2011年1月31日月曜日

クラウド企業の買収が始まった!
             -TerremarkがVerizonの傘下に-

1月27日、VerizonによるTerremark Worldwideの買収($1.4B)が決まった。
米通信市場は西のAT&T、東のVerizonに2分されている。
その東の雄Verizonがクラウドで話題の多い大手データセンターの Terremarkを買収したのだから、業界に衝撃が走った。この買収は2006年、AT&Tが当時、ASP最大手だったUS internetworking (USi)を買収したことを思い出させる。このUSi買収でAT&Tは企業向けデータセンタービジネスを確固たるものにしたからだ。勿論、 AT&Tのクラウド事業の核はUSiだ。そして今度はVerizonがクラウドで巻き返す番である。

電話は1876年、グラハムベル博士 (Alexander Graham Bell)によって発明された。その後、全米をカバーする巨大企業のAT&Tが生まれ、そのAT&Tは1984年、反独占訴訟によって、 ベビーベル(Baby Bell)の8社に分割されたが、それ以降、再度、統合を繰り返して、現在の2強(AT&T, Verizon)+1(Qwest)体制となった。VerizonはBell Atlanticが母体となり、米東海岸から徐々に内陸部までを統合して現在に至り、AT&Tは南西部のSouthWestern Bellを核に統合を繰り返し、西海岸から南部までをカバーして2006年にはBell Southを買収、それまで1位だったVerizonを抜き去った。

Verizonの企業向け事業の核はVerizon Businessだ。
IPネットワークとIT関連サービスを武器に世界75ヶ国でビジネスを展開している。同社がクラウド事業を発表したのは2009年6月、サービス名は、CaaS(Computing as a Service)だ。完全な大手企業向けのサービスである。そして今回の買収交渉は昨年秋から始まった。両社共、VMwareが仮想基盤である。 Verizonはまず大企業向けCaaSを中小企業-SMB(Small Medium Businesses)に提供すべくTerremarkに打診、そして同社のクラウド基盤を使ったCaaS SMBがスタートした。専業化が進んでいる米データセンター業界は、Equinixに代表される大型のファシリティー提供型企業とホスティング型の企業に大別される。ホスティング業界の序列は、SAVVIS、Rackspace、次がTerremarkで、3社共、クラウドに積極的だ。Terremarkの場合、総合力でやや見劣りがする分、VMwareとの関係強化で補ってきた。同社のクラウド開始は2008年、翌2009年 にvCloud Initiativeに参加。2009年6月には、VMwareから$20Mの投資を受け、VMwareのモデルデータセンター化だと言われるまでになった。Terremarkのクラウドメニューは、企業向けvCloud Datacenterと一般向けvCloud Expressの2つ。一方のVerizonのCaaSメニューは3つ。ひとつ目は大手企業向けの“Enterprise Cloud”、2つ目はそれにマネージドサービスを加えた“Enterprise Cloud Plus Managed Service”、この2つはVerizonのデータセンターで稼働する。 そして3つ目が中小企業向けにTerremarkのクラウドインフラ上で稼働するCaaS SMBだ。これはWebポータルベースの管理となり、クレジットカードでの精算ができる。
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Terremarkは、米国、南米、欧州 に13のデータセンターを運営してきた。
これらとVeraizonのセンターやネットワークを統合すれば巨大なシステムとなる。Terremarkには企業向けクラウドに必要なホスティングの専門スタッフがいる。また Terremarkは連邦政府機関に強く、Verizonにも連邦政府を専門に扱う子会社Verizon Federalがある。VerizonのIPネットワークと営業力、そしてこれらIT関連資産の組み合わせは強力だ。今回の買収に伴い、VerizonはTerremarkのブランドを残し、100%子会社の新部門と して扱うという。

こうして、いよいよ、クラウドの2幕が開き始めた。
プロバイダーはプレイヤーとしての生き残りに、ベンダーは新製品開発に死力を尽くす。
この買収を契機に、クラウドの流れが一段と加速されることは間違いない。

2011年1月25日火曜日

連邦政府のITリフォーム計画はクラウドが核!


連邦政府のクラウドが本格的に動き出しそうだ。
連邦政府CIOのVivek Kundra氏は、ここ3ヶ月で、3つのシステムのクラウド化計画をレビュー、今年末までに1 つを稼働させ、残り2つは2012年6月までに本番を開始させると宣言した。 3つとは、一般調達局-GSA (General Services Administration)と農務省(Department of Agriculture)、さらに内務省(Department of Interior)のプロジェクトだ。GSAではUnisysと契約し、17,000ユーザーの自前eメールをGoogle Appsに移行する。GSAはこれによって、ライセンスや要員などから50%の費用を削減、今後5年間で$15M(1㌦100円換算で15億円)のセーブ を見込んでいる。農務省の場合は、21の異なるeメールシステムをクラウドに統合し、120,000人をサポート、年$6M(同6億円)の費用削減になる という。内務省でも13のバラバラなeメールをクラウドベースに統合、 5年間で$36M(同36億円)のセーブとなる。

◆ 連邦政府のITリフォーム計画(Federal IT Reform Plan)
こ れら一連のレビューは昨年夏から続いているもので、既に38が終了した。
その結果、11のプロジェクトは順調、12が8ヶ月~2年強の遅れだっ た。さらに11は大幅な機能見直しとなり、4つのプロジェクトは中止、これで$3B(同3,000億円)の予算削減が可能となった。これらの結果を踏まえ て、昨年12月、「連邦政府のITリフォーム計画」が発表された。この計画は、進行中のITプログラムの妥当性の検証よりも、どのように そのプログラム を実現させるかという点にウェートを置いた「リフォーム案」である。それ故、狙いは、①操作性の向上(Achieving Operational Efficiency)と、②大規模IT 計画の効果的な管理(Effectively Managing Large-Scale IT Programs)に絞られている。つまり、「使い易さ」と「コスト削減」の追求だ。

◆ クラウド優先政策(Cloud First Policy)
さて、連邦政 府で実際のIT予算の権限を握るのは、行政管理予算局-OMB(Office of Management and Budget)である。OMBはこのリフォーム計画に深く関与しており、「新たなIT開発を進めるにあたり、安全で信頼でき、かつ費用効果がよいクラウド のオプションが存在する時は、これをデフォルトとすることを義務付ける」と宣言した。
このクラウド優先政策が、リフォーム計画の基本ポリシーであ る。

◆ リフォーム計画の指導方針
そして、 実行に当たっての指導ポイントは、以下の6項目だ。
①18ヶ月以内に上手く整理できないプロジェクトの1/3は終了か方針転換をさせる。
② 「クラウド優先(Cloud First)」政策に沿って、各機関毎、3ヶ月以内に、3つのクラウド化を義務付け、12ヶ月以内にもう1つを移行させる。
③2015 年までに、連邦政府全機関の持つデータセンター総合計を800に削減する。
④主要なIT計画で予算が許されるのは、以下の場合に限る。
  - 専任マネージャーとフルスタッフによる統合チームを持っていること。
  - モジュラーアプローチで、ユー ザー向け新機能を6ヶ月おきに提供できること。
  - 専門のITプロフェッショナルを採用していること。

⑤各機関の CIOのもとで、IT予算統合を進める議会と協力するために、モジュラー開発などによって、柔軟性のある予算モデル化を進める。
⑥提案依頼 -RFP(Request for Proposal)の効率化のため、会話型のプラットフォームを開始する。

◆ 25のアクションアイテム
さらに この計画では、計画実行をより厳正化するために、25のアクションアイテム(右図)が定められた。各々のアイテムには担当組織の明確化、そして目標期間 (半年以内、1年以内、1年半以内)が規定されている。このアクションアイテムの選定は、前述の38プロジェクトのレビュー結果を色濃く反映したものであ る。

主なアクションアイテムについて見て見よう。
アクションアイテムのトップにあげられているのはデータセンターの統合だ。これ は現存の2,094のセンターを2015年までに800に集約する。データセンターを保有する各政府機関はOMBと連携して、統合のためのタスクフォース を半年以内に立ち上げなければいけない。内務省では既にこのためのプロジェクトがスタートし、現在持つ210のデータセンター(総計9,000サーバー) を2015年までに55%減の115とすることを決めている。
また、一連のレビューの結果、大規模開発の見直しが進み、主要なものはアクションア イテムとなった。国土安全保障省-DHS (Department of Homeland Security)では、洪水災害時のNFIP(National Flood Insurance Program)が問題となった。レビュー時に、プロジェクト管理の不備、コントラクターへの仕事の指示の不明確さなどが指摘され、結果、このプロジェク トは中止となった。これによる予算削減は$23.8M(同23.8億円)だ。退役軍人管理局-VA(Department of Veterans Affairs)の軍人恩給支払いのペーパーレスシステムでは、アジャイル/モジュール開発へのシフト、本番時期の見直し(2012/3Q)などで初期契 約の変更が行われた。

