2010年10月18日月曜日

仮想化ベンダーの守備範囲はどこまでか!
                -クラウドの今後はどうなる(1)-

シリーズでマルチハイパーバイザー管理のクラウドマネージメントについて述べてきた。
そこでホットになりつつあるクラウドマネージメントソリューション市場を起点に、今後、クラウドがどのような方向に向かうのか、そのポイントについて纏めてみようと思う。クラウドマネージメント市場の形成には幾つかの背景がある。まず、①ユーザー企業の環境を見ると、仮想化でVMwareが絶対優位とは言っても、Xen、Hyper-V、そしてKVMの登場で、複数のハイパーバイザーを利用する時代になってきた。そして、必然的な結果として、②ユーザー企業は仮想化ベンダー固有の技術に縛られることを好まず、仮想化技術を抽象化したいと考えは始めた。これが“Cloud Management Solution”開発が活発になってきた理由である。


◆ 仮想化ベ ンダーはハイパーバイザーに留まるべきだ
つまり、仮想化はハイパーバイザーとしてOSに含まれる機能だが、上位のミドルウェアやアプリケーション領域とは関係がない。これがユーザー企業の声になりつつある。MicrosoftのWindowsにHyper-V、Red HatのKVM、そしてまだ噂の域を出ないが、VMwareによるNovellのSUSE部門買収が現実になれば、SUSEにVMwareとなる。
実際のところ、今年6月中、VMwareはNovellと提携し、7月中旬からリリースの始まったvSphere4.1からSUSE Linux Enterprise Server(SLES)が同梱されている。そして、8月30日からのVMWorld 2010では“Novell SUSE Linux Enterprise Server for VMware”の提供を開始すると宣言した。これはVMware用にチューニングしたSUSE Linuxを出荷し、合わせてSUSEのサポートもユーザーに提供するというものだ。ここまでくると、買収が不首尾に終わっても実質的には同じだ。このように仮想化とOSのタイトな関係が深まれば、次の問題として、それらを抽象化するクラウドマネージメントの必要論が出てきておかしくない。
今、我われはこの時点にいる。

◆  仮想マシンOSとアプライアンス
またハイパーバイザーと関連して、仮想マシンOSとアプライアンスの関係も重要だ。
現在、アプライアンス用の軽量化されたOS-JeOS(Just enough OS)には、rPath、Ubuntu JeOS、Red Hat Appliance OS、SUSE JeOS、LimeJeos、Oracle Enterprise Linux JeOSなどがある。初期のJeOSはソフトウェア・アプライアンスの作成が主目的だったが、現在では仮想マシン上で容易にソフトウェアを扱う方法と して成長してきた。これに伴いISVが適用するソフトウェアも、これまでのライセンス付きインストールものから、マシンイメージものが増えてきた。 Microsoftは今のところ沈黙だが、改良版Windows Starterがこの範疇として登場するか、一時噂だったMidoriなどが登場する可能性も否定できない。
アプライアンスの作成ツールでは、こ れまでrPathのrBulderが市場をリードしてきた。
そしてNovellやVMwareも熱心だ。VMwareはVM Studioを提供してvAppsライブラリーの整備を進め、NovellもSUSE StudioでSUSE Appliance Programを推進してきた。
しかし事情が変わり、VMwareではvAppに最適なものとしてSUSE JeOSを採用することが既定路線となったらしい。

◆ OSと仮想 化ベンダーの一体化
こう見ると、期待されていることは、OSと仮想化ベンダーのより一層の一体化である。
特にVMwareとNovellの関係が要注意だ。この買収が成功すれば、エンタープライズ領域のOSベンダーの一体化が完了する。その結果、データセンター側ではハイパーバイザー、仮想マシン上ではJeOSとアプライアンス
の整備が進む。さらにハイパーバイザーと仮想マシンOS間の機能連携強化の可能性も出てくる。現在の仮想マシンOSは、スタンドアローンOSの転用で本格的なクラウド時代にはややそぐわない。同様にJeOSもアプライアンスの転用である。大事なことは、開発自体はほぼオンプレミスで行い、実行の多くが仮想環境となる点だ。勿論、実行環境では、オンプレミスと仮想マシンの完全な互換性は必須である。このような視点から、仮想マシンOSの整備が進めばユーザーは、大きなメリットを享受できる。

◆ 現実はどうか?
ベンダー競争の現実は厳しい。理想的な機能よりも、売上げが先だ。
特に仮想化市場を牽引するVMwareは、これまでの実績をベースに、より上位領域に手を広げてきた。クラウドインフラとなるvCloudやSaaS領域のSpringなどだ。この動きはCitrixやRed Hatも同様である。しかし、ここに来て、ハイパーバイザーを抽象化するクラウドマネージメント製品やクラウドインフラなどが複数のベンダーから登場し、 軌道修正が必要な時期に来ている。クラウド市場は、第2ラウンドに入り始めた。彼らがどう動くのか注目である。