Googleのクラウドストレージを核とした戦略について3回述べてきた。
ひとまず、これについては終了とし、この過程で提携した3社について、Google Apps Marketplace発表と合わせて触れてみようと思う。
-Google Apps Marketplace-
Googleは3月9日夜、同社キャンパスで行われたデベロッパー向けイベントCampfire OneでGoogle Apps Marketplaceを立ち上げた。このサイトはGoogle Apps APIを使った3rd Partyのビジネスアプリケーションやサービスを販売(一部無料)するもので、同社によると現在のGoogle Appsユーザは全世界200万社、延べ2,500万人になる。この膨大な市場を目指して参入したベンダーは発表時点で50社、これからうなぎのぼりに増えるに違いない。参加ISVやプロバイダーは登録料$100、そして売上げの20%を支払う。彼らは豊富に用意されたAPIを使って、Googleの持つ機能と自らの機能を統合して提供する。これによって、より高機能で便利なプロダクトやサービスが生まれるというわけだ。勿論、OpenIDのGoolgeアカウントがあれば、シングルサインオンでGoogle DocsやAppsのユニバーサル・ナビゲーションバーから直接登録された3rd Partyクラウドに移動することも出来る。
Google Apps Marketplaceの使い方を見てみよう。
まずサイトに入り、条件検索や分野別から複数の候補を見つけ出し、さらに機能絞込み(Refine by Features)を使って最終サービスを選び出す。勿論、当該ページ内のデモビデオを見たり、インタビュー、レーティングなどを参考にすることは重要だ。最終候補が決まれば当該サービスの追加ボタン“Add it Now”を押し、Google Appsの自社ドメイン名を入れる。その上でGoogle Appsに管理者としてログインし、当該サービスの条件(Terms of Service)を確認・承認(Agree)すればOKだ。これで利用ユーザからはGoogle Apps Control Panel上に新しいサービスが見えるし、Gmailなどのアプリケーション画面上段の"Universal Navigation Toolbar”から新サービスを実行することが出来る。
-Memeo Connect for Google Apps-
さて話を少し戻し、Google Apps Marketplaceに先立ってクラウドストレージが発表(1/12)された時の提携3社について見てみよう。まずMemeoだ。同社の場合は元々Backup/Share/AutoSyncなどのパッケージを開発するISVである。今回の提携で発表されたMemeo Connect for Google AppsはAutoSncの拡張版だと考えて良い。このサービス(Memeo Connect)はPCやデバイスのSynchronization-同期化-が簡単に出来ることがウリだ。利用はGoogle Appsにログインし、ツールバーの“More”から"Memeo Connect”を選択すると専用ウィンドウが開く。このMemeo Connectウィンドウの所定場所(左下)に必要なファイルをドラッグ&ドロップすればいい。後は自動的にGoogleのクラウドストレージにあげてくれる。この際、オフライン状態でも気にすることはない。コンピュータがインターネットに接続された時に自動的にアップされる。これがAutoSyncのワザである。同社のお勧めはMicrosoft OfficeのWordやExcelなどをGoogleクラウドにアップし、Memeo Connectて自分のデスクトップやラップトップ、さらにはモバイルと同期化させたり、仲間とのコラボレーションに利用する。このように見ると、機能的にはDropboxな どと競合するが、利用はGoogle Appsユーザに限定され、サブスクリプションは$9/人/年だ。
-Syncplicity-
次にSyncplicityの場合もその名のようにシンク(Synchronization-同期化)がベースとなって、これをもとにしたバックアップ(Backup)やコラボ(Collaboration)が出来る。同社はMemeoのようなISVではなく、クラウドサービスプロバイダーである。提供されるサービスは個人向け(Personel Edition)とビジネス向け(Business Edition)。個人向けは無償版が1ユーザで2GBのクラウドストレージと2台のコンピュータまで、有償版は1ユーザで50GBストレージと5台のコンピュータまでが$15/月だ。ビジネス向けは3ユーザで$45/月~となっている。利用にあたっては所定の情報を登録してエージェントソフトをダウンロードすればOKだ。後は指定したMy Documentsなどのファイルが自動的にクラウドにアップされる。同じアカウントでログインすれば、自分の持つデスクトップやラップトップ、モバイル間でクラウドファイルとシンクされる。この際、File Manager上ではシンク済みのファイルにはチェック(レ)が付けられているので分かり易い。同社が最も力を注いでいるビジネス版では、社員登録をし、彼らのファイルのバックアップ(Desktop、Documents、Music、Photos、Favorites)指定、コラボレーションのためのシェアリングファイル(Owner、Reader、Collaboration)権限など細かなポリシー設定が可能だ。
そしてGoogle Docsとの連携が登場した。
これまでのSyncplicityはPC上のローカルファイルをクラウドにあげてシンクをすることが基本だった。しかしGoogle DocsはWebアプリケーションで、そのファイルはクラウド上にある。SyncplicityからOpenIDでログインし、ツールバーに統合されている“Google Docs”ボタンをクリック、そしてシンクしたいDocsファイルを指定すればOKだ。これによってローカルだけでなく、クラウドファイルを含めた同期化が可能となった。
-Manymoon-
Manymoonの場合は、Google Appsにより統合されている。
例えばGmailにOpenIDででログインし、ユニバーサル・ナビゲーションバーの"More”からManymoonを選択、後はManymoonに移る。Manymoonのサービスはプロジェクトベースの情報共有がメインだ。キャッチフレーズは“Social Productivity”、つまり社内のソシアルネットワークを介し、情報共有による生産性向上を目指している。テーマやメンバーなどのプロジェクト設定、その中にタスクを定義し、タイムシートを使ったスケジュール管理、そして各種の共有ドキュメントなどを扱う。プロジェクトはメンバー管理が基本となるため、Google Docsを含めた共有ドキュメントのアクセス権管理はManymoonが行う。Google Appsとの統合では、タイムシートの替わりにGoogleカレンダー、共有ドキュメントにもGoogle Docsが利用出来るようになった。勿論、Manymoonの中からGoogle Docsのドキュメントやスプレッドシートなどの作成も出来る。
ここにあげた3社は、Google Apps Marketplaceの一部である。
最近の同サイトの人気によると、評判も導入実績もManymoonが一番だ。
その他、Microsoft Officeと連携させたOffiSyncやZoho CRMなども好評、どうやら、Googleの“この指止まれ”作戦は順調のようである。