2010年11月30日火曜日

名門Novellはどうなるのか!

11月22日、とうとう名門Novell複数の投資企業が支援するAttachmateに買収されることが決まった。このAttachmateはメインフレームのターミナルエミュレータやエンタープライズセキュリ ティー製品の会社で、30年の歴史と6万5000社のユーザ企業を持っている。しかしながら今回の買収劇の背後には、一連の投資企業がいる。この投資企業の仲介によりMicrosoftはAttachmateからNovellの持つ一連の特許を再取得する予定だ。

◆ Microsoftとの戦いの歴史
振り返ると同社の系譜には驚かされる。

同社の初期はオフィスバックエンド系のFile ServerやPrint ServerにかかるNetWare製品に注力していた。そして当初の独自開発OSから1991年にはPC OSとしてMicrosoftより技術的に優れていたマルチタスク制御のDigital Researchを買収してNetWareに組み込んだ。後に、このDigital Research部門は子会社のCalderaとなり、SCO Groupに売却することになる。この時期、PCは単体利用から企業内LANによるNetworkへの移行期でNetWareが浸透し、それをMicrosoftが開発したLAN Managerが追う展開となった。1994年、この分野の競争激化に伴いNovellは一転、Unixの権利をAT&Tの子会社Unix System Laboratoriesから買取り、Unixを組み込んだUnixWareを 開発、NetWareと併売体制となった。同年にはまた、MicrosoftのOffice製品に対抗すべく、Word Perfect(後にCorelに売却)を傘下に収めて彼らの製品をUnixに移植し、全方位でMicrosoftに対抗する体制を敷いた。しかしながら、これらの大胆な戦略も功を奏さず、1995年にUnix部門をSCOに売却。その後、この売却時の契約の曖昧さが後にSCOによるLinuxベンダーへの著作権裁判に発展したのは周知の通りである。
このような流れからNovellは一時期、コア製品のNetWare、その延長線上で開発したネッ トワーク上の機器の所在管理をするDirectory Serviceに的を絞った。そのLDAP (Light Weight Directory)は現在でもMicrosoftのActive Directoryと共に広く使われている。

◆ Linux市場への参入
次の転機は2003年だ。
この年8月、Desktop LinuxのXimianを買収、同11月に独SuSE Linux AGを買収して、Linux 市場に打って出た。Ximianにはオープンソース界では有名なファウンダーのMiguel de Lcaza氏とNat Friedman氏がいた。この2人は米系LinuxではほぼデフォルトとなったGUIのGNOMEプロジェクト、さらにMicrosoft .NETをLinuxで稼働させるMono
プロジェクトを創設し、中心となって活動した人物だ。
結果的にはXimianのDesktop Linux事業は育たなかったが、この2つの企業買収は同社事業再編の強烈な戦略だった。Ximianからは優秀なLinuxの人材、SuSEからは現在のサーバー製品を手に入れた。

◆ Microsoftとの 協調路線へ
さらなる転機は2006年の11月2日だった。
Novellは突然のように、Microsoftとの大きな提携を発表した。1983年、CEOに就任したRay Noorda氏が育て上げたNovellは、これまで常にMicrosoftと対決してきた。
しかしNetWare市場はMicrosoftに奪われ、残るはSuSE Liunxだけとなった。そのLinux市場で生き残るにはWindowsとの共存、それしか名案はなかった。この時期、
Microsoftが同社の持つ特許にLinuxが抵触しているとし、かつGPLv3の策定期であったことから、この提携はLinuxを支えてきたオープンソースコミュニティーから大きな反感を買った。これが欧州で人気が高かったSUSEが、米国市場で伸び悩んだ一因である。

