2015年10月26日月曜日

好調AWSとHP Helion Public Cloudのシャットダウン!

10月22日、AmazonからAmazon Web Services(AWS)を含めた3Q決算が出た。その前日、21日には、HPから噂されていたHelion Public Cloudのシャットダウンが発表された。何とも皮肉な結果である。

=好調AWSが全体利益の半分へ!=
Amazon全体の3Q決算は、総売り上げが$25.4B(3兆480億円)、利益は$79M(9,480億円)、対して、AWSは絶好調で、売り上げは全体の8%にあたる$2.085B(2兆5,020億円)だが、利益はほぼ全社の半分をたたき出した。
  • Amazon.com   3Q Revenue/$25.358B   Income/$993M
  • AWS               3Q Revenue/  $2.085B   Income/$521M
今年4月末、既報のようにAmazonはAWS決算の公開に踏み切った。これまで非公開だったAWSの財務内容が明らかになった。下図はこれらのデータをもとに売り上げをグラフ化したものだ。このようにAWSの足取りは着実に伸びている。その下の図は前年同期比の伸び率を表わしたもので、2Q時は前年同期比81%増、3Qでは同78%と、今年に入っての快進撃が解る。
AWS Revenue History Source:Statista
AWS Revenue Year on Tear Growth Rate Source:Statista

=クラウド全体はどうか!=
AWS以外のプロバイダーはどうだろうか。
下図はおなじみのSynergy Researchの分析で、クラウドインフラサービス(IaaS, PaaS, Private & Hybrid combined)を市場成長率を示したものだ。これによると、2Qのクラウドインフラ市場は四半期ベースで$6B(7,200億円)を超え、過去4四半期の合計は$21B(2兆5,200億円)に達するという。ここで興味深いのは成長率だ。下図にみる全プロバイダーの2Q時点での対前年同期比の成長率は50%強である。これに対し、AWSのそれは78%とはるかに高い。同社によると、この市場はまだまだ急成長を続けており、AWSとMicrosoft、IBM、そしてGoogleの5社で全市場の50%強を占め、AWSは単独で30%(つまり残り4社は20%)に達している。成長率では、MicrosoftとGoogleの2社が善戦し、前年同期比で100%に近くAWSを追撃体制にあるが、IBMはやや遅れている模様だ。

=出遅れがたたったHelion!= 
このように市場が活況を示す中、HPのクラウド責任者 Bill Hilf氏はBlogの中でHelion Public Cloudを来年1月末でシャットダウンすると言及した。氏によると、Public Cloudの成功組であるAmazon、Google、Microsoftに伍していくためには、多くの投資をしてデータセンターを整備し、その上で薄利多売ビジネスを進めていかなければいけない。しかし、その道を見つけることは容易ではなかった。シャットアウト後は、パブリックではなく、企業ユーザのプライベートクラウドにこれまでのHPの経験とHeliom製品を活かしてゆくという。今やOpenStackは米大手企業におけるプライベートクラウドとして人気は絶大だ。HelionはこのOpenStackを前面に出して戦ったが、上手く行かなかった。何と言っても出遅れがたたったようである


2015年10月16日金曜日

投資分析からみたDellによるEMCの買収!

今週初めのDellによるEMCの買収は、総額$67B(約8兆400億円)という金額と共に仰天の出来事だった。勿論、IT業界最大の買収劇である。周知のようにPCビジネスは飽くなきコスト削減の中で統廃合を繰り返し、生き残りを賭けて、HPは昨年2社分割(Hewlett-Packard EnterpriseとHP Inc.)を決めた。IBMもPCだけでなく、昨年初め、x86ベースのサーバーラインSystem xをLenovoに売却。今回の事件は、こうした環境に押され気味のDellが打った大ばくちだという報道もある。興味本位ではなく、実際のところ、この買収を投資家達はどう見たのだろうか。CB Insightsの分析を見てみよう。同社は2010年、American Expressで実務経験したAnand Sanwa氏とJonathan Sherry氏が興し、スタートアップへの投資や企業のM&Aデータを駆使して、その分析情報を顧客に提供している。

EMC/VMwareによるこれまでの大型買収!=
ストレージの巨人と言われたEMCとその最大の子会社、かつ仮想化時代を作り上げたVMwareの企業買収(M&A)は、2010年以降だけでも$100M(120億円)超の買収案件が7つある。中でも、①企業向けモバイル端末のセキュリティーと管理サービスのAirWatch(日本ではVMware経由でソフトバンクテレコムが提携)、②VMwareのSDN(Software Defined Network)として組み込まれたNicira Networks、③ホステッドプライベートクラウドのVirtustream(日本ではCTCと提携)の3社は、1,000億円を超える買収として記憶に新しい。   

