製品群の狙いはハイパーバーザーの抽象化にある。ユーザー企業はOSと仮想化 技術の一体化に伴って、好むと好まざるとに係わらず、複数のハイパーバーザーを使わなければならない時代に向かっている。この煩わしさを解決するのがマル チハイパーバーザー管理ツールのクラウドマネージメントソリューションだ。しかし成功するだろうか。
◆ 矛盾する戦略
問題の起点は仮想化ベンダーの戦略にある。
彼らは 基本的にベンダーロックインによる市場拡大を目指してきた。OSは持たないが、仮想化技術で先行したVMwareは運用管理をセットにした差別化を推進 し、MicrosoftはWindowsとHyper-Vの親和性を強調してきた。後発のKVMもRed Hatに組み込まれて、処理効率の良さをアピールした。その上でさらに彼らはクラウド基盤の整備に向かい出した。VMwareのvCloud、Red HatのCloud Foundation、Citrix/XenのXen Cloud Platformなどだ。つまり、下位の仮想化技術から上位のクラウド構築ツールまで完全な縦割り構造のベンダーロックインとなってきた。
これには彼ら自 身も当惑気味だ。当初は、基本技術の差別化のためのロックインだった筈が、それが拡大して、気がついたら全面戦争の様相となった。これまで牽制し合いなが らも共存してきたOSベンダーはこのような状況をユーザ企業が望まないことは知っている。一方VMwareは先行メリットを最大限に活かすべく、がむしゃ らに進んできたが、状況が複雑になり過ぎてしまった。
◆ クラウド 管理ツールの役割
そして割って入ったのがクラウド管理ツール(Cloud Management Solution)である。
こ の分野の製品には、①マルチハイパーバーザー管理にウェートを置いたものと、②クラウドインフラにウェートがあるものがあり、重複部分も多い。今回は前者 を報告し、次回は後者について言及する。また、製品の多くはオープンソース物で、下から上まで、全てが縦割りのベンダー戦略への対抗策となっている。これ らの製品がユーザー企業の支持を受けるか、今後の動きに要注意だ。
現在、市場に出始めたソリューションは前述のように必ずしも統一された機能では ない。概ね下図のように考えることができる。これらの技術が確立できればユーザー企業は固有の仮想化から解放され、真にユーザーフレンドリーなクラウド時 代に一歩進むことができる。しかし、仮想化技術を抽象化する仮想マシン管理には、基本となるマシンイメージ形式が各社ばらばらであることなど、まだまだ、 障害が多い。DMTF(Distributed Management Task Force)が定めた期待のOVF(Open Virtual Format )も標準フォーマット仕様ではなく、各社固有のフォーマットをラッピングした域を出ていない。
◆ 各社製品の特徴
以上の状況の中で開発の進むクラウド管理製品の特徴を見 てみよう。
AbiquoはHyper- V、KVM、VMware、Xenなどをカバーすることを目指し、①マルチハイパーバイザー管理エンジン“Abiquo Server”、②マシンイメージ変換“OVF Repository Space”、③運用管理“Abiquo Portal”からなる。製品はオープンソースを基本に商用版もある。
Convirtureの 最新版ConVirt 2.0はXenとKVMに対応し、それらを共通のダイナミック・リソースアロケーションとすべくプロビジョニングにはテンプレートを提供、認証は LDAP。製品としては仮想マシンや物理マシンのフェールオーバーなどリカバリーに力点があり、オープンソースと商用版がある。
Enomalyの ECP(Elastic Computing Platform)はXenやKVM、VMware(計画)に も対応する。ECPは複数データセンター対応でユーザーPortalなどを揃えたService Provider向けを中心に、企業向けも整備中だ。同 社の初期製品はオープンソースだったが、現在の商用製品は別物と言ってよい。
Red Hatが始め、その後、Apacheに寄贈されたDeltacloudは、著名なクラウドサービスや仮想化などのインフラが提供するAPIを用いてクラウド管 理(インスタンス作成、開始、停止など)を実行する。このツールにはComputeとStorageがあり、ComputeではAmazon EC2、GoGrid、OpenNebula、Rackspace、Terremark、RHEV-M、vCloudなどが該当。Storageでは当 面、Amazon S3とRackspace CloudFilesに対応。
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