2014年1月22日水曜日

元祖ストレージハイパーバイザーのDataCore -SDS5-

SDS(Software-Defined Storage)シリーズの初回で考察ポイントを幾つかあげた。1つ目は「低価格化について」だ。そして、NexentaOpenZFSSeagate Kineticと述べてきた。今回からは2つ目のポイントの「ストレージの仮想化」について考察する。

まず紹介するのはDataCore Softwareだ。この会社が実際のところ元祖Storage Hypervisor Companyと言っても良いだろう。同社が起業したのは1998年。並列コンピュータを開発していたEncore Computerのストレージ部門からのスピンオフである。
=Storage Hypervisorとは何か=
今日、Storage Hypervisorの議論で大事なことは、リソースプールによるストレージの仮想化だけでなく、その運用管理も含まれることである。VMware/CitrixのServer Hypervisorは、サーバーのリソースを共有して仮想マシンを提供、その上でvCenterXenCenterによる管理機能を用意している。しかしストレージの場合はもう少し複雑だ。Storage Hypervisorはストレージを共用プール化するが、その際、どの程度共用管理が出来るのかはプロダクトに依存する。ベンダーの混用は可能か、SAN/RAIDDASNASなどタイプの異なるストレージも共用できるかなどである。
 
このようなことが出来た上で、実行時の動的変更はどうするのか、バックアップはどうか、そしてSSDのようなデバイス固有の特徴も活かさなければならない。このようにStorage Hypervisorは、ある意味ではServer Hypervisorより複雑な仮想化と管理機能を兼ね備える必要がある。

=DataCore SANsymphony-Vの仕組み=
さてDataCoreのStorage Hypervisorとはどのようなものか。
ストレージの世界では、実装されているディスク群を幾つかのLUN(Logical Unit Number-論理ユニット番号)に分けて利用する。アプリケーションを実行するサーバーはこのLUNを認識し、その中にパーティションを切り、そしてファイルを置く。通常、SAN上には各種のサーバーが配置され、DataCoreのStorage Hypervisor SANsymphony-Vは、ストレージサーバーとなるWindows Server上で稼動する。このため、SANsymphony-VはWindows OSが認識出来るものであれば、どのようなタイプのストレージでも扱うことが可能だ。勿論、アプリケーションサーバーにはどのようなOSでも使えるし、仮想化されていても構わない。サーバーとストレージの接続方式はFibre ChanneliSCSIを基本とし、ベンダーは問わない。こうして異種ベンダーや異なるタイプのストレージはWindowsのもとで平等となり、SANsymphony-Vはそれらの持つLUNの全てを統合し、個々をvDiskとして区分する。このvDiskは、一般で言う仮想ディスクではなく、仮想LUNだと思えば良い。

次にSANsymphony-Vの管理システムを見てみよう。
まず、基本となるのは“Capacity Management”だ。これには ①リソースのプール管理-Virtual Disk Pool-、②動的割り当て-Thin Provisioning-、③仮想ディスクのリサイズ-Online Resize-、④プール内リソースの自動階層化-Automated Storage Tiering-などがある。次は、①最大1TBの高速キャッシュ-Caching-、②I/Oのスケールアウトによる拡張-RAID Striping-、③オンラインチャネル変更-Channel Replace-、④オンラインリソース変更-vDisk Replaceなどを可能とする“Performance Management”。そして、“Data Protection Management”。これには ①ローカル障害のミラーリング-Sync Mirroring-、②障害時のバックアップ-CDP/Snapshot-、③広域災害対応-Remote Replication-、④既存ストレージ利用-Pass-Through Disk- などが含まれる。

 =最大のメリットは何か、そして課題は=
Storage Hypervisor採用の最大のメリットは、何と言っても、異種ベンダー/タイプの混在利用であろう。周知のように、サーバーはハードもソフトも標準化やデファクト化が進み、Server Hypervisorはその整備された環境の中で稼動する。しかし、ストレージはそうではない。まだまだベンダー固有部分が多い。それ故、それらを平準化するStorage Hypervisorの登場は重要であるが、技術的には難しい。このような混在利用ができれば、ユーザーにとって、既存ストレージの有効利用だけでなく、ベンダーロックインを避け、将来登場するであろう新技術導入への展望も開ける。

しかし課題もある。
前述の2つの機能のうち、ストレージ管理の扱いだ。多くの、特に、ハイエンドのストレージシステムには重装備の管理システムが既に搭載されている。ただ、この専用管理システムは、同一ベンダー、場合によっては、同タイプのプロダクトにのみ適用される。一方、Storage Hypervisorの管理システムは、異機種混在が前提だ。そのため、両者は重複する。通常、運用管理者はベンダー固有の管理システムを極力使わず、殆どはStorage Hypervisorのものを利用する。それ故、この重複部の機能差や一部の冗長運用は頭の痛い問題である。

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同社によるとSANsymphony-Vは、現在、全世界で約1万超のユーザーを持つと言う。最新版はSANsymphony-V R9、さらに市場拡大のためのスモールスタート用SANsymphony-V Essentialsも揃った。DataCoreの歴史は古く、製品の完成度は高い。しかし、今後は登場し始めた他社製品との競合に見舞われるだろう。これからの対応が大事である。