Tintriの設立は2008年。Tintriとはアイルランド語で稲妻(いなずま)、まさにFlashを意味する。同社はSSDとHDDを使ったティアリングのVMセントリックストレージを開発した。Tintri CTOで共同設立者、そして初代CEOでもあったKieran Harty氏はEVPとしてVMwareのエンジニアリングを引っ張ってきた。その彼には、長い間気になっていることがあった。ラックマウントやブレードなどのコンピュータとSAN/NASなどのストレージ間に横たわるギャップについてである。
=VMセントリックなストレージとは何か!VM Aware=
両者は長足の進歩を遂げてきた。しかし、エレクトロニクスのCPU速度と物理的なディスクアクセスには大きな差がある。この差は物理サーバー全盛期にはあまり気にならなかった。しかしVMwareなどのハイパーバイザが登場して、無数の仮想マシン(VM)が1台の物理マシン上で動き出すと問題は顕在化した。こうなればVMセントリックなストレージを開発する以外に道は無い。彼は疑わなかった。沢山のVMの中にはI/O要求が極端に多いもの、そうでないものがある。特定のVMのI/Oに引きずられるとストレージI/O性能の波が安定しない。これを解決するにはハイパーバイザから得られる情報を使い、それをもとにVMのI/O動作を分析・制御する。ストレージにはHDDとFlash SDDを組み合わせてハイブリッドとし、徹底した低価格化を実現する。これがVMに目覚めたストレージのVM Awareというコンセプトとなった。
=支えるソフトウェア、Tintri OS=
VM Awareを具現化する道具は2つ。ソフトウェアとハードウェアだ。
そのソフトウェアの柱がTintri OSである。ストレージがVMの動きを理解し、能動的に環境にフィットさせる。そのためにVMware ESXiとAPIでネイティブに接続する。これによって仮想化構成要素のすべてが可視化され、変化の兆しを迅速に把握して、VM単位の性能予約へ結びつける。後はルールに従って自動的に実行するだけだ。勿論、この過程でVMの履歴を管理し、これも性能予約に反映させる。こうしてVM毎に必要な性能を確保することで円滑な実行が保証される。Tintri OSの構造(下図)はフロントエンドとバックエンドからなる。フロントエンドにはNFSなどのプロトコルMgrとリソースパフォーマンスマネージメント(RPM)がある。Tintri OSはESXiと高速接続されたストレージの性能を最大限に引き出すために、このRPMに並行処理のレーンを用意。VMからの個々のI/O要求はこのレーンに割り当てられ、重複排除(Deduplication)とデータ圧縮(Compress)が同時並行的に行われる。これによって本来のデータは大幅に圧縮されて、ストレージのROIを大きく改善する。バックエンドは“Tintri Hybrid Filesystem”として、ホットデータのSSDとコールドのHDDを制御し、さらにVM単位のスナップショットやクローンなどの諸機能を実行する。
TintriのVMセントリックストレージは、これまで述べてきたように大きくソフトウェアに依存している。一方、ハードウェアの方は市販品に徹しているようだ。勿論、SSDもHDDも市販品。SSDの前に1次キャッシュとして不揮発性メモリーのNVRAMを内臓している。サーバーからの書き出し“Write”要求は、このNVRAMにデータを書き込めばすぐにOKを返す。なぜならNVRAMは電源が落ちても消えないからだ。後は非同期でSSDに書き出す。通常のハイブリッドではSSDでのヒット率は読み書き平均で40~50%だが、Tintriの場合はこの2段階キャッシュのお陰で99%のヒットが得られるという。同社はコントローラについて詳細情報を開示していないが、想像するに特別なものではないらしい。冗長度対応はどうなっているのだろう。同社によると出荷時の設定はデフォルトでRAID6、そしてTintriの1筐体が1ボリューム、1LUNとなっている。これによって、これまでのストレージ管理の煩わしさはなく、VMから見ると必要なサイズのみが重要となる。
=最大のウリはコストパフォーマンスだ!=
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