◆ 今後はどうなるのか
今回の買収劇には、噂だったVMwareは絡まなかった。
しかし、可能性は残されている。Attachmateの発表によれば、NovellはSUSE部門とそれ以外を扱うNovell部門に分かれる。XimianやSuSE Linux AGからの優秀な人材を抱えて戦った旧Novell、それに対し、AttachmateはLinuxへの求心力も低く、人材もいない。さらに
同社自身、Francisco PartnersやGolden Gate Capital、Thoma Bravoなどの投資グループの所有物である。今年3月にはNovell株の約30%を持つヘッジファンドのElliott AssociatesがNovellの全面買収を試みたが株主の反対で不調に終わった。今回の買収はその第2幕だ。そしてAttachmateにはそのElliottが加わった。製品戦略でみれば、Attachemateにとって2006年買収したセキュリティーのNetIQ同様、ネットワーク製品に強みを持つNovell部門の有用性は高い。しかしどこから見ても、SUSE部門が上手くいくとは思い難い。SUSEのためには、いやLinuxの健全な普及のためにも、再度、しっかりした買い手が見つかることを期待したい。

2010年11月21日日曜日

Ray Ozzie氏からのメッセージ!

Bill Gate氏からChief Software Architectを引き継いだRay Ozzie氏 のMicrosoft退社(10/18発表)が気にかかる。氏がMicrosoftのクラウドを推進してきた中心人物だからだ。Gates氏がそうだったように、Ozzie氏はMicrosoft製品全域の方向性や基本的な考え方をソフトウェア構造の中に反映して、これまでの流れを牽引してきた。オンラインサービスの “Windows Live”やクラウドの“Windows Azure”などだ。Gates氏の全幅の信頼があった氏の突然の退社、それは氏の社内挫折ではないかと捉えることは自然なことであろう。それを裏付けるように、氏は個人的なブログ(10/28付)の中で以下(要約)のように述べている。

◆ Dawn of New Day(新しい日の夜明け)
5年前(Chief Software Architect就任)、Microsoftに大きな変化を起こさせるために、私は“Internet Services Disruption(インターネットサービスの崩壊)”というメモを書き、その冒頭で5年毎に我われの産業は大きな変化に見舞われるようになるだろうと予測しました。事実、その後の5年間、会社中でこれまでのPC中心からサービス中心にむけた変革に取り組むことになりました。


サービスの中心となった“Seamless-OS(継ぎ目のないOS)”では、オプションでしたがWindowsとOffice Softwareを自然なサービスとして補完すべく、Windows Liveを提供しました。そして“Seamless-Productivity(継ぎ目のない生産性)”では、Office 2010からOffice 365、SharePointからLiveへとWeb連携を推進させました。“Seamless-Entertainment(継ぎ目のないエンターテイ メント)”でもXbox Liveは、Xboxをリアルタイムで、ソシアルで、メディアリッチなTVエクスペリエンスへと変化させました。全てがサービスへの流れです。さらに “Service Platform”の領域では、Windows AzureとSQL Azureがクラウドとなって登場したことを本当に誇り思います。実際のところ、このメモだけでなく、議論や社内リーダーたちによって革新的なサービスが次々に作られ、新しい検索サービス“Bing”はこうして開花しました。我われのサーバー資産は、仮想化とクラウドコンピューティングの登場で際立った移行を可能とするところまで到達しました。私にとってもっとも重要であり、また誇りに思うことは、競争原理の上でインターオペラビリティーとプライバシーの文化を熟成させ、本物の開放性を勝ち得てきたことです。

それでも5年前のメモの幾つかはそのまま手付かずに残っています。我われの競合相手 もインターネット中心の社会的推移の中で、モバイルなど注目に値する開発を行い、ハードウェアとソフトウェアの融合を推進してきました。このように、我われは機敏な開発こそが、背面で起こっている劇的な変化を吸収し得るものだということを見てきました。これらの変化は以前から予測されてきました。しかし、 この5年の変化はWiFi、3G/4Gなど想像を超えるものでした。それらは今、当然のことのように人々に受け止められています。過去を見れば、 “System Board”が四角なPCボックスとなり、今では“Systems on Chip’がピカピカなデザインのデバイスを作り上げ、大きなCRTは軽量薄型のタッチスクリーンに置き換わり、企業内組織や業務の流れはインターネット時代に沿ったものとなりました。このような変化を受け、生産者と消費者の壁も消え、古典的な流通機構は崩壊し、世界中で、あらゆる産業が再構築されてきま した。この再考作業は、もっとも基本的な構造信条を疑うことから始まります。そうすることで、生き残るための知恵ができるのです。過去5年間は息を呑むようでした。次の5年は、もうひとつの変曲点の始まりです。

