2010年6月28日月曜日

Top 10 Cloud Players-その6 
               -連邦政府のクラウド計画アップデート-

「米国クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の6回目。
そして予告通りに民間ビジネスばかりでなく、今回は連邦政府のクラウド計画-Federal Cloud Computing Initiative-を取りあげた。理由は、この計画が民間のクラウド化を先取りするもので、成功すれば波及効果が大だからだ。加えて、連邦IT予算のコスト削減にも大いに寄与する。しかしながら、道のりは平坦ではなく、かなり問題も抱えている。そこでアップデートとして、その後の動きや課題などについて整理を試みた。


◆ 計画立案から実行へ(ステップ1)
連邦政府のクラウド計画が動き出したのは昨年の3月だった。
オバマ大統領就任後、連邦政府のCIO(兼ホワイトハウスCTO)となったVivek Kundra氏が精力的に動き、4月にはCIO Cloud Computing Management Officeを開設。これが連邦政府のクラウド推進部隊の原点である。その後、5月にはNISTによるクラウドの定義が終わり、これを受けて実行部隊である一般調達局GSA(General Service Administration)から各社に情報要求RFI(Request for Information)をオープン、
7月には提案依頼RFP(Request for Proposal)が出された。こうして連邦政府のクラウドApps.govが昨年9月にスタートした。短期間の離れ業である。

このシステムの受注に意欲的だったのは特に2社、Terremark WorldwideとSavvisだ。特に最大手のデータセンタービジネスSavvisを追うTerremarkは必死だった。何としてもこれを 受注し、連邦政府内での実績に弾みをつけたいところだ。そして昨年6月、TerremarkはVMwareから$20Mの投資を受けた。この資金の直接の目的は、受注のためのデータセンター投資に向けたもののようだったが、VMware側にもはっきりした理由があった。同社の戦略が企業向け仮想化ビジネスの飽和に伴い、次なる目標をデータセンターのクラウド化に定めていたからだ。所謂、vCloud Initiativeである。つまり、Terremarkにこのクラウドを受注させ、VMaware基盤を使ったモデルに仕立てることであった。これに先行し、Terremark自身は昨年5月、GSAの運営する連邦政府の総合情報ポータルサイトUSA.govと連邦政府の情報公開サイトData.govも稼動させていた。これだけの実績を持ち、かつVMwareからの投資も受け、万全の体制で臨んだが、結果はダメだった。Savvisが競り勝ってApps.govの受注に成功した。


◆ 抱える課題(ステップ2)
こうしてApps.govは鳴り物入りで始まり、9ヶ月が過ぎた。
動き出したシステムは期間的な問題もあって、幾つかの課題を抱えている。現在、ストアフロントから提供されているサービスは既存SaaSアプリケーションやWebアプリケーションの寄せ集めだと言ってもよい。ただ解っていることは、まだ過渡期にあり、評価はまだ先だということである。最大の課題はApps.govにおけるIaaS機能の提供だ。これは昨年7月末に費用見積もりRFQ(Request for Quotation)が出されたが、条件提示が上手く機能せず、今年2月にキャンセルになった。現在のサイトを見ると“Coming Soon”となっているままだ。


そして今年6月中旬、新たなRFQが示された。これと呼応するかのように、これまでのFederal Cloud Computing Initiativeは、最近名前を変えた内務省(Department of Interior)の市民サービスと革新技術事務所-Office of Citizen Services and Innovative Technologies-の一部となり、内務省CIOのSanjeev “Sonny” Bhagowalia 氏がリードすることになった。この組織とリーダーの変更がこれまでこの計画を推進してきたKundra氏の失点となるのかは定かではない。氏は首都ワシントンのあるコロンビア特別区のコンピュータ更新を監督し、連邦政府のCIOに就いたばかり、まだ若干36歳である。

◆ これからの展開(ステップ3)
Apps.govの本番が始まる際、Kundra氏は、クラウドでこれからのIT 環境が変わるだけでなく、大きな節税にもなると説明した。GSAの担当者はアプリケーションはダウンロードタイプも入れれば170になるという。しかし、実際問題として、多くの省庁の出先はまだセキュリティー不安や適用に対する懸念などから様子見の段階を抜け出ていない。ちょうどこの時期、組織のウェブサイトを改定中だった連邦通信委員会FCC(Federal Communications Commission)ですら積極的にApps.govを検討したが、最終的にはベンダーとの直接交渉へと進んでしまった。今回、推進担当となった内務省ではApps.govのWebメールの検討が始まっている。これまで同省では14の異なるメールシステムが動いていたが、これをApps.govで統一しようというものだ。このような地味な努力の積み重ねがない限り、ただ新しい仕組みだけを提示してもなかなか実行が伴わない。Kundra氏は、今年2月、Apps.govとは離れて、各省庁に廉価で具体的に現場が使えるクラウドコンピューティングの調査と1,100ヶ所ほどあるデータセンターの統合案の作成を指示する別な手を打ち出した。

