2013年12月5日木曜日

Pivotal CloudFoundary、ついに登場! -PaaS1-

11月11日、PivotalCloudFoundaryがついに正式発表となった。 しかし、今回で詳細が全て明らかになったわけではない。そこで多少の推測を交えて見ていこう。周知のように、CloudFoundaryはオープンソースのPaaS構築プラットフォームである。クラウドはオンプレミスに比べて、利用企業に大きなメリットをもたらした。それでもIaaS利用は手が掛かる。もっと簡単にクラウドを業務で使いたい。それがPaaSプラットフォーム開発の背景である。振り返って見ると、このプロジェクトがVMwareで始まったのは2009年のこと。2010年11月、システムの概要が姿を現し、2012年4月には、分散システムの構成管理BOSH発表した。そして今年4月、Pivotalは親会社のEMC&VMwareから独立し、プロジェクトを引き継いで、やっと3年がかりの開発に区切りがついた。同社の目指すビジョンはPivotal ONE、提供されるシステムはPivotal CF(CloudFoundary)である。

=なぜ、PaaSプラットフォームが必要なのか= 
CEOのPaul Maritz氏は、ITの世界は根幹が変わったと説明する。これまで第1世代ではメインフレームがコンピュータ技術を確立し、第2世代ではインターネットの普及と共にClient ServerとWebが一般化、そして第3世代はクラウドの時代となった。クラウドの現代では、新しいエクスペリエンスとビジネスモデルが模索されている。第1世代の一般的なデータ処理だったISAMは、RDBへ移行し、クラウド時代になるとObjectDBが好まれ、現在は、これら全てを扱う仕組み(Data Fabric)が望まれている。データセンターについても、Cloud Enable Datacenterが必須な時代となった。また別な視点では、第1から第2世代でCPU速度が驚くべき進歩をして、我々は処理速度の問題から解き放たれた。第2から第3では、マシンやストレージからも開放されることとなった。つまり、現在ではクラウドによって、マシンもストレージも限りなく利用価格が下がり、一般向けのストレージはほぼ無償、企業向けではAmazonを筆頭に幾つものクラウドサービスが登場して、大きな費用削減が可能となった。しかしながら冷静に全体を見ると、アプリケーションは自営ものやパーッケージ、さらにはサービスも各種登場し、データ形式も多様化、クラウドも複数が市場で争い、利用企業は困惑気味である。言い換えれば、現代は全てを使いこなさなければいけない時代である。Maritz氏はこれら3つを“Application Fabric”、“Data Fabric”、そして“Cloud Fabric”と呼び、これらに対応する仕組みがPivotal ONEだと力説する。

=企業向けPaaSプラットフォームのPivotal CF=
まず、基本となるのはPivotal CF(CloudFoundery)である。CFはCloud OSとして、クラウド固有の機能を抽象化し、その利用を意識させない。つまり、これが“Cloud Fabric”にあたる。勿論、PrivateでもPublic Cloudでも構わない。現時点で対応クラウドプラットフォームはVMware vSphereのみだが、今後OpenStackAmazon Web Serviceなどが計画されている。このCFのコアは、上位層からクラウドを意識させず、かつシステムの柔軟性を保証する「Elastic Runtime」である。このランタイムは複数のクラウドに分散配置され、セルフサービスのアプリケーション実行&管理プラットフォームとなる。アプリケーションの対応言語とフレームワークはJava/Spring FrameworkRubyNode.jsScalaなどがBuilding Packとなり、さらに運用管理のOperation Managerが提供される。ここで気になるのは、オープンソースのCloudFoundaryとPivotal CFの差だ。同社によると、勿論、利用企業はCloudFoundaryを独自に導入することも出来るが、Pivotal CFでは、インストーラーや管理系ツールが用意され、そしてサポート付きの製品として提供されるとのことである。

=総合パッケージを目指すPivotal ONE= 
さて、同社の目指すビジョンのPivotal ONEとはどのようなものか。Pivotal ONEは、Pivotal CFをPaaSプラットフォームとし、その上に各種のミドルウェアやアプリケーションを揃えて提供するコンセプトである。これらの提供方法は2つある。ひとつは「Pivotal ONE Services」という。これはPivotal社自身が整備して提供するもので下図のように、“Buildpack”、“Data Service”、“Analytic”からなる。“Buildpack”は前述の言語対応のBuilding Packそのものである。“Data Service”として提供されるPivotal HDはオープンソースのApache Hadoopがベースだ。また、米国で普及しているオープンソースのメッセージキューイングPivotal RabbitMQ、そしてデータベースのMySQL、さらに、並列DBのGreenplumDB、インメモリーDBのGemFireなども提供される模様だ。次に“Analytic”は、まさにビッグデータの分析対応となり、核となるPivotal AXはCetasの分析ソフトがベースとなる。ここでRabbitMQはVMwareがSpringSourceの買収以前にRabbit Technologyを同社が吸収したものであり、Gemfire、CetasもVMwareが買収、GreenplumはEMCが買収した会社である。

もうひとつのソフトウェア提供方法は「Pivotal ONE marketplace」だ。
これはPivotalオペレーションに賛同する各社がアプリケーションをこのプラットフォーム上で提供するプログラムである。現時点でSendGridやMongoDB、SAPなどが名を連ねているがどのように提供されるのかは今後の整備を待たなければならない。
 

=オープンソースビジネスへの挑戦=
以上のように、Pivotalの技術はオープンソースがベースとなっている。
これまで親会社のEMCやVMwareはどちらかと言えば、オープンソースと距離を置く会社だった。2004年、EMCが$625M(約625億円)でVMwareを買収、その後、2008年、創業時からのCEOだったDiane Greene女史が解任されて、Microsoftから移籍‘したPaul Maritz氏がCEOに就任した。女史が切り開いた仮想化の世界をビジネスとして成功させることが彼の使命だった。彼は、基盤技術はプロプライタリーで進め、ビジネス拡大のための周辺技術にはオープンソースを活用するという戦略を採った。結果、本業での戦いは、Proprietary=VMware .vs. Open Source=Citrixという構図となった。そして2009年、オープンソースのJava Framework SpringSourceを$420Mで買収し、2011年、PaaS基盤開発のロジェクトをオープンソースコミュニティーとして立ち上げた。2つの親会社、特に彼は、これまでのビジネスの経験から、プロプライエタリーの限界とオープンソースビジネスの可能性を強く感じていたのであろう。EMCグループにとって、Pivotalは新たなビジネスモデルへの挑戦でもある。