2009年8月20日木曜日

Sun Open Cloud Platformアップデート

SunのOpen Cloud Platformが気になりだした。
というのは、今年3月18日、New Yorkで開催されたCommunityOne Eastでの発表後、Early Access(α版)としてデベロッパーに開放され、夏には、つまり8月にはβ版となってコマーシャル化される予定だったからだ。しかし、どこから もβ情報は聞こえてこない。問題はプロダクト整備よりも、Oracleによる買収と関係があるようだ。まず、Sunの買収がこの夏に法的に完了し、伴って 新経営陣が決まり、平行して行われている製品統合計画との調整、そして新たなバジェットが決まる。Oracle自身は特別のクラウド戦略を持っていないの に等しいので、新計画がこれまでのままか、変更があるのか気になるところだ。その上で新経営陣からのGOサインが出る。こう考えると、β版の発表は多分、 Oracle OpenWorld 2009が10月(10/11-15)にあるので、その会場か、それ以降となるように思う。

ともあれ、Sun Open Cloud Platformについて、現状をアップデートしておこう。

Sunのクラウドは、JaveOne 2009とSun Open Cloud Platform(6/3)で述べたように、
①Infrastructure aaS(as a Service)、
②Stack aaS、
③Platform aaS、
④Software aaSの4層からなり、Amazon Web ServiceのEC2やS3はIaaS、Google App EngineなどはPaaSとして、全体を包括的にカバーしている。

試 みに、構造の簡単なAmazon S3とSun Cloud Storageを対比してみると、Sunのそれは、上図のようにZFSの上に構造化された本格的なシステムであることがわかる。実際のサービス利用は2 つ。Fileベース (WebDAV Protocol / Administration API)とObjectベース(AWS S3 Compatibility)のアクセスが可能だ。
クラウドストレージの管理用にはコンソール(Web UI)が用意され、ユーザー固有の機能はJava/Ruby/PythonなどからAdministration API経由で追加が出来る。通常のファイルはWebDAVでVolume/Folder/Fileとして扱うことが出来、既存のWebDAVアプリケー ションの継続利用やJava Clientによるアクセス、VolmeのMount、Snapshotの作成なども可能だ。Amazon S3はRESTで処理されるObject Storageとして扱われる。IaaSのもうひとつの柱のCompute Serviceは、今年1月に買収したQ-Layerのビジュアルツールを用い、Virtual Datacenter(VDC)として構築ができる。

このあたりまではOpen Cloud Platform発表後に始まったEarly Access版を通して理解できたことである。その後、Sunのクラウドには幾つか重要なものが追加された。
まず、VDC構築の鍵を握るミドルウェア層のStack as a Serviceには、当初のデータベースMySQLやアプリケーションサーバーGlassfishに、Java CAPS(Composite Application Platform Suite)が追加された。これは2005年6月にSeeBeyond買収で手に入れたEAI(Enterprise Application Integration)ツールである。Glassfish(無償)はESB(Enterprise Service Bus)としてOpen ESBを内包し、有償のJava CAPSはJava ESBがベースとなって、一段と高機能となった。

6月にリリースされたOpenSolaris 2009.06ではネットワーク仮想化技術Crossbowが 採用。Crossbowはネットワークスタックを仮想化して包括的に管理する機能である。またこの版ではZFSも強化され、クラウド上のエンタープライズ 適用に向け環境整備が整いつつある。開発環境でも幾つか動きがあった。6月末にリリースされたNetBeans 6.7でPOM(Project Oriented Model)準拠のJavaプロジェクト管理ツールApache Mavenがサポート対象となった。Mavenを使えばコードのコンパイル、テスト、ビルドまでが実行できる。Apacheファンには嬉しいニュースだ。

さらにブラウザベースでFacebookやGoogle Mapsなど様々なAPIを用いたソシアルアプリケーション、つまりWidgetの開発環境も登場。SunのProjectから始まったzemblyだ。

さらにSunがスポンサーのプロジェクト・ホスティングProject Kenaiとも連携できる。
Keinai ではコード管理(Subversion、Mercuria)、バグ追跡(Bugzilla、JIRA)、MavenやNetBeans連携、Wiki、 Forum、Twitterなどを用意し、オープンソース・プロジェクトを立ち上げる際に必要なもの全てを無償でホスティングしてくれる。いわば Google CodeのSun版である。

こうしてSunのOpen Cloud Platformの全容が段々はっきりしてきた。
レ イヤーの下から2つ、Infrastructure as a ServiceとStack as a Serviceが姿を現し、各種の開発環境も整備が進んだ。Amazon Web Service(EC2/S3)から遅れること3年。現時点で最強のCloud Platformのように見える。そして、これからはMicrosoftやIBMとのEnterprise Cloud Computingの戦いだ。Oracleの買収によって、今後、Sun Open Cloud Platformがどのように変化するのか目が離せない。