目下の問題は再提示されたIaaSのRFQである。
新しいRFQは3月22日に公示され、5月に入って一部修正、回答の締め切りは未定となっている。今のところAccenture、BMC、Harris、SGI、SunGardなど20社が興味を示し、これからが本格的な検討となるが、上手く処理して実現させなければならない。
並行してこんな話もある。Apps.govのIaaS機能に関連し、NASAやDoDが進めているクラウドとの関係がどうなるかという心配だ。NASAのNebula、DoDのRACE(Rapid Access Computing Environment)は既に稼動ベースであり、Apps.govがIaaSを提供すればユーザーを取り合うことになりかねない。もし、これらと調整をつけるということになれば、Apps.govとNeburaなどが連動する可能性も残されている。

<関連記事>
連邦政府のクラウド推進計画1-Federal Cloud Computing Initiative
連邦政府のクラウド推進計画2-NISTクラウド定義とGSAの要求仕様
連邦政府のクラウド推進計画3-Data.govからNASA Nebulaまで

2010年6月14日月曜日

VMwareのSpring拡大戦略
                  -Salesforce、そしてGoogle-

このところVMwareの動きが気になりだした。
4月末にはSalesforceと組んでVMforceを発表し、5月中にはGoogleと提携した。
いずれも8月末に予定されているVMworld 2010に向けてのシナリオ作りの予感がする。思えば昨年夏、同社はJavaデベロッパーに人気の高いSpringフレームワークのSpringSourceを買収し、そのSpringSourceは昨年4月にオープンソースのシステム監視として多くのファンを持つHypericを買収、さらに同8月にはCloud Foundaryも買収、VMwareが何か大きな構想を抱えていることを伺わせた。(関連記事


-vCloud Initiativeは上手く行ったか-
VMwareが一般企業向け仮想化技術で圧勝していることは知っての通りである。
しかし米企業の宿命でこれだけでは許されない。次の大きな柱を開拓しなければいけないからだ。そして2008年のカンファレンスで発表されたのがvCloud Initiativeだった。このイニシアティブは次なる市場をデータセンター業界に定め、そのための製品開発や諸環境を整えて行くもので、簡単な話、ホスティングなどを手掛けるデータセンターにクラウド化を勧め、その中でVMware製品を使って貰おうという戦略だ。当初の参加企業は100社以上に達し、昨年6月には、Terremark Internationalに$20Mを出資し、モデルユーザ化を図った。折りしも連邦政府のクラウド計画が進んでいる最中である。

この計画が成功すれば中小企業ユーザーを囲い込むことが出来る。
大手企業にはすでにVMware製品が行き渡り、中小企業にはデータセンターを通して普及させる。さらに上手行けば大手企業の新規業務やオンプレミスのオーバーフローも拾えるかもしれない。このためのFedearationやVMware Fault Tolerance機能がvSphere 4で整備され、昨年のVMworld 2009ではクラウドユーザー向けのシステム管理vCloud Expressも披露された。しかし、その後、クラウドツールのOpenNebulaやプロビジョニングのRightScale、クラウドSIerのenStratusなどがvCloud Express APIのサポートを表明したが思ったほど加速していない。vCloud Expressはユーザー用のWebベース管理ツールだが、それとペアになるデータセンター運用は、企業向けクラウドとビジネスとして大規模に展開するプロバイダーでは大きく異なる。事実、これらの要因と仮想化の負荷を勘案し、殆どの大手クラウドプロバイダーはXenを採用し、運用管理はオープンソースのXenと連動させて開発した自社物である。5月中旬のCitrixカンファレンスでは、vCloud Initiativeのメンバーで大手ホスティング業者のRackspaceがXenServerに乗り換えると発表、VMwareにとって大きな痛手となった。
新たな模索が始まった。

-Salesforceとの提携、VMforce-
VMwareとsalesforceは両社の技術を組み合わせることで合意し、4月末、VMforceの発表会を開催した。この発表会には両社のCEOが登壇する意気込みで、Salesforceの期待はSaaSアプリのCRMから脱却して次なるビジネスのForce.comを推進すること、VMware側は同社技術を提供してVMwareの影響力を拡大することにある。両社の宣伝はともかく、ポイントはSpringだ。VMwareの買収したSpringをforce.com上でvSphereと共に展開し、一方でForce.comが提供するデータベースや各種のプラットフォームサービスを合わせて提供する。つまり新しいJava向けPaaSサービスの提供だ。対象はエンタープライズのJavaデベロッパーたち。Javaデベロッパーにとって期待の星だったサンのOpen Cloud Platformはオラクルによる買収で姿を変えてしまった。そこでファンの多い彼等にSpringに注目させて、クラウド環境でも容易に開発が続けられるようにしょうというわけである。



-GoogleとSpringで提携-
GoogleとVMwareの提携は前回Google I/O 2010の中で説明した。
Googleにとっては、Springが出遅れていたエンタープライズ市場に打って出る力となり、またVMwareとの協業で仮想環境におけるアプリケーションのポータビリティを高めることが出来る。VMware側の期待はGoogle AppEngine for Businessを通して同社の影響力を強めることだ。幸い、Googleはどこの仮想化技術も使っていない。