-Imagining A "Post-PC" World(次世代PCとは)
2010 年11月20日、それはMicrosoftにとって記念となる日です。Windows 1.0の開始から25年目にあたるからです。我われのこれまでの開発は、「個人的なコンピュータ」という夢のような大胆な概念を支持することから始まりま した。Windowsは初のGUIではなかったかもしれません。しかし、時間の経過と共に世界中で10億人以上が利用し、コンピューティングとコミュニ ケー ションを民主化してきました。そしてWindowsとOffice製品は、PCを規定するほどに成長しました。さらにPCにインストールされたプログラムやファイルなどによって、私たちは“Computing”というものを体感し、ブラウザーやインターネットさえ見分けがつかないほどに成長したのです。しかしこの裏側で、PCクライアントとPCベースのサーバーも25年にわたって成長し続け、結果、巨大な“複雑さ(Complexity)”も生み出してきま した。この複雑さは多面的で、今日では超人的なエンジニアリングとデザイン才能がなければシステム構築ができないまでに膨張しました。複雑さはユーザーやデベロッパー、さらにはITの生命を吸いとります。複雑さはセキュリティー問題や運用管理者の欲求不満を引き起こし、そしてシステムを殺すのです。複雑に なったシステム同士の相互連携によって、複雑さはさらに増長され、我われの持つ全世界のシステムは全体にもろくなってきています。このように見ると、成長 してきたPCの生態系は今や限界に近づきつつあると言っても過言ではありません。我われは新しい道を探らなければなりません。そのための第1歩は恐れずに想像すること、そして夢を追うことです。

-Continuous Service | Connected Devices
                      (連続したサービス|接続されたデバイ ス)

過去5年を振り返ると、夢を見るような出来事の連続でした。確かに「ネット接続したPCとPCベースのサーバーは素晴らしい IT」を推進してきました。しかし、ゆっくりと確実に次世代が始まっています。特に強力なコミュニケーションとアプリケーション能力を持つモバイルやパッドの出現には目を見張るものがあります。それらはこれまでのPCを遠のけ、より単純な概念を求めています。それによって新しい世界が開けるのです。 Webと接続されたデバイス、それは全ての情報がクラウド上にあることを期待しています。我われは1)全てを繋いだクラウドベースの連続したサービスと、 2)そのサービスとインタラクション(やり取り)が出来るアプライアンスのようなネット接続デバイスの世界に向かっています。

-How It Might Happen(それはどのように起こるのか)
過去25年にわたり開発してきたデバイス中心(Device Centric)のハードウェアとソフトウェアの世界から、この新しい時代を切り開くことは容易ではありません。しかしこれは実現させなくてはなりません。以前、メインフレームやミニコンピュータの代わりとしてPCを登場させたように、劇的な新しい出来事を起こすことは可能です。産業再生の次の波が あるならば、「インターネットに接続した連続サービスとデバイス」という関係が新しいシンプルな概念のもとで実現されるでしょう。しばらく時間がかかるかも知れません。
しかし私はそれを信じています。