◆ 実りある実行へ向けて
以 上のように、連邦政府のクラウド実行計画が具体性を帯びてきた。
2009年9月、Federal Cloud Computing Initiative(連邦政府クラウド計画)を受けて連 邦政府のパブリッククラウドApps.govが動き出し た。しかしスタートは早かったが、移行は当初計画より大幅に遅れた。Appsを構成するSaaSはともかく、要となるIaaSの“Cloud IT Services”提供が難航したからだ。結果、提案依頼書-RFP (Request for Proposal)がやり直しとなった。そしてやっと昨年10月、候補企業11社が選定された。今回のアクションアイテムにも、GSAの責任でAppsのIaaSは6ヶ月以内 の稼働が明記されている。このクラウドサービスに含まれるのは、“仮想マシン”と“クラウドストレージ”、そして“Webホスティング”だ。Appsス タートから約1年半、ようやく各省庁機関を取り込んだ移行計画が動き出した。今回のリフォーム計画は、Appsだけでなく、外部クラウドの利用やプライ ベートクラウド、さらにデータセンター統合など広範囲の内容を含んでいる。これらが上手く動き出せば連邦政府のITシステムは生まれ変わる。

2011年1月18日火曜日

2011年を予測する! 
                 クラウド市場はどう動くか(2)


◆ Googleがマンハッタンにやってきた!

ま ず、最近のトピックスをひとつ紹介しよう。
写真(下)は昨年末、Googleが買い取った巨大なオフィスビルだ。
場所はマンハッタンの 南、住所は111 Eight Ave. New York, NY。8番街と9番街の間、1ブロックにわたる超横長の15階建て、総面積2,940,000sq.ft(約273,135㎡)、何と東京ドームの5.8 倍の広さだ。買取価格は$1.8B(1㌦100円換算で1,800億円)。このビルは1932年、ハドソン川の貨物ターミナルサービス用に建築されたも の。Googleはマンハッタンでのプレゼンスをあげるために買ったらしい。現在の計画ではニューヨーク近郊に働く約2,000名の従業員が入り、 550,000sq.ft(51,097㎡)を使用する予定だ。これでも東京ドームの1つ分強の広さである。残りはNikeやWebMDなどの現在のテナ ントが継続使用する。


◆ クラウド市場予測-Part-2

さて、クラウド市場予測の2回 目は、ForresterのJames Staten氏の記事だ。
氏は、まず、クラウド市場全体を次のように概括している。

昨年後半の顕著な ことは、IaaSビジネスの基礎が築けたことです。そして2011年は、Amazonを超えて、力強く安定した第2ステップに進むでしょう。特に VMwareの大幅に出荷が遅れていたvCloud Directorがとうとう姿を見せました。今年はこれがどの程度活躍するのか注目です。また、 VMopsから社名を変えたCloud.comOpenStackも要注意です。特に OpenStackはISVやISPから強力な支援を受け、今年の活躍が期待されています。その意味で2011年はオープンソースがブレークするかもしれ ません。さらに、殆どのソフトウェアやプロフェッショナルサービス企業がクラウド市場に参入して、それぞれの分野で新たな動きを展開することになるでしょ う。


予測#1: エンパワード(自立したリーダーたち)が 導く
               (The Empowered Shall Lead Us)
Forrester は最近出版した“Empowered”の中で新しいITリーダー像について述べています。彼らはインフラやオペーレーション (I&O)のためではなく、ビジネスのために最先端の技術を活かし、カスタマーサポートの向上や関係改善、新商品開発などに役立てます。あなたが IT幹部なら、自分で判断するのではなく、彼らに判断させることを重視すべきです。ビジネスの最前線にいる人材がビジネスのガイド役となります。この新し い時代の権限を持って、自立したリーダーたち(エンパワードと呼ばれる人たち)が変化を察知し、新たなサービスをクラウドへと導きます。

予測#2: プライベートクラウドの構築、そして失敗
                (You will build a private cloud, and it will fail)
プ ライベートクラウドの構築、それは失敗に終わかもしれません。しかし、これを通して、クラウド環境の運用とはどんなものか本当のところが解るはずです。野 心的なクラウドは避けて、まずは小さなクラウドから始め、学び、繰り返し、そして大きくすることが肝心です。

予測#3: ホステッドプライベートクラウドは自営プライベートに比べて3対1
                (Hosted private clouds will outnumber internal clouds 3:1)
外部に委託するクラウド(Hosted Private Cloud)の利用は、社内構築のプライベートクラウドより、3対1以上の比率で大きくなるでしょう。最大の理由は、エンパワードな人たちがスピード感を 求めるからです。これに対応するためには、自営クラウドでも継続的にこの要求を満たさなければいけません。つまりVMwareの管理が出来るヒーローでは なく、誰でもが可能な自動化ソフトウェアによる標準化手順の実行が要求されます。大部分の企業ではこの準備はまだ出来ていませんが、プロバイダーでは今年 からこれが始まります。このパスが早道であり、採用すべきです。

