昨年9月15日、FCCI(Federal Cloud Computing Initiative)に沿った連邦政府の
クラウドポータルApps.govがスタートしたが、この中にクラウドITは含まれなかった。
◆ Apps.govの目標
Apps.govの狙いは2つ。
ひ とつは連邦政府下の省庁職員向けで、多様なアプリケーションを揃えたStoreFrontとしての顔、これにはBusiness Apps、Productivity Apps、Social Appsの3分類がある。内容は外部企業が提供するWebアプリケーションやSaaSアプリケーションを集 めたもので、サイトを運営するGSA(general Service Administration)が契約条件などを統一化、利用する職員は同一の方法で支払いなどができるように工夫されている。
もうひとつは省庁 の持つデータセンターのクラウド化だ。これが今回動き始めたクラウドITでIaaSに相当する。提供するサービスは、①仮想マシン、②クラウドストレー ジ、③Webホスティングの3つ。当初計画は昨年度から本番であったが、RFQ(Request for Quotation)が上手く機能せず、今年5月、再提示となっていた。
(現在、上図のように3つのサービスはComing Soonとなっている)
このクラウドITが動き出せば、各省庁が持つデータセンター 機能の一部が移行するはずだ。昨年3月、オバマ大統領のもとで連邦政府CIOとなったVivek kundra氏は、現在、連邦政府の総IT予算は$7.5B(1㌦100円換算で7,500億円)、うちインフラ部が$1.9B (同1,900億円)だとし、この部分の大幅な削減をクラウド化で期待すると宣言した。
◆ 選ばれた11社
今回、Apps.govのIaaS(クラウドIT)に GSA(General Service Administration-一般調達局)から選ばれたのは以下の11社だ。これら殆どは長年連邦政府系システムを手がけてきたコントラクターだ。大手 企業系では、AT&T、General Dynamicsの情報処理子会社General Dynamics Information Technology、データセンターSavvisの 連邦政府担当Savvis Federal、キャリアVerizonの連邦政府担当Verizon Federalが入っている。また独立系ではApptisやAutonomic Resourcesの2社がシステムインテグレーター、CGIの連邦政府部門CGI FederalやComputer Literacy World、Eyak Tek、Insight Public SectorはITサービス、Computer Technologies Consultantsはコンサルテーションである。
- Apptis Inc. partnered with Amazon Web Services
- AT&T
- Autonomic Resources partnered with Carpathia, Enomaly, and Dell
- CGI Federal Inc.
- Computer Literacy World partnered with Electrosoft,
XO Communications and Secure Networks - Computer Technologies Consultants, Inc.,
partnered with Softlayer, Inc. - Eyak Tech LLC
- General Dynamics Information Technology
partnered with Carpathia - Insight Public Sector partnered with Microsoft
- Savvis Federal Systems
- Verizon Federal Inc.
こう してみると、一般には知られていない小企業が大手と伍して参加していることに驚かされる。つまり、連邦政府系の仕事にはそれだけ専門性や繋がりが重要だと いうことだ。これは大手も同様で連邦政府向け子会社を持っていることからも解る。そしてAmazonはApptisと組んでAWS (Amazon Web Service)提供を計画し、Microsoftも Insight Public Sectorを前面に立てた。
◆ 注目される2社
この中で注目はCarpathia とSoftLayerの2社だ。
中堅ながら両社ともホスティングとクラウドを手がけ、Carpathia は昨年10月、Federal Cloud Initiativeを自ら立ち上げ、連邦政府のセキュリティー要件FISMA(Federal Information Security Management Act)や国防総省のDITSCAP(Defense Information Technology Security Certification & Accreditation Process)に積極的に取り組んできた。両社は今回、5年契約となるBPA(Blanket Purchase Agreement)を取得した選定企業経由でIaaSクラウドサービスを提供する。2つのパートナーを持ったCarpathiaで想定されるのは、 Autonomic Resourcesの支援を受けて現行クラウドを整備し、General Dynamics Information Technologyの携わったシステム案件をIaaSに置き換える作戦だ。Softlayerの場合も連邦政府に実績のあるComputer Technologies Consultants(CTC)経由でIaaSを提供する。CTCは小柄ながらも連邦政府での実績は十分だ。これまでの経験を活かして、出先省庁と協力 してクラウド上に業務を移行させるつもりであろう。
今回選定された11社は、今後、FISMAなどの2次審査を受け、その後、実際のサー ビス形態が明らかになる予定である。