2016年8月21日日曜日

AutoTech(10) 
 Fordの完全自動運転車2021年にロールアウト!
      HyundaiはGoogleとのパートナリングを検討!

8月16日、Ford Mortorsは、2021年にステアリングもアクセルやブレーキのペダルもないオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)を量産発売すると発表した。米運輸省のNHTSA(National Highway Traffic Safety Agency)が定めたオートノマスビークルのLevel-4である。

 

=Fordは運転者支援をスキップし、Level-4を目指す!=
この日、シリコンバレーPalo Altoで行われた式典でCEOのMark Fields氏は、1世紀前、我々は車を世に送り出した。そして今日の発表はドライバーレスの新しい時代を作り出すとに誇らしげに宣言。式典の行われたスタンフォード大構内の向こうにはFord Research and Innovation Centerがある。氏はここの要員を倍増して万全の構えで、多くの他社が進めているDriver Assist(運転者支援)のLevel-2や3をスキップし、Level-4の完全自動運転車を2021年に量産出荷するとコミットした。目指すはHail-Sharing(配車)やRide-Sharing(乗り合い)サービス市場への参入である。さらにこの目標遂行のために4つのスタートアップとの戦略的関係についても言及した。まず、①シリコンバーモーガンヒルのLiDAR企業Velodyneへの投資、次に②マシンラーニングのイスラエル企業SAIPSの買収、さらに③ベイアリアバークレーにあるマシンビジョンNirenberg Neuroscienceとの独占契約、④ナパバレーに近いソノマの3DマッピングCivil Mapsへの投資だ。これら4社は市街地走行には欠かせない企業たちだ。現在市場に出回っているLevel-2は殆どが自動車専用道だけの適用だ。これを前提にコストの廉いセンサーやカメラなどが使われている。勿論、クラウドとの連携もほとんどない。しかし、Level-4の市街地走行となると格段に難しくなる。まず、高価なLiDAR無くしては各種のオブジェクトを認識できない。そしてスキャンデータからマシンビジョニングでそのオブジェクトが何なのかを推測し、それを3Dマップとマッピングしながら走行を制御する。Fordはこれらのスタートアップとの結びつきがLevel-4に役立つことを確信している。


 
=GoogleとHyundaiは本気モードとなるか= 
さてもうひとつの話題はGoogleとHyundaiの関係だ。
両社の関係は2015年5月に遡る。GoogleのIVI(In Vehicle Infotainment)向けプラットフォームAndroid AutoをHyndai Sonataが最初に自動車メーカーとして採用したからだ。今年5月のGoogle I/Oでも、バージョンアップしたAudroid Autoをいち早くHyundaiは純正品としてサポートしている。今月17日のBloombergによれば、この良い関係の上にHyundaiはGoogleとのパートナーシップについて話し合っているという。これにはGoogle Self-Driving Car技術もふくまれている。Googleはこれまで多くの自動車会社と話し合ってきたが纏まらなかった。自動車会社の多くは自分たちの領域にGoogleが入ってくることを望んでいない。Googleの持つMapsやクラウド技術を恐れて、自分たちだけで解決したいのだ。しかし、大手自動車会社はともかく、Hyundaiのような中堅どころには開発の余裕がない。このパートナリングが上手く行けばAIとクラウドを武器としたGoogle Carが動き出す。

2016年8月18日木曜日

Amazonダントツ、4位のGoogleが追い上げ態勢に!

=快調な第1グループ(4社)と引き離される2グループ以下
Synergy ResearchらCloud Infrastructure Serviceについての2Q分析が発表された。それによると、当期売り上げは、Amazonがダントツ、次いでMicrosoft、IBM、Googleの順だ。これらBig4だけで世界市場の売り上げの半分強を占めている。対前年比伸び率は、1位のAmzonが53%、2位のMicrosoftは100%、3位のIBMは57%、そして4位Googleは162%となり、これら4社の第1グループ全体成長率は68%だ。Big4に続く残り20社の第2グループは同成長率が41%、それより規模の小さい第3グループは同21%となって、下に行けば行くほど引き離されている様子が見て取れる。世界市場全体の伸び率は51%。トップAmazonの売り上げは2位のMicrosoftのほぼ3倍、IBMはHosted Private Cloud分野で健闘しているが、MicrosoftとGoogleが激しく追い上げている。

