代に立ち向かう覚悟を示したものである。あれからインターネット時代はクラウドへ、そしてスマートフォンの急速な普及が進み、とうとうそのうねりは本気で自動車産業も巻き込み始めた。スマホを使った配車サービスUberが登場したのは2009年。彼らは自動車屋ではない。スマホのアプリ屋だ。最初それがNasser氏の予感を実現する手段になるとは誰も気づかなかった。ただのはやりのシェアリングビジネスの一種だと。しかし若者の自動車離れは着実に進んでいる。ハイブリッドや燃料電池車の開発も大事だが、何か別なことを考えなければいけない時代に入って来た。アウトソーシングとかシェアードサービス/ビジネスというビズワードがある。最早、会社の仕事を外注するアウトソーシングは当たり前、各社の共通な仕事を共有するシェアードサービスも発達した。共に会社経営の効率化のためだ。上図はMorgan Stanleyの資料だが車の出荷は伸び悩み、一方でシェアード車が2030年には15%以上を占める。Nasser氏の考えは時代を先取りし過ぎていたが、とうとうその時代がやって来た。今や自動車メーカーの多くがライドシェアリングとの提携を急いでいる。彼らは単なるスマホのアプリ屋ではない。輸送サービスを手掛けるテクノロジー企業である。現在のタクシー料金のほとんどはドライバーの費用だ。それをライドシェアで下げる。自動車メーカーは彼らと契約したドライバーにリースで車を提供する。彼らはドライバー向けのリースや保険、さらには通信料金など割引プログラムを提供する。たったひとつのスマホアプリが膨大な資金を集め、多様な企業を巻き込んで新たな世界を作り出す。これこそNasser氏の夢見たモ ビリティーサービスかもしれない。

=Uber、Googleは投資、Fordは協業、そしてToyotaは提携!=
世界的な自動車メーカーにとって、残念ながら、この世界の主導権は今のところライドシェアの会社側にある。しかし、GoogleがUberに258M(約283億円)を投資したのは、少し前の2013年、Series-Cだった。そしてGoogle SVPDavid Drummond氏がUberのボードに就任。Google Carを開発しながらのことである。当時のForbesによると、GoogleはGoogle CarとUberを組み合わせたキラーアプリを目指していた。ただ、その後の状況は変わった。Uberはオートノマスビークルについて、後述のように独自路線を歩みだし、Googleも独自のライドシェアリングテストを開始した。Uberはまた、 6月2日、サウジアラビア政府系公共投資ファンドからの$3.5B(約3,800億円)という巨額投資を受け入れた。これ集めた資金総額は14.11B(約1.5兆億円)。その評価額は$68B(約7.5兆円)となって、設立からたった7年のUberが100年以上の歴史のあるGMやFordのマーケットキャップを抜き去った。

この巨費をどのように使うのか。それは全世界の市場開発だけではない。彼らは自動運転車/オートノマスビークルに興味津々だからだ。昨年2月、ピッツバーグのカーネギーメロン大学と組んでATC(Advanced Technologies Center)構想を発表。この組織を核に同社向けのオートノマスビークルを開発する。この話はその際、同大学から大勢のロボット関連の教授を含むスタッフを引き抜いたことで物議を醸し出しもした。しかし、自力開発はそう簡単ではない。5月19日、Uberの計画が姿を現した。結局のところ、Fordと提携してFord Fusion Hybridをつかったロードテストをピッツバーグ市内で開始すると発表した。つまり他社開発のオートノマスビークルにATCで開発した機能を組み合わせ、Uberとして使い勝手の良いものに仕上げようというわけである。これによって、主導権は渡さないというこのなのだろう。同じ5月24日、トヨタもUberとの戦略的な提携覚書MOUを交わした。これは将来の投資含みながら、当面はUberドライバーに対するリースプログラムに向けたものである。

=車は所有から利用へ!=
車は所有する時代から、利用する時代に変わりつつある。
好きな車を買って、ドライブを楽しむことがステータスだった時代は過ぎた。それよりも好きな時に、早く、安く移動できればいい。ライドシェアリングのドライバーも専業ではない。自分の都合の良い時間に自分の車を使って働くアルバイト気分だ。これらの需要と供給を結びつけるのがインターネットアプリである。つまり、配車サービスはインターネット時代のタクシー会社だ。勿論、安全性や法規制など色々な課題はある。4月26日、GoogleやGM、Ford、Uber、Lyftなどがオートノマスビークルの交通基準を整えるよう米政府に働きかけるSelf-Driving Coalition for Safer Streetsを設立した。狙いの第1段は、実用化が近いオートノマスビークルをまずはセミプロの彼らのドライバーに合法的に使って貰うことだ。これはライドシェアの会社にとっても大きなプロモーションになる筈だ。そして将来は、顧客自らが提供されるオートノマスビークルを操作する時代が到来するだろう。

2016年6月9日木曜日

AutoTech(4) -米Big 3の対応!-

Google Carはあまりにも有名になった。
他方、Appleが自動運転車(オートノマスビークル/Autonomous Vehicle)を開発している噂は尽きないし、TeslaもLevel-2(Combined Function Automation)の完成を目指したAuto Pilotをこのほど正式にリリースした。ところで米Big 3はどのようにオートノマスビークルに対応しようとしているのか。今回はこれを追ってみた。

=Fordの開発は本気だ!=
Big 3の中ではFordが一番進んでいるように見える。
Fordの開発センターはデトロイトにほど近いディアボーン(Dearborn)にある。ここでの開発はFord Fusion Hybridがベースだ。他社のオートノマスビークルと比べ、Fusionには屋根に4つのLiDARが見える。2つは左右に直立に、もう2つはその外側に角のように斜めに取り付けられている。より広い範囲を確実にカバーしようというわけだ。これによって、かすれた車線やぼこぼこ道、良くない天候でも運転が可能となる。実際のところ、Fordでは夜間走行や雪道走行なども実施した。現在、10台のテスト車が公道を走っているが年末までには3倍の30台体制となる予定だ。そして、さらに高性能の新型LiDARのULTRA PuckがVelodyneから6月4日発表された。最初のユーザーはFordだ。目指すは今後5年以内にLevel-4のフル自動化オートノマスビークルの出荷である。

=GMの段階作戦!=
GMの開発センターはFordの拠点からたった20マイル離れた同じミシガン州のウォーレン(Warren)だ。GMの採った戦略は、Fordとは異なる。彼らのオートノマスビークル開発は進んでいるとは言い難い。しかしテレマティックスでは他社よりも進んでいる。飛躍より着実に、そして段階的に、それがGMの戦略のようである。目下、第1ステップとして開発しているのはCadillac向けのSuper Cruiseだ。この技術はLevel-2(Combined Function Automation)に該当するもので、高速道路の走行時にスピードの増減を制御し、走行レーンを識別してクルマを走らせる。ただしGMは「それでもドライバーは必要だ」と完全な自律型ではないと説明、出荷は2017年の予定だ。半自動だが来年出荷のGMか、5年後の完全自動化のFordか、市場はどう反応するだろう。この開発と並行して、GMは今年3月11日、オートノマスビークル用のキットを開発するスタートアップCruise Automation買収した。他の報道によれば$1B(約1,100億円)を超える買い物らしい。第2ステップに向けた対応なのだろうか。The Wall Street Journalによると、これまで、同社はカリフォルニア州内運転限定のAudi A4/S4向け半自動化キットCruise-PR1を$10,000(約110万円)で出荷してきた。ここまではGM Super Cruiseと同じ範疇である。しかし、昨年9月、$20M(約22億円)の資金調達以降、次なる成長を目指して優秀な人材を集め出した。さらに酷暑にも耐えるテストに向けてアリゾナにも事務所を開設した。当面、同社はGM内の独立部隊として活動する。その後、Cruise PR1とSuper Cruiseが統合するのか、はたまたCruise Automationの次世代技術が登場するのか、要注意である。


=GoogleはFiat Chryslerと協業へ!=
さて最後のひとつ、Fiat Cheyslerは、Googleと協業することが決まった。
Google Carは現在までに140万マイル(≒2,253,082km 約地球56周)を走破。そして、次なる段階に進むため、Googleは実際の自動車会社との交渉に入った。 もちろん、種々の利便性から相手となるのは米メーカーである。5月3日のBloombergの報道によると、GMとの交渉は各種の所有権問題で上手く行かず、落ち着いたのはFiat Chryslerだ。車種は実績のあるファミリー向けミニバンChrysler Pacificaである。これにGoogle Carの専用ハードウェアとソフトウェアを搭載し、実用化に向けた本格テストを実施する。作られるのは限定100台だ。

