2014年11月20日木曜日

クラウド各社の戦略再設定(2)! -Cisco-

シリーズ第1回はEMCのクラウド戦略の再設定を取り上げた。
第2回目はCiscoだ。実はEMCとCiscoの戦略には大きな関係がある。クラウドの進展とSDNSDSの登場でネットワークやストレージ機器ベンダーは、これまでの戦略を大きく再設定しなければならなくなった。このままでは両社とも従来からのビジネスモデルが維持出来なくなってきたからだ。そしてCiscoから発表されたInterCloud、それを追ったのがEMC Enterprise Hybrid Cloudである。

=UCSの登場とオープン化=
CiscoがOpenStack傾斜なのは周知のこと。その旗振りはCloud CTOのLew Tucker氏。彼はOpenStack FoundationのVice Chairmanであり、Ciscoグループの元祖WebカンファレンスWebExをOpenStackベースに乗せ換えた立役者だ。その氏がCiscoに入ったのは2010年6月。CEOのJohn Chambers氏はこれ以前から時代の変化を感じていた。それがTucker氏の採用であり前年2009年4月に発表されたCisco UCSである。UCSはCisco製のスイッチNexusを装備したブレードサーバーだ。ネットワーク機器は末端のスイッチなどを除けばサーバーに置き換えられる可能性がある。UCSはそのための対策である。Tucker氏はOpenStackとの関係を強化し、一方、Ciscoは2009年、UCSを核にEMC、VMwareと合弁のVCEを設立。そしてNexusスイッチ搭載のUCSにEMCのストレージ、VMwareの仮想化技術をパッケージ化したVblockを開発して、ユーザ企業への販売導入支援ビジネスをスタートさせた。しかし鳴り物入りだったこのビジネスもサーバーの価格低下と仮想化技術の一般化でこのところは低迷。そして本格的なクラウド時代が到来した。

<Ciscoの第一手、それはNFV!>
Ciscoはこの大きな時代の変革期に2つの布石をした。1手目は、NFVNetwork Functions Virtualization)へのテコ入れだ。これはネットワーク機器ベンダーとキャリアが参加するNFV ISG(Network Functions Virtualization Industry Specification Group)が定めたものである。NFVでは各ネットワーク機器のハードとソフトを分離してサーバ上の仮想空間で実行する。一方これより先行していたSDNはOpenFlow Foundationが定めたOpenFlow仕様だ。OpenFlowでは、各ネットワーク機器の制御とデータ転送機能を分離する。初期において、IT関連のアカデミアが考え出した革新的なSDNに対して、NFVはそれに危機感を持つ関連業界が一体となって取り組んだことから対抗するかのように思われた。しかしながら、NFVは各ネットワーク機器のソフトとハードの分離、SDNは同制御部の抜出しと統合化という特徴から、徐々に補完関係となった。そして今年2月にはHPがNVFの解り易さを基点にSDNのコントローラ機能を取り込んだOpenNVFを発表。その後、今年9月30日、多くのITやネットワーク企業とキャリア参加したLinux FoundationOPNVFプロジェクトがスタート。OPNVFは標準化団体ではなく、OpenDaylightOpenStackOpen vSwitchなどのコンポーネントを利用して、オープンなNFVリファレンスプラットフォームを作ることが目的だ。このような流れは、いずれ専用ネットワーク機器の時代は段階的に縮小して、汎用サーバ上のソフトに移行するとんでいたCiscoの読み通りである。 

<2手目はInterCloudだ!> 
2手目として打ったのがInterCloudだ。
始めの1月、ミラノで行われたCisco Liveでクラウドポートフォリオを大きく拡大することに言及した。そして3月CiscoはグローバルベースのInterCloud戦略発表。この壮大な構想は複数のデータセンタやクラウドプロバイダを相互接続し、グローバルなクラウドネットワークを構築しようというものだ。コンセプトはDC as a Service、基本となる技術はCisco InterCloud Fabricである。複数のクラウドを接続するには秩序だった制御をするためのオーケストレーションが欠かせない。勿論、クラウド間のセキュリティやリソース管理をどのように行うのか、未知の課題が山積する。例えて言うなら、国際電話のローミングのようなクラウドを目指そうというわけだ。このファブリック構築のためにCiscoがなさねばならないことは技術的にもマーケティング的にも簡単なことではない。もし実現すればInterCloud Fabricを介してクラウド上のワークロードを移動させたり、AmazonやMicrosoft、Googleなどのパブリックとプライべートクラウドとの連携も容易となる。同社によると、この構想に賛同したパートナーは9月末現在、世界50ヶ国の250データセンタだという。今後は、勧誘のためのテクニカルスコープだけでなく、具体的にパートナークラウドの構築に向けて、何を提供するのかが問われる段階だ。 

