Verizon Communicationsの子会社Verizon Businessがクラウドビジネスに参入するニュースが流れた。勿論、エンタープライズ向けで、Computing as a Service(CaaS)という。このサービスはアメリカとヨーロッパで直ちに開始され、アジアは8月からの予定だ。CaaSはVerizonの持つワールドクラスのIPネットワークとデータセンターを利用し、特にセキュリティーとフレキシビリティーに特徴を持つ。曰く、Cloud Computingとは、IP-based Computingであり、インターネットさえあれば何処でも利用できるものだとしている。なかなか上手いことを言う。このCaaSサービスではPortalが活躍し、企業ユーザーはこれを使って、仕事に見合うクラウドの大きさや利用期間を決めることができる。使われるネットワークは、通常のPublic/Praivate IPでも、Verizonが提供するPublic IPネットワーク、さらにMPLS(Multi Protocol Label Switching)でも構わず、Verizonからの課金は、自社内の個別部門へ細分化することも出来る。この辺りは電話会社ならではの芸当である。
同社のCaaSは、完全な企業向けの設計のため、セキュリティーについても厳格だ。Virizonデータセンター自身の機密性、そしてポータルはSingle-Sign-Onで管理され、その上に、NID(Network Intrusion Detection)、Load-BalancerによるApplicationの実行と管理、Multi-TierのVirtual Firewall、さらにID管理やアクセス管理、ログ管理などもオプションとして提供される。
次にフレキシビリティー(拡張性)だが、ProvisioningにはVMwareの仮想化技術と物理的なホスティング手法が組み合わされている。これによって企業から要請のある大型のアプリケーションでも対応が可能だ。発表された同社のCaaSには、基本的にHP製ハードウェア、OSはRed Hat Enteprise Linux、仮想化にはVMware製品が利用されている模様だ。
一方、米キャリアの中では、最大手のAT&Tは昨年夏に既にクラウド参入を発表している。「Synaptic」サービスだ。AT&Tは2006年に当時最大手だったASP(Application Service Provider)のUSinternetworking(USi)を買収し、以来、同社を核にホスティング事業を展開してきた。USiの持つ基盤ソフトウェアと同社の5つのiDC(ニュージャージー、アナポリス、サンディエゴ、アムステルダム、シンガポール)で全世界をカバーする広大なシステムである。AT&Tはまた、5月末にEMCと提携し、ストレージクラウド参入のSynaptic Storage as a Serviceも発表している。このサービスはEMCが開発したインテリジェント型分散ストレージを用い、企業ユーザーがデータの保存・配信・取得を可能とするもので、AT&Tのグローバルネットワークを用いて世界中どこからでも実行が出来る。
現在の3つに大別される米キャリアの中で最後のQwestも動き出した。Qwestの場合は、AT&TやVerizonと違って、大規模なホスティング事業はもともと得意ではなかった。しかしここにきて、他2社のCloud Computingの動きを受け、6月17日にIBMと5年契約を提携。これによって、Qwestの企業ユーザーはIBMの提供するOn-DemandやCloud Managed Serviceを受けることが可能となり、センター側はIBM、Qwestはネットワーク側を取り仕切る。ここでいうCloud Managed Serviceとは、IBMが予定しているパブリッククラウドの標準サポートを意味する。
このように米国のキャリア企業は、これまでのホスティングを継続しつつ、新たなサービスメニューを追加してクラウド事業に進出した。AmazonやGoogle、その他のプロバイダー、大手ITベンダーのIBMやSun、さらに独立系データセンターなどがクラウド事業になだれ込み、とうとう、本格的なサービス合戦と顧客争奪戦の時代に突入したようである。