=Dell/EMCの投資は峠を越え、そして収斂!=
Dellの場合もEMCと同様、スタートアップや上場企業などをたくさん傘下に収めてきた。CB Insigtsの下図の2つは、上段が3社によるM&A件数推移、下段は同投資件数推移である。ここで解るようにM&Aのピークは2012年だ。この年、DellはシンクライアントのWyse、セキュリティーのSonicWALL、総合的なIT管理ソフトのQuest Softwareなど8社を買収した。EMCも同年、フラッシュストレージのXtremIOや企業向けファイル共有サービスのSyncplicity、セキュリティーのSilver Trail Systemsなど7社を買収。両社の買収投資は2010年から2012年の3年間、ほぼ同様の傾向を示したが、Dellはその後の2013年から年1件と低調となった。一方、EMCは翌2013年は4件とやや減ったたが、昨年はクラウド企業を買いあさった。OpenStackベースの企業向けクラウドCloudscalingクラウドベースのNASベンダーMaginaticsGoogle AppsSalesforceのバックアップサービスプロバイダーのSpanningなど6社である。この間、VMwareの買収件数は、一貫して低減傾向だ。 そして今年、これまでのところ、3社共、M&Aは1社という完全に低調な状況になった。
3社によるM&A件数推移
この間の投資案件はどうだったのだろうか。
下図のようにEMCの投資は2010年来ゆっくりだが安定して伸びてきた。直近の投資は今年9月末のSaaS型セキュリティーのZscalerだ。これが今年の2件目である。一方のDellは2014年が投資案件が6件と一番多く、セキュリティー関連のLastlineCylanceInvincea、ストレージ関連のSkyera(Western Digitalが昨年末買収)、Formation Data SystemsNexentaである。今年はDellとVMwareが3件づつ、EMCは2件なので、ここでも収斂傾向が見える。
Zscaler

Read more at CB Insights: https://www.cbinsights.com/company/zscaler

3社による投資件数推移

=DellのEMC買収の成否はクラウドが決める!=
こうして両社の企業買収と投資傾向を見てくると、それらは収斂して行き詰まってきたことが解る。ご記憶の方も多いだろうが、2013年はDellにとって受難の年だった。有名な投資家のCarl Icahn氏が仕掛けた買収をMichael Dell氏がMBOで受けて立ち、以来、Dellは上場を停止した。以下の3つの図はWikinvestからの引用で、Dellの成長は2011年を境に大きく落ち込んでいる。EMCもDellほどではないが、やはり2012年からの成長鈍化は著しい。このような状況が、2012-2013年にかけて両社のM&Aや投資が活発になった要因だ。では何故、両社がこのような厳しい状況に置かれたのか。それは間違いなくクラウドコンピューティングの台頭である。分けてもPublic Cloudだ。AmazonやGoogleなどは、ストレージも含めた自社設計のコンピュータでクラウドを運用する。時代が変わってきた。これまでサーバーやストレージなどは、DellやHP、IBM、さらにEMCなどがユーザ企業に売り、ユーザがデータセンタでシステム構築をして使用してきた。しかし、クラウド時代の到来で、彼らの顧客は段階的に自社データセンターを縮小し、Public Cloud利用へと進む。この難題に新たな回答を求めて立ち向かったのが2012年から2013年にかけての買収や投資だった。これらのオペレーションを通して、EMCはPivotalをPaaSとして分離させたり、OpenStackスタートアップのCloudscalingなども手に入れた。最大の子会社VMwareもvCloud Airをスタートさせ、両社は共同で新たなクラウド戦略を模索してきた。Delに至っては、シンクライアントターミナルのWyse買収はともかく、不得意なソフトウェア分野を補てんすべく各種の買収を繰り返してきた。しかし、彼らの戦略は行き詰まった。今回の買収の成否は、今後、クラウドの成長がどこまで進むのかにかかっている。IT市場は彼らの力が及びにくいクラウドとその他の分野に分かれるだろう。その比率が新生Dell/EMC組の適正規模の目安となろう。現時点で想定される戦略とは何か。まず、新生Dell/EMCグループをクラウドとハードウェアの2つの部門に分ける。勿論、クラウドの核は、買収評価額$67Bの半分を占めると言われるVMwareだ。次に、EMCの専用型ストレージとDellの融合である。これはDell汎用サーバー機の技術を使ったスケールアウト型のSDS(Software Defined Storage)への暫時移行である。これは一時期、売り上げ減を伴うが、中長期的に生き延びる重要な施策となろう。いずれにしても、全てはクラウドが今後どのように進展するかにかかっている。その状況に新生Dell/EMCグループが柔軟に対応できるかどうか見届けたい。
 
 

2015年10月13日火曜日

IBMメインフレームLinuxONEを分析する!

