◆ Nimbus
Globusの始めたWorkspace Serviceは、GGFのWSRF(Web Service Resource Framework)を基本的なベースにして、Grid Computingの流れを汲みながら、徐々にCloud Computingへと進化した。この新たな試みをNimbusプロジェクトという。Nimbusは、Globus toolkit同様、シカゴ大学(University of Chicago)とアルゴンヌ研究所(Argonne National Laboratory)が中心となって開発したオープンソースのソフトウェアセットで、HPCはもとより、クラスタリングサーバーなどのIaaS構築をサポートする。ライセンスはApache License 2。
Nimbusの提供するサービスは下図で示されるように「Compute」と「Storage」の2つ。ComputeがWorkspace Serviceであり、StorageはFTP Serviceである。
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標 準となるのは「Cloud Client」で、構築したNimbusシステム上でWSRFと連携したWorkspace Serviceを受け「EC2 Client」はWSDL(Web Service Definition Language)でNimbusと連動し、EC2リソースを利用したWorkspace Serviceを受ける。また「Context Client」とは、Workspace Serviceベースではなく、仮想の大型クラスターをContext Broker経由でNimbus上で利用する形態をいう。
◆ OpenNebula
NimbusがGlobus/OGFを核とした米国中心の活動であるのに対し、OpenNebulaプロジェクトは、ヨーロッパがベースだ。2002年から始まったスペイン最大マドリード・コンプルテンセ大学(Universidad Complutense de Madrid)のDistributed Systems Architecture Research Groupが 開発したものだ。ユーザーはこのツールを適用して、HPCや企業内データセンターのクラスターシステムなどを仮想インフラ化してクラウド利用する。 OpenNebulaはIaaS構築のVirtual Infrastructure Managerとして機能し、仮想マシンだけでなく、ストレージやネットワークの管理も実行する。最新版のOpenNebula 1.4では、仮想化はXenだけでなく、KVM、VMwareにも対応し、Virtual Boxも1.4.2で計画されている。また、利用リソースは、Nimbus同様、自前のローカルリソースだけでなく、Amazon EC2、英ElasticHostsをハイブリッドクラウドとして利用することができる。ライセンスもNimbus同様、Apache License 2。
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-特徴-
- Dynamic Resizing/Dynamic Cluster Partitioning-新らたに物理ホストを追加すると瞬時に自動システムサイズ拡張を実行、またパーティショニングによるクラスターサイズも動的変更ができる。
- Centralized Management-全ての仮想・物理マシンを中央管理し、カスタマイズのためにユーザーやシステム管理者にAPIを提供。
- Higher Utilization of Existing Resources-異なる組織で管理するサーバーや異機種などの現存するリソースを組み入れることができる。
- Lower Infrastructure Expenses-自前リソースと外部クラウドをハイブリッド利用し、実質コストを抑制する。
まず、欧州連合(EU-European Union)がファンディングしているResevior(後述)、次がスペイン工業・観光・通商省が後援し、スペイン最大の電話会社Telefonica が民間8社のコーディネーターとなって進めるNUBA(Normalized Usage of Business-oriented Architecture)プロジェクト、来年からはスペイン科学・革新省のスポンサーによるHPCを本格的に利用したクラウドHPCcloudプロジェ クトなどだ。OpenNebulaはこれらプロジェクトの基盤ソフトウェアとして利用され、一方で、その成果を民間にオープンソースとして提供する役割を 担っている。
◆ Reservoir
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Reservoirは EUがスポンサーのプロジェクトで、第7次研究・技術開発のための枠組み計画(FP7)に沿い、ソフトウエアや通信分野の大手企業が中心となって、 2005年に発足したオープンスタンダードにもとづくソフトウエアとサービス開発を目指すNESSI(Networked European Software and Services Initiative)と連携するものである。プロジェクトの課題は、異なるITシステムやサービスのバリアを無くし、真にユーザーフレンドリーな環境の 提供を目指すもの。このためにCloud Computingを用いて異なるITプラットフォームやITサービスを境目無く提供する管理技術を研究する。プロジェクトの実際の活動は、イスラエルに あるIBMのHaifa Research Labが核となり、パートナーとして独SAP Research、米Sun Microsystems、スペインTelefonica Investigacion y Desarrollo、仏Thales、スウェーデンUmea University、英University College of Londonなどが参加。また、NESSIには、仏Atos Origin、英BT Group、伊Engineering Ingegneria Informatica、IBM、HP、フィンランドNokia、独SAP、独Siemens、独Software AG、伊Telecom Italia、スペインTelefoica、仏Thales、現OW2(旧ObjectWebコンソーシアム)などが参加。
◆ LHC Computing Grid
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レマン湖畔にフランスをまたぐ全周 27km の円形加速器LHC(Large Hadron Collider)を設置し、2008年から実験が開始された。LHC Computing Gridは、この加速器を用いた実験分析用として作られたものである。
世界34ヶ国、170のコンピューティングセンターの100,000 CPUをグリッド結合して、
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本稿では、米欧、2つのHPC用クラウド構築プロジェクトを紹介した。
こ れらを詳しく調べると、現在の商用Cloud Computingの将来展望が見え始める。サーバーはラックマウントなどの単なるコモディティーから、ブレードサーバーより高度なHPCへ、さらにはデ スクトップからサーバーへと進化した仮想化技術も無数のノードが前提となる。この分野が実用化されれば、より効率的で巨大なクラウドが出現する。