2011年1月18日火曜日

2011年を予測する! 
                 クラウド市場はどう動くか(2)


◆ Googleがマンハッタンにやってきた!

ま ず、最近のトピックスをひとつ紹介しよう。
写真(下)は昨年末、Googleが買い取った巨大なオフィスビルだ。
場所はマンハッタンの 南、住所は111 Eight Ave. New York, NY。8番街と9番街の間、1ブロックにわたる超横長の15階建て、総面積2,940,000sq.ft(約273,135㎡)、何と東京ドームの5.8 倍の広さだ。買取価格は$1.8B(1㌦100円換算で1,800億円)。このビルは1932年、ハドソン川の貨物ターミナルサービス用に建築されたも の。Googleはマンハッタンでのプレゼンスをあげるために買ったらしい。現在の計画ではニューヨーク近郊に働く約2,000名の従業員が入り、 550,000sq.ft(51,097㎡)を使用する予定だ。これでも東京ドームの1つ分強の広さである。残りはNikeやWebMDなどの現在のテナ ントが継続使用する。


◆ クラウド市場予測-Part-2

さて、クラウド市場予測の2回 目は、ForresterのJames Staten氏の記事だ。
氏は、まず、クラウド市場全体を次のように概括している。

昨年後半の顕著な ことは、IaaSビジネスの基礎が築けたことです。そして2011年は、Amazonを超えて、力強く安定した第2ステップに進むでしょう。特に VMwareの大幅に出荷が遅れていたvCloud Directorがとうとう姿を見せました。今年はこれがどの程度活躍するのか注目です。また、 VMopsから社名を変えたCloud.comOpenStackも要注意です。特に OpenStackはISVやISPから強力な支援を受け、今年の活躍が期待されています。その意味で2011年はオープンソースがブレークするかもしれ ません。さらに、殆どのソフトウェアやプロフェッショナルサービス企業がクラウド市場に参入して、それぞれの分野で新たな動きを展開することになるでしょ う。


予測#1: エンパワード(自立したリーダーたち)が 導く
               (The Empowered Shall Lead Us)
Forrester は最近出版した“Empowered”の中で新しいITリーダー像について述べています。彼らはインフラやオペーレーション (I&O)のためではなく、ビジネスのために最先端の技術を活かし、カスタマーサポートの向上や関係改善、新商品開発などに役立てます。あなたが IT幹部なら、自分で判断するのではなく、彼らに判断させることを重視すべきです。ビジネスの最前線にいる人材がビジネスのガイド役となります。この新し い時代の権限を持って、自立したリーダーたち(エンパワードと呼ばれる人たち)が変化を察知し、新たなサービスをクラウドへと導きます。

予測#2: プライベートクラウドの構築、そして失敗
                (You will build a private cloud, and it will fail)
プ ライベートクラウドの構築、それは失敗に終わかもしれません。しかし、これを通して、クラウド環境の運用とはどんなものか本当のところが解るはずです。野 心的なクラウドは避けて、まずは小さなクラウドから始め、学び、繰り返し、そして大きくすることが肝心です。

予測#3: ホステッドプライベートクラウドは自営プライベートに比べて3対1
                (Hosted private clouds will outnumber internal clouds 3:1)
外部に委託するクラウド(Hosted Private Cloud)の利用は、社内構築のプライベートクラウドより、3対1以上の比率で大きくなるでしょう。最大の理由は、エンパワードな人たちがスピード感を 求めるからです。これに対応するためには、自営クラウドでも継続的にこの要求を満たさなければいけません。つまりVMwareの管理が出来るヒーローでは なく、誰でもが可能な自動化ソフトウェアによる標準化手順の実行が要求されます。大部分の企業ではこの準備はまだ出来ていませんが、プロバイダーでは今年 からこれが始まります。このパスが早道であり、採用すべきです。

予 測#4: コンプライアンスによってコミュニティクラウドが登場
              (Community clouds will arrive, thank to compliance)
コンプライアンス(法令準拠)ベースのコ ミュニティークラウドも登場します。
既にバイオ分野はこの方向に向かい、連邦政府もセキュリティーやコンプライアンスを
ガイドとした誘導 政策を採り始めています。例えば、米食品医薬品局-FDA(Federal Food & Drug Administration)の条件仕様を満たすために、自企業単独で作業する時代は終わりました。同一業界の共同作業を実行に移す場所がコミュニ ティークラウドです。