Realizing a Dream(夢を実現する)
1939年、ニューヨーク、古今でもっとも素晴らしいとされた万博がありました。
失業率が17%を上回る大恐慌で疲れた人々を、この万博は勇気づけてくれました。
世界中の国々や産業界のパビリオンは夢にあふれ、明日への世界、将来のイメージを演出しました。その万博のテーマは、そう「Dawn of New Day(新しい日の夜明け)」です。この夢の万博のお陰で、ハイウェイの建設や郊外住宅などへの希望が湧き上がり、翌年の製造業は50%と驚異的な成長を実現しました。期待を持って望めば、何事も成し遂げられ るのです。
今日、私自身の夢は、我われの産業のため、そしてMicrosoftのために広がっています。それは驚くべき将来、クラウド中心 (Cloud Centric)の世界です。疑いなく1939年と同じような、不確実な状況が私たちを、今日、包み込んでいます。仕事、住宅、健康、教育、治安、環境など。我が社についても同様です。だから、厳しく、俊敏に、夢を持って、
そして、希望と楽観主義で望むべきなのです。我われの状況を打破する全ての回答は
“クラウド(Cloud Computing)”にあります。ネットに接続された全てのデバイスは、クラウド上の連続したサービスと連携し、限りなく展開されることになります。クラウドは世界中の主要組織の基盤となり、ITシステムはもちろん、ビジネスプロセスをも進化させる触媒となります。それによって、新しいサービスは想像も出来ないほど魅力的な姿となるはずです。モバイルやパッドはほんの手始めです。次の5年、それは「新しい日の夜明け」です。太陽はクラウドによって提供される連続したサービスとネット接続されたデバイスの上に輝きます。Microsoftはこの歴史的なコースに上手く乗り始めました。恐れずに挑戦 し、次の5年のマイルストーンを祝いましょう。
我われのために、産業のために、そして顧客のために。。。。

-Ray Ozzie氏の退社の意味するもの
このブログの内容は、挿入画 面にあるように宛先が「Executive Staff」と「Direct Reports」となっている。つまり、私的ブログと同じ内容がMicsoftの経営幹部に流されているのだろう。これは氏の葛藤の末の惜別のメッセージである。これを読むと、氏のクラウドに賭けた熱い思いが伝わってくる。氏が心血を注いだWindows AzureとSQL Azure。Windows Azure、それはVisual Studioで開発したアプリケーションをオンプレミスでもクラウドでも自在に稼働させることができるプラットフォームであり、SQL Azureは初の本格的なDaaS(Database as a Service)として、どのようなデータもクラウド上に蓄えることができる。この2つを基本にMicrosoftが持つこれまでの製品や資産を、段階的にクラウドと連携させていく。これが氏が描いていたストーリーだ。これによって絶え間ない連続したサービスとネット接続デバイスの未来が開けてくる筈だった。しかし、一方で企業は常に利益を追供する。特に米国企業の場合は厳しい。次の5年の波に乗り換える時でさえも、片時の猶予も与えてくれ ない。夢と現実の狭間(ハザマ)で氏の立場は揺れ動いたに違いない。
願わくば、Microsoftのクラウド戦略に今後大きな変化がないことを祈るばかりである。

(この翻訳が文意を優先したこと、一部、詳細を割愛したことを陳謝します)

2010年11月7日日曜日

MicrosoftとGoogleのクラウドバトル!

MicrosoftとGoogleのクラウドバトルが激しくなってきた。
両社共にクラウド型のオフィスサービス、Microsoft Office 365Google Apps for Businessを武器に、米国内の州政府や大規模地方自治体に売り込みを強 化してきた。

◆ Office 365で巻き返しを図るMicrosoft
Microsoftの場合、米国市場ではこれまで企業向け生産性向上オンラインサービス -BPOS(Business Productivity Online Services)-を提供してきたが、先月、10月中旬、サービス強化に伴い、Office 365とリブランドした。このOffice 365(現在はβ版)は先行するGoogleへの対抗である。Office 365は、全てがクラウドベースで、ユーザーが使い慣れたMS Office Suiteに加え、Exchange Online、SharePoint Online、Lync Onlineが含まれている。ここでExchange OnlineとはExchangeメールサーバーのホスティングサービスであり、コラボ用のSharePoint Onlineも同様、Lync OnlineはIMやAudio/Videoを統合したSocial Networkingのホスティングである。そして、Office 365にはSmall Business向け、Enterprise向け、Education向けの3つがある。

