◆AppEngine for Business(ビジネス向け)
まずクラウド関連ではAppEngineのビジネス向けGoogle AppEngine for Businessが発表された。この企業向けではアプリケーションの全てを管理コンソールから集中管理し、SLA=99.9%のアップタイムを保証する。利用料金はユーザー当たり8㌦/月で上限は1,000㌦/月、サポートは以下の通り。現在はプレビュー版の限定リリースだ。
またAppEngine for Businessは、これまでのGoogle Big TableやData Storeだけでなく、SQLデータベースへの対応やセキュリティ強化からSSL機能も追加する計画だ。
◆クラウドでVMwareと提携Googleはさらに今後の強化策として、「アプリケーション・ポータビリティ」を高めるためVMwareグループとの提携も発表した。この提携によって、VMware基盤のクラウドやAmazonなどへのアプリケーションの移植性を高めることを狙う。また昨年夏にVMwareが買収したSpringSourceもポイントとなる。承知のようにSpringはJavaフレームワークとして多くのファンを持ち、開発ツールのSpring RooとGoogle Web Toolkitの統合や、さらにSpringが昨年春に買収したHyperic (SpringによるHyperic買収記事)のパフォーマンス追跡ツールHyperic HQやSpring InsightとGoogle Speed Tracerの連携などに取り組む。
◆Storage Serviceもアナウンス
Amazon S3対抗のStorage Serviceもアナウンスされた。これまでGoogleのクラウドストレージはJavaやPython、さらにはGoogle Docs/Apps/Gmailなどからの専用APIだけであった。今回発表されたGoogle Storage for DeveloperはAmazon S3などとの互換ライブラリーを持つ。当面は米国内に限り、プレビュー利用は100GBのストレージと300GBのデータ転送帯域幅が無償だ。このストレージサービスの最大の特徴は、GoogleのGFS上に展開される高信頼性ファイルであり、しかもs3互換となる点である。正式リリース後の費用は、1GB当たり17¢とAmazon S3やWindows Azure Storageの15¢よりやや高い。またアップロードは10¢/GB、ダウンロードは欧米が15¢/GB、アジアは30¢となっている。
参考記事: Googleのストレージ戦略を読む-1-GFSの改良
Googleのストレージ戦略を読む-2-Datacenter as a Computer
Googleのストレージ戦略を読む-3-Googleらしさとは何か
◆Appleは敵か!
さて話は脱線するが、このところ、シリコンバレーではiPhoneの好調を尻目に、Appleへの批判が目立つ。カンファレンス2日目のAndroidについてのキーノートは強烈だった。エンジニアリングを率いるVPのVic Gundotra氏は、AndroidチームリーダーAndy Rubin氏の話を引用しながら、なぜAndroidがオープンソースでなければならないのかを説明。現在Androidによってモバイルソフトウェアは開放され、あらゆるレベルで革新が進んでいることを力説した。一方で、「一人の男、ひとつの会社、ひとつのデバイス、ひとつのキャリアが唯一の将来への選択(a future where one man, one company, one device, one carrier would be our only choice)」なら、そんなものは要らないとAppleを攻撃し、喝采を浴びた。iPhoneへの宣戦布告である。
iPhoneとAndroidの対決の一方で、Steve Jobs氏のAdobe嫌いも有名だ。
氏は市場でもっとも普及しているAdobe Flashを嫌って、Apple製品への搭載を認めない。Apple製品の全てをコントロールするのは自分だと言わんばかりだ。そのAdobeが5月13日付けでシリコンバレーのSan Jose Mercury紙に出した前面広告「We love Apple」がある。曰く、「私たちはAppleが好き・・・Webが好き、Flashが好き、HTML5が好き・・・好きになれないのは、新しいWebエクスペリエンスや、何をどう作るかなどの選択の自由を奪う人」。この広告はシリーズキャンペーンで今後も続き、一連の対決姿勢は一段とエスカレートしそうな気配である。
◆WebMプロジェクト
このようなAppleとのバトルの中で、カンファレンスではGoogleが主導し、Adobe、Mozilla、Operaが参加するオープンソースWebMプロジェクト始動の発表があった。このプロジェクトは重要な意味を持つ。AppleはAdobe Flashを排除し、HTML5とそのコーデックH.246を強力に支持、全製品でサポートしている。これによってFlashは要らないというわけだ。しかしながら、H.246のパテントは動画のMPEG-LAコンソーシアムが持ち、今年2月の発表では、2015年末までは無料、その後は有料となる。WebMはこれに対抗してオープンソース(勿論無料)のHTML対応コーデックをリリースする。このため、Googleは昨年夏買収したOn2 TechnologiesのビデオコーデックOn2VP8をプロジェクトに寄贈した。HTML5対応コーデックには色々ある。例えばMozillaは現在、FirefoxのHTML5対応としてTheora(On2VP3のオープンソース版)を採用している。それはTheoraがOggフォーマットなどで有名なマルチメディアフォーマット開発のxiph.orgによって、On2VP3ベースで作られたオープンソースだからだ。その先はWebM/V8となるのだろう。これにOperaも便乗し、Adobeも賛同した。Adobeの最大の問題は、MySpace、Yahoo!、YouTubeなどの動画サイトをFlash Video (FLV)形式で独占していることだ。「私企業のビデオフォーマットが市場を牛耳っている」、これがAdobeを排除しているAppleの言い分でもある。そのFLVにコーデックをライセンス供給してきたのがOn2だからややこしい。
今回のカンファレンスでは、Android、クラウド以外に、SonyとIntelを従えたGoogle TVといいうオマケまでついた。このWeb TVはWebとTVの融合を目指すもので、組込み型とセットトップボックスがあり、共にAndroidがベースとなる。またまた、当分、Googleから目が離せないようだ。