=Financial Timesの予測!=
今年4月中旬のFinancial Timesの予測記事は面白かった。
何しろ、1908年に登場した世界初の量産車Ford Model-T、これこそ米運輸省が規定する元祖Level-0(No Automation)だと認定。さらにLevel-1の初めての車は、1998年製でAdaptive Cruise Control付きのJugar XKだという。次いでLevel-2(Combined Function Automation)はActive Lane Keeping Assist付きの2013年製Mercedes-Benz S-Classだ。ここまでは過去の話、ここからが同紙の予測である。まず、Level-3(Limited Self-Driving Automation)は来年(2017)登場予定でSuper Cruise付きのGM Cadillac CT6そして、米運輸省規定の最高位Level-4(Full Self-Driving Automation)に選ばれたのは全く人間による介入のないFord Fusion Hybridで、4~5年先の出荷見通しとした。さらに米運輸省の規定にはないが、番外として、その上のLevel-5には、夢のGoogle Carが選ばれた。もしかしたらハンドルもペダルもないかもしれない。出荷は10年先だという。

2016年6月3日金曜日

Auto Tech(3)  Google AIをリードした2人の天才!

前回は自動運転車(オートノマスビークル/Autonomous Vehicle)の市場見通しとテクノロジーについて紹介した。今回はその先頭を走るGoogle Carとはどのようなものか、そしてGoogle AIをリードする人物についてまとめた。

=Google CarとAI技術!=
この分野には2人の天才がいる。
 ひとりは現在のGoogle Self-Driving Carの原型となるオートノマスビークルを開発したSebastian Thrun氏だ。Thrun氏はスタンフォード大学のロボット開発者兼コンピュータ科学者として、砂漠のコース走るDARPA Grand Challengeに挑戦、第1回の2004年は完走車はなく、翌2005年の第2回目で氏のスタンフォード大学チームのStanleyが優勝した。次いで2007年の改造市販車市街地を走るDARPA Urban Challengeでは、カーネギーメロン大学とGMチームが開発したBOSS(Chevrolet Tahoe)が優勝し、スタンフォード大学のJunior(Volkswagen Passat)は2位となった。これらの技術を引っ提げて、Thrun氏はスタンフォード大学の準教授のままGoogle CarのためのGoogle Xを立ち上げ、GoogleのVP&Fellowとなった。その後Thrun氏はスタンフォード大学に戻ったが、Google Xは、Google Carだけでなく、月にロケットを打ち上げる(Moonshot)ような革新的な技術研究機関として活躍している。

Google Carに話を戻そう。前回、オートノマスビークルにとって、車の目となる3次元リモートセンサーLiDARの重要性は触れた。実際のところGoogle Carに採用されているVelodyne HDL-64E64個のレーザーセンサーを内蔵し、水平360°、垂直26.8°の三次元イメージングに対応している。そして、秒あたり2,200万ポイントを測定し、誤差は2cm以下、測定距離は約120mまで可能という優れものだ。この高性能LiDARから測定される3次元データとマップ、さらに各種センサーからのデータを使い、AIソフトウェアで制御する。これこそオートノマスビークルの心臓だ。Google Carも一般のロボットと同様、基本的には、①まずLiDARなどで周囲の状況を把握し、さらに誤差を調整して、②次にどう行動すべきかのプランを作り、③それを再度調整しながら実行する。その流れを制御サイクルと呼び、Google Carでは0.1秒毎に高速実行する。前回、米運輸省のオートマスビークルの定義Level of Autonomous Vehicleを紹介した。現在、Google Carが目指しているのは、この中のLevel-3だ。今後LiDARだけでなく、各種のセンサーやカメラも高性能化する。そしてAIソフトウェアも進化し、Google Carがどのような形であれ、市場に登場するのは間違いない。

=アルファ碁=
もうひりの天才はチェスの天才少年だったDemis Hassabis氏である。
昨年11月、Googleは自社で使用中のDeep LearningのAIライブラリーTnesor Flowをオープンソースとして公開した。そして先日(5/18~20)開催されたGoogle I/O 2016では、このライブラリー向け専用のAIプロセッサーTPU(Tensor Processing Unit)がとうとうベールを脱いだ。この一連の流れは2014年に買収した英DeepMind Tecnologies(現Google DeepMind)から始まっている(既報)。このDeepMindの創業者がHassabis氏だ。あのElon Musk氏も初期投資家の一人である。同社が開発した畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)は素晴らしい。この3月、世界最強の囲碁棋士の一人と対戦し、4勝1敗で撃破したアルファ碁-AlphaGo-は同社製もちろんニューラルネットワーク理論と実行ライブラリーTensor Flow、そしてエンジンのTPUが使われている。アルファ碁は囲碁のルールや定石がプログラミングされているわけではない。これまでの膨大な棋譜を読み取って学習し、そこから打つ手を考え出す。実際の対戦では我々の考えられないひどい手が結果的に功を奏して勝ちに結びついたり、相手の勝負手に動揺して突然乱れだすという失態もあった。無の状態から、Big Dataの中のルールを読み解き、学習しながら進化する。これがGoogle Deep Learningだ。現時点ではGoogle Carとの直接の結びつきはない。しかし近未来、この技術が車に適用されればLevel-4の完全自動運転車が出現するのも夢ではない。

2016年6月1日水曜日

AutoTech(2)
     9.5兆円の自動運転車市場とテクノロジー!         

