当時のデモは画面上で機器構成を描き出すツールのようだった。同社はもともとスペインが本社。スペインと言えば、クラウド構築ツールOpenNebulaのようにクラウドが盛んなところである。当時はスペインから米国にカンファレンスのたびに出向いていた。その時のプロトタイプと現在の製品は殆ど別物だが、技術は継承されて部分的に組み込まれているようだ。その後、クラウドの波に乗り、2009年にクラウド管理ツールのα版、2010年2月、オープンソースのCommunity Editionをリリース、そして3月、Redwood Cityに米国本社を開いてシリコンバレーにやってきた。
◆ Abiquoとは
Abiquoの製品には前述のオープンソース版(Community Edition)とEnterprise Editionの2つがあり、共に以下のマルチハイパーバイザーを管理する。この分野にはこれまで報告してきたように色々な製品が登場してきたが、Abiquoの特徴は、実存する殆どの仮想化技術をサポートしていることである。実際には、以下のような製品が提供するAPIを利用し、異なる仮想化技術が搭載されたサーバーのプロビジョニングを実行する。
- VMware ESX and ESXi
- Microsoft Hyper-V
- Citrix XenServer
- Virtual Box
- Xen
- KVM
Abiquoのコンポーネントは下図のように大きく分けて3つ。
①マルチハイパーバイザー管理の“Abiquo Server”、②マシンイメージを変換する“OVF Repository Space”、そして③運用管理用の“Abiquo Portal”だ。
要となるAbiquo Serverは、異なる仮想化技術が適用され、実際にはバラバラに設置されている物理サーバーを論理的に管理する。ユーザーはこのAbiquo Serverを介して仮想マシンのCPUやメモリー、ストレージなどの容量を決める。
次にOVF Repository Spaceでは、DMTFが定めたOVF(Open Virtual Format)を用いて、各社固有のマシンイメージをDrag & Dropで変換することができる。実際の処理は、OVFはラッパーなので、変換にはこのラッパーを解いて、各社が用意している変換ツールが内部的に実行されている。
システム管理のAbiquo Portalを見ると、同社が初期に開発していたビジュアル機器構成管理ツールが進化したことがわかる。これが同社のウリのひとつである。機能的には、①物理構成を管理する“Infrastructure”
③アプライアンスなどのアプリケーション管理“App Library”
◆ ユーザー調査に見るIT部門とユーザーの意識差
次にAbiquoの特徴を伺い知るために、同社がDownloadユーザー2万社に行ったユーザー調査(8月末)を見てみよう。それによると、今日のクラウド利用には以下のような5つの課題がある。まず、1)のSecurityやComplianceについては、他の調査でもほとんど同様の指摘があるので割愛するが、5)は、仮想化やクラウド技術による囲い込みが進み、ユーザーにとっては大きな懸念材料となっている。
1) Security and Compliance |
2) IT Organization Overload |
3) Lack of Visibility into Virtual Environments |
4) Unrealized Utilization Improvements |
5) Vendor Lock-in |
さらに2)~4)は、仮想化されたクラウド環境を提供するIT部門と利用ユーザー間にかなりの意識差があることがわかる。2)は、現在の不況下のコスト削減から、仮想化によるサーバー統合やクラウド利用は進むが、IT部門には大きな負担となり、負担軽減の効果的なツールが求められている。さらに3)では、仮想環境の透明性が低く、4)利用率向上が進んでいない。その結果、一度使った仮想マシンやストレージがそのまま放置されており、ここでも有益なツールが必要となっている。
つまりこれらの課題を解決するのがAbiquoだということで、我田引水の感は否めない。しかし、それはそれとして、クラウドが動き出した後のこのような問題指摘は謙虚に受け止めるべきだろう。このブログで、数回にわたって紹介しているクラウドマネージメント製品が活況なのは、このような理由だからだ。