2016年3月1日火曜日

IBMとVMwareが戦略的なパートナーへ!

毎年恒例になったIBM InterConnect 2016がLas Vegasで開かれた。
もっとも注目されたのは、2月22日、IBMとVMwareの2社が発表 した戦略的パートナーシップだった。具体的には、VMwareユーザーのvSphereを使ったSoftware-Defined Data Center指向のオンプレとIBMのパブリッククラウドSoftLayerをハイブリッド化させるというものだ。これによって、VMwareユーザーは、自社ワークロードを自由にSoftLayer上に移動させることが出来る。クラウドでは両社ともに課題を抱えている。IBMはAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureに水をあけられていて、何とかキャッチアップしたい。VMwareにとっては、Amazonなどに流れそうになる既存ユーザーをしっかり確保しなければならない。果たして、今回のパートナリングは両社の悩みに答えを見出せるだろうか。

=IBMの狙い!=
まず登壇したのはIBMのクラウド責任者でSVPのRobert LeBlanc氏(左)。そしてVMwareのプレジデント兼COOのCarl Eschenbach氏(右)が現れると固い握手を交わした。IBMとしてはぶっちぎりのAmazonに追いつきたい。それにはMicrosoft Azureに肉薄し、何としても2位につけたいところだ。しかしSynergy Research Reportから解るように、AWSの伸び率は年率63%、Azureは何と124%、IBMは57%、そして4位のGoolgeが107%と激しく追いあげている。この状況を打開するためには秘策が要る。それが今回のパートナリングだった。これによって、VMwareユーザーからのワークロードを上乗せできれば、少なくとも、3位はキープが出来る。これまでのIBMクラウド戦略の柱は、開発環境を提供するPaaSのBlueMixである。つまり、古くからのIBMユーザーの既存アプリだけでなく、開発案件もBlueMixを使って、クラウドに誘導する。しかし、これだけでは限りがある。そこにVMwareユーザーが加わってくれば2位も夢ではない。IBMはまた、今回のカンファレンスでGitHubとのパートナリングやAppleのプログラミング言語Swiftのサポート発表した。それによって、新たなデベロッパーを呼び込もうという作戦である。

=VMwareの思惑!=
さて、今回のパートナリングにおけるVMware側の思惑は何だろうか。
VMwareの大きな悩みはクラウドサービス事業だ。VMwareはこれまで企業の自営クラウドを推進し、成功してきた。しかし自営クラウドの拡大と共にユーザーからはワークロードの平準化や分散化のためのハイブリッド化要請が大きくなった。これに応えるため、提携企業のデータセンターを利用して、2013年8月から始めたクラウドサービスがVMware vCloud Hybrid Servicesである(翌2014年8月にVMware vCloud Airにリブランド)。VMwareはこうして自らソフトウェアベンダーとサービスプロバイダーの2足のワラジを履くこととなった。しかし、クラウドプロバイダー業界は、Amazonを筆頭に競合が激しく、データセンターの世界展開と多様なサービス提供は容易ではない。そこで親会社のEMCは昨年5月、マネージドサービス付きクラウドプロバイダー最大手のVirtustreamを買収し、EMCの行っていた幾つかのクラウドサービスとvCloud AirをVirtustreamのサービスと統合して新会社とすべく発表 した。このアナウンスは、DellがEMCを買収すると発表した昨年10月12日の直後の10月20日のことである。しかし、昨年末、この計画はDell側の了解を得られず撤退となった。そこで次の候補として挙がったのがIBMであろう。Fortune 100にリストされる殆どの大企業がVMwareユーザーだ。もしIBMのSoftLayerとハイブリッド化が出来れば、IBMがクラウド向けに運営する全世界の45のデータセンターが利用できる。勿論、SofyLayerのユーザーも増え、両社にとってハッピーな話である。こうしてSoftLayer上で、VMwareが推進するSoftware-DefinedのSDNのVMware NSXやSDSVirtual SANなどを動かす話がまとまった。もうひとつ、VMwareには考えられる思惑がある。それはIBMのプライベートクラウド戦略の不明瞭さだ。IBMはパブリッククラウドでは独自のSoftLayerプラットフォームを提供し、プライベートではOpenStackを提供する方向だ。これではユーザーには解り難いし、実際のハイブリッド化も煩わしい。VMwareから見れば、それならいっそ、今回のパートナリングの成果を一般化したいとの思惑がある。プライベートはVMware、パブリックはIBMとする棲み分けが出来れば共にハッピーだ。存外、IBMもそれを望んでいるのかもしれない。