Springフレームワークとは、もともとオープンソースとしてJava普及のためにRod Johnson氏 がExpert One-on-One J2EE Design and Development(Wrox Pressより2002年10月に出版)と共にリリースしたのが最初である。その氏は現在、VMwareのSpringSource部門ジェネラルマネジャーとして活躍している。時代が変わり、オープンソースのSpringが今やVMwareビジネスの拡大の武器として扱われているのは何とも皮肉な話である。

2010年6月8日火曜日

Google I/Oカンファレンス

5月19~20日、今年で第3回目になるGoogle DeveloperカンファレンスGoogle I/O 2010がサンフランシスコ・モスコーンセンター西館(Moscone Westで)開催された。今回は各種のトピックスが多く、ここではクラウドだけでなく、関連する話題についても纏めてみようと思う。


◆AppEngine for Business(ビジネス向け)
まずクラウド関連ではAppEngineのビジネス向けGoogle AppEngine for Businessが発表された。この企業向けではアプリケーションの全てを管理コンソールから集中管理し、SLA=99.9%のアップタイムを保証する。利用料金はユーザー当たり8㌦/月で上限は1,000㌦/月、サポートは以下の通り。現在はプレビュー版の限定リリースだ。

またAppEngine for Businessは、これまでのGoogle Big TableやData Storeだけでなく、SQLデータベースへの対応やセキュリティ強化からSSL機能も追加する計画だ。

◆クラウドでVMwareと提携
Googleはさらに今後の強化策として、「アプリケーション・ポータビリティ」を高めるためVMwareグループとの提携も発表した。この提携によって、VMware基盤のクラウドやAmazonなどへのアプリケーションの移植性を高めることを狙う。また昨年夏にVMwareが買収したSpringSourceもポイントとなる。承知のようにSpringはJavaフレームワークとして多くのファンを持ち、開発ツールのSpring RooGoogle Web Toolkitの統合や、さらにSpringが昨年春に買収したHyperic (SpringによるHyperic買収記事)のパフォーマンス追跡ツールHyperic HQSpring InsightGoogle Speed Tracerの連携などに取り組む。

Storage Serviceもアナウンス
Amazon S3対抗のStorage Serviceもアナウンスされた。これまでGoogleのクラウドストレージはJavaやPython、さらにはGoogle Docs/Apps/Gmailなどからの専用APIだけであった。今回発表されたGoogle Storage for DeveloperはAmazon S3などとの互換ライブラリーを持つ。当面は米国内に限り、プレビュー利用は100GBのストレージと300GBのデータ転送帯域幅が無償だ。このストレージサービスの最大の特徴は、GoogleのGFS上に展開される高信頼性ファイルであり、しかもs3互換となる点である。正式リリース後の費用は、1GB当たり17¢とAmazon S3やWindows Azure Storageの15¢よりやや高い。またアップロードは10¢/GB、ダウンロードは欧米が15¢/GB、アジアは30¢となっている。
   参考記事: Googleのストレージ戦略を読む-1-GFSの改良
           Googleのストレージ戦略を読む-2-Datacenter as a Computer
           Googleのストレージ戦略を読む-3-Googleらしさとは何か

Appleは敵か!
さて話は脱線するが、このところ、シリコンバレーではiPhoneの好調を尻目に、Appleへの批判が目立つ。カンファレンス2日目のAndroidについてのキーノートは強烈だった。エンジニアリングを率いるVPのVic Gundotra氏は、AndroidチームリーダーAndy Rubin氏の話を引用しながら、なぜAndroidがオープンソースでなければならないのかを説明。現在Androidによってモバイルソフトウェアは開放され、あらゆるレベルで革新が進んでいることを力説した。一方で、「一人の男、ひとつの会社、ひとつのデバイス、ひとつのキャリアが唯一の将来への選択(a future where one man, one company, one device, one carrier would be our only choice)」なら、そんなものは要らないとAppleを攻撃し、喝采を浴びた。iPhoneへの宣戦布告である。

iPhoneとAndroidの対決の一方で、Steve Jobs氏のAdobe嫌いも有名だ。
氏は市場でもっとも普及しているAdobe Flashを嫌って、Apple製品への搭載を認めない。Apple製品の全てをコントロールするのは自分だと言わんばかりだ。そのAdobeが5月13日付けでシリコンバレーのSan Jose Mercury紙に出した前面広告「We love Apple」がある。曰く、「私たちはAppleが好き・・・Webが好き、Flashが好き、HTML5が好き・・・好きになれないのは、新しいWebエクスペリエンスや、何をどう作るかなどの選択の自由を奪う人」。この広告はシリーズキャンペーンで今後も続き、一連の対決姿勢は一段とエスカレートしそうな気配である。