予 測#4: コンプライアンスによってコミュニティクラウドが登場
              (Community clouds will arrive, thank to compliance)
コンプライアンス(法令準拠)ベースのコ ミュニティークラウドも登場します。
既にバイオ分野はこの方向に向かい、連邦政府もセキュリティーやコンプライアンスを
ガイドとした誘導 政策を採り始めています。例えば、米食品医薬品局-FDA(Federal Food & Drug Administration)の条件仕様を満たすために、自企業単独で作業する時代は終わりました。同一業界の共同作業を実行に移す場所がコミュニ ティークラウドです。

予測#5: WSアプリケーションはHPCへ
               (Workstation applications will bring HPC to the masses)
HPC(クラウド利用のグリッド)も活躍し出します。既にエンジニアリング向けソフトウェアを扱う大手ベン ダーたちは彼らのアプリケーションをクラウド上のグリッドコンピューティングとして使えるように進めています。これは彼らのビジネス拡大のためです。彼ら はアプリケーションの後方でどのようにクラウドを扱うかを熟知し、それによって、これまでにない効率を実現します。つまり、ユーザーは何の努力もせずに、 ワークステーションで動かしていたエンジニアリングアプリケーションをグリッド並みの性能のクラウド上で稼働させることが出来ます。これはクラウド経済学 に影響を及ぼし、スーパーコンピュータを凌駕するかもしれません。

予 測#6: クラウド経済学にスイッチON、廉いことは良いことだ
               (Cloud economics gets switched on)
私 たちは“基本的なクラウド経済”とは、利用した分だけ払うものと理解しています。
そして、このメカニズムはレッスンではなく使うためのものです。 クラウド経済の第1は、
アプリケーションを弾力的にクラウドプラットフォームに適応させ、つまりアプリケーションを必要に応じて、出し入れして、 コストを最小化することです。第2は、アプリケーションの設計と最適化を徹底して、利益を最大化することです。第3は、クラウドをいつ、どのように使えば 利益が最大になるかを知ることです。アマゾンなどが始めたSpot Instanceでは、使われていない仮想マシンにオークションでユーザーが値をつけることが出来ます。これらを利用することでコストを最小化 することが出来ますし、幾つかのクラウドを比較しながら料金計算をするツールなども出始めてきました。IaaSのコモディティー化が進み、このようなツー ルの重要性は増しています。

予測#7: 拡大するBIのギャップ
                (The BI gap will widen)
次に BI(Business Intelligence)について考えて見ましょう。
もし、あなたがBIはセキュアなデータウェアハウスでなければい けないという信者なら、
クラウドによって状況が変わったことを理解しましょう。アマゾンのElastic Map Reduceなど幾つかのツールを用いることで、今やリアルタイムの分析とクロスシステムの洞察が可能となりました。これによって、競争相手より早く、 マーケットシフトに対応することが出来ます。今まで通りのBIに留まるか、クラウド利用のリアルタイムに移行するか、あなた次第です。

予測#8: 情報こそ力、そして新しいプロフィットセンター
               (Information is power and a new profit center)
ク ラウド利用は、各種の情報から高度な分析で企業を正しい方向に導くだけでなく、売上げを伸ばすことにも役立ちます。Windows AzureのDataMarketのようなサービスは、企業のデータソース(情報源)として容易に活用され、それ自身がプロバイダーと言って良いでしょ う。通信社のAP(Associated Press)や世界的規模で企業情報を扱うDun & Bradstreet、地球全体の地理情報を扱うESRIなどが基本となるモデルです。

予測#9: クラウドの標準化はまだ、乗り越えよう
              (Cloud standards still won’t be here - get over it)
クラウドの標準化は、ベンダーアラ イアンスのDMTF(Distributed Management Task Force)や米国立標準技術研究所NIST(National Institute of Standards and Technology)、さらにセキュリティースタートアップによるCSA(Cloud Security Alliance)などの活発な活動にも係わらず、まだまだ未整備です。しかし、それは今年も何も進まないということではありません。ここ1~2年のうち にドラフト仕様が出来て批准される可能性もあります。ただ、実際の適用にはまだ時間がかかるでしょう。だからと言って、クラウドの利用をためらわないでく ださい。クラウドには既にセキュリティーやWebサービス、ネットワーク、プロトコルなどの標準が採用されているからです。そしてクラウド管理ツールで は、クラウド間の差異を抽象化する最大限の作業が続いています。

