2009年3月22日日曜日

雲になったコンピュータ

クラウドコンピューティングを書こう思い立ち、そして旅に出た。
行く先はイスタンブール。
東西の文化、新旧の世界、それらが上手く調和した街だからだ。
実際のイスタンブールは想像以上に素晴らしかった。
近代的な空港から地下鉄に乗る。ただ、旧市街にはそのままは入れない。
街全体が保存されているからだ。
路面電車のトラムに乗り換えて旧市街に入れば、
トプカピ宮殿もアヤソフィアやブルーモスクもすぐ目の前だ。
トルコの首都はアンカラだが、
13世紀末に始まったオスマントルコはイスタンブールが首都である。
以来20世紀の始めまで、気の遠くなる長い年月の中、幾多の変遷を経験してきた。



 
イスタンブールはヨーロッパ大陸の東のはずれ、
ヨーロッパとアジアを繋ぐ交易路シルクロードの起点でもある。
フェリーで30分ほどの海峡を渡れば、対岸はアジア大陸の港街ウシュクダラ。
人びとはここから遥かな地を目指して旅に出た。

この地に生きる人たちは日々、今もアジアとヨーロッパを行き来し、
世界遺産の旧市街と新しい文化を溶け込ませて生きている。
そこには何もかも飲み込んだ素晴らしい世界がある。


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クラウドコンピューティングとは「フュージョン(融合)」だと予感していた。
従来から開発してきた膨大なIT資産と新しい技術資産、
オンプレミス運用と新しいクラウドコンピューティングの運用、
デスクトップと向かい合うこれまでの使い方とロケーションフリーなモバイル、
大手ベンダーとスタートアップ(新興企業)たち、
企業のIT部門とデベロッパーコミュニティー、
これらが融合して、新しい時代の幕が開く。

世界初の商用コンピュータ「ユニバックⅠ」が世に出て約60年。
ハイテク産業の花形として成長してきたコンピュータ産業はすっかり変わった。
ハード/ソフトを独占開発してきた初期の生産形態は衰え、2つは分離した。
ハードウェア製造は多くの企業が参加する連携体制となり、
部品メーカーと大手アセンブリーメーカーの分業体制も整った。

一方のソフトウェア産業は、過去の独占から無数の専業スタートアップへと分化し、
さらにデベロッパーやコミュニティーを伴ったユーザー主導へと進化した。

この独占から連携/専業、さらにユーザーへという流れは、
技術の民主化・一般化・開放などを伴って、
真にユーザーの求めるものを訴求している。

クラウドコンピューティングは、このような流れの中で登場した。
新しいソフトウェアの生産や利用の中心となるのはデベロッパーコミュニティーだ。
無数に登場したコミュニティーは、目的を共有する人たちの惑星となり、
それらが集まってユニバース(宇宙)を形成する。
このユニバースの中で、これまでのIT資産も新しい技術も、
ベンダーもユーザーも共に暮らす。

何もかも飲み込んだ悠久のイスタンブールのように・・・・