WebMプロジェクト
このようなAppleとのバトルの中で、カンファレンスではGoogleが主導し、Adobe、Mozilla、Operaが参加するオープンソースWebMプロジェクト始動の発表があった。このプロジェクトは重要な意味を持つ。AppleはAdobe Flashを排除し、HTML5とそのコーデックH.246を強力に支持、全製品でサポートしている。これによってFlashは要らないというわけだ。しかしながら、H.246のパテントは動画のMPEG-LAコンソーシアムが持ち、今年2月の発表では、2015年末までは無料、その後は有料となる。WebMはこれに対抗してオープンソース(勿論無料)のHTML対応コーデックをリリースする。このため、Googleは昨年夏買収したOn2 TechnologiesのビデオコーデックOn2VP8をプロジェクトに寄贈した。HTML5対応コーデックには色々ある。例えばMozillaは現在、FirefoxのHTML5対応としてTheora(On2VP3のオープンソース版)を採用している。それはTheoraがOggフォーマットなどで有名なマルチメディアフォーマット開発のxiph.orgによって、On2VP3ベースで作られたオープンソースだからだ。その先はWebM/V8となるのだろう。これにOperaも便乗し、Adobeも賛同した。Adobeの最大の問題は、MySpace、Yahoo!、YouTubeなどの動画サイトをFlash Video (FLV)形式で独占していることだ。「私企業のビデオフォーマットが市場を牛耳っている」、これがAdobeを排除しているAppleの言い分でもある。そのFLVにコーデックをライセンス供給してきたのがOn2だからややこしい。

今回のカンファレンスでは、Android、クラウド以外に、SonyとIntelを従えたGoogle TVといいうオマケまでついた。このWeb TVはWebとTVの融合を目指すもので、組込み型とセットトップボックスがあり、共にAndroidがベースとなる。またまた、当分、Googleから目が離せないようだ。

2010年6月2日水曜日

Top 10 Cloud Player-その5
   -マルチハイパーバイザー管理コンソールのEnomaly-

「クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の5回目。
これまでAmazon、Google、Microsoft、 GoGridを取り上げてきた。このシリーズで記述にた企業の順序は初回に断ったようにランキングではない。というのはクラウドに関連する各種分野から、 実績や影響力、戦略などを加味してピックアップしているからである。今回はプロバイダー向けマルチハイパーバイザーシステム管理コンソールを開発している Enomaly(Canada, Toronto)を取り上げる。

1.  Elastic Computing Platform(ECP)とは何か
Enomalyが最初のElastic Cpmputing Platform(ECP)を出荷したのは2004年だ。サーバ向けの仮想化製品が出始めてまもない時期である。以来、ECPは大規模IaaSを運用する ためのシステム管理コンソールとして、世界中多くの企業が採用している。
周知のようにこ の分野の機能提供は、一般に仮想化ベ
ンダーが担ってきた。旧VMware Infrastructureの後継vSphere(関連記事)、Citrix XenCenterやEssential(関連記事)、さらにはNovellがSUSE向けに提供して いるPlateSpin(関連記事)、Sun xVM Ops Center、Red Hat Enterprise Virtualization for Servers、Microsoft System Centerなどだ。 しかし仮想化でVMwareが圧倒的に強いとは言え、クラウドプロバイダーの多くはXenを採用している。そして彼らもXenだけでなく、VMwareも 補足的に導入しているし、企業ユーザでもVMwareだけでなく、Windows Serverやシンクライアントとの関係からMicrosoftや Citrixの導入も進んでいる。つまり、どれか1社だけを採用しているわけでない。さらには物理的に複数のデータセンターにまたがった巨大クラウドでは これらのツールでは難しい。EnomalyのECPはこうした市場に向けて、ハイパーバイザには依存しない大規模システム管理 機能を提供する。技術的にはオープンソースのlibvirt(仮 想マシン制御ライブラリー)を介して、XenやVMware、KVMなど を制御する。その上でECPは ①ルールエンジンによる最適配置の“Automated Provisioning”、②複数データセンタ適用が可能な“Unlimited Scalability”、③ユーザ別マルチレベル・アクセスコントロールやネットワーク区分化による“Multi-Tenant Security”、④複雑なMonitoring、⑤ユーザ別のMatering/Billingなどの機能を揃え、さらに多様なニーズに対応するため にEnomaly APIを提供、これによってクラウドプロバイダーは自在なアプリケーション開発や自前システム との統合(下図参照)が可能となる。ECP製品はService Provider EditionData Center EditionHigh Assurance Editionの3つに別れ、プロバイダー向けでは、ユーザ運用にポータル経由 のセルフサービスとして ①Customer Dashboard、②VM Management、③Usage Account、④Remote Console、⑤Multi Language、⑥Advanced Disk Management、⑦Flexible Customer Hardware Profile、⑧App Center、⑨Virtual Private Cloudなどの機能を持っている。


2. Intelのクラウドビルダープログラム参加
昨年11月、 Intelはソフトウェアベンダー8社(Citrix、VMware、Parallels、Microsoft、Red Hat、Canonical、Univa UD、Xen consortium)と共に“Cloud Builder Program”を発表した。このプログラムはIntelアーキテクチャー上で、参加各社の技術を用い、サービスプロバイダーやホスティング業者、さらに は大型エンタープライズなどのクラウドを構築するガイドラインを示すものだ。Enomalyはこのプログラムに今年始め参加、その成果をIntel-Enomaly Cloud Deployment Reference Architectureと して発表した。実際の大型IaaS構築ではトレードオフとなる技術的な要件が多々あるが、それらを見極めるために、このガイドラインではIntel Xeon 5500搭載の複数サーバー機にRnomaly ECP Service Provider Edition(SPE)をインストールして各種の分析を加えている。その上で考慮すべきポイントを整理しているので、このような計画を持つプロバイダー は必読だ。