予 測#10: セキュリティーは証明される、プロバイダーとユーザーで
              (Cloud security will be proven but not by the providers alone)
クラウドの セキュリティーはプロバイダーだけの責任ではなく、ユーザーと共有されるべきものです。クラウドの先進企業では既に、 医療保険分野の相互運用性と説明責任に関する法律-HIPAAHealth Insurance Portability and Accountability Act)の採用、クレジットカード業界では広範囲なセキュリティー基準を 定めたPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)などを適用しています。クラウドプロバイダーも最近のAWS ISO 27001承認のように積極的です。このようなベストプラクティスの動きは今年さらに広まるでしょう。しかし、このような高いハードルを超えるまでは、ク ラウドを採用すべきではないということではありません。セキュリティー問題の大きくないものや保護することが簡単なアプリケーション分野から始めましょ う。 
  
(翻訳は大意訳とし、一部、解りやすさのために補筆)

2011年1月11日火曜日

2011年を予測する! 
                 クラウド市場はどう動くか(1)

さ て、今年のクラウド市場はどのように動くのだろうか。
その第1回目はCIOに掲載されたBernard Golden氏(CEO of consulting firm HyperStratus) の見通しだ。氏はサービスプロバイダー側とエンドユーザー側に分け、各々5つを取りあげている。


Cloud Service Provider(CSP)について

予 測#1: CSPビジネスの膨張、そして崩壊
                           (CSP business explodes...and then implodes)

CSPは今年もサービス提供のため、大手はセンター建設や機器購入などで積極的な投資を続け、規模の小さなプ レヤーでも、幾つかは追従するケースが出てくるでしょう。これまで、コロケーションやホスティングなどを扱ってきたプロバイダーは、彼らのサービスがクラ ウドの機敏さや低コストに比べ、不十分であるという認識に直面します。
一方で年末までには、クラウドユーザーの透明性と価格低減の要求から、“CSPとは非常に資本集約的であり、かつ競合性の高いビジネス”であることが はっきりしてきます。このため新規参入組では、生き残りが難しいと判断して撤退し始めるところもでるでしょう。
この問題は、資本の小さなプロバイ ダーだけに限らず、大きな会社でも、投資見返りに固執すれば最悪の結果が起り得ることを意味します。多分、2011年後半か2012年前半には、CSPの 未公開株を処分したいところが現れるのではないでしょうか。

予 測#2: 顧客の自主選択を通した市場セグメント
                    (Market Segment via Customer Self-Selection)
ベンダーやコメンテー ターの多くは、現在、中小企業(SMB)には熟練したITスタッフが少ないことから、簡易に利用できるIaaSのもっともふさわしい市場だと考えていま す。しかし、今年のどこかで、そう簡単ではないという幾つかの問題に気付くでしょう。一旦、その現実がわかると、SMBにはSaaSが向き、大きな企業 ユーザーのみがIaaSを使いこなせることに同意せざるを得なくなると思います。従って、SaaSプロバイダーは継続してユーザーを伸ばしますが、ただ、 SaaSは、SMBだけのものではありません。SaaSは非コアなアプリケーション分野として、費用削減を望む全てのユーザーに支持されます。

予測#3: OpenStackが本領を発揮 

                   
(OpenStack will come into its own)
今年はまた、オープンソースのクラウドスタック(構築基盤)の魅力がはっきりして、世界中で
OpenStack採 用が進むでしょう。私は一般的に大手企業が始めるオープンソース・プロジェクトには懐疑的です。しかし、ある目的を持ったプロジェクトをスタートさせ、サ ポートし、参加者を募ったコミュニティーを組織化するのは、正しい方法です。これまでのところRackspaceの動きは、IBM が始めたEclipseモデルに近いように思います。OpenStackもEclipseに類似し、無償で拡張性の高いクラウ ド基盤は、威力を発揮することになるでしょう。新興国のCSPにとって、拡張性の高いOpenStackは重要な選択肢となります。先進国のCSPにおい ても、開発の多大な負担を負うことなく、高品質なクラウド基盤を利用出来ることは魅力的な筈です。

予測#4: クラウドが新興国でテイクオフ
                  (Cloud Computing takes off in emerging economics)
ク ラウドについて、新興国では先進国のような特別の不安はありません。殆どの企業はハードウェアを含めた重要なインフラを持っていないので、先進国のように 現状のハードウェアを再利用する衝動に駆られることはなく、従ってIT部門は、パブリッククラウド利用を避ける理由がありません。結果、選択とは、既存の ものか新しいものかではなく、これまで通りかクラウド化するかの違いです。この現象は携帯電話の普及に似ています。固定電話の未整備な新興国では携帯電話 の普及は爆発的でした。同様に、特別な投資を必要としないプブリッククラウドが急速に広まる可能性は高く、先進国より高い伸びを示しても驚くには当たりま せん。

