2014年3月1日土曜日

続、IBMの新クラウド戦略           -IBM3-

IBMの新クラウド戦略について、前々回 (クラウドを核に再編)、前回(SoftLayerで進撃かと2回にわたって述べた。 今回はその続編。今回で7年目を迎える年次カンファレンスPulse 2014(2/23~26)が“The Premier Cloud Conference”と銘打って始まった。期間中幾つか今後の同社のクラウド戦略を担う重要なアナウンスがあったのでフォローしよう。
<発表1> =Cloudant買収=
IBMはボストンのDBaaS(Data Base as a Service)のCloudantを買収した。
IBMはCloudantの持つ技術を利用して、急増するBig Data and AnalyticsCloud Computing、さらにはMobileの領域でユーザ企業のクラウド構築支援を目指す。CloudantはNoSQLドキュメント指向のApache CouchDBのクリエーターだ。そして、強力なサポーターとしても知られている。同社は現在、CouchDBを用いたデータベース展開のホスティングや管理ツール、解析サービスを提供しており、さらにBigData向けBigCouchなどのサポートも実施している。IBMの狙いはこれらの技術を新たに組織化した人工知能の認知革新(Cognitive Innovation)のWatsonプロジェクトやクラウド基盤SoftLayerに適用するものと見られる。

< 発表2> =Power ServerもSoftLayerに投入=
IBMはWatosnやBