2つの製品は、親子関係にあるEMCとVMwareの間で重複するのだろうか、それとも補間関係にあるのか、今回はその辺りも整理したい。
=EMCが開発したViPR=
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以上のように、ViPRは異種ストレージを共用プール化するストレージハイパーバイザーである。ViPRはVMwareのアプライアンスとして稼動し、ストレージ管理のコンソール機能を備え、ストレージシステムから各種データを受け取ることが出来る。しかし、EMC製品は良いとして、問題は他社製品だ。
=VMwareの目指すもの=
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=Virstoとは何か=
Virstoの設立は2007年。同社創設メンバーや顧問には仮想化業界の関係者が多く、当時から何か凄いことをやるのではないかと期待されていた。そして2010年初め、ステルスモードから抜け出て市場に参入した。彼らが目をつけたのは、これまで誰も手をつけなかった仮想マシン(VM)のディスクI/Oの効率化だ。言い換えればVMのための真のストレージとは何かを追及するものである。発表されたVirsto One(version 1)はハイパーバイザーのI/Oストリーミングをハイジャックして、I/Oシーケンスの最適化や重複排除を行い、これによってパフォーマンスを向上させる。
VirstoはWindows ServerではHyper-VのParent Partitionの中に展開するが、VMwareの場合は上図のようにVSA(vSphere Storage Appliance)として稼動し、ESX/ESXiのI/Oをインターラプトして、独自方法で実行する。ここでVirstoの扱うストレージとは、事前にSANのBlock Storage上にNFSデータストアとしてRDM化したものである。Virstoはこれに膨大な数の階層型ストレージプールとなるvSpaceとログファイルのvLogを作成する。実際のところ、VirstoはこのvSpaceにvDiskを作成するがvSphereからはVMDKのように見えるので、その運用は標準VMware Workflowで対応が可能となる。
さて、I/Oの観点から見るとどうか。まず全ての“Read”要求は、vSpaceを参照する。VirstoはVMのそれぞれについて、vSpaceに参照の位置情報を用意しており、これによって、殆どの場合シーケンシャル処理が可能となる。VMからの“Write”の場合は、その情報をサイクリックにvLogに記録し、直ちに完了を返す。こうしてVM上のアプリケーションは次のステップに進む。もし複数のサーバーがあれば各々のvLogはVirstoによって統合され、その後、アプリケーションとは非同期でvLogから vSpaceにデータが書き出される。この際、I/Oの効率化のため、隣接配置にしたり、重複排除などを行い、その後、実際の処理を行う。これをデステージ(Destage)という。勿論、スナップショット(vSnap)やクローン(vClone)も非同期で取ることが可能だ。このようなことから、vLogや上位のvSpaceはSSDが望ましい。
=これからどうなるのだろう=
Virstoは、2010年初めのWindows Server版に続き、2012年初頭、vSphere対応製品を出荷した。Virstoの採用によって、VMのI/Oは大幅に改善されると言う。VMwareが同社を買収した理由はここにある。仮想化技術は成熟したが、この技術が適用できれば新たな差別化となる。そしてVMwareは約束通り、Virsto製品をVMware Virsto
2.2として販売を継続させた。しかし、それも昨年末で中止となった。そろそろVMware製品への正式統合が近そうだ。
以上見てきたように、EMC ViPRとVMware Virstoは共にストレージハイパーバイザーである。しかし、その立ち位置は違う。ViPRはまず、自社内ストレージシステムの共用プール化を進め、そして他社製品の取り込みも目指す。しかし、これはある種の囲い込みであって、同社による他社ストレージ向けConnector Plugin開発はそう容易なことではない。またViPRが完成すれば、これを適用した次世代Atomosの登場も予想される。一方、VirstoはVMセントリックである。最上位のVMから攻めるVirsto、下のストレージから攻めるViPR、これなら完全に技術としても、製品としても補完する。さすがの戦略と言えそうだ。