2009年8月11日火曜日

KVMの功罪 -仮想化市場が変わる-

KVMの登場で仮想化市場の構図が変わり始めた。
市場の流れは、仮想化技術そのものの競争から、その周りの環境整備へと進んできたというのに、 KVMの登場は、時代を2年戻してしまったようだ。2007年、それはこの市場の流れを大きく変えた年だった。XenとLinuxの融合を望んだ多くのデベロッパーやコミュニティーの期待とは裏腹に、Lnius Torvalds氏はQumranetのKVMの採用を決めた。その年の8月にXenSourceはCitrix Systemsに買収され、KVM搭載のLinux Kernel 2.6.20が11月に登場した。

◆Linuxが下か、Winodowsが下か

Linus Torvalds氏の考えも解らないことはない。
仮想化技術の進展に伴い、仮想化機能はOSの一部のようになってきた。MicrosoftがVMwareを恐れた理由もここにある。VMwareが機能拡大すればWindowsが脅かされる。一般のOSとは視点が異なるが、現にVMwareはCloud OSとしてvSphere 4を出荷し始めた。MicrosoftもHyper-Vだけにとどまらずず、Windows Azureをクラウド時代の.NET Cloud OSとして開発した。この状況はLinuxには厳しい。企業向けではUnixにとって替わったLinuxがWindowsよりも上だという自負もある。こ れからも企業用サーバーOS の座を守るには、Windowsとの差別化が必要となる。仮想化技術を構造的に見ると、XenとHyper-Vは、Microsoftが望んでXenSourceと提携したことから近似している。Xen側から言わせれば、この時点で、Xenの敵は、たまたまMicrosoftと同じくVMwareだっただけのことだが、結果そのことがWindowsとの差別化を考える上で大きな障害となった。Linuxが企業向けサーバーで確固たる地位を保ち続けるためには、Kernelの中にKVMを取り込んで、処理能力の面で優位に立ち、LinuxがベースOSとなり、WindowsはGuest OSとしてその上に乗ることが望ましい。万一、Windowsがベースとなり、そのHyper-Vの上にLinuxがGuest OSとなるようなことがあれば、ますます上り調子のWindows Serverを勢いつかせてしまう。

◆仮想化技術からシステム運用、そしてクラウドへ

し かし、クラウドコンピューティング構築を目指すユーザー企業にとって、仮想化技術の優劣はもはや検討項目の一部でしかない。はっきり言って、VMware が2007年、IPOをした時点で流れが変わってきたことに心ある人たちは気づいていた。仮想化技術を核にその周りの環境整備には資金がいる。このIPOはそのための資金であった。その後、VMwareは開発部門を拡充し、複数台の仮想化された物理システムを運用管理するvCenter、稼動中の仮想マシン間を移行させるvMotionなどを開発した。
そしてESX ServerとこれらをセットにしたVMware Infrastructure 3の提供、続くバージョン4はvSphere 4(7/29)となって、ESXを使った仮想マシン部をvComputeとし、ストレージ部を仮想化するvStorage、ネットワークもvNetworkと守備範囲を広げた。新CEO、Paul Maritz氏の目指すCloud OSの誕生である。大雑把には、これらが2年前から今日まで、VMwareが開発してきた内容だ。

◆仮想化市場が変わる

そして6月中旬、既報のようにKVMを採用したRed Hat 5.4β(8/10)が登場した。
Xen は次期メジャーバージョン、つまりRed Hat 6からはサポートしないと宣言。一方のXenについて、KVMにファミリアな人たちは技術者もXenからQumuranetに移ったし、内容的にもXen は古いと論評する。しかし、Xenは、今やクラウドの中心となったAmazon Web Service、Oracleに買収されたSunのxVM Server、xVM Ops Center、VirtualBox、Oracle自身のVM Server、そして同社が買収したVirtual Ironにも採用されている。


こうして仮想化市場の構図が変わり始めた。
Xen はCitrixに買収されたけれども、同社はServer市場より、Thin Client市場に強く、ServerではOracleとSun陣営が擁護している。また、そのCitrixはMicrosoftと昔からの仲良しだ。 KVMを採用したRed Hatにはやることが沢山ある。これらは同社だけでなく、ISVなどに負うことになる。中でも注目はIBMだ。今やzOS以外に自前OSを持たないIBM は、ユーザーから特別に要求がなければRed Hatを適用する。しかし、仮想化では何といってもVMwareだ。現にプライベートクラウド構築用に発表したアプライアンスのCloudBurst(6/21)でもESXが内臓されている。もしもIBMが本気でKVM採用のRed Hatを支援することになれば状況が変わる。しかし、SIが本業のIBMにとって、それは現実的な選択ではないだろう。

LinuxのKVM採用、これによってオープンソース陣営の仮想化は2分した。
Xen が衰退し、KVMに移っていくことになるのかは解らない。いずれにしても時間がかかる。これらの動きを見るにつけ、オープンソースの本質的な問題を考えさせられる。多くのデベロッパーはエンジニアだ。彼らは政治向きには疎く、目的別のプロジェクトに多くは属し、全体の統制は取れていない。比較して大手の ITベンダーは、製品のグランドデザインを持ち、市場戦略を策定し、目的に向かって着実に実行に移してゆく。だからこそ、コミュニティーの重鎮たちや Linux Foundationなどの関連団体、オープンソース企業の役割が重要なのだ。彼らの知恵を結集し、短期的なビジネスだけでなく、また、技術偏重でなくものごとを見極めることが望まれている。

いずれにしても仮想化市場は、2年前までは2つ(VMwareとXen)、昨年には3つ (VMwareとXen、そしてHyper-V)、今は4つ(VMware、Xen、Hyper-V、KVM)、しかもXenは2007年のCitrix による買収と今年のOracleによるSunの買収で2つの陣営が存在する。このような細分化の動きで、一番喜んでいるのはVMwareであり、次は Microsoftかもしれない。