=Googleは本気だ!=
2Q成長で特に目立ったのはGoogleだ。
昨年度、VMware初代CEOだったDiane Greene女史をクラウド部門のヘッドに迎えたGoogleは本気である。女史の前任者でGoogle Fellow&SVPのUrs Hölze氏は、かねてから2020年までに広告ビジネスを抜いてクラウドをトップに押し上げると明言していた。5月のGoogle I/Oで女史は、「Fortune1000の企業はAmazonの独占を良しとしていない。Googleのこのところのアプローチを喜んでおり、AmazonとGoogleの2社が競い合うことを望んでいる」と述べた。クラウドのさらなる成長には健全な競争こそが必要だと強調したわけである。女史は就任後、多くの企業を訪問して、ビジネスを引きつけてきた。たった8ヶ月でその成果は現れてきた。7月28日のAlphabetからの2Q決算発表である。Googleはクラウドだけの収益を決算書で現していない。「Other Revenues(その他売り上げ)」の中だ。この殆どはPlay Storeによるものと思われるが、加えてクラウドビジネスやハードウェア売り上げも入っている。2Q決算の「その他売り上げ」は$2.17B、対前年比33%アップだった。1Qでは24%、その前は11%と尻上がりに良くなっている。決算発表のカンファレンスコールでCEOのSundar Pichai氏は、特にクラウド事業に言及して、Appsを含めたクラウドは業績に大きく貢献していると述べた。しかし、これだけのデータでは、実際の売り上げは解らない。そこでAmazon 2Q決算から推定してみよう。AWSの2Q売り上げは約$2.9B(下図)だ。ここでSynergy Researchの上図から今季のAWSのシェアを32%、Googleを5%と読み取り、案分計算すると、今期のGoogleの売り上げは$0.45Bとなる。これを単純に4倍して1年に引き延ばせば$1.8B(年間売り上げ)だ。しかしながら、Synergy Researchのシェア値や伸び率の算出根拠は公開されておらず、あくまでの試算値として留め置かれたい。ただ、AWSの予測には問題は無く、4掛けして推定すると、年間売り上げは、当初予定の$10Bを超えて、$11B強となる。

2016年8月8日月曜日

Rackspaceの新たな模索!

8月4日付Wall Street JournalがRackspaceとPrivate Equity Firmの取引が近いことを報じた。Private Equity Firmとは個人投資家などから集めた資金-Private Equity Found-を運用する投資会社だ。この記事が出たのは4日の夕方、前日の株価は$23.16、その日は$26.55、翌5日は跳ね上がって$29.27となった。この約26%の株価アップは、同社の現在のMarket Capを約$3.5Bとすると、これをプレミアム付きで押し上げ、$4.4Bとなった格好でもある。
Rackspaceは2014年5月、既報1のようにMorgan Stanleyを顧問にホワイトナイト探しをしたことがあった。多くの会社が候補にあがったが、しかしこのExitは条件がきつかったこともあって上手く行かなかった。その後、2015年9月、同社はMicrosoftと提携し、Azureユーザーの有償導入支援サービスのMicrosoft Azure Fanatical Supportを開始し、10月にはAmazonユーザー向けに同様のFanatical Support for AWSもスタートさせた。理由は大手Public Cloud Providerである4社(Amazon、Microsoft、Google、IBM)の競争が激化し、マネージドやエンジニアリングサポート付きのOpenStackベースクラウドだけではビジネスが厳しくなったからである。この有償サポートは、Rackspaceの生き延びるためのビジネスモデルとして機能したが、他方、十分なサポートエンジニアを持たないAmazonやMicrosoftにとっても都合が良いものであった。そして今年4月、これも既報のように、この2社のどちらかではないかという買収の噂が持ち上がった。
結果は不発だったが、今回は3度目の正直となるかもしれない。そして5日のReutersの続報によって、相手はApollo Global Managementだと解り、またまた大騒ぎとなった。実はこれら一連の買収報道より先の先月29日、CNBCがApollo Global ManagementとCarlyle Group、さらにKKRの3社が組んでHP Enterpriseの買収を仕掛けるのではないかと報じていた。さらに8日になって、VentureBeatTechCrunchなど各紙がRackspaceのWeb Hosting部門Cloud Sitesの売却を報じた。相手はLiquid Webである。事態は混とんとしているが、今度こそ動くかもしれない。