少し前になるが、メインフレームのリボーンとも言えるIBM LinuxONEが登場した。
今回はその登場の背景について分析して見よう。

整理が進むサーバーライン!=
昨年1月、IBMはLenovoにx86ベースのサーバーラインSystem xを売却 した。
2013年度の経営悪化で、同2014年10月には半導体門もGlobal Foundriesへ売却してハードウェア事業を縮小し、クラウドのSoftLayerと人工知能Watsonへのシフトを鮮明にした。結果、サーバービジネスは下図(Source:ITcandor)のようになった世界サーバー市場のトップはHPの22.6%、2位はDellで17.7%、IBMのそれは3位だが9.3%である。後ろにはCiscoのUCSが5.2%と迫っている。もはや以前の勢いはない。しかし、Linuxサーバー市場だけを見るとIBMは18.6%でトップ、2位はHPの17.7%、3位はDellの11.6%と続く。


 =伴ってOSの整理も進む!=
ハードウェアベンダーとしての顔をIBMが維持するのであれば、市場のマジョリティーであるx86系の売却はなかった筈である。ただ、売却できないメインフレームやPower製品は多くのユーザーがいる限り、製造を続けなければいけない。ここにIBMの悩みがある。ここまでの脱ハードの結果、IBMがサポートするOS3種類となったSystem z上のzOS、Powerで動くAIXそしてPowerとSystem zで稼働するLinuxだ歴史的にIBMメインフレームのOSとして君臨してきたのはzOS、そのハードウェアは名機IBM System/360った。その後、2000年末z/Architectureが発表されてSystem zシリーズとなり、今年1月にはIBM z13が発表された。z13の心臓となるCPUは22nm CMOSのPU(Processor Unit)だ。これは自社設計開発のチップを売却先のGlobal Foundariesが製造したものである。つまりOSは3種となったが、依然として、CPUは難物のSystem zとAIX用のPowerがある。下図はOS単位のIBMサーバーの売り上げを示したものだが、Unixを系譜にもつAIXサーバー売り上げは2012年来低減傾向。同様の傾向にあるzOSはそれでもAIXの2倍はある。伸びているのはLenovoからのOEMであるLinuxサーバーのみだ。こうみると、長期的にはAIXもzOSも出来れば、徐々にLinuxに移行したいところだろう。
=登場したLinuxONE!=
そして登場したのがLinuxONEである。
このブランド名でサポートしているハードウェアはSystem z。稼働OSは当面SUSEとRed Hatだが、来年にはUbuntuも加わる予定だ。IBMによると、既存、System zユーザーの1/3はLinuxを使用しており、ニーズは高いと説明する。提供されるのは、IBM z13ないしはzEC12ベースの「LinuxONE Emperor(皇帝ペンギン)」とIBM zBC12ベースの「LinuxOne Rockhopper(岩飛びペンギン)」だ。Linuxのマスコットのペンギンにあやかったシリーズである。前者の大規模向けは350~8000台のVM、後者の中規模システム向けでは40~600台のVMが稼働できる。LinuxONEはクラウドやビッグデータで必要な各種のオープンソースソフトウェアを採用し、さらにユーザーコミュニティー促進のために、IBMはLinuxONE Developer Cloudを提供予定だ。位置付けは超大型のLinuxサーバーである。



=メインフレームの良さは何か!=
こう見てくると、メインフレームの良さは何だったのか、という疑問に突き当たる。
これまでzOSは閉ざされた世界の高速トランザクションマシンとして重要視されてきた。バンキングやエアーラインなどミッションクリティカルで高速かつ完全なセキュリティーが求められる分野である。しかしながら、LinuxONEはオープンソースベースだ。製造を止めることが出来ないSystem z上で、これまで通りzOSユーザーには閉鎖性を武器にし、Linuxユーザーにはブレードサーバーを超えた高速性とセキュリティー重視の製品を提供する。このややもすると二律背反の回答を求めて、Linux Foundationの中にIBMはOpen Mainframe Projectを立ち上げた。初期メンバーはIBM、BMC、CA Technologies、Marist Collegeだ。「セキュリティー重視のLinuxとは何か」、これがプロジェクトのテーマである。諸兄は、既にLinux FoundationにはCarrier Grade Linux、そしてトヨタが主導して始まったAutomotive Grade Linuxプロジェクトがあることを知っているだろう。IBMの求める回答がここから生まれるかもしれない。

2015年10月9日金曜日

欧州から見た世界のクラウド…ITCondorの報告!

