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プロジェクトは瞬く間に動き出した。
NASAが提供するのはコンピュートのエンジンだ。NASAは当初、Eucalyptusのインフラ適用を試行したが、途中で断念してNovaプロジェクトをスタートさせた。提供するコンピュートエンジンは、このNovaで作成されたものである。NovaをリードしたのはAnso Labsだった。今年2月、RackspaceはそのAnso Labsを買収、OpenStackの強力なメンバーとして組み入れた。Rackspaceからはオブジェクトストレージのエンジンが提供され、昨年10月末にはOpenStackの最初のリリース(コードネーム:Austin)が始めて姿を現した。動き出してたった3ヶ月の早業だ。
以下、OpenStack主要メンバーの取り組みを紹介しよう。
◆ Cloud.comが選んだOpenStackとの共存
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そして製品のリリース時期(CloudStackは2010年9月、OpenStackは同10月)もほぼ同じである。違いはCloud.comが独自開発してきたのに対し、OpenStackは前述のようにRackspaceとNASAの協力から産み落とされた。
両者は本来競合関係にあるはずだが、実際にはCloud.comはOpenStackのファンディングメンバーとして協調しながら開発を進めている。周知のようにOpenStackは仮想化技術としてXenやKVM、QEMUなどをサポートしているが、VMwareやMicrosoft Hyper-Vには対応していない。しかしCloud.comはOpenStack初期版のリリース直後、Microsoftとパートナーシップを進めると発表。内容はWindows Server Hyper-V上でCloudStackをサポートするためのテクニカルアシストをMicrosoftが提供するというものだ。この技術を利用して、Cloud.comはさらにHyper-V上でOpenStack をサポートするコードを開発、それをOpenStack コード・リポジトリーに加える計画だ。つまり間接的なサポートだが、結果、OpenStackがHyper-V上で動くことになる。
同社に関する詳細は<IaaSプラットフォームCloud.comの選択>を参照されたい。
◆ Citrixと協業するGigaSpces
GigaSpacesのクラウドはJavaSpaces仕様が特徴だ。
JavaのアプリケーションサーバーではJ2EEが有名だが、も
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◆ 始まったCitrixのProject OlympusとCloud.comの買収
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そして、同プロジェクトのEary Access Programの参加登録が始まったばかりの7月12日、CitrixはCloud.comを買収すると発表した。これは何を意味するのだろう。
発表では今後時間をかけて、Cloud.comのCloudStackと開発途上のOpenStackのギャップを埋めて行くという。想像できることは、 Project Olympusを手早く仕上げるためにCloud.comを買収したということだ。開発が進み既に市場実績のあるCloudStackとOpenStackを統合する。それよって、Cloud.comのユーザーを安全に新プラットフォームに誘導し、一方でOpenStackの機能強化したディストリビューションをProject Olympusを通して提供する。これが上手く行けば、念願のVMwareをキャッチアップできるかもしれない。
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◆ UbuntuはEucalyptusからOpenStackへ切り替え
Ubuntuを主催するCanonicalは、今年5月のUbuntu Developer SummitでクラウドインフラをEucalyptusからOpenStackに切り替えると発表した。実際のところ、最新版のUbuntu 11.04(4月リリース)からOpenStackがテクニカルレビューとして登場していたので、この戦略変更は既定路線であった。理由はOpenStackの扱いやすさと対応範囲にある。そして今年10月には、次期版Ubuntu 11.10(Oneiric Ocelot)でOpenStack
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◆ InternapからDual Hypervisor Stack
企業向けインターネットプロバイダーのInternap Network ServicesもOpenStackとVMwareによる2つのクラ
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FacebookからもOpenStackに関する話題がある。OpenComputeだ。
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クラウドインフラのOpenStackを統合して、クラウドセンター運営をハード/ソフトの両面から支援するものである。Facebook初のデータセンター建設はオレゴン州プラインビルで昨年初めから始まった。
2008年、Facebook設立当時の外部委託サーバー数は約1万台、現在では膨張するデータ量から4万台を超え、費用対効果を改善する狙いで自営センター建設に踏み出した。プラインビルは長方形のオレゴン州のほぼ中央の高度874mの内陸に位置し、省エネ型データセンターには欠かせない良好な気候がある。 新センターでは年間の60~70%は外気を取り入れた冷却方式となり、夏の間だけ、特別な冷却装置が稼働する。プロジェクトでは、この新設センターの図面や設置するサーバー仕様をメンバーと共有し、さらにOpenStackの参加を得て、新興国などで需要の多い効果的なクラウドデータセンター建設に役立てる。
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OpenStackへの期待、それはある意味ではっきりしている。
コンピュータ産業は成熟し、技術は民主化したというのに、クラウドではまたまた技術が乱立気味だ。このようなことはユーザーは望まない。インターネットが公共性の徹底で成功したように、クラウドでも同じような環境整備が望まれている。
OpenStackの飛躍によって、多くのクラウドが共通の基盤上でビジネスを展開することになれば、新たな道が拓ける。その上でのビジネス競争こそが、ユーザーの望むとこ ろだ。特に急展開が期待されるのは発展途上国市場だ。これらの国々では、携帯電話が膨大な設備投資を必要とする固定電話を飛び越して、一挙に普及 したように、企業のIT化において、クラウドがオンプレミスを抑えて、ブレークする可能性は極めて高い。その視点で見れば、Facebookの始めたOpenComputeは発展途上国のクラウドセンター建設に大いに役立つ。今回紹介した企業だけでなく、最近始まったPiston Cloudや日本のベンチャーなどから、今年後半、幾つかOpenStackベースのディストリビューションが登場する。