1月27日、VerizonによるTerremark Worldwideの買収($1.4B)が決まった。
米通信市場は西のAT&T、東のVerizonに2分されている。
その東の雄Verizonがクラウドで話題の多い大手データセンターの Terremarkを買収したのだから、業界に衝撃が走った。この買収は2006年、AT&Tが当時、ASP最大手だったUS internetworking (USi)を買収したことを思い出させる。このUSi買収でAT&Tは企業向けデータセンタービジネスを確固たるものにしたからだ。勿論、 AT&Tのクラウド事業の核はUSiだ。そして今度はVerizonがクラウドで巻き返す番である。
電話は1876年、グラハムベル博士 (Alexander Graham Bell)によって発明された。その後、全米をカバーする巨大企業のAT&Tが生まれ、そのAT&Tは1984年、反独占訴訟によって、 ベビーベル(Baby Bell)の8社に分割されたが、それ以降、再度、統合を繰り返して、現在の2強(AT&T, Verizon)+1(Qwest)体制となった。VerizonはBell Atlanticが母体となり、米東海岸から徐々に内陸部までを統合して現在に至り、AT&Tは南西部のSouthWestern Bellを核に統合を繰り返し、西海岸から南部までをカバーして2006年にはBell Southを買収、それまで1位だったVerizonを抜き去った。
Verizonの企業向け事業の核はVerizon Businessだ。
IPネットワークとIT関連サービスを武器に世界75ヶ国でビジネスを展開している。同社がクラウド事業を発表したのは2009年6月、サービス名は、CaaS(Computing as a Service)だ。完全な大手企業向けのサービスである。そして今回の買収交渉は昨年秋から始まった。両社共、VMwareが仮想基盤である。 Verizonはまず大企業向けCaaSを中小企業-SMB(Small Medium Businesses)に提供すべくTerremarkに打診、そして同社のクラウド基盤を使ったCaaS SMBがスタートした。専業化が進んでいる米データセンター業界は、Equinixに代表される大型のファシリティー提供型企業とホスティング型の企業に大別される。ホスティング業界の序列は、SAVVIS、Rackspace、次がTerremarkで、3社共、クラウドに積極的だ。Terremarkの場合、総合力でやや見劣りがする分、VMwareとの関係強化で補ってきた。同社のクラウド開始は2008年、翌2009年 にvCloud Initiativeに参加。2009年6月には、VMwareから$20Mの投資を受け、VMwareのモデルデータセンター化だと言われるまでになった。Terremarkのクラウドメニューは、企業向けvCloud Datacenterと一般向けvCloud Expressの2つ。一方のVerizonのCaaSメニューは3つ。ひとつ目は大手企業向けの“Enterprise Cloud”、2つ目はそれにマネージドサービスを加えた“Enterprise Cloud Plus Managed Service”、この2つはVerizonのデータセンターで稼働する。 そして3つ目が中小企業向けにTerremarkのクラウドインフラ上で稼働するCaaS SMBだ。これはWebポータルベースの管理となり、クレジットカードでの精算ができる。
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Terremarkは、米国、南米、欧州 に13のデータセンターを運営してきた。
これらとVeraizonのセンターやネットワークを統合すれば巨大なシステムとなる。Terremarkには企業向けクラウドに必要なホスティングの専門スタッフがいる。また Terremarkは連邦政府機関に強く、Verizonにも連邦政府を専門に扱う子会社Verizon Federalがある。VerizonのIPネットワークと営業力、そしてこれらIT関連資産の組み合わせは強力だ。今回の買収に伴い、VerizonはTerremarkのブランドを残し、100%子会社の新部門と して扱うという。
こうして、いよいよ、クラウドの2幕が開き始めた。
プロバイダーはプレイヤーとしての生き残りに、ベンダーは新製品開発に死力を尽くす。
この買収を契機に、クラウドの流れが一段と加速されることは間違いない。