前々回はSynergy Researchの「2Q Public Cloud売り上げ」について取り上げた。今回はITcandorの報告を見てみよう。ITcandorはIT業界で豊富な経験を持つ英在住のMartin Hingley氏のブログでもある。氏の情報は米国情報の溢れる日本にとって、欧州から見た世界のIT業界を俯瞰する上で大いに役に立つ。 

=タイプ別クラウド売り上げ予測 (2009-2020)=
下図はITcandorが推測したタイプ別のクラウド売り上げだ。氏によると、エンタープライズの直近のハードウェア売り上げは$146B(約17兆5,200億円)、これまでデータセンター構築に向けられていたこれらの投資は自営センターからクラウドへ顕著に移動しているという。クラウド売り上げの実績は2015年半ばまでのPaaSを1とすると、IaaSが約倍の2、SaaSは3となっていた。しかし2020年までの長期予測ではPaaSが1で、IaaSは2の比率は変わらないが、SaaSは大きく伸びて4~5倍となる模様だ。これを金額で見ると、今年6月現在ではIaaS/PaaS/SaaSの総計は$94B(約11兆2,800億円)、これが2020年には$206B(約24兆7,200億円)と2倍強となる。

=プロバイダー別ではどうか!=
クラウドタイプやプロバイダー別に見るとどうなるか。
6月末時点のクラウドサービス総売り上げ($94B=約11兆2,800億円)の内訳は、IaaS/PaaSが$45B(5兆4,000億円)、SaaSが$49B(5兆8,800億円)となった。プロバイダー別では、$5.8B(6,960億円)を達成したIBMが全体の6.2%を占めてトップとなった。しかしAmazonなどのプロバイダーと異なり、IBMは総合的なサービスを展開するSIerとして、これには各種の関連サービスが含まれている。IaaS/PaaS分野のトップはAmazonで12.1%、金額では$5.445B(6,534億円)。同様にSaaS分野のトップはSalesforce、シェア11.1%、金額では$5.439B(6,527億円)となった。


=為替で大きく変わる!=
以上見てきたように、ITcandorの分析は、前々回のSynergy Researchと大きく異なるように見える。何故だろう。 理由は2つ考えられる。ひとつはITcandorが企業発表のデータをそのまま使用しているのに対し、Synergy Researchは独自の加工分析を施している。企業はなかなか生の数字を出したがらない。Amazonにしたところで、今年4月に発表された1Q決算から初めて詳細な数字がでた。それまでは財務諸表の「Others-その他」の中の主要部分がクラウドと考えられていた(詳細はここ)。IBMの場合、クラウド関連のコンサルからSI、そしてPublic/Private上での実稼働売り上げが含まれていると思われる。これらの扱い次第で、AWSがトップとなったり、IBMが上になったりするわけだ。もうひとつは為替である。強いドルに比してユーロと円は安い。その結果、下図のように大きなかい離が生まれる。



2015年10月6日火曜日

Rackspaceの新たな選択-Amazonと提携!

先週、RackspaceがAmazonと提携するというニュースがWSJなど幾つかの米メディアから流れた。米国時間の火曜日から始まるAmazonのカンファレンスAWS re:Invent 2015(10/6-9)でのアナウンス予定についてである。先行情報によると、Amazonはエンタープライズ顧客をしっかりとサポートするためにRackspaceと提携する。これはAWSの弱みであるサポート強化をRackspaceから受けるためだ。受けて立つRackspaceはAWSを販売し、定評あるFanatical Supportを提供する。(正式発表はここ

