2014年1月17日金曜日

Amazon WorkSpacesを迎え撃つ
             CitrixとVMware、そしてCisco! -DaaS2-

前回、AmazonのDaaS参入を紹介した。今回は続編として、CitrixVMware、そしてCiscoの動きを追ってみようと思う。周知のように、今日で言う仮想デスクトップの世界を切り開いてきたのはCitrixだ。振り返れば、ダムターミナルWyse(現Dell傘下)とMicrosoft、Citrixの3社が共同でWindows-Based Terminalを開発したのは1995年のことである。以来、仮想デスクトップは、SBC(後述)からVDIへ、そしてDaaSへと進展してきた。前回、VDIとDaaSは異なるものだと説明した。しかし、より正確には、それはプライベート(個別導入VDI)か、パブリック(DaaS)利用かという運用形態から見た差であって、技術的には元々同根である。 

=優位を保てるか、老舗Citrix=
初期のCitrixビジネスはWindows-Based Terminalの発展形として開発したThin ClientSBC(Server-Based Computing)だった。この製品はMetaFrameで、サーバー/クライアント間の画面圧縮転送技術ICA(Integrated Communication Architecture)を武器にビジネスを切り開いた。SBCとは、Windowsの持つリソース管理を仮想化技術と見立て、複数の簡易ターミナルから中央サーバーのアプリケーションをアクセスする仕組みである。MetaFrameは、今日の仮想化技術から見れば未熟であったが、それでもICA技術と相まって米国を中心に世界中で普及した。そして1998年、VMware設立。2001年には現在のコア製品のベースとなるESXが発表されて、仮想化時代が到来した。この動きに危機感を持ったCitrixが対抗技術Xenのビジネス会社XenSourceを2007年に買収。すぐにXenServerXenDesktopの2つの製品が世に出た。共に今日のCitrixの核製品である。

上図で解るように、現在のXenDesktop 7は成熟している。ユーザが利用できるReceiver(デバイス)はWindowsやLinux、Mac、勿論、iOSやAndroidもOKだ。デバイスへの情報デリバリーには革新的なHDXを開発、HD画面や3D表示も出来る。そしてサーバーとの間にセキュリティーのためのNetScaler Gateway、ユーザポリシーの設定や利用アプリケーションのメニューにはStoreFrontが用意されている。実際のところ、端末からアクセスできるアプリケーションは仮想デスクトップ上だけでなく、オンプレミスのカスタムアプリケーションでも、さらにそれらがパブリッククラウド上でも構わない。XenDesktopは何度かのバージョンアップを経て、今や完全なクラウド対応のVDIへと進化した。日本だけでも、NTT CommunicationsのBiz Desktop ProIIJ GIO、DoCoMoのMobile Secure DesktopなどがDaaSとして採用している。

=VMwareはDesktone買収でDaaSへ=
相次ぐ企業買収で事業を拡張してきたVMwareは、この分野でも昨年10月、サービスプロバイダー向けDaaSプラットフォーム開発のDesktoneを買収した。同社は既にDellDimension Data(NTT傘下)、さらに日本のFujitsuNECともパートナー契約を結びDaaSを提供している。一方、VMwareはVDIで優勢なCitrix XenDesktopを追って、VMware Horizon Viewを開発してきた。買収に先立こと、たった2ヶ月前、昨年8月、VMwareがDesktoneと提携したニュースが流れた。そして10月の買収。この短期間の変化はDesktone製品への評価が予想以上に高かったに違いない。 Dsktone製品はサービスプロバイダ向けのマルチテナント製品であり、Grid Architectureによる優れた拡張性、そして何よりもMicrosft RDSCitrix HDXHP RGSなど多様なプロトコルのサポートに強みを持つ。
既存製品Horizon ViewとDesktoneの買収、VMwareの戦略はどのようになるのだろう。短期的にはHorizon Viewをどうするかだ。買収したDesktoneの技術で改良するのか、はたまた置き換えるのか、状況注視である。中長期にはどうなるか。これを予測する出来事があった。昨年5月、同社はvCHS(vCloud Hybrid Service)を発表、同8月のVMware World 2013で、まず北米から提供を始めると宣言した。vCHSはAWSと同じVMwareによるIaaSクラウドサービスである。仮想化技術の企業導入は一 巡した。VMwareにとって、vCHSはvSphereを 導入済みの企業内システムと、同じ技術体系によるパブリッククラウドの連携がポイントとなる。そこがハイブリッドサービスと謳う所以だ。つまり、既存ユーザベースに立脚したビジネスの拡大である。将来、まだ想像の域を出ないが、vCHS上でDesktoneのDaaSやPivotal(関連記事のPaaSなどが動き出すことは十分考えられる。


=2社と組む、したたかなCisco=
さて、もう1社、このような動きに機敏な企業がいる。Ciscoだ。
Amazon WorkPlaces(関連記事の発表から数週間後の昨年12月17日、CiscoはVMwareとCitrixの両社と組み、Cisco UCS(Unified Computing System)に彼らのソフトウェアを搭載して販売すると発表した。 UCSに搭載するのはCitrixのXenDesktopとVMwareのDasktoneだ。Ciscoは既にオンプレミスとクラウドの両方でDesktop Virtulizationを提供しおり、この分野の対応は初めてではない。更なる改良だ。ターゲットは基本的にDaaSを計画している中堅のサービスプロバイダーや企業である。同社はこうした顧客に向けにUnified Data Center Architectureに 沿った総合ITサービスを提供する。このアーキテクチャーはサーバーを核にシステム全体を効率的に組み上げるUnified Computing、得意のネットワーク機器によるUnified Fabric、そして統合運用を目指すUnified Managementからなる。Ciscoの試みは、ハードウェアとソフトウェア、さらにサポートを伴った総合的アプローチで、IT部門の手薄なプロバイ ダーでもDaaSを提供できるようするものである。さらにCiscoはより一層、プロバイダーの作業を軽減するために、北米ではChannelCloudLogicalisProxiosNetelligent、アジアパシフィックではDimension Data、欧州中近東ではAdaptANS Groupとパートナー契約を締結した。
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2回に亘って、DaaSが本格的に動き出そうとしている状況を説明してきた。
Amazon が参入し、それを迎え撃つ老舗のCitrixと新戦略を練るVMware、そして両社と組むCisco。VDIをこれまでのように企業内導入するのも由、外部クラウドに委託することも可能な時代となり始めた。幾つか課題はあるものの、DaaSが着実に市場に浸透する予感がする。