=MetaCloudとは何か!=
9月17日、CiscoはOpenStack as a Serviceを掲げるMetaCloud買収した。
もう具体的なプロダクトを提示しなければせっかく勧誘したパートナーはついてこない。買収したMetaCloudは自社の5つのデータセンタ上か、ユーザの自営センタで、OpenStackを利用したプライベートクラウドのホスティングサービスを行う。クラウド指向のユーザに代わって、OpenStackの構築から委託運用までを請け負うビジネスだ。まさにOpenStack as a Serviceである。Ciscoはこのプロダクトとサービスを整備し、パートナーに展開する計画だ。これまでCiscoはVMwareとの関係が深かかった。しかし、この買収によって、vSphereだけでなく、パートナーに提供できるOpenStackというオプションを手に入れた。MetaCloudは2011年創業の若い会社だ。同社を興したのはオンラインチケット販売TicketmasterのプラットフォームをOpenStackで開発したSean Lynch氏とYahoo!のストレージ運用エンジニアのSteve Curry氏だ。今年6月にはRackspaceからOpenStackの主唱者(Advocate)として活躍していたScott Sanchez氏とNiki Acosta女史が移籍。

=CiscoはEMCの戦略を超えられるか!
前回はEMCの課題を分析し、それがEMC Enterprise Hybrid Cloudの背景だと説明した。しかし、冒頭で述べたように、EMCの戦略は、Cisco InterCloudへの対応というもうひとつの側面がある。両社はこれまで同じような境遇から接近していた。Ciscoはどちらかと言うとハード指向、EMCはVMwareを通したソフト指向だった。このアプローチの違いが両社を補完していた。しかし急激な市場変革に対応すべく、10月、CiscoはSSDWHIPTAILを買収して、多面的なアプローチに変更。もはや両社はクラウド時代を乗り切るための仲間ではなく、共に市場に飛び込む競争相手となった。EMCのクラウド戦略を簡単に言うと、自社とVMwareの既存顧客を囲い込み、その上で出来れば拡大したということだ。対してCiscoの戦略は、自社製品を使う多様な企業やデータセンタ、キャリアなどが相手だ。問題はCiscoが扱うネットワーク機器へのユーザの依存度である。VMwareのようなソフトは一度導入すると簡単には変えられない。翻ってCiscoのターゲット層は広いけれども忠誠度はそうでもない。しかし、今回先手を打ったのはCisco、それを追ったのがEMCである。後は、新戦略に沿ったクラウドプロダクトとサービスがどれだけ優れ、その導入が顧客にどのようなメリットをもたらすかだ。解っていることは、両社とも現在の機器屋から抜け出さなければ彼らのビジネスはシュリンクする。

2014年11月13日木曜日

クラウド各社の戦略再設定(1)  -EMC-

クラウド各社の戦略再設定が進んでいる。
昨年SoftLayerを買ったIBM、Rackspaceのホワイトナイト探し(参考:123)、Eucalyptusを飲み込んだHPのHellion、さらにCiscoも、EMCまで動き出した。大きな流れは、Amazonを追うMicrosoftと価格競争を挑むGoogle、この3強の外側各 社はOpenStackを取り込んで対抗を試みる。各社の戦略再設定の事情を分析し、合わせてOpenStackの新たな勢力図を検証しよう。