    ( Carrier Grade Deployment Architecture for Enomaly ECP SPE)

3. クラウド普及のパブリック 活動
Enomalyの創業者Reuven Cohen 氏のパブリック活動は素晴らしい。
ECP には初期のものと現行の商用プロダクトの2つがある。初期製品をコミュニティ版のオープンソースECP Community Editionとしてリリースしたのは彼だし、当時はXenを補完する運用管理としての位置づけ が強かった。パブリックな活動に造詣の深い氏は、その後もクラウド普及のた め CloudCampThe Cloud Computing Interoperability Forum などを主導。特 に、クラウドの知識や情報交換を行いながら創造的な議論を重ねることを目的としたCloudCampは人気で、現在も世界各地でクラウドのより良い普及を 目指して月数回のペースで行われている。

2010年5月25日火曜日

Synergy 2010カンファレンス 
                     -Citrix/Xenアップデート-

恒例のCtirix Systems年次カンファレンスSynergy 2010がサンフランシスコのモスコーンセンター西館(Moscone West)で開催(5/12-14)された。CitrixがMetaFrameでシンクライアント市場を切り開き、Microsoftと協調しながら成長したことは周知の事実だ。同社がXenSourceを買収したのは2007年8月のこと。Windowsのリソース管理をベースとした同社のSBC(Server Based Computing)技術はかなり普及したが、仮想化技術の台頭で市場が脅かされ始めたからだ。MetaFrameはその後機能アップし、Presentation Serverとなって市場に君臨し、Xen買収に伴う名称統一でCitrix XenAppとなった。並行してXenSourceにとって主力だったサーバー仮想化はXenServerとなり、その派生として登場したのがデスクトップ仮想化のXenDesktopである。これによってCitrixの本業であるシンクライアントのSBCは、仮想化技術のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)へと変わり、同社は従来からのXenAppを新しいXenDesktopに移行する戦略に大きく舵を切った。宿敵VMwareがサーバー仮想化を重点に売上げを伸ばしてきたのに対し、Citrixがデスクトップ仮想化でビジネスを伸ばしているのはこういう理由からである。

-デスクトップの仮想化に本腰、XenDesktop-
XenDesktopでは、XenServerで作られた仮想マシンにクライアントで必要なOSやアプリケーションなどのソフトウェアを載せて、ネットワークを介したPCやシンクライアント端末からアクセスする。この際、ネットワーク上ではSBCで実績のある高速圧縮技術ICA (Integrated Communication Architecture)を採用、アクセス端末もそのまま利用が可能となって、新しい環境に生まれ変わった。最新版XenDesktop 4ではこれまで普及の進んだXenAppも統合され、デスクトップ仮想化で想定される全ての形態がサポートされている。①MetaFrameベースのホスト共用型の“Hosted Shared Desktops”、②仮想マシンを用いたVDIの“Hosted VM-based Desktops”、この仮想マシンではXenだけでなくVMwareやHyper-Vでも構わない。さらに③ブレードPCを利用する“Hosted Blade PC Desktops”、そして④ストリーミング技術を用てアプリケーションを配信する“Virtual Apps to Installed Desktops”、⑤OSごとネットワークからブート配信する“Local Steamed Desktops”などだ。これら多岐にわたる情報配信にはFlexCastが開発された。まさにデスクトップ仮想化の集大成であり、こうなればXenAppからXenDesktopへの移行が加速されるのは想像に難くない。

-新たなデスクトップ仮想化の展開、XenClient-
そして今回のカンファレンスで登場したのがXenClientである。
正確には前回のSynergy 2009でXenClientの概要が発表され、今回は製品版レビュー用(Release Candidate)のリリースと詳細説明だ。この機能は、XenDesktopに6番目の機能、⑥“Local VM-based Desktop”として統合され、製品版は3Qが出荷予定となっている。さてXenClientだが、出先から仮想デスクトップを利用するモバイルワーカー向けだ。これを使えばインターネット接続が出来ないオフライン状態でも利用が可能となる。技術的にはまずラップトップなどのベアメタルにXenハイパーバイザーのXenClientをインストールする。つまりホストOSはなく、Linxベースのハイパーバイザーが乗り、その上にWindowsなどの仮想マシンが作られる。仮想マシンはビジネス用(Business VM)と個人用(Personal VM)に区分され、画面上からは区分アイコンでどちらかを選ぶことが出来る。各々の仮想マシン上では、個人用は基本的に何でもできる自由使用とし、ビジネス用はXenDesktop利用となる。XenDesktopは、通常センター接続だが、XenClientによって、オフライン状態でも処理継続が出来る。XenClientと共に提供される“Receiver”と“Synchronizer”によってとオフラインとオンラインが同期化されるからだ。尚、絶対条件ではないが、同社は処理効率から、適用PCにはIntel vPro(実際にはその中のVT-xとVT-dを利用)チップ採用製品を勧めている。

