=クラウド戦略の転換期!=
大手キャリアは、今、大きな戦略転換期にある。
これまで大手キャリアはパブリッククラウド市場に積極的に参加してきた。以前は、電話会社と言えば、企業ユーザに限定したホスティングやコロケーションなどのITサービスを行っていたが、クラウド時代が到来、個人ユーザにも手が届くようになった。Verizonだけでなく、競合他社も企業買収を繰り返して、クラウド機能を強化してきた。しかし、AmazonやAzureに対抗することは難しく、昨年夏以降は撤退の噂が絶えなかった。 Verizonのクラウドは、グループ傘下企業のVerizon Businessが当初担当していたが、はかばかしくなく、2011年1月、$1.4B(約1,680億円)で Terremark Worldwideを(フロリダ州マイアミ)買収した。Terremarkは売り上げの20%強を連邦政府機関からあげており、東海岸を営業基盤とするVerizonと利害が一致した。この買収の完了日は、何と今回のシャットダウンと同じ4月12日(2011年)である。ともあれ、以来、VerizonはTerremarkが開発したクラウドサービスを提供。このクラウドはVerizonの顧客を得て軌道に乗るかに見えたが、そう簡単ではなかった。AWSなどが市場を支配して、旧Terremarkの経営陣が辞め、さらに2013年10月には、米保健福祉省HHS(Department of Health and Human Services)とのヘルスケアサイトHealthcare.govの契約がHPに切れ変えられた。今、噂されているのは、Terremarkの最大資産であったマイアミの巨大データセンターNAP of the Americasの売却である。
AT&Tの場合も同様の状況にある。
2006年、USi(USinternetworking)を買収。AT&Tのクラウド戦略は、この有名なASP(Application Service Provider)から始まったと言って良い。しかし、その後の状況はVerizonと同じである。Reutersの報道によれば、AT&Tは昨年初めからは、保有データセンターを$2B(約2,400億円)で売りに出していた。そして昨年末、IBMは、これらデータセンターを取得し、AT&Tのクラウドサービスの一部であるマネージドアプリケーションとマネージドホスティングを譲り受けたと発表した。AT&TがIBMに助けを求めた格好である。
この2社だけでなく、キャリア3位のCenturyLinkもデータセンターを売りに出しており、順調とは程遠い。Verizonは当面、一般向けを止めて、企業向けのクラウドに絞る意向だ。AT&Tはその企業向けを一部IBMに移管して、自社のサービス内容を限定し始めた。こうして、キャリアのクラウド戦略は変更を余儀なくされ、今後さらなる後退が起こる可能性を秘めている。