=シャッフルが必要となったEMCグループ=
このところ大きな動きを見せたのはEMCだ。EMCはこれまでVMwareを育てあげてきた。しかし仮想化市場は飽和し、VMwareビジネスは行き詰まりを見せ始めている。一方、EMCの本業であるストレージビジネスもフラッシュやSDSなどからの追い上げにあって対策が急務だ。課題は2つ。関連会社のことと自社のこと。VMwareを中心とした課題は、プロプライエタリービジネスの限界だろう。オープンソースのXenと戦った初期、そしてKVMの登場などで彼らはオープンソースやコミュニティ、さらにはエコシステムの重要性を学習した。

幸い2009年に買収したSpringSourceから派生したCloud Foundaryをオープン化し、IaaSから上位のサービスビジネスを求めてPivotalを分離することが出来た。現在はVMwareが仮想化に始まる一連のインフラ整備とパブリッククラウドを運営し、PivotalがPaaS、SaaSを受け持つ。Pivotal傘下のCloud Foundaryは今やPaaSのデファクトだが、Pivotal自身のビジネスはパッとしない。この図式だけでは戦えない。さらに危険なことに、EMC自身のストレージが物理的な装置から脱皮し、クラウドと一体化しなければ受け入れられない時代になりつつある。つまりEMCを含めたグループ各社の構図見直しに伴う戦略再設定が必要となった。全体をシャッフルする刺激剤として白羽の矢が立ったのはCloudscalingだ。もっと端的に言えば、CloudscalingのFounderのRandy Bias氏である。Bias氏はOpenStackのAdvocate(またはEvangelist)として著名な人だ。彼の意見は大いに参考になる。彼が興したCloudscalingはオープンクラウド向けのOpenStackディストリビューション開発、兼インテグレータだ。10月13日に明らかになっ た$50M(約50億円)の同社の買収で、EMCはプロダクトだけでなく、OpenStack Communityへの大きな橋渡し役を手に入れた。 (参考:オープンクラウドならCloudscalingだ!
=EMC Enterprise Hybrid Cloud登場!=
そしてEMCは10月28日、EMC Enterprise Hybrid Cloud(下図)を発表。
このソリューションはVMware製品を利用してクラウドを運用する企業ユーザやプロバイダ向けのもので、さらなるクラウド連携の拡大を目指している。発表に関連して、VMworld 2014(8/24-28)前後で幾つか重要な発表があった。8月21日、同社が昨年来運営するパブリッククラウド(VMware vCloud Hybrid Service)をVMware vCloud Airに改称(上右)。このクラウドはvSphereベースで企業が自営化してきたプライベートクラウド(下段)とハイブリッド化することが大きな目的だ。同社によると、現在、世界8センターで運用され、3,800社が利用しているという。次いで8月25日にはクラウドマネージメントプラットフォームVMware vRealize Suiteを発表し、10月14日からリリース。下図から解るように、上段のクラウドマネージメントはVMware vRealize SuiteとEMC Storage AnalyticViPRなどから構成され、ここから連携する全てのパブリッククラウドとプライベートクラウドが管理できる。下段が自社内のプライベートクラウドだ。

EMC Enterprise Hybrid Cloud
=続いた企業買収!=
今回の戦略再設定に関連して、10月22日、2009年にCiscoとVMware、EMCの3社で共同設立したVCEのほとんどの株式をCiscoから譲り受け、傘下とすることを発表。これによって扱うサーバハードウェア(Cisco UCS) とシステム要員を確保した。だからと言ってサーバーはUCSに限定することを意味しない。これまでもHPやDellとも多面的に付き合ってきたからだ。重要なのはシステム要員だ。EMCにとって、特に汎用機のシステム要員は潤沢でない。これから始まる本格的なクラウド対応に彼らは大いなる助っ人となる。次 いで10月28日、MaginaticsSpanningの2社の買収を発表した。MaginaticsはクラウドベースのNASベンダーであり、SpanningはGoogle AppsSalesforceのバックアップベンダーだ。
    • VMware vCloud Air (8/21) 
    • VMware vRealize Suite (8/25) 
    • Cloudscaling (10/13)
    • VCE (10/22)
    • EMC Enterprise Hybrid Cloud (10/28) 
    • Maginatics (10/28)
    • Spanning (10/28)                             (イタリック:企業買収)
=クラウドが本業となるか、そしてStorage as a Service!=
EMCにとって、クラウドはサイドビジネスではなくなった。本業としての武器化である。そのためには、VMwareに代わって、自身が前面に出て仕切らなければならない。ストレージビジネスの世界は変わり、もはやストレージシステムの製造販売だけでは生きられない。物理的なストレージ装置を埋め込んだクラウ ドへの展開が不可欠だ。これこそがこれからの市場である。今回発表したEMC Enterprise Hybrid Cloud(上図)では、下段のプライベートクラウドにEMCのストレージが埋め込まれ、それを上段のクラウドマネージメントのEMC Storage Analytics SuiteやViPRがVMware vRealize Suiteと共に制御する。当面、対応するクラウドはパブリックもプライベートもvShpereのみだが、来年にはAWSやMicrosoft、そして OpenStackとの連携が見えている。さらにSpanning買収でGoogle連携も可能となるかもしれない。EMCの戦略再設定、それはVMwareのアセットを核としながらも、近未来を見据えたオープンクラウド指向であり、またSTaaS(Storage as a Serviceへの本格攻勢の始まりでもある。

2014年11月5日水曜日

15分でクラウド基盤が立ち上がるPiston OpenStack!
                        -Cloud OS3-

Piston Cloud Computingの本社はサンフランシスコ市内にある。以前はスタートアップのメッカと言えばシリコンバレー(San Jose、Santa Clara、Mountain Viewなど)だった。しかし、このところはサンフランシスコで創業する会社が多い。理由は単純だ。シリコンバレーの町々は宵闇が下りればスポーツバーなど以外、ほとんど遊ぶところはないからだ。このためシリコンバレーでも比較的賑やかなスタンフォード大学の学園通り(University Ave.)のあるパロアルトで創業を始めるスタートアップは以前からあった。日本に住んでいる我々から見れば、何もあの狭い、車の止めにくい町でなくても と思うのだが、彼らにとっては大事なエンジニア集めのセールスポイントなのだろう。今回取り上げるPiston Cloudはサンフランシスコの観光名所ユニオンスクエアの裏面に接するPost St.を2ブロック下がったところにある。何とも優雅なオフィスだ。同社を興したのはJoshua McKenty氏(現CTO, Cloud Foundry)とChristopher MacGown氏、そしてGretchen Curtis女史の3人。全員共に、NASAのクラウドNebulaの関係者と言って良い。中心となったMcKenty氏はNebulaのTechnical Architectだった。MacGown氏はRackspaceに買収されたXenベースのバーチャルサーバプロバイダSliceHostのエンジニアだったが、その後OpenStackプロジェクトに参加し、NebulaのコンピュートエンジンNova開発に従事。Curtis女史はNASAのIT部門の広報担当である。現CEOのJim Morrisroe氏はZimbra出身で2012年末に就任した。

=Pistonが目指すもの=
同社が目指すものは迅速構築が可能なターンキーのOpenStackである。
つまり、多機能なOpenStackの幾つかの要素を決め打ちにして、簡単に導入が出来るパッケージに仕上げたものだ。ターゲットは企業の部門ユーザ。各部門では、これまでITに関する要求があると、都度、ITセクションに連絡した。しかし、ストレージの増強やネットワークの拡大、サーバ割り当てなど全てが担当に分かれ、さらに予算配分も絡んで遅れること甚だしい。この点、クラウドになればエンドユーザがリソースプールから直接必要な分を手に入れることが出来る。OpenStackはこれらリソースのプール管理を行い、その利用のために、ユーザにAPIやCLI、ダッシュボードなどを提供する。出来上がったターンキー製品はPiston OpenStack。これを使えば、企業データセンタでも、利用部門でも、たった15分あればOpenStack基盤が出来上がる。