予測#5: CSPとSaaSの継続的革新
                  (Continued rapid innovation by CSPs and SaaS companies)
AWS(Amazon Web Services)が驚くべきスピードで新機能を提供し続けていることに私たちは驚いています。過日、Amazonが発表したドメインネームサービスRoute53はAPIを持 ち、プログラムインターフェースでドメイン名の取得が可能となりました。これによってAWS上でSaaSを提供している企業では、ユーザーの申請のよって すぐに新しいサブドメインを取得することができるようになりました。ただ、AWSだけが継続的な革新を続けているかというと、そうではありません。来年、 私たちは、廉価で拡張性の高いインフラ上で作られたもっと多くの機能を見ることになるでしょう。

◆ エンドユーザーについて

予測#1: コストと透明性が焦点
                ( Focus on cost and transparency)
さて、視点を変えてユーザーについて考 えて見ましょう。私は経済学にはやや先入観を持っています。しかし、多くの人たちが疑う余地なく感じるクラウドの俊敏性、弾力、セルフサービスなどの特性 について、私は、これらが特定のクラウドではなく、全てに見られる点が重要だと指摘したいと思います。その結果、インフラの規模拡大と自動化によって、ク ラウド革命とでも言える“低価格化”が成し遂げられ、この傾向はさらに続くでしょう。
これはIT分野における経済学が、これまでとはまったく違う ことを意味します。クラウドの利用コストやその前提となる条件など、全ての情報がトランスペアレントな形でCSPのWebに掲示されています。このような 完全に開放的で透明なIT取引は、これまでになかったことです。このクラウドによる経済革命は、社内ITにも同様の経済性を求め、来年は企業内CIOには 災いとなって降りかかることになります。実際のところ、企業内ITコストの透明度の要求は既に始まっています。特にSaaSによる外部利用が進んだこと で、もし社内ITの経済透明性が低くければ、エンドユーザーは納得しなくなります。経済理論に戻ると、SaaSのアプリケーションとインフラは相互連携で あり、クラウドのインフラが低下すれば、SaaSのコストも自動的に下がります。このように社内ITに不快感を課すことによって、全てのコストに透明性が 増し、同一予算内なら1桁多いアプリケーションの実行も夢ではありません。

予測#2: さらなるパブリックとプライベートクラウドの混乱
                (More public/private cloud confusion)
昨年盛んに行われたパブリックが 良いのかプライベートにすべきかという議論は、今年も引き継がれ、状況はより悪くなるかもしれません。
双方にしっかりした論拠 があり、これが実際にどういう結果になるのかを見極めなければなりません。私はこの議論への積極的な参加はしないつもりです が、しかしはっきり言えることは、幾つかのオプションの提供要求が強くなるということです。クラウド利用からベネフィットを得 たい人や組織の願望は明白です。このためにクラウドプロバイダーは、安全性や信頼性、費用対効果などのオプションをはっきりする必要に迫られます。あなた が提供側の幹部なら、今年中にこれらのオプションを数字で解るようにさせることが急務となります。このような状況下ですから、進行中のプライベートクラウ ド計画についても、特に急ぐ必要はないと思います。

予測#3: ハ イブリッドも混乱
                (More hybrid cloud confusion)
クラウドベンダーの過剰宣伝、そしてユーザーの希望的観測、その結果、ハイブリッドについても混乱が続きま す。ベンダーはたやすく、透過的に、しかも自動的に社内のITインフラから外部クラウドに移行ができることを主張し、ユーザーは軽率にも、これまでと同様 の間違いを繰り返すでしょう。どんなに大きく、優れたプロバイダーでも物理的な課題やワークロード、サイト間の移行は容易ではありません。社内ITインフ ラとパブリッククラウドをシームレスに結びつけるには多大な努力(投資とシステム構築)が要り、さらにサポートもしなければなりません。これらのことを考 えると、社内IT部門の幹部は、ハイブリッドが実に野心的な試みであるかが解り、縮小せざるを得なくなります。そして2011年は、これの認識にたって、 ワークロードやコスト、運用、コンプライアンスなどで整合性のあるハイブリッド計画を考えることになるでしょう。

予測#4: アプリケーションアーキテクチャーの課題
                 (Application architecture challenges)
ま た、IT部門が最初のクラウドアプリケーションを動かせば、
彼らはクラウドの特性を生かした俊敏性や弾力性などが、そんなに簡 単ではないことに気付くでしょう。つまり、新しいアプリケーションアーキテクチャーが必要なのです。よりクラウドにあったアプリケーション として動かすには、助長性や障害対策、セッション隔離などそれなりの設計が大事です。弾性のあるアプリケーションとは、人手を介さず、負荷に応じて、自動 的に伸びたり縮んだりする機能がなければなりません。これらの要求は、アーキテクトやソフトウェアエンジニアに新しいスキルセットがいることを意味しま す。このような現象は過去にも経験したことです。しかし、そのたびにIT幹部はショックを受け、要員の再教育に迫られました。多分、今年はこのよ うな出来事を多く見ることになります。

