2014年2月4日火曜日

IBM、クラウドを核に事業再編へ!        -IBM1-

IBMがクラウドを核に事業再編成に動き出した。次世代に向けた体力作りである。
2011年6月、創業100年を迎えたIBMに、昨年1月、初の女性CEO Ginni (Verginia) Rometty女史が登場した。振り返れば、80年代後半、メインフレームからPC時代への変遷の中で苦戦し、1992年度に巨額の損失を出した。それに伴いCEOをJohn Akers氏から初の外部招聘のLouis Gerstner氏へスイッチ。さらに2002年には、Samuel Palmisano氏を選任。彼の在任は10年に及び、それまでのハードウェア主体ビジネスをソフトウェアとサービスへ変革させ、年率20%成長の会社へと導いた。その彼がクラウド参入を発表したのは2009年。Smart Business構想(関連記事)である。 

=クラウドがビジネスの核に=
IBMはどうやら本気のようだ。
IBMがオンデマンドサービスを全世界のデータセンターで展開し始めたのは2000年代初頭のこと。これはGrid ComputingからUtility Computingへの流れに沿ったもので、Cloud Computingに成長した。2009年に姿を現したIBM Smart Business構想は、今から見れば、クラウドのアプローチ段階であったが、ともあれ、これがこれまでIBMが力を入れてきたSmartCloudの基点である(尚、日本国内向けにはSmarterCloudという)。IBMはこのSmartCloudの普及に向けIaaS(SmartCloud Enterprise)だけでなく、PaaSに当たるSmartCloud Application ServicesやSaaSのSmartCloud Solutions、ハード/ソフトを含めた企業向けクラウド構築パッケージSmartCloud Foundation、3rdパーティーソフトの活用を目指したSmartCloud Ecosystemなどの整備を進めた。2013年5月にはオープンクラウドとの連携を睨んでIBM SmartCloud Orchestratorを発表し、同6月、米パブリッククラウド大手プロバイダーのSoftLayerを買収した。
このSoftLayerはSME(Small & Medium Enterprise)での実績が多く、かつ、機能的にも優れものだ。これについては次回に述べよう。さて、IBMのラウドビジネスは上手く行っているとは言い難い。この流れをSoftLayerで断ち切りたい。そんな願いを込めて、今年初め、IBMはSmartCloudをIBM Cloudへと名称を変更。そして1月17日、グローバルクラウドのために$1.2B(約1,200億円)を投じて世界展開するデータセンターを拡充すると発表した。これにはSoftLayerの既存13のデータセンターとIBMの12データセンターが含まれ、新設が15センター、合計、年末までに40データセンターとなる。5大陸をカバーし、世界15ヶ国にまたがる巨大システムが動き出す。


=Watosonもクラウドへ=
Watsonも動き出した。
IBMの開発した人工知能コンピュータWatsonはクイズ番組Jeopardy!に挑戦するために2009年に登場した。その前身はチェスで世界チャンピオンに勝ったDeep Blueである。1月9日、IBMはクラウド型Big Data解析サービスを開発するWatson Groupの組織化を発表。このプロジェクトは2,000人のエンジニアの英知を集めて、複雑な問いから思考と学習を繰り返して、必要とする答えと洞察を導き出す。Watson Groupでは、これをBigDataのCognitive Innovation(認知革新)と言い、3つのクラウドサービスを開発予定だ。まず「Watson Discovery Advisor」は製薬・出版向けData Driven Contentの情報解析サービス、次に「Watson Analytics」は自然言語ベースの会話型解析システム、そして「Watson Explorer」は 一般企業向けのBig Data分析サービスとなる。新しいWatson Groupのオフィスは、西のSlicon Valleyと並ぶ東海岸マンハッタンのSlicon Alley地区(51 Astor, New York )。投下資金の総額は$1B(約1,000億円)、うち$10M(約100億円)は、外部企業とのエコサイクル構築へ向けたベンチャーファンドとしてStartupなどに投下される予定だ。 

=x86事業売却へ=
次いで、1月23日、IBMはx86サーバー部門をLenovoへ売却すると発表した。
これに先立つ、21日に発表された2013年度決算は利益が予想を上回ったものの、売上げは前年比5%減の$99.8B(約9兆9,800億円)となった。主要因はハードウェア部門の伸び悩みだ。今回の売却が関連していることは明らかである。Lenovoへの売却総額は$2.3B(約2,300億円)、これには、System xBladeCenterFlex System blade server & スイッチ、x86ベースのFlex System Integrated SystemsやNextScaleiDataPlex、さらに付帯関連ソフトウェアと保守業務が含まれる。結果的にIBMに残るハードウェア製造は、POWER7系のメインフレームSystem zとPOWERサーバー、そしてストレージシステムのみとなった。

=CEO ギニー女史の決意=
この決算発表でCEOのGinni Rometty女史は、「IBMの最大の挑戦は、Watsonやアナリティック、電子商取引、モバイル、クラウドなどの分野を急速に成長させて、不採算部門を埋め合わせることだ」と述べた。ハードウェア部門は大方整理がついた。POWER系製品はしかたがない。残るはストレージ部門だけだ。周知のように、2002年末、ディスク製造部門は日立に売却、そのHitachi Global Storage Technologiesも2011年3月、Western Digitalへ転売されてHGTSとなった。
しかし、IBMストレージ部門にはSVC(SAN Volume Controller)がある。これはStorage Hypervisorと言っても良い技術だ。これを今やクラウドで重要な要素となったSDS(Software-Defined Storage)に活かせるか、大きなチャレンジだ。
ともあれ、Gerstner氏から始まった脱ハードウェアビジネスは、Palmisano時代に「ソフトウェアとサービス」として花咲いた。言い換えれば、コンサルティングと結びついたSIビジネスである。Rometty女史は、これをさらに徹底させ、クラウドを核にした新たなSIビジネスを目指す。