Microsoft はこれを武器に積極的に公的機関の攻略を開始した。
New York市やCalifornia州、Minnesota州などだ。10月末に発表されたNew York市の場合は、これまで市がOffice SuiteやExchangeなどでMicrosoftに払っていたライセンス料を、クラウドオンラインを利用することで最大$50M(1㌦100円換算で50億円)削減することが可能だという。California州でもMicrosoftと の調整が進み、最大関連職員20万人の利用が見込 まれる。これより先、Minnesota州がMicrosoftとの長期間取引を発表したのは9月末のことである。見込まれる職員は33,000人だ。し かし、これら3つの契約に共通することは、州や市の財政難からのWebサービス採用であり、実際の移行には、職員の新しいサービスの習得や反応、外部の市民や企業との関連などがあって容易ではない。当面、すぐに手が付けられるのはメールサーバーの切り替えだけのようである。

このような州政 府や市の費用削減対策は、Microsoftにとっても、これまでのライセンス収入が大きく落ち込む。しかしGoogle Appsとの対抗上、手をこまねいて入られない。損を承知の取引である。そして3つのディールでMicrosoftが勝ち得たのは、慣れ親しんだOffice SuiteのWeb版というだけでなく、“Single Tenant”サービスにあるようだ。
つまり、Googleのように相乗りの“Multi Tenant”ではなく、企業単位に囲われた安全なサービスが好感を持って受け止められた模様である。

◆ Googleの場合
一方のGoogleは、オフィス分野のオンラインサー ビスで先行し、教育関係で多くの実績をあげてきた。アリゾナ州立大学、南カリフォルニア大学、ジョージワシントン大学、ミネソタ大学、ブラウン大学、ノーザンウェスタン大学、サンノゼ・シティーカレッジ、バージニ ア・コミュニティーカレッジなどだ。さらに2008年には、首都Washington DCでMicrosoftの牙城からGoogle Appsの導入に成功した。これに尽力したのは当時、Washington DCのCTOだったVivek Kundra氏で、彼はこの実績から昨年3月、連邦政府のCIOに抜擢され、 USA.govやData.gov、そして、連邦政府の“総合クラウドポータル-Apps.gov”の構築に手腕を振るってきた。Washington DCの場合、まだMicrosoft ExchangeからGmailには全面切り替えに至っていないが多くの    職員が活発に利用している。
次にGoogleが手がけたのは米西海岸最大の都市Los Angels市だ。
このシステムは職員や関連の人 たち3万人が利用するGoogle Apps最大規模となった。これらの契約には、住民情報の厳格な管理のための工夫や障害対策などが細かに記載されている。

◆ Web時代の到来
いずれにしても、オフィス業務はいよいよWeb時代に 突入したようだ。
これにはユーザーの再教育や慣れの問題がつきまとうが、企業や団体にとってはコスト削減に大きく寄与する。クラウドがこのような 形で日常業務に定着し、一方でデータセンター内の複雑な業務がクラウドで動き出せば、大きな経済効果となる。目下の不況打開策のひとつに、クラウドが大き な位置を占めていることは間違いないだろう。

2010年11月3日水曜日

成功するかマルチハイパーバイザー管理!
                -クラウドの今後はどうなる(3)-

このシリーズは活発なマルチハイパーバイザー市場を背景に始まった。
製品群の狙いはハイパーバーザーの抽象化にある。ユーザー企業はOSと仮想化 技術の一体化に伴って、好むと好まざるとに係わらず、複数のハイパーバーザーを使わなければならない時代に向かっている。この煩わしさを解決するのがマル チハイパーバーザー管理ツールのクラウドマネージメントソリューションだ。しかし成功するだろうか。