予測#5: ITオペレー ションの課題
                 (IT operations challenges)
クラウドの導入は、ITのオペレーションについても、3つの課題を顕在化させます。
まずひとつ目 は、どの部門が何をするかという組織と役割に関係する問題です。クラウドでは仮想マシンを運用するのは業務部門です。殆どの部門において、クラウドが提供 する手作業の“セルフサービス”運用は煩わしく、不満の種となります。彼らは、これまでの社内ITと同様にクラウドであっても即座の実行を要求します。こ れが問題のひとつです。ふたつ目は、動的にアプリケーションを管理するトポロジーと関連する問題です。クラウドコンピューティングのビジョンは、アプリ ケーションの負荷や応答状況に応じて、リソースを自在に投入できることです。このためには、ITの運用上、どのような時にどのように対応するかということ が解らなければいけません。新しい運用管理ソフトウェアでは、これらを自動化したダイナミックなオペレーションが必要となるでしょう。三つ目は拡張性のひ とつです。これは個々のアプリケーションではなく、業務として必要な全てを走らせた時に起こる問題です。ユーザー予測#1で指摘したように、走らせるアプ リケーションの数は急膨張します。多くのアプリケーションが10倍以上になると、運用がどうなるのかは解りません。しかしはっきりしていることは、これま での経験以上のことが要求されます。過去に開発されたアプリケーションをただクラウド上に乗せただけでは、次なる問題を引き起こします。クラウドでは容易 にアプリケーションを走らせることができますが、実際に運用しなければならない業務部門の人たちやデベロッパーは、システムの運用経験が乏しく、スキルもあ りません。結局、この問題はまた、IT部門や内部の運用管理者に戻ることになり、これを“クラウド・ブーメラン現象”といいます。

以上が 今年のクラウド予測です。
あなたはどう思いますか。 (翻訳は大意訳とし、一部、解りやすさのために補筆)

2011年1月4日火曜日

2011年を予測する! 
               -シリコンバレーのハイテク事情-

2011年の初頭にあたって、クラウド市場がどのように動くのかを予測した記事を紹介
したい。しかし、クラウド以前に、ハイテク全体がどう動くのか、それも気になるところだ。


◆ 2011年、シリコンバレーのハイテク予測
そこで、まず、シリコンバ レー地元紙「San Jose Mercury」のハイテク人気コラムニストChris O'Brien氏の2011 Predictionsを見てみたい。彼はざっくばらんで、ユニークな語り口と解説が持ち味、そして、いつも意外な真実を知らせてくれる。この記事はハイテク全般であること、また、シリコンバレーとの関わりにポイントが置かれていることに留意されたい。

#1:  Facebookのユーザーが10億人を超える!           
                     -  Facebook will pass 1 billion users 
現在のユーザーは5.5億人だ。そして、1日あたり70万人づつ増えている。このペースで行けば今年中に8億人になる計算だ。しかし、もっとペースは速まる可能性は高いよ。だって、Mark Zuckerberg(CEO)はTime誌の 「2010年、今年の人(Person of the Year 2010)」だからね。

#2: Yahoo!のCEO Carol Bartz女史が辞める?
                    
                     - Yahoo! CEO Carol Bartz will be replaced
AutoDeskの元CEO Carol Bartz女史がJerry Young氏の後を受けてYahoo!のCEOに就いたのは昨年1月のこと。しかし、女史がYahoo!のミッションを明確に出来ないことは明らかだ。これはボードにとっては良いことかもしれないね。CEOを代える理由ができたから。ところで、元eBay CEOのMeg Witman女史(昨年11月、潤沢な資金でカリフォルニア州知事選にでるも不法移民のメイドさんの扱いが公表されて惜敗)が仕事を探しているって... どう思う。

#3: HPがSAPを買うかも!                         
                     - Hewlett-Packard will buy
HPがSAPを買収する気がする。この取引はOracleのLarry Ellison氏がもじもじしているHPの評判を引き裂こうとしていることへの対応さ。Ellison氏は、多分、HPがこんなことをしないように願ってるね。SAPはOracleの強敵だし、数年前、Microsoftの餌食から逃れ、今ではすっかり健康的な会社に戻ったから。今回、Mark Hurd氏がスキャンダルでHPのCEOを辞め、Oracleに拾われた。Ellison氏はSunを買ったけどハードウェアは解らない。Hurd氏がその役目さ。そして、彼の後釜にHP CEOになったのが元SAP CEOのLéo Apotheker氏というわけだ。彼なら出来る。

