VMwareがパブリッククラウド進出に意欲を見せている。
先日、同社はTerremark Worldwide(Nasdaq上場)の発行株式に$20M(5%)を投資した。幾つかの情報を繋ぎ合せると、これは明らかにVMwareによるパブリッククラウド進出準備であることが解る。ホスティング事業を手掛けるTerremarkは、最初(2008/6)にクラウドビジネスに参入した。従来のデータセンターから、ホスティングへの脱皮は、2005年に買収したDeta Return社だった。そして今回もData Returnの持っていたホスティング・インフラを改良、さらに幾つかのソフトウェアを追加してEnterprise Cloudサービスを発表した。ホスティング業界にとって、クラウドは大きな転換期だ。Amazonなどの普及に伴い、契約期間の長いホスティングを嫌い、必要に応じて利用する仮想マシンの大きさを変え、コスト低減を図る
乗り換えユーザーが出始めた。同社のような大手はともかく、レンタルサーバーなどユーザー層が小規模なホスティング業者にとっては死活問題である。
一方、VMwareの方にも事情がある。
これまでは、仮想化技術で独走してきたがXenがCitirxに買収されて競合製品が出荷され、MicrosoftからはWindows Server Virtualizationが登場した。3つ巴の戦いである。しかし、この構図は良く見ると危険な兆候がある。MicrosoftはHyper-Vの開発時にXenSourceと提携し、一部にXenコードを用い、さらにHyper-Vの基本構造はXenそっくりである。もっと気になるのは、XenSourceを買収したCitirxとMicrosoftは大の仲良しだ。シンクライアント・ビジネスの開拓でWindowsの市場を広げたという理由からである。その結果、シンクライアント業界の雄、Citirixは、知る人ぞ知る、ただ1社、Windowsのソースコードを自由に参照できる企業となった。そして昨年10月、Citrix Xen ServerがMicrosoftの仮想化認定プログラムSVVP (Server Virtualization Validation Program)の認定第1号になった。このSVVPとは、Microsoftが技術的に認定した製品に限って、クラウド上のMicrosoft製品をこれまでと同じようにサポートするという制度だ。
VMwareはこれらへの対抗上、昨年秋のVMworldでvCloud Initiativeを発表。
この計画はホスティング・プロバイダー向けのもので、企業ユーザーのOn-Premiseなシステムを必要に応じて、社外のクラウドへ拡張させて実行させたり、中小企業ではITの完全なアウトソースを実現することが出来る。このために、社内とプブリッククラウドの仮想空間リソースを管理・連携させなければいけない。この基本となる技術がvSphereとFederation、そして仮想マシンを制御するコンソールのvCenterだ。さらにVMware Fault Toleranceと呼ばれる機能も提供される。これによって、ホスティング事業では、仮想マシンのコピーを作成してハードウェアの障害時に対処し、ユーザーとのSLA(Service Level Agreement)を高めることが可能となる。
現在、vCloud計画に賛同し、ホスティングなどのビジネスを中心にパートナーとなっている企業は200社以上、中でもTerremarkやCloudNine、iTricity、インドのTata Communicationsなどが積極的である。今回のVMwareによるTerremarkへの投資は、このパートナー関係から一歩踏み込んだものだが、同社が、今後、Terremarkを足がかりにどのような戦略を描いているのかは定かでない。上場企業のTerremarkをモデル仮想データセンターとするだけなのか、もうひとつ踏み込んで、VMwareが自社製品を使って、直接クラウドビジネスに参入するのか、要注意である。いずれにしても解っていることは、もはやVMwareは仮想化技術を提供するベンダーではなく、積極的にホスティング企業を組織化してクラウドでの主導権を握るか、自ら、クラウドビジネスに関与しなければ、3つ巴の戦いに勝ち抜けないということである。