-サーバ仮想化を担うXenServer 5.6とEssentials for Hyper-V-
サーバ仮想化についてはXenServer 5.6が発表された。XenServerは昨年オープンソース化が決まり、今年始めXenServer 5.5(詳細記事)としてリリースされた。今回の5.6版はそのマイナーリリースである。Xen 3.3ベースの5.5版の大きな特徴は2つ。
まずバックアップや仮想ディスクフォーマットの機能強化、これによってシステム管理機能が大幅に向上した。その成果がXenCenterやEssentialsだ。さらに処理効率面では、第1世代のCPU仮想化支援機構(Intel VT、AMD-V)から進展し、第2世代(Intel EPT、AMD RVI)に対応してきた。その上で今回の5.6では、処理能力面で①Dynamic Memory Control、②Automated Workload Balancingが強化され、運用管理面では③Enhanced VM Snapshots、④StorageLink Site Recovery等が追加された。

今回のリリースで印象的だったのは、新設定されたXenServer製品の4つの区分だ。
まず無償のFee Editionは現在のもの比べ、ホスト機のメモリ、CPU、ネットワーク、サポートOSなどが拡張されている。続く有償のAdvanced Editionは初期導入の企業ユーザ向け、そして企業向け主力のEnterprise Edition、最上位にPlatinum Editionという構成となった。

ここでもうひとつ5.6版リリースに伴う大事なことがある。
XenCenterの取り扱いだ。XenServer 5.5まではシステム管理を司るXenCenter 5.5が別物になって、2つのインストールが必要だったが、5.6版ではXenCenterはXenServerに統合された。これに伴い、総合パッケージのEssentials for XenServerはなくなり、Microsoft向けのEssentials for Hyper-Vだけが残った。ただ、この製品のポジショニングは難しい。いずれは消えるかもしれないからだ。

Xenは結果的に言うと、上手く行っている。
当初、オープンソースが苦手で、シンクライアントだけのCitrix買収は懸念された。
しかし現状を見る限り、CitrixはXenServerをバックエンドとしたXenDesktopを全面に押し出してVMwareと戦っているし、Xen.org自身もXen Cloud Platformや次期4.0版開発などを順調にこなしている。このカンファレンスでもRackspace CEOのLew Moorman氏が同社のパブリッククラウドを今後XenServerに移行すると発表した。AmazonもGoGridもXen採用組だ。大手クラウドプロバイダーはどうやらXenに満足しているようである。

2010年5月18日火曜日

Top 10 Cloud Players-その4 
      -ハイブリッドクラウドとWindowsで攻めるGoGrid-

「クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の4回目。
前回はMicrosoftの挑戦を述べた。今年2月からWindows Azure(PaaS)は正式リリースとなり、一方で同社はIaaSの提供準備に入っている。今回はそのMicrosoftよりも2年、Amazonより1年早くWindowsベースのIaaSを提供し、独自の使い易さを追求するGoGridについて取りあげる。

GoGridの親会社はServerPathは1994年、ISPのInReachとして設立。
その後、2001年にホスティングを主業とする現社名となり、2008年4月、クラウド部門としてGoGridをスタートさせた。同社のIaaSクラウドは使い易さと、ホスティングでの豊富な経験を活かした利用形態“Hybrid Cloud”が人気を集めている。

1. 実用的なハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとは、クラウドとホスティングを組み合わせたもので、親会社から学んだものだ。一般にクラウドはWebアプリケーションを得意とするが、仕事によってはコンプライアンスやセキュリティ、さらにはパフォーマンスなどからユーザは専用のハードウェアを要求する。ハイブリッドクラウドでは、この要求に対する専用ホスティング(Dedicated Server)機を用意し、そしてクラウドアプリと組み合わせて利用する。下図の例ではバックエンドの大事なデータベースをDedicated Server(専用サーバー)に置いて、フロントエンドのアプリはGoGrid Cloud Server(仮想マシン)で処理をする。このクラウドフロントは必要があればいつでも追加投入が可能で、これによって拡張性が保持される。ホスティングでより安全に、そしてクラウドで拡張性を持つハイブリッドの人気の秘密はここにある。

実際のところGoGridは親会社ServerPathのデータセンタファシリティを利用している。このためホスティングのDedicated ServerとクラウドのCloud Serverは高速VLANで接続され、容易にコミュニケーションが可能だ。さらにネットワークやロードバランサーなど多くの機能もホスティングとクラウドが共用している。これらを使えば、クラウド上でWebアプリやデータベースを開発し、その結果をDedicated Serverでホスティングすることは簡単だ。

2. Windowsを徹底サポート
2008年、スタート時のGoGridのウリはWindowsのサポートだった。
AmazonもまだWindowsを手掛けてなく、Linux系ディストリビューションのみをサポートしていた時期である。親会社がホスティングから学んだことは、この分野は中小企業や部門内の仕事が中心だということだ。クラウドになれば、さらにこの傾向は顕著になる。
となればWindowsのサポートは欠かせない。そして仮想マシン上ではOSだけでなく、関連ソフトウェアのプロビジョニングを簡素化しなければいけない。Amazonの場合は
コマンドラインだ。だからこそ、それを補完するRightScaleが人気を博した。GoGridでは、ソフトウェアをアイコン化したドラッグ&ドロップやメニューから実行する。簡単に言えばRightScaleが内臓されていると思えば良い。Windows Serverのサポートは、2008年3月に2003版、同9月に2008版が開始され、SQL ServerやIISもサポートされている。Linux系ではCentOS、Red Hat、3QにはUbuntuがリリースされる予定だ。一方、IaaSクラウドで先行していたAmazonは、Windows Sever 2003版を2008年10月から、2009年12月にやっと2008版のサポートを開始、GoGridに比べ約1年遅れだった。