 矛盾する戦略
問題の起点は仮想化ベンダーの戦略にある。
彼らは 基本的にベンダーロックインによる市場拡大を目指してきた。OSは持たないが、仮想化技術で先行したVMwareは運用管理をセットにした差別化を推進 し、MicrosoftはWindowsとHyper-Vの親和性を強調してきた。後発のKVMもRed Hatに組み込まれて、処理効率の良さをアピールした。その上でさらに彼らはクラウド基盤の整備に向かい出した。VMwareのvCloud、Red HatのCloud Foundation、Citrix/XenのXen Cloud Platformなどだ。つまり、下位の仮想化技術から上位のクラウド構築ツールまで完全な縦割り構造のベンダーロックインとなってきた。

これには彼ら自 身も当惑気味だ。当初は、基本技術の差別化のためのロックインだった筈が、それが拡大して、気がついたら全面戦争の様相となった。これまで牽制し合いなが らも共存してきたOSベンダーはこのような状況をユーザ企業が望まないことは知っている。一方VMwareは先行メリットを最大限に活かすべく、がむしゃ らに進んできたが、状況が複雑になり過ぎてしまった。

◆ クラウド 管理ツールの役割
そして割って入ったのがクラウド管理ツール(Cloud Management Solution)である。
こ の分野の製品には、①マルチハイパーバーザー管理にウェートを置いたものと、②クラウドインフラにウェートがあるものがあり、重複部分も多い。今回は前者 を報告し、次回は後者について言及する。また、製品の多くはオープンソース物で、下から上まで、全てが縦割りのベンダー戦略への対抗策となっている。これ らの製品がユーザー企業の支持を受けるか、今後の動きに要注意だ。
現在、市場に出始めたソリューションは前述のように必ずしも統一された機能では ない。概ね下図のように考えることができる。これらの技術が確立できればユーザー企業は固有の仮想化から解放され、真にユーザーフレンドリーなクラウド時 代に一歩進むことができる。しかし、仮想化技術を抽象化する仮想マシン管理には、基本となるマシンイメージ形式が各社ばらばらであることなど、まだまだ、 障害が多い。DMTF(Distributed Management Task Force)が定めた期待のOVF(Open Virtual Format )も標準フォーマット仕様ではなく、各社固有のフォーマットをラッピングした域を出ていない。


◆ 各社製品の特徴
以上の状況の中で開発の進むクラウド管理製品の特徴を見 てみよう。

AbiquoはHyper- V、KVM、VMware、Xenなどをカバーすることを目指し、①マルチハイパーバイザー管理エンジン“Abiquo Server”、②マシンイメージ変換“OVF Repository Space”、③運用管理“Abiquo Portal”からなる。製品はオープンソースを基本に商用版もある。

Convirtureの 最新版ConVirt 2.0はXenとKVMに対応し、それらを共通のダイナミック・リソースアロケーションとすべくプロビジョニングにはテンプレートを提供、認証は LDAP。製品としては仮想マシンや物理マシンのフェールオーバーなどリカバリーに力点があり、オープンソースと商用版がある。

Enomalyの ECP(Elastic Computing Platform)はXenやKVM、VMware(計画)に も対応する。ECPは複数データセンター対応でユーザーPortalなどを揃えたService Provider向けを中心に、企業向けも整備中だ。同 社の初期製品はオープンソースだったが、現在の商用製品は別物と言ってよい。

Red Hatが始め、その後、Apacheに寄贈されたDeltacloudは、著名なクラウドサービスや仮想化などのインフラが提供するAPIを用いてクラウド管 理(インスタンス作成、開始、停止など)を実行する。このツールにはComputeとStorageがあり、ComputeではAmazon EC2、GoGrid、OpenNebula、Rackspace、Terremark、RHEV-M、vCloudなどが該当。Storageでは当 面、Amazon S3とRackspace CloudFilesに対応。

Novell Cloud ManagerXen、 VMware、 Hyper-Vに対応、KVMについては来年上期の予定。利用にあたってはテンプレート化が進み、インスタンス作成やプロビジョニングに効果的だ。この製 品はクラウドのライフサイクルを扱う同社Workload IQのポートフォリオとなっていることから今後の発展が注目される。