#4: インターネット関連企業の大型IPOはないの?         
                       - No big internet IPOs
Zynga、 LinkedIn、Facebook、Yelp、Grouponなど。Sand Hill Road(VCオフィスが集まるシリコンバレーの有名な通り)ではこれらのうちどれかが今年IPOを実行し、IPO市場が戻ってくることを祈ってるよ。夢を見よう!ゾンビが追いかけてきてもIPOへ向けて走りきろう。

#5:  GoogleがTwitterを買うよ!                       
                      -Google will buy Twitter
Googleって、検索以外は買収で出来上がったようなもの。まだ大きな会社を1つや2つ買うには十分の資金はある。社内で走らしたSNSプロジェクトはほぼ失敗。 Yelp(地域店のレビューサイト)やGroupon(共同購入サイト)の買収もダメだった。Twitterかな。
最近の評価では、Groupon で考えていた資金の半分程度だ。Googleは不安定なTwitterを救うかな。現在のところTwitterにはしっかりしたビジネスモデルがないので、持ち込まれれば、YESと言わざるを得ないだろう。GoogleならTwitterの巨大なユーザーベー スからお金を儲ける方法を考え出すさ。

#6: 中国ハイテク企業のIPOは米国を凌ぐ!
           -China will have more tech IPOs than the U.S.
ぼやっとしていたら、昨年、中国企業が米国市場で41もIPO(新規株式公開)だって。きっと今年も米国企業を抑えて凄いぞ。

#7: Appleから待望久しい音楽ストリーミングサービスが開始?
          -Apple launches its long-awaited music streaming service
ノースキャロライナ州で建設中だった巨大なデータセンターが出来た。Appleは1年前、ミュージックストリーミングのLaLaを買収、今はシャットダウンしている。この生まれ変わりがApple の今年の目玉だ。もうこうなれば、いちいちiTunesで買わなくたって、視聴料(サブスクリプション)でどこからでも音楽を聴くことが出来るって言うわけさ。


#8: ベンチャーキャピタル・ブルース     
                      -Venture Capital Blues
スタートアップの資金集めはヨタヨタかな。自力での資金調達も、VC投資も、昨年並みだと思う。ハイテク業界にはまだまだ革新的なものはあるけれど、今年はパートナーは減るし、利益も厳しそう。

#9: シリコンバレーの雇用も横ばい
                      -Silicon Valley jobs will remain flat
今年もこれまでの経済反動で雇用は総合的には横ばいだ。お陰で州政府の財政は最悪。それでも建設業界はなんとかなるけれど、ハイテクは失業と新規組で相殺かな。
このシリコンバレーは特殊な地域だ。ひとつの産業(ハイテク)だけで全体をカバーするのは、良いのか、悪いのか。

#10: ク ラウドはバブル?  -Cloud bubble
次なる大きなバブルはクラウドだよ。去年はストレー ジ企業の買収価格が加熱したし、
それに元祖クラウドのSalesforce.comの株価も大暴れしたね。昨年、クラウドスタートアップの少なくとも10社で、VCから$20M(1㌦100円換算で20億円)の資金を集めた。2011年は、これらのスタートアップを大手クラウド企業が買収するという流れだね。
きっと、危険な入札競争や払い過ぎが起こると思うよ。

#11: ブロード バンドの請求書が変わる?
                     -Broadband bill comes due
今年はモバイルやビデオの急増で、AT&Tやベライゾンなど、大手キャリアのネットワークに大きな混乱が起きると思う。彼らは使いたい放題の現行価格戦略から、利用量による課金に変えてくるだろうね。この流れは、このところ連邦通信委員会 FCC(Federal Comminucations Committee)によって幾分は整理されたけど、企業ユーザーはもちろん個人でも大きな問題になるんじゃないかな。


O'Brein氏 の歯に衣着せぬ予測には、どきっりだ。
こんな時こそ、指摘されたような幾つかの大型買収が動き出す。また、クラウドはバブル気味、これも当たっている。昨年8月のHPとDellの3PAR買収合戦、結果は一度Dellに決まっていたものをHPが上乗せしてひっくり返した。最終の買収価格は$2.4B(1㌦ 100円換算で2400億円)だ。そのDellは、昨年12月、仮想化機能を持ったネットワークストレージのCompellent Technologiesを$960M(同960億円)で買収した。氏は、また、大手のクラウド企業がスタートアップの買収に動くと言う。今年も、また、クラウドから目が離せない。  (翻訳は大意訳とし、一部、解りやすさのために補筆)