VMwareの勢いが止まらない。
仮想化市場がKVM(β)の登場でさらに細分化され、結果、VMwareには有利な状況が続いている。中でもデータセンター業界の勢力拡大に向けて始めたvCloud InitiativeとVirtual Applianceは効果的な試みだ。
昨年9月に発表したvCloudは、データセンターと提携してVMwareを利用したクラウドの構築を狙ったものだが、発表時点で、既にBTやRackspace、SAVVIS、SunGard、T-Systems、Verizon Businessなどが参加、現在は100社以上の世界中のデータセンターがパートナーとなっている。この「雲になったコンピュータ」連載のVMwareがパブリッククラウド進出に意欲(6/17)で述べたように同社はTerremark(Nasdaq上場)に投資したり、Verizonがクラウドに参入(6/19)ではRed HatとVMwareを基本インフラとして採用。また、ホスティングのRackspaceがプライベートクラウド提供(7/20)でもVMwareが基本インフラとなっているし、今年2月にはSAVVIS Cloud ComputeもVMware上でサービスを開始している。このように一般企業市場がVMwareの一人勝ちで一段落した後、今度はデータセンター業界との連携で、第2の市場制覇を目指し始めた。勿論、この連携では、特別割引のライセンスが提供されている。これによって業界各社は、自営クラウドよりも安価で実績のあるホスティング環境と組み合わせたプライベートクラウドの提供が可能となった。
実際のvCloudは提携するデータセンターによって、サービスが階層化されている。
基本となるサービスの「VMware Ready」は、VMwareのインフラを提供してホスティングやプライベートクラウドを構築して貰うもの。「VMware Ready Optimized」では、さらにユーザーにVMware APIやSDKを提供して、より高度なクラウド構築を支援する。最上位のサービスとなる「VMware Ready Integrated」では、ユーザーのOn-Premise(自営システム)とクラウドの統合まで踏み込んだサービスを提供する。これらのサービスは各社の方針や事情によって、採用の程度が決定される。
そして、このvCloudを後押しするのがVirtual Appliance(vApps)だ。
vAppsはISVのソフトウェアをプリインストール化して簡単にVMware上で稼動させる仕組みである。これまでようにハードウェアにOSが搭載され、その上にアプリケーションがある状態から、間にHypervisorが入ることによって、OSとセットとなったアプリケーションを塊として扱うことが出来るようになった。この状態をソフトウェア・アプラインスに見立てて、プリインストールと同様に扱おうという作戦である。このための開発(変換)環境を提供するのがVMware Studioであり、現在2.0βが出荷されている。使われているのはDMTFで標準仕様となっているOVF(Open Virtualization Format)形式(DMTFによるクラウド運用の標準化-5/7-記事参照)だ。Studioを利用してISVプログラムを変換すれば、ESXやWorkstation、FusionなどのVMware Readyプログラムで 扱えるソフトウェアをOVFで作り出すことが出来る。このようにして出来上がったソフトウェア・アプライアンスはMarketplace上に登録され、ユーザーは直接ダウンロードして利用が可能となった。
ただ、7月の終わりに発表されたVMwareの2Q業績は芳しくなかった。
売上げは前年同期並みの$456Mだが、利益は前年同期比の$53Mから$33Mへ減少した。一般企業市場での仮想化技術が飽和し、また、世界的な経済環境の悪化で仕方が無いことかもしれない。対して、XenSourceを買収したCitrixの2Q売上げは$393M、前年同期比よりやや増え、利益も$35Mから$45Mと増加している。VMwareの次なる狙いは、データセンター市場の制覇だ。