=どうやってインストールするのか=
インストールの手順を紹介しよう。まずBoot Node用のサーバ1台とCluster Node用を最低5台用意し、ラックなどに積み込んで連結させる。ライセンスは試用期間の60日は無償、その後は購入してGUIから更新すれば良い。そして、同社サイトからPistonパッケージをダウンロード。それをUSBデバイスにWindows Image WriterやLinuxのddコマンドなどで書き込む。次に書き終わったUSBデバイスを開き、中の設定ファイルを編集する。設定ファイルには、ハードウェア/OpenStackサービス/仮想マシンなどのネットワーク設定やNTP/DNS/SYSLOG設定、Cluster Node=5といったサーバ数の設定、イメージキャッシュの設定、IPMI設定、ディスク構成などがあり、初期値(サンプル)からインストール環境に合わせて編集する。このUSBデバイスを差し込んだサーバがBoot Nodeとなる。するとUSBからBoot Node用のソフトウェアが自動的にインストールされ、さらに設定ファイルやCluster Node用のソフトウェアも保存される。これが済めばUSBデバイスはもう要らない。通常、OpenStackで扱うサーバはCompute NodeとControl Nodeに分かれるが、Pistonでは区分がなく、2つの機能を兼ね備えたものをCluster Nodeと言う。次にベアメタルなCluster NodeをBoot Nodeと同じネットワークに接続する。これら複数のCluster NodeにもBoot Nodeから必要なソフトウェアが自動インストールされる。Iocane Micro-OSやPistonの本体ともいうべき実行環境のMoxie RTE(Run Time Environment)などだ。このMicro-OSは最低限の機能を含んだLinux、つまりJeOSである。ここまででたった15分!これでOpenStackクラウド基盤が出来上がった。

=Pistonの構造=
インストールされたPiston OpenStackを構造面から見てみよう。
まず、VMを実行するのはCluster Nodeだが、これをVirtual Computeと言い、仮想化はMicro-OSに組み込まれたKVMが担当。Clusterは最低5台が必要だと述べた。この5台はMoxie RTEによってHA(High Availability)構成となり、1台で障害が発生すると残り4台の自動運行へ切り替えられる。ただ障害ノード上で実行されていたVMが自動修復されるわけではない。サポートするGuest OSは以下の通り。
  1.  Windows 7, 2008 R2, 2012 R2
  2. Ubuntu: 10.04, 11.04, 12.04, 12.10 13.04, 13.10, 14.04
  3. Red Hat Enterprise Linux 6.x
  4. CentOS 6.x、Fedora 20
  5. OpenSUSE 13.1, 12.3, SUSE Linux Enterprise 11SP3
次にVirtual Storage。Pistonが扱うストレージとはサーバ内臓のディスクを指す。もともとPistonはOpenStackの開発遅れと簡素化のために、Piston OpenStack 2.0まではストレージにCephのみを採用していた。しかし、後述の最新版3.5ではBlock StorageにCinder、Object Storageにはこれまでとの継続性確保からCeph(但しDriverはSwift)をサポートしている。 もうひとつのVirtual NetworkはNeutronのPluginでNova NetworkとPlumGridをサポートする。

 =セキュリティ強化のPiston OpenStack 3.5リリース=
9月10日、最新版のPiston OpenStack 3.5がリリースされた。
この版には2つ目玉がある。まずAPI通信時のSSL対応やIntel TXT(Trusted Execution Technology)適用によるセキュリティの強化だ。通常、サーバの電源をONにすると、①BIOS→②Boot Loader→③OSの順で立ち上がるが、TXTでは①BIOS→②Boot Loader→③Vitual Machine Monitor→④OS となって、OS立ち上げ前に仮想マシンモニタ(VMM)のチェックを行う。これによって改ざんモニタの実行を未然に防止するのだ。さらにTXTでは Gest OSからのメモリアクセスについても他チップセットと連携してセキュリティを厳格にしている。つまり、Intelの提唱するトラステッドコンピューティングの適用である。もうひとつの目玉は「Zero Downtime Update」の強化だ。Pistonではこれまでもインターネット経由でOpenStackの更新機能「Online Update」を提供してきた。今回の追加は「Near-Line Update」。これは更新情報を一旦ローカルサーバにダウンロードし、その後、OpenStackを更新する機能だ。この方式の採用で、Cluster Nodeのローリングアップデート時の遅延回避やより安全なシステムを更新することが出来る。
以上見てきたように、Piston OpenStackは難しいこと無しに、迅速にクラウド基盤の構築ができる。動かすのは簡単でも、内容は通常のOpenStackに負けることはない。日本市場への導入もTEDから始まった。