同社はWindows Azureについても積極的だ。
昨年11月のMicrosoft PDC 2009で発表した“Windows Azure Application Lifecycle Management(ALM)”は Blue Star Infotechとの協業の成果である。GoGridクラウド上でデベロッパーにAzureアプリを開発して貰い、Azureで実行させる。つまり、他アプリの関係など何らかの事情で実行はAzureで行うが、開発は廉価なGoGrid Cloud Serverでして貰おうという提案である。



3. ユーザに嬉しいプライス
GoGridのもうひとつの特徴は割安感のある利用料だ。
まずクラウドだが、ユーザが選択できるCloud Serverは、基本的にコア(1コアはIntel Nehalem 2.0 GHz相当)数とRAM(Random Access Memory)の容量(GB)が同じ値(0.5Core+0.5GB, 1Core+1GB, 2 Core+2GB, 4Core+4GB, 8Core+8GB)となっている。そして使用料は、サーバRAM時間(Server RAM Hour)がベースとなる。サーバRAM時間とは、クラウドとして展開しているサーバ上のRAMの総量に使用時間を掛けたもので、コア数には直接関係せず、1 Server RAM Hourは19¢となる。この使用量払いとは別に月額前払いもあり、2500 RAM Hourで$199(時間当たり8¢)、14,500 RAM Hourで$999(同7¢)、67,000 RAM Hourで$3,999(同6¢)、200,000 RAM Hourでは$9,999となって時間換算は5¢と相当割安だ。Amazonなどとそのままの比較は出来ないがGoGridの方がかなり割安であることは確かだ。さらにストレージは月10GBまで無償で追加は月15¢/GB、インターネットのデータ転送幅はインは無償、アウトは29¢/GB、ロードバランサーも無償で利用が出来る。

2010年5月10日月曜日

Top 10 Cloud Players-その3
          -Microsoftの賭け、オンプレミスの切り崩し-

「クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の3回目。
前回はクラウドをビジネスとしてどう成功させるかに傾注するAmazon、これに対して、アプリケーションのWeb化に邁進するGoogleの挑戦を述べた。今回はMicrosoftだ。同社は既存路線からクラウドビジネスで大きく転進するチャレンジャーでもある。

Windows Azureの正式リリースは大手ITベンダーに対する攻撃開始だ。
同社にとってクラウドは2つの意味がある。ひとつはライセンスからサブスクリプションへと変遷するビジネスモデル対応、これが表の意味である。もうひとつの裏の意味は、これを逆手にとって、ITベンダーの牙城、オンプレミス領域の切り崩だ。これまでMicrosoftは大手ITベンダーと協調しながらソフトウェアを販売・成長してきた。しかしクラウドの登場でハードウェアはユーザの視界から見えなくなった。ユーザはハード/ソフトの購入からサービス購入へとシフトし始め、これに伴いハードの売り手もソフトの売り手も新たな対応が必要となった。

同社の意気込みは賭けに近いものを感じる。
対する大手ベンダーの動きは鈍い。まず最大手のIBMは、一昔前になろうとする2003年、“On-Demand Service”を発表。笛や太鼓で盛んに宣伝し、世界中のデータセンター装備をこの“Utility Services”に改めた。呼応して一部のベンダーもオンデマンドに追従したが、ビジネスとしては成功しなかった。そして今度のクラウドコンピューティング騒ぎである。苦い経験を持つIBMはクラウドをSmart Businessとして手掛けているが積極的とは言い難い。SunのOpen Cloud Platform(記事1記事2)はオープンソースとして期待の星であったが、Oracleによる買収で部門責任者のDavid Douglas氏(SVP)と同CTOのLew Tucker氏は退社、腰砕けの状況となりつつある。もともとLarry Ellison氏はクラウドには批判的な発言を繰り返してきたから、これは想定された出来事ではあった。本音を言えば現状を維持したいITベンダー達、対して攻撃的なMicrosoft、これが新たな構図である。

