2011年1月11日火曜日

2011年を予測する! 
                 クラウド市場はどう動くか(1)

さ て、今年のクラウド市場はどのように動くのだろうか。
その第1回目はCIOに掲載されたBernard Golden氏(CEO of consulting firm HyperStratus) の見通しだ。氏はサービスプロバイダー側とエンドユーザー側に分け、各々5つを取りあげている。


Cloud Service Provider(CSP)について

予 測#1: CSPビジネスの膨張、そして崩壊
                           (CSP business explodes...and then implodes)

CSPは今年もサービス提供のため、大手はセンター建設や機器購入などで積極的な投資を続け、規模の小さなプ レヤーでも、幾つかは追従するケースが出てくるでしょう。これまで、コロケーションやホスティングなどを扱ってきたプロバイダーは、彼らのサービスがクラ ウドの機敏さや低コストに比べ、不十分であるという認識に直面します。
一方で年末までには、クラウドユーザーの透明性と価格低減の要求から、“CSPとは非常に資本集約的であり、かつ競合性の高いビジネス”であることが はっきりしてきます。このため新規参入組では、生き残りが難しいと判断して撤退し始めるところもでるでしょう。
この問題は、資本の小さなプロバイ ダーだけに限らず、大きな会社でも、投資見返りに固執すれば最悪の結果が起り得ることを意味します。多分、2011年後半か2012年前半には、CSPの 未公開株を処分したいところが現れるのではないでしょうか。

予 測#2: 顧客の自主選択を通した市場セグメント
                    (Market Segment via Customer Self-Selection)
ベンダーやコメンテー ターの多くは、現在、中小企業(SMB)には熟練したITスタッフが少ないことから、簡易に利用できるIaaSのもっともふさわしい市場だと考えていま す。しかし、今年のどこかで、そう簡単ではないという幾つかの問題に気付くでしょう。一旦、その現実がわかると、SMBにはSaaSが向き、大きな企業 ユーザーのみがIaaSを使いこなせることに同意せざるを得なくなると思います。従って、SaaSプロバイダーは継続してユーザーを伸ばしますが、ただ、 SaaSは、SMBだけのものではありません。SaaSは非コアなアプリケーション分野として、費用削減を望む全てのユーザーに支持されます。

予測#3: OpenStackが本領を発揮 

                   
(OpenStack will come into its own)
今年はまた、オープンソースのクラウドスタック(構築基盤)の魅力がはっきりして、世界中で
OpenStack採 用が進むでしょう。私は一般的に大手企業が始めるオープンソース・プロジェクトには懐疑的です。しかし、ある目的を持ったプロジェクトをスタートさせ、サ ポートし、参加者を募ったコミュニティーを組織化するのは、正しい方法です。これまでのところRackspaceの動きは、IBM が始めたEclipseモデルに近いように思います。OpenStackもEclipseに類似し、無償で拡張性の高いクラウ ド基盤は、威力を発揮することになるでしょう。新興国のCSPにとって、拡張性の高いOpenStackは重要な選択肢となります。先進国のCSPにおい ても、開発の多大な負担を負うことなく、高品質なクラウド基盤を利用出来ることは魅力的な筈です。

予測#4: クラウドが新興国でテイクオフ
                  (Cloud Computing takes off in emerging economics)
ク ラウドについて、新興国では先進国のような特別の不安はありません。殆どの企業はハードウェアを含めた重要なインフラを持っていないので、先進国のように 現状のハードウェアを再利用する衝動に駆られることはなく、従ってIT部門は、パブリッククラウド利用を避ける理由がありません。結果、選択とは、既存の ものか新しいものかではなく、これまで通りかクラウド化するかの違いです。この現象は携帯電話の普及に似ています。固定電話の未整備な新興国では携帯電話 の普及は爆発的でした。同様に、特別な投資を必要としないプブリッククラウドが急速に広まる可能性は高く、先進国より高い伸びを示しても驚くには当たりま せん。

予測#5: CSPとSaaSの継続的革新
                  (Continued rapid innovation by CSPs and SaaS companies)
AWS(Amazon Web Services)が驚くべきスピードで新機能を提供し続けていることに私たちは驚いています。過日、Amazonが発表したドメインネームサービスRoute53はAPIを持 ち、プログラムインターフェースでドメイン名の取得が可能となりました。これによってAWS上でSaaSを提供している企業では、ユーザーの申請のよって すぐに新しいサブドメインを取得することができるようになりました。ただ、AWSだけが継続的な革新を続けているかというと、そうではありません。来年、 私たちは、廉価で拡張性の高いインフラ上で作られたもっと多くの機能を見ることになるでしょう。

◆ エンドユーザーについて

予測#1: コストと透明性が焦点
                ( Focus on cost and transparency)
さて、視点を変えてユーザーについて考 えて見ましょう。私は経済学にはやや先入観を持っています。しかし、多くの人たちが疑う余地なく感じるクラウドの俊敏性、弾力、セルフサービスなどの特性 について、私は、これらが特定のクラウドではなく、全てに見られる点が重要だと指摘したいと思います。その結果、インフラの規模拡大と自動化によって、ク ラウド革命とでも言える“低価格化”が成し遂げられ、この傾向はさらに続くでしょう。
これはIT分野における経済学が、これまでとはまったく違う ことを意味します。クラウドの利用コストやその前提となる条件など、全ての情報がトランスペアレントな形でCSPのWebに掲示されています。このような 完全に開放的で透明なIT取引は、これまでになかったことです。このクラウドによる経済革命は、社内ITにも同様の経済性を求め、来年は企業内CIOには 災いとなって降りかかることになります。実際のところ、企業内ITコストの透明度の要求は既に始まっています。特にSaaSによる外部利用が進んだこと で、もし社内ITの経済透明性が低くければ、エンドユーザーは納得しなくなります。経済理論に戻ると、SaaSのアプリケーションとインフラは相互連携で あり、クラウドのインフラが低下すれば、SaaSのコストも自動的に下がります。このように社内ITに不快感を課すことによって、全てのコストに透明性が 増し、同一予算内なら1桁多いアプリケーションの実行も夢ではありません。

