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◆ Microsoftとの戦いの歴史
振り返ると同社の系譜には驚かされる。
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同社の初期はオフィスバックエンド系のFile ServerやPrint ServerにかかるNetWare製品に注力していた。そして当初の独自開発OSから1991年にはPC OSとしてMicrosoftより技術的に優れていたマルチタスク制御のDigital Researchを買収してNetWareに組み込んだ。後に、このDigital Research部門は子会社のCalderaとなり、SCO Groupに売却することになる。この時期、PCは単体利用から企業内LANによるNetworkへの移行期でNetWareが浸透し、それをMicrosoftが開発したLAN Managerが追う展開となった。1994年、この分野の競争激化に伴いNovellは一転、Unixの権利をAT&Tの子会社Unix System Laboratoriesから買取り、Unixを組み込んだUnixWareを 開発、NetWareと併売体制となった。同年にはまた、MicrosoftのOffice製品に対抗すべく、Word Perfect(後にCorelに売却)を傘下に収めて彼らの製品をUnixに移植し、全方位でMicrosoftに対抗する体制を敷いた。しかしながら、これらの大胆な戦略も功を奏さず、1995年にUnix部門をSCOに売却。その後、この売却時の契約の曖昧さが後にSCOによるLinuxベンダーへの著作権裁判に発展したのは周知の通りである。
このような流れからNovellは一時期、コア製品のNetWare、その延長線上で開発したネッ トワーク上の機器の所在管理をするDirectory Serviceに的を絞った。そのLDAP (Light Weight Directory)は現在でもMicrosoftのActive Directoryと共に広く使われている。
◆ Linux市場への参入
次の転機は2003年だ。
この年8月、Desktop LinuxのXimianを買収、同11月に独SuSE Linux AGを買収して、
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プロジェクトを創設し、中心となって活動した人物だ。
結果的にはXimianのDesktop Linux事業は育たなかったが、この2つの企業買収は同社事業再編の強烈な戦略だった。Ximianからは優秀なLinuxの人材、SuSEからは現在のサーバー製品を手に入れた。
◆ Microsoftとの 協調路線へ
さらなる転機は2006年の11月2日だった。
Novellは突然のように、Microsoftとの大きな提携を発表した。1983年、CEOに就任したRay Noorda氏が育て上げたNovellは、これまで常にMicrosoftと対決してきた。
しかしNetWare市場はMicrosoftに奪われ、残るはSuSE Liunxだけとなった。そのLinux市場で生き残るにはWindowsとの共存、それしか名案はなかった。この時期、Microsoftが同社の持つ特許にLinuxが抵触しているとし、かつGPLv3の策定期であったことから、この提携はLinuxを支えてきたオープンソースコミュニティーから大きな反感を買った。これが欧州で人気が高かったSUSEが、米国市場で伸び悩んだ一因である。
◆ 今後はどうなるのか
今回の買収劇には、噂だったVMwareは絡まなかった。
しかし、可能性は残されている。Attachmateの発表によれば、NovellはSUSE部門とそれ以外を扱うNovell部門に分かれる。XimianやSuSE Linux AGからの優秀な人材を抱えて戦った旧Novell、それに対し、AttachmateはLinuxへの求心力も低く、人材もいない。さらに同社自身、Francisco PartnersやGolden Gate Capital、Thoma Bravoなどの投資グループの所有物である。今年3月にはNovell株の約30%を持つヘッジファンドのElliott AssociatesがNovellの全面買収を試みたが株主の反対で不調に終わった。今回の買収はその第2幕だ。そしてAttachmateにはそのElliottが加わった。製品戦略でみれば、Attachemateにとって2006年買収したセキュリティーのNetIQ同様、ネットワーク製品に強みを持つNovell部門の有用性は高い。しかしどこから見ても、SUSE部門が上手くいくとは思い難い。SUSEのためには、いやLinuxの健全な普及のためにも、再度、しっかりした買い手が見つかることを期待したい。