=競合から共存へ!=
RackspaceとAmazonは周知のようにこれまで競合関係にあった。2006年Mossoから始まったRackspaceクラウドはNASA Amesと共同でOpenStackプロジェクトを立ち上げた。2009年のことである。以来、Rackspaceは自社クラウドを徐々に整備して、完全なOpenStackベースに置き換えてきた。並行して、米国内ではOpenStackをPrivate Cloudとして採用する大企業が増加。この分野のSIで成功している企業がMirantisである。 しかしPublic Cloudでは、先行するAWSが大きなパイを握り、エンタープライズで実績のあるMicrosoftやIBMが追い上げている。混沌とした状況の中、既報123のようにRackspaceは昨年もだえ苦しんでいた。企業売却か事業継続か。そして選択した戦略は「競合から共存へ」だ。同社がもっとも得意とするのは充実した人材によるサポートである。企業がオンプレをPublic Cloudに移行する際、もっとも気になるのはセキュリティーやサポートである。だからこそ、各種のDedicate Servcieが流行るのだ。Rackspaceはこの高品質なサポートの提供でこれまで業績を伸ばしてきた。この武器を競合相手にも提供しよう、それがRackspaceの生き残りをかけた決意となった。今年7月中、まず手始めにRackspaceはMicrosoft AzureのリセラーとなってAzure Supportを開始。そして今度はAWSを販売し、そのサポートを受け持つ。競合の彼らが出来ないことをRackspaceが担当し、新しいエンタープライズ需要に応える覚悟だ。勿論、これまで通り、出来ればOpenStackをPublic Cloudとして販売したい。しかし、それは市場に委ね、競合相手のサービスも付加価値をつけて、販売・サポートする。これこそが現実的な解である。先週末には、同社株価は6.8%アップ、今後の動きを注目したい。

2015年10月2日金曜日

膨らむPublic Cloud売り上げ! -2Q 2015-

米調査会社のSynergy Researchから、2015年2QのPublic Cloudに関する報告が出た。この報告書の興味深いところは、Public Cloudの市場規模の拡大を投資と売り上げの両面から分析した点である。まずは概括しよう。 
=設備投資となる「Cloud Build」と「Colocation」=
発表された図で示される上段の「Cloud Build」と「Colocation」の2つは、Public Cloud Providerによる設備投資を意味し、下段の3つ「Cloud Infrastructure」「Software as a Servoice 」「Internet Service」は売り上げを示している。つまり、どういう投資流入があって、売り上げがどうなって、結果、市場規模はこんな感じだという分析だ。詳しく見ていこう。上段から、まず、「Cloud Build」は設備増強のために費やすハードウェアとソフトウェアへの投資である。同報告書によると、これは年率26%で伸び、2Qでは$7.0B(約8,400億円)。このまま1年に引き延ばせば$28M(約3兆3,600円)というとんでもない金額となる。もうひとつの「Colocation」は、設備増強に伴うセンターリース料で、年率9%で伸び、2Qでは$2.8B(約3,360億円)、年間に伸ばすと$11.2B(約1兆3,440億年)と、こちらも大きな投資であることが解る。これらの大きな投資は、Public Cloudがビジネスとして順調に伸びているということの証左でもあろう。

上図の「Cloud Build」はハードウェアとソフトウェアの投資だと述べた。今回の調査の直近で同じSynergy Researchから発表された「Cloud Infrastructure Market Share Trend」(下図)によると、ハードウェアでは、このところ、Ciscoが優位にHPとデッドヒートを続けてきたが、HPが逆転し始めたという。これは従来型専用機器から汎用機によるSDN(Software Defined Network)の流れと無縁ではないかも知れない。ソフトウェアではMicrosoftが一定の水準を確保しているがIBMはH/S共に過去の勢いはない。


=売り上げは「IaaS」や「SaaS」、さらに「Internet Service」=
次に売上げの方を見てみよう。
まずクラウド売り上げの核となるのは「Cloud Infrastructure Services」だ。これにはIaaSやPaaSが含まれ、2Qでは$5.5B(約6,600億円)、勿論、Public Cloudを利用したプライベートユースやハイブリッドユースが含まれる。もうひとつのSaaS売り上げは$6.6B(約7,920億円)となり、IaaS/PaaSを超えている。これは当たり前と言えば当たり前で、まずIaaSの普及があって、その上でPaaSを利用したアプリ開発が進み、結果としてSaaSビジネスが拡大するという流れである。さらに、サーチやSNS、eメール、eコマースなど従来からのInternet ServiceがPublic Cloudで稼働する市場は途方もなく大きい。

=2Q総計では$20B(2兆4千億円)規模=
以上を整理すると、Public Cloud市場は、流入する投資と急成長の売り上げの両方が相まって、2Q総計で$20B(2兆4戦億円)を超える規模となった。大雑把な内訳は、H/Sとセンターのリース料などの投資が約$10B弱、IaaS/PaaS/SaaSなどの売り上げが$12.1Bだ。今後はこの両輪のバランスがどう変化するのかがポイントとなろう。