2015年10月9日金曜日

欧州から見た世界のクラウド…ITCondorの報告!

前々回はSynergy Researchの「2Q Public Cloud売り上げ」について取り上げた。今回はITcandorの報告を見てみよう。ITcandorはIT業界で豊富な経験を持つ英在住のMartin Hingley氏のブログでもある。氏の情報は米国情報の溢れる日本にとって、欧州から見た世界のIT業界を俯瞰する上で大いに役に立つ。 

=タイプ別クラウド売り上げ予測 (2009-2020)=
下図はITcandorが推測したタイプ別のクラウド売り上げだ。氏によると、エンタープライズの直近のハードウェア売り上げは$146B(約17兆5,200億円)、これまでデータセンター構築に向けられていたこれらの投資は自営センターからクラウドへ顕著に移動しているという。クラウド売り上げの実績は2015年半ばまでのPaaSを1とすると、IaaSが約倍の2、SaaSは3となっていた。しかし2020年までの長期予測ではPaaSが1で、IaaSは2の比率は変わらないが、SaaSは大きく伸びて4~5倍となる模様だ。これを金額で見ると、今年6月現在ではIaaS/PaaS/SaaSの総計は$94B(約11兆2,800億円)、これが2020年には$206B(約24兆7,200億円)と2倍強となる。

=プロバイダー別ではどうか!=
クラウドタイプやプロバイダー別に見るとどうなるか。
6月末時点のクラウドサービス総売り上げ($94B=約11兆2,800億円)の内訳は、IaaS/PaaSが$45B(5兆4,000億円)、SaaSが$49B(5兆8,800億円)となった。プロバイダー別では、$5.8B(6,960億円)を達成したIBMが全体の6.2%を占めてトップとなった。しかしAmazonなどのプロバイダーと異なり、IBMは総合的なサービスを展開するSIerとして、これには各種の関連サービスが含まれている。IaaS/PaaS分野のトップはAmazonで12.1%、金額では$5.445B(6,534億円)。同様にSaaS分野のトップはSalesforce、シェア11.1%、金額では$5.439B(6,527億円)となった。


=為替で大きく変わる!=
以上見てきたように、ITcandorの分析は、前々回のSynergy Researchと大きく異なるように見える。何故だろう。 理由は2つ考えられる。ひとつはITcandorが企業発表のデータをそのまま使用しているのに対し、Synergy Researchは独自の加工分析を施している。企業はなかなか生の数字を出したがらない。Amazonにしたところで、今年4月に発表された1Q決算から初めて詳細な数字がでた。それまでは財務諸表の「Others-その他」の中の主要部分がクラウドと考えられていた(詳細はここ)。IBMの場合、クラウド関連のコンサルからSI、そしてPublic/Private上での実稼働売り上げが含まれていると思われる。これらの扱い次第で、AWSがトップとなったり、IBMが上になったりするわけだ。もうひとつは為替である。強いドルに比してユーロと円は安い。その結果、下図のように大きなかい離が生まれる。