2016年8月3日水曜日

AutoTech(9) Google Carの狙い(2)!-   
           - ロボットが車を運転する -

前回と今回の2回に分けて「Google Carの狙い」、つまり、Gogleが今後どう動くのかについて、私見を纏めてみた。あくまでも個人的な意見である。その第1ステップが前回のスマホ成功モデルをカーナビ(英語ではHead Unit、以下HU)市場に持ち込んだAndroid Autoだ。その普及を進めるGoogle主導のアライアンスOAA(Open Automotive Alliance)には殆どのメーカーが名を連ねている。無いのはToyotaとBMWだけだ。BMWとAppleの関係が進んでいることは周知の事実。気になるのはToyotaである。現在、HUの仕様は純正品の場合、自動車メーカーが握り、市販品はHUメーカーが決める。自動車メーカーがAndroid Autoを初期段階の今はともかく、最終的にどう扱うのかが今後のポイントとなる。
=動き出したToyota Research Institute!=
さて今年1月、ToyotaはシリコンバレーにAIに関する先端研究とその商品企画のためのToyota Research Institute(TRI)を開設した。所長には昨年9月、Toyotaがスカウトした元DARPAのロボット工学の権威Gill Pratt氏が就任。氏は2012年から昨年までDARPA Robotics Challengeを推進してきたプログラムマネージャーだ。このプログラムは2005年から始まったオートノマスビークル(Autonomous Vehicle-自動運転車)レースDARPA Grand ChallengeUrban Challengeを引き継いだものである。氏をヘッドとするTRIは、MITやスタンフォードの研究所と連携して、複数のプロジェクトを立ち上げる。勿論、最大のテーマはオートノマスビークル開発だ。Toyotaにとって、オートノマスビークルとOAAの関係は無縁ではないだろう。だからこそ、Toyotaはアライアンスへの参加に慎重なのだ。GoogleはAndroid AutoでHUのスマホ化を目指し、その先ではオートノマスビークルでも市場をリードしたい。片やあくまでも自動車会社が主導権を持ちたいToyota。戦いの2幕は既に始まっている。
=近未来のHU(カーナビ)とは!=
Google I/O 2016では新Android Autoを搭載した展示車があった。
Maserati Ghibliだ。これにはセンターコンソールとなる15inの4K対応タッチスクリーンが縦型に置かれている。ステアリングの向こうにはデジタル表示のインスツルメントパネル(インパネ)があり縦型センターコンソールと連動する。この縦型画面は上下に2区分して使うことも可能だ。搭載OSはAndroidの次期リリースAndroid NTesla Model Sをご存知の人は、2つの車がデザイン的にそっくりなことを知っている。Tesla人気の礎となった初代のTesla Roadsterがあの名車Lotus Eliseのボディーを使っていたように、このModel SはMaseratiがモデルだ。そして、Model Sのコックピットを覗けば、センターコンソール用の縦型で大型の17inディスプレイが目に飛び込んでくる。次世代HUではこちらが本家だ。Googleが展示したMaseratiのデモ版は、この模倣だが、これぞまさしくGoogleが考える近未来のHU-Digital Infotainment-である。実際のところ、Tesla Sで使っている地図はGoogle Mapsを共同で適用したものだ。
関連記事 :スマホ化する車(Telematicsの世界)

Maserati Ghibli (L)              Tesla Model S (R)   
Google's Demo Maserati Ghibli
Tesla Model S

=次世代HU、NVIDIAとQualcommの戦い!=
Google戦略の第2ステップがこのデジタルインフォテイメントである。
Android Autoが一般化すれば、次にGoogleはこれまでのカーナビ(HU)からタッチスクリーンでよりインテリジェンスのある次世代HUに誘導するだろう。各種のメータ類が並ぶインパネは既にかなりデジタル化されている。次世代HUでは、このデジタルインパネと連動するだけでなく、ステアリングやエアコン、オーディオ周りの各種操作ボタンなどがセンターコンソールの大型タッチスクリーンに統合される。このHUのエンジンを支えるのはNVIDIAとQualcommだ。前述のように、この分野の先輩格はTesla Model S。そのセンターコンソールのOSはLinux。そしてCPUはNVIDIAのTegra 3。メータークラスターにはTegra 2が搭載されている。一方、Googleのデモ車のインパネには720pのNVIDIA Digital Instrument ClusterセンターコンソールにはQualcommSnapdragon Automotive Processor 820が乗っている。OSは前述の通り、Android Nだ。こうしてみると、センターコンソールは第2ステップの狙いであったデジタルインフォテイメントからさらに進化しドライバーが操作する全てを統合した中央制御装置に見えてくる。
=HUがロボットドライバーになる!=
ここまで次世代HU(カーナビ)の進化を推測してきた。
いよいよ第3ステップだ。Googleの開発している自動運転ソフトウェアはChauffeurという。英語では「お抱え運転手」という意味である。まさにロボットソフトだ。筆者はGoogleがパワーアップした次世代HU上でこのChauffeurを動かすのではないかと考えている。もうひとつ大事な要素がある。クラウド上で動くAIエンジンだ。Google Carではクラウド上でAI処理した結果データをダウンロードして車を走らせる。これには現在2つ見えている。ひとつはGoogleが開発したものだ。GoogleはAlphaGo使用しているDeep LearningライブラリーTnesor Flowを昨年オープンソースとして公開し、今年5月のGoogle I/Oで既報のようにこのライブラリー向け専用AIプロセッサーTPU(Tensor Processing Unit)を発表した。もうひとつはNVIDIAが発表したNVIDIA DGX-1だ。これには8基のメモリーとストレージ内臓のGPUアクセラレータNVIDIA Tesla P100が搭載され、AIシステム開発のツールも用意されている。 (関連記事:データセンターOSは普及するか

Chauffeurの稼働するHUには、LiDARやレーダー、カメラ、GPSなど、さらにステアリング、アクセル、ブレーキのデジタルインターフェースが接続される。 勿論、インターネットは常時接続。そして、クラウドからは運転に必要なAI処理情報をダウンロードしたり、さらに運転結果などをアップロードする。後は人間が指示すれば、Google Chauffeurがロボットになって車が動き出す。