このところの自動運転車の開発競争は凄まじい。
Googleが始めたGoogle Self-Driving Car Projectを機に各社の開発が本格化した。Self-Driving CarやDriverless Carは日本人には馴染み易い英語だが、一般的には‶オートノマスビークル″Autonomous Vehicle言う。このところ押され気味の米国勢にとって、自動運転車-オートノマスビークル-の開発は打倒日独の絶好のチャンスだ。まさにAIの勝負、ITで勝る米国が巻き返すのか、状況を追ってみた。

=9.5兆円の自動運転車市場と要素技術!=
5月20日、Lux Researchが発表したレポートによれば、自動車メーカーとテクノロジーベロッパーによって開発されるオートノマスビークル(自動運転車)の市場は、2030年までに$87B(約9.5兆円)に達し、レーダーやマップなどオートノマスビークル構成する技術要件の中で最大の勝者はソフトウェアだと分析している(下図)。

しのぎを削るオートノマスビークル開発の要素技術上図)には下からみると、①レーダー、②光リモートセンシングのLiDAR、③オプティカルカメラ、④ワイヤリング、⑤コンピュータ、⑥ワイヤレス、⑦ソフトウェア、⑧マップ、⑨コネクティビティ&アプリなどがあり、個々の市場規模(売上)では、ソフトウェアが一番大きく、コンピュータとカメラが同規模、そしてレーダーと続く。このレーダーには自動ブレーキ用のミリ波レーダー、衝突防止の各種センサー、位置情報のGPS、タイヤの回転から走行距離を測るDMI(Distance Measuring Instrument)などが含まれる。カメラもこれまでのものに比べてより高性能だ。そして、これら全てを纏めあげるのが制御ソフトウェア。もうひとつ大事な技術がある。オートノマスビークルに欠かせないLiDAR(右写真)。これはリモートセンシングで3D空間を読み取るイメージング装置だ。通常、オートノマスビークルの屋根に取り付けられてクルクル回り、車の目となる。次にオートノマスビークルの分類はどうか。下図は米運輸省のオートマスビークルを定義したLevel of Autonomous Vehicleである。Level-0は自動運転機能のまったくない車(No Automation)Level-1は横滑り防止や衝突軽減ブレーキなどを装備した車(Function-Specific Automation)、Level-2はレーン走行(Lane Centering)と定速走行/車間距離制御(Adaptive Cruse Control)などの複数機能を組み合わせた車(Combined Function Automation)、Level-3は車の走行変化を常時モニターし、ハンドルやアクセル、ブレーキなどを総合的に制御する(Limited Self-Driving Automation)、Level-4は全ての走行制御だけでなく、路面状況もモニターして、両面からより完全な自動運転(Full Self-Driving Automation)を目指す車。そして、Level-3は2020年以降Level-4は2025年以降に市場に登場予定だとしている。

Source: Ministry of Transport
Lux Researchのレポートに戻ると、同レポートでは、2030年までに、Level-2は出荷された自動運転車の92%を占めて主流となり、Level-3はたったの8%、Level-4はまだ登場しないだろうと、時期に関して、米運輸省よりやや厳しい予測している。
  • さらに同レポートでは、現在までのところ、オートノマスビークルは米国と欧州市場がリードしているが、いずれ中国市場が追い越すと予測する。2030年時点で、全世界に出荷される1億2,000万台のうち中国市場が35%を占めて金額では$24B(約2.64兆円)、対する米国は$21B(約2.31兆円)、欧州は$20B(約2.2兆円)だ。
  •  そして、オートノマスビークル開発ではソフトウェアが差別化のポイントとなる。GoogleやIBMのようなパワーハウスが提供する様々などう使うかが差別化の鍵となり、この分野の売り上げは、現時点では$0.5B(約550億円)だが、2020年には$10B(約1.1兆円)、2030年には$25B(約2.75兆円)と予測する。
  • 同レポートは最後に、真に自立性のある車は現時点でまだ捉えようがなく、2030年までには表れないとし、もっとも楽観的に見ても、2030年に出荷されるLevel-4とおぼしき25万台が段階的にブレークスルーしていくのではないか、と締めくくっている。