1.クラウドとオンプレミス連携の鍵、AppFbric
Windows Azure Platformの構成は、①基盤となるWindows Azure、②オンプレミスとクラウドを連携させるAzure Platform AppFabric、③SQLServerに替わってデータベース機能を司るSQL Azureの3つからなる。しかしAzureの心臓部がAppFabricであることは間違いない。この機能には基本戦略が投影されている。「クラウドによるITベンダー領域の切り崩し」という命題は、協調関係にあるITベンダーを怒らせることなく、またユーザに不安を持たせない方法で進めなければいけない。このためには「企業内ITシステムをこれまでのオンプレミスからクラウドへと徐々に移行させること」、これ以外に方法がない。ITベンダーには表の理由を見せながら、彼らの提供するクラウドと同じ道を歩む。そしてユーザにはオーバーフローや新規ビジネス対応でクラウド移行を段階的に提案する。その中核がAppFabricだ。こうしてITベンダーに向かっていたハードウェア投資の一部がMicrosoftの収入となる。作戦が功を奏すれば、近未来のライセンスビジネス後退を埋め合わせ、さらなる収益源となる筈だ。一般にITベンダーの提供するクラウドは、オンプレミスのアプリケーション移行となるため、ハードウェア売上げが減って、その分がクラウドに回る循環型だ。大きな収入を得るためには特別な努力がいる。このあたりが米国の大手ベンダーが躊躇している理由である。 (PDC2009 AppFabricなどAzureアップデート記事)



AppFabricの登場には紆余曲折があった。
当初は.NET Servicesと呼ばれて幅広い機能を目指したが、昨年11月のPDC 2009 (Professional Developer Conference)で正式に現在の呼称となり、機能も絞り込まれた。こうして登場したAppFabricはオンプレミスとクラウド、さらにクラウド間のアプリケーションを連携させる。構成要素はAccess ControlService Busの2つ。AppFbricとは英語のFabricが織物を意味するように、多様なコンポーネントを有機的に結び付けるクラウド用アプリケーションサーバーだと思えば良い。ここでService BusとはオンプレミスやクラウドのAP間を繋ぐESB (Enterprise Service Bus)であり、Access Controlはそのための認証だ。一般にオンプレミスはファイヤウォールで保護されているのでクラウドとの連携にはポートを開けるか、VPNなどを利用する。次にAccess Control ServiceはクラウドAPへのアクセス認証となるもので、Active Directoryなど標準的なIDシステムが統合される。サプライチェーンなどでは、これによって、本社、サプライヤー、小売店など役割に応じたクラウドAPのアクセス設定が可能となる。

2. SQL ServerからSQL Azureへの移行
Windows AzureはPaaS(Platform as a Service)だ。そのプラットフォームの核は専用アプリケーションサーバーのAppFabricだと説明した。もうひとつ大事な要素がある。こちらもオンプレミス切り崩し戦略に沿って登場したクラウドストレージ“SQL Azure”だ。初の本格的なDaaS(Database as a Service)の登場である。この2つがWindows Azureの構成要素でもあり、切り崩しの両輪となる。SQL Azureも初期の名称はSQL Services、そしてPDC 2009で現在の名称になった。機能的にはSQL Server 2008がクラウド化されたものだ。Amazon(やGoogleの)クラウドには簡易データベースがあるが、本格的に構築するには、EC2にMySQLやOracleを載せ、S3にデータベースを作る。このため有償ソフトウェアにはライセンスが必要だ。しかし本格的なクラウドデータベースとして登場したSQL Azureではライセンスは要らず、利用量に応じた費用さえ払えば良い。



勿論、このデータベースはクラウドAPだけでなくオンプレミスAPからもアクセスが可能だ。ユーザから見ればこのデータベースはクラウドサービスだから、ソフトウェアのインストールもセットアップ、パッチも要らず、運用の煩わしさもない。またHA(High Availability)やDR(Disaster Recovery)、さらにFT(Fault Tolerant )として利用したい場合にも、特別なハードソフトの必要はない。ここがSQL AzureがDaaSと呼ばれる所以だ。

実際の利用に向けて、MicrosoftのオープンソースサイトCodeplexから移行ツールSQL Azure Migration Wizardが提供されている。このツールを使えばオンプレミスのSQL ServerからSQL Azure、その逆、SQL Azure間の移行が出来る。同社によれば最も考え易いシナリオは、ミッションクリティカルなデータベースはオンプレミスに置いたまま、コピーをクラウドにあげる。そのSQL Azureデータベースを社外でモバイルなどを使って活動する営業マンに使ってもらう。つまり、ファイル更新はオンプロミスで実行し、同期を取りながら、参照専用データベースをクラウドに置くという方法である。

3. 開発環境整備も進む
Windows Azureの開発環境整備も進んでいる。
クラウド開発のIDEは基本的にオンプレミスと同じVisual Studio 2010だ。さらにAzure関連として幾つかのSDKやツールが提供されている。まずVisual Studioでは今年2月Windows Azure Tools for Visual Studioが出た。.NETでのアプリはこれまで“Web Application”と呼ばれてきたが、Azureでは“Cloud Service”という。このVisual Studio向けツールは2008/2010版を拡張してCloud Serviceを開発できるようにしたものだ。このツールではAzure Drive (PDC2009記事参照)機能も加わった。周知のようにVisual Studioには無償版のVisual Studio Expressも提供されているのでトライアルには便利だ。次にAppFabricにもAppFabric SDKが出荷、さらにAzure全体の理解を促進するWindows Azure Platform Training Kit、ストレージアカウント管理のWindows Azure Management Toolも提供されている。現段階では、これらはややバラバラに提供されているが、いずれかなりの部分はVisual Studioに統合される予定だと聞く。