予測#5: WSアプリケーションはHPCへ
               (Workstation applications will bring HPC to the masses)
HPC(クラウド利用のグリッド)も活躍し出します。既にエンジニアリング向けソフトウェアを扱う大手ベン ダーたちは彼らのアプリケーションをクラウド上のグリッドコンピューティングとして使えるように進めています。これは彼らのビジネス拡大のためです。彼ら はアプリケーションの後方でどのようにクラウドを扱うかを熟知し、それによって、これまでにない効率を実現します。つまり、ユーザーは何の努力もせずに、 ワークステーションで動かしていたエンジニアリングアプリケーションをグリッド並みの性能のクラウド上で稼働させることが出来ます。これはクラウド経済学 に影響を及ぼし、スーパーコンピュータを凌駕するかもしれません。

予 測#6: クラウド経済学にスイッチON、廉いことは良いことだ
               (Cloud economics gets switched on)
私 たちは“基本的なクラウド経済”とは、利用した分だけ払うものと理解しています。
そして、このメカニズムはレッスンではなく使うためのものです。 クラウド経済の第1は、
アプリケーションを弾力的にクラウドプラットフォームに適応させ、つまりアプリケーションを必要に応じて、出し入れして、 コストを最小化することです。第2は、アプリケーションの設計と最適化を徹底して、利益を最大化することです。第3は、クラウドをいつ、どのように使えば 利益が最大になるかを知ることです。アマゾンなどが始めたSpot Instanceでは、使われていない仮想マシンにオークションでユーザーが値をつけることが出来ます。これらを利用することでコストを最小化 することが出来ますし、幾つかのクラウドを比較しながら料金計算をするツールなども出始めてきました。IaaSのコモディティー化が進み、このようなツー ルの重要性は増しています。

予測#7: 拡大するBIのギャップ
                (The BI gap will widen)
次に BI(Business Intelligence)について考えて見ましょう。
もし、あなたがBIはセキュアなデータウェアハウスでなければい けないという信者なら、
クラウドによって状況が変わったことを理解しましょう。アマゾンのElastic Map Reduceなど幾つかのツールを用いることで、今やリアルタイムの分析とクロスシステムの洞察が可能となりました。これによって、競争相手より早く、 マーケットシフトに対応することが出来ます。今まで通りのBIに留まるか、クラウド利用のリアルタイムに移行するか、あなた次第です。

予測#8: 情報こそ力、そして新しいプロフィットセンター
               (Information is power and a new profit center)
ク ラウド利用は、各種の情報から高度な分析で企業を正しい方向に導くだけでなく、売上げを伸ばすことにも役立ちます。Windows AzureのDataMarketのようなサービスは、企業のデータソース(情報源)として容易に活用され、それ自身がプロバイダーと言って良いでしょ う。通信社のAP(Associated Press)や世界的規模で企業情報を扱うDun & Bradstreet、地球全体の地理情報を扱うESRIなどが基本となるモデルです。

予測#9: クラウドの標準化はまだ、乗り越えよう
              (Cloud standards still won’t be here - get over it)
クラウドの標準化は、ベンダーアラ イアンスのDMTF(Distributed Management Task Force)や米国立標準技術研究所NIST(National Institute of Standards and Technology)、さらにセキュリティースタートアップによるCSA(Cloud Security Alliance)などの活発な活動にも係わらず、まだまだ未整備です。しかし、それは今年も何も進まないということではありません。ここ1~2年のうち にドラフト仕様が出来て批准される可能性もあります。ただ、実際の適用にはまだ時間がかかるでしょう。だからと言って、クラウドの利用をためらわないでく ださい。クラウドには既にセキュリティーやWebサービス、ネットワーク、プロトコルなどの標準が採用されているからです。そしてクラウド管理ツールで は、クラウド間の差異を抽象化する最大限の作業が続いています。

予 測#10: セキュリティーは証明される、プロバイダーとユーザーで
              (Cloud security will be proven but not by the providers alone)
クラウドの セキュリティーはプロバイダーだけの責任ではなく、ユーザーと共有されるべきものです。クラウドの先進企業では既に、 医療保険分野の相互運用性と説明責任に関する法律-HIPAAHealth Insurance Portability and Accountability Act)の採用、クレジットカード業界では広範囲なセキュリティー基準を 定めたPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)などを適用しています。クラウドプロバイダーも最近のAWS ISO 27001承認のように積極的です。このようなベストプラクティスの動きは今年さらに広まるでしょう。しかし、このような高いハードルを超えるまでは、ク ラウドを採用すべきではないということではありません。セキュリティー問題の大きくないものや保護することが簡単なアプリケーション分野から始めましょ う。 
  
(翻訳は大意訳とし、一部、解りやすさのために補筆)