予測#2: さらなるパブリックとプライベートクラウドの混乱
                (More public/private cloud confusion)
昨年盛んに行われたパブリックが 良いのかプライベートにすべきかという議論は、今年も引き継がれ、状況はより悪くなるかもしれません。
双方にしっかりした論拠 があり、これが実際にどういう結果になるのかを見極めなければなりません。私はこの議論への積極的な参加はしないつもりです が、しかしはっきり言えることは、幾つかのオプションの提供要求が強くなるということです。クラウド利用からベネフィットを得 たい人や組織の願望は明白です。このためにクラウドプロバイダーは、安全性や信頼性、費用対効果などのオプションをはっきりする必要に迫られます。あなた が提供側の幹部なら、今年中にこれらのオプションを数字で解るようにさせることが急務となります。このような状況下ですから、進行中のプライベートクラウ ド計画についても、特に急ぐ必要はないと思います。

予測#3: ハ イブリッドも混乱
                (More hybrid cloud confusion)
クラウドベンダーの過剰宣伝、そしてユーザーの希望的観測、その結果、ハイブリッドについても混乱が続きま す。ベンダーはたやすく、透過的に、しかも自動的に社内のITインフラから外部クラウドに移行ができることを主張し、ユーザーは軽率にも、これまでと同様 の間違いを繰り返すでしょう。どんなに大きく、優れたプロバイダーでも物理的な課題やワークロード、サイト間の移行は容易ではありません。社内ITインフ ラとパブリッククラウドをシームレスに結びつけるには多大な努力(投資とシステム構築)が要り、さらにサポートもしなければなりません。これらのことを考 えると、社内IT部門の幹部は、ハイブリッドが実に野心的な試みであるかが解り、縮小せざるを得なくなります。そして2011年は、これの認識にたって、 ワークロードやコスト、運用、コンプライアンスなどで整合性のあるハイブリッド計画を考えることになるでしょう。

予測#4: アプリケーションアーキテクチャーの課題
                 (Application architecture challenges)
ま た、IT部門が最初のクラウドアプリケーションを動かせば、
彼らはクラウドの特性を生かした俊敏性や弾力性などが、そんなに簡 単ではないことに気付くでしょう。つまり、新しいアプリケーションアーキテクチャーが必要なのです。よりクラウドにあったアプリケーション として動かすには、助長性や障害対策、セッション隔離などそれなりの設計が大事です。弾性のあるアプリケーションとは、人手を介さず、負荷に応じて、自動 的に伸びたり縮んだりする機能がなければなりません。これらの要求は、アーキテクトやソフトウェアエンジニアに新しいスキルセットがいることを意味しま す。このような現象は過去にも経験したことです。しかし、そのたびにIT幹部はショックを受け、要員の再教育に迫られました。多分、今年はこのよ うな出来事を多く見ることになります。

予測#5: ITオペレー ションの課題
                 (IT operations challenges)
クラウドの導入は、ITのオペレーションについても、3つの課題を顕在化させます。
まずひとつ目 は、どの部門が何をするかという組織と役割に関係する問題です。クラウドでは仮想マシンを運用するのは業務部門です。殆どの部門において、クラウドが提供 する手作業の“セルフサービス”運用は煩わしく、不満の種となります。彼らは、これまでの社内ITと同様にクラウドであっても即座の実行を要求します。こ れが問題のひとつです。ふたつ目は、動的にアプリケーションを管理するトポロジーと関連する問題です。クラウドコンピューティングのビジョンは、アプリ ケーションの負荷や応答状況に応じて、リソースを自在に投入できることです。このためには、ITの運用上、どのような時にどのように対応するかということ が解らなければいけません。新しい運用管理ソフトウェアでは、これらを自動化したダイナミックなオペレーションが必要となるでしょう。三つ目は拡張性のひ とつです。これは個々のアプリケーションではなく、業務として必要な全てを走らせた時に起こる問題です。ユーザー予測#1で指摘したように、走らせるアプ リケーションの数は急膨張します。多くのアプリケーションが10倍以上になると、運用がどうなるのかは解りません。しかしはっきりしていることは、これま での経験以上のことが要求されます。過去に開発されたアプリケーションをただクラウド上に乗せただけでは、次なる問題を引き起こします。クラウドでは容易 にアプリケーションを走らせることができますが、実際に運用しなければならない業務部門の人たちやデベロッパーは、システムの運用経験が乏しく、スキルもあ りません。結局、この問題はまた、IT部門や内部の運用管理者に戻ることになり、これを“クラウド・ブーメラン現象”といいます。

以上が 今年のクラウド予測です。
あなたはどう思いますか。 (翻訳は大意訳とし、一部、解りやすさのために補筆)