=優位を保てるか、老舗Citrix=
初期のCitrixビジネスはWindows-Based Terminalの発展形として開発したThin
ClientのSBC(Server-Based Computing)だった。この製品はMetaFrameで、サーバー/クライアント間の画面圧縮転送技術ICA(Integrated
Communication
Architecture)を武器にビジネスを切り開いた。SBCとは、Windowsの持つリソース管理を仮想化技術と見立て、複数の簡易ターミナルから中央サーバーのアプリケーションをアクセスする仕組みである。MetaFrameは、今日の仮想化技術から見れば未熟であったが、それでもICA技術と相まって米国を中心に世界中で普及した。そして1998年、VMware設立。2001年には現在のコア製品のベースとなるESXが発表されて、仮想化時代が到来した。この動きに危機感を持ったCitrixが対抗技術Xenのビジネス会社XenSourceを2007年に買収。すぐにXenServerとXenDesktopの2つの製品が世に出た。共に今日のCitrixの核製品である。
上図で解るように、現在のXenDesktop 7は成熟している。ユーザが利用できるReceiver(デバイス)はWindowsやLinux、Mac、勿論、iOSやAndroidもOKだ。デバイスへの情報デリバリーには革新的なHDXを開発、HD画面や3D表示も出来る。そしてサーバーとの間にセキュリティーのためのNetScaler Gateway、ユーザポリシーの設定や利用アプリケーションのメニューにはStoreFrontが用意されている。実際のところ、端末からアクセスできるアプリケーションは仮想デスクトップ上だけでなく、オンプレミスのカスタムアプリケーションでも、さらにそれらがパブリッククラウド上でも構わない。XenDesktopは何度かのバージョンアップを経て、今や完全なクラウド対応のVDIへと進化した。日本だけでも、NTT CommunicationsのBiz Desktop ProやIIJ GIO、DoCoMoのMobile Secure DesktopなどがDaaSとして採用している。
=VMwareはDesktone買収でDaaSへ=
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既存製品Horizon ViewとDesktoneの買収、VMwareの戦略はどのようになるのだろう。短期的にはHorizon Viewをどうするかだ。買収したDesktoneの技術で改良するのか、はたまた置き換えるのか、状況注視である。中長期にはどうなるか。これを予測する出来事があった。昨年5月、同社はvCHS(vCloud Hybrid Service)を発表、同8月のVMware World 2013で、まず北米から提供を始めると宣言した。vCHSはAWSと同じVMwareによるIaaSクラウドサービスである。仮想化技術の企業導入は一 巡した。VMwareにとって、vCHSはvSphereを 導入済みの企業内システムと、同じ技術体系によるパブリッククラウドの連携がポイントとなる。そこがハイブリッドサービスと謳う所以だ。つまり、既存ユーザベースに立脚したビジネスの拡大である。将来、まだ想像の域を出ないが、vCHS上でDesktoneのDaaSやPivotal(関連記事)のPaaSなどが動き出すことは十分考えられる。
=2社と組む、したたかなCisco=
さて、もう1社、このような動きに機敏な企業がいる。Ciscoだ。
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2回に亘って、DaaSが本格的に動き出そうとしている状況を説明してきた。
Amazon が参入し、それを迎え撃つ老舗のCitrixと新戦略を練るVMware、そして両社と組むCisco。VDIをこれまでのように企業内導入するのも由、外部クラウドに委託することも可能な時代となり始めた。幾つか課題はあるものの、DaaSが着実に市場に浸透する予感がする。