2016年2月20日土曜日

-Verizonはパブリッククラウドをシャットダウン-
           -AT&Tは一部をIBMに売却!-

米2大キャリアを構成する東海岸のVerizon Communications(本社ニューヨーク)は、現地時間の2月11日、ユーザに対して、Verizon Public Cloud Serviceを来る4月12日でシャットダウンすると通知した。ユーザには2ヶ月間の余裕があり、その間に移行したり、データの保全が必要となる。このユーザへの直接の通知はKenn White氏のTwitterで明らかになった。実のところ、1月31日にHP Helion Public Cloudがシャットダウンしたばかりである。


=クラウド戦略の転換期!=
大手キャリアは、今、大きな戦略転換期にある。
これまで大手キャリアはパブリッククラウド市場に積極的に参加してきた。以前は、電話会社と言えば、企業ユーザに限定したホスティングやコロケーションなどのITサービスを行っていたが、クラウド時代が到来、個人ユーザにも手が届くようになった。Verizonだけでなく、競合他社も企業買収を繰り返して、クラウド機能を強化してきた。しかし、AmazonやAzureに対抗することは難しく、昨年夏以降は撤退の噂が絶えなかった。 Verizonのクラウドは、グループ傘下企業のVerizon Businessが当初担当していたが、はかばかしくなく、2011年1月、$1.4B(約1,680億円)で Terremark Worldwideを(フロリダ州マイアミ)買収した。Terremarkは売り上げの20%強を連邦政府機関からあげており、東海岸を営業基盤とするVerizonと利害が一致した。この買収の完了日は、何と今回のシャットダウンと同じ4月12日(2011年)である。ともあれ、以来、VerizonはTerremarkが開発したクラウドサービスを提供。このクラウドはVerizonの顧客を得て軌道に乗るかに見えたが、そう簡単ではなかった。AWSなどが市場を支配して、旧Terremarkの経営陣が辞め、さらに2013年10月には、米保健福祉省HHSDepartment of Health and Human Services)とのヘルスケアサイトHealthcare.govの契約がHPに切れ変えられた。今、噂されているのは、Terremarkの最大資産であったマイアミの巨大データセンターNAP of the Americasの売却である。
=AT&TはIBMに売却!=
AT&Tの場合も同様の状況にある。
2006年、USi(USinternetworking)を買収。AT&Tのクラウド戦略は、この有名なASP(Application Service Provider)から始まったと言って良い。しかし、その後の状況はVerizonと同じである。Reutersの報道によれば、AT&Tは昨年初めからは、保有データセンターを$2B(約2,400億円)で売りに出していた。そして昨年末、IBMは、これらデータセンターを取得し、AT&Tのクラウドサービスの一部であるマネージドアプリケーションとマネージドホスティングを譲り受けたと発表した。AT&TがIBMに助けを求めた格好である。

この2社だけでなく、キャリア3位のCenturyLinkもデータセンターを売りに出しており順調とは程遠い。Verizonは当面、一般向けを止めて、企業向けのクラウドに絞る意向だ。AT&Tはその企業向けを一部IBMに移管して、自社のサービス内容を限定し始めた。こうして、キャリアのクラウド戦略は変更を余儀なくされ、今後さらなる後退が起こる可能性を秘めている。
  

2016年2月1日月曜日

絶好調のAWS2015年度決算、利益は全社の40%!
          -今年は$12Bビジネスへ向かうか-

1月28日、Amazonの2015-4Q決算発表があった。
この4Qの決算発表は2015年度決算の前出し(暫定)でもある。 同日、株主やメディア向けにカンファレンスコールがあり、以下がその概要だ。それによると、Amazon全体の売り上げやキャッシュフローは大きく改善し、中でもAmazon Web Services-以下AWS-の急伸が目立った。下図のように、オールAmazonの2015 4Q総売り上げは約$35.7B(約4兆2,840億円)、翻って、一昨年の2014 4Q売り上げは$29.3B(約3兆5,160万円)なので22%のアップである。昨年1Q以降は緩やかな伸びが続いていたが、4Qが急伸して好業績となった。キャッシュフローも2015年4Qでは約$7.3B(約8兆7,600億円)となり前年比276%と大きく改善した。
=AWSの売り上げは全社の7%、しかし利益は全社の41%!=
もう少し細かく見て行こう。Amazonの報告書(下図)では、まず物販について、北米(North America)とその他国際(International)に分かれ、AWSはひとくくりで別掲となっている。この3つを合算した全社の2015年度総売り上げはConsolidated Net Salesで解るように約$107B(約12兆8,400億円)だ。内訳はカナダとアメリカの北米市場が$63.7B(7兆6,440億円)、国際市場は$35.4B(4兆2,480億円)、AWSは$7.88B(9.456億円)となり、AWSの売り上げ比率は全社の7.3%である。次に利益(Operating Income)はどうか。利益は北米が$2.751B(3,301億円)のプラス、国際は▲$91M(109億円)のマイナス、全体は下図のConsolidated Segment Operation Incomeから解るように$4.523B(約5,428億円)となった。これに対してAWSは$1.863B(約2,236億円)だから、何と全社の41%の利益を叩き出していることになる。


=AWSはまだ伸びる、今年は$11B-$12Bへ!=
AWSの財務内容はこれまで明らかではなかった。
初めて公表されたのは昨年の4月、2015年1Qからである。当ブログでもその内容分析をアップした。これらデータの発表の際、CEOのJeff Bezos氏は “Amazon Web Services is a $5 billion business and still growing fast — in fact it’s accelerating,” とコメントした。つまり、2014年度のAWSは$5B(約6千億円)の売り上げだったようだ。そして2015年の伸び率を50%と仮定すれば$7.55Bビジネスになる。昨年の実績は$7.88Bでそれよりやや上回った。今年も同様に推移すれば$11B-12Bビジネスが見えてくる。