このところVMwareの動きが気になりだした。
4月末にはSalesforceと組んでVMforceを発表し、5月中にはGoogleと提携した。
いずれも8月末に予定されているVMworld 2010に向けてのシナリオ作りの予感がする。思えば昨年夏、同社はJavaデベロッパーに人気の高いSpringフレームワークのSpringSourceを買収し、そのSpringSourceは昨年4月にオープンソースのシステム監視として多くのファンを持つHypericを買収、さらに同8月にはCloud Foundaryも買収、VMwareが何か大きな構想を抱えていることを伺わせた。(関連記事)
-vCloud Initiativeは上手く行ったか-
VMwareが一般企業向け仮想化技術で圧勝していることは知っての通りである。
しかし米企業の宿命でこれだけでは許されない。次の大きな柱を開拓しなければいけないからだ。そして2008年のカンファレンスで発表されたのがvCloud Initiativeだった。このイニシアティブは次なる市場をデータセンター業界に定め、そのための製品開発や諸環境を整えて行くもので、簡単な話、ホスティングなどを手掛けるデータセンターにクラウド化を勧め、その中でVMware製品を使って貰おうという戦略だ。当初の参加企業は100社以上に達し、昨年6月には、Terremark Internationalに$20Mを出資し、モデルユーザ化を図った。折りしも連邦政府のクラウド計画が進んでいる最中である。
この計画が成功すれば中小企業ユーザーを囲い込むことが出来る。
大手企業にはすでにVMware製品が行き渡り、中小企業にはデータセンターを通して普及させる。さらに上手行けば大手企業の新規業務やオンプレミスのオーバーフローも拾えるかもしれない。このためのFedearationやVMware Fault Tolerance機能がvSphere 4で整備され、昨年のVMworld 2009ではクラウドユーザー向けのシステム管理vCloud Expressも披露された。しかし、その後、クラウドツールのOpenNebulaやプロビジョニングのRightScale、クラウドSIerのenStratusなどがvCloud Express APIのサポートを表明したが思ったほど加速していない。vCloud Expressはユーザー用のWebベース管理ツールだが、それとペアになるデータセンター運用は、企業向けクラウドとビジネスとして大規模に展開するプロバイダーでは大きく異なる。事実、これらの要因と仮想化の負荷を勘案し、殆どの大手クラウドプロバイダーはXenを採用し、運用管理はオープンソースのXenと連動させて開発した自社物である。5月中旬のCitrixカンファレンスでは、vCloud Initiativeのメンバーで大手ホスティング業者のRackspaceがXenServerに乗り換えると発表、VMwareにとって大きな痛手となった。
新たな模索が始まった。
-Salesforceとの提携、VMforce-
VMwareとsalesforceは両社の技術を組み合わせることで合意し、4月末、VMforceの発表会を開催した。この発表会には両社のCEOが登壇する意気込みで、Salesforceの期待はSaaSアプリのCRMから脱却して次なるビジネスのForce.comを推進すること、VMware側は同社技術を提供してVMwareの影響力を拡大することにある。両社の宣伝はともかく、ポイントはSpringだ。VMwareの買収したSpringをforce.com上でvSphereと共に展開し、一方でForce.comが提供するデータベースや各種のプラットフォームサービスを合わせて提供する。つまり新しいJava向けPaaSサービスの提供だ。対象はエンタープライズのJavaデベロッパーたち。Javaデベロッパーにとって期待の星だったサンのOpen Cloud Platformはオラクルによる買収で姿を変えてしまった。そこでファンの多い彼等にSpringに注目させて、クラウド環境でも容易に開発が続けられるようにしょうというわけである。
-GoogleとSpringで提携-
GoogleとVMwareの提携は前回Google I/O 2010の中で説明した。
Googleにとっては、Springが出遅れていたエンタープライズ市場に打って出る力となり、またVMwareとの協業で仮想環境におけるアプリケーションのポータビリティを高めることが出来る。VMware側の期待はGoogle AppEngine for Businessを通して同社の影響力を強めることだ。幸い、Googleはどこの仮想化技術も使っていない。
Springフレームワークとは、もともとオープンソースとしてJava普及のためにRod Johnson氏 がExpert One-on-One J2EE Design and Development(Wrox Pressより2002年10月に出版)と共にリリースしたのが最初である。その氏は現在、VMwareのSpringSource部門ジェネラルマネジャーとして活躍している。時代が変わり、オープンソースのSpringが今やVMwareビジネスの拡大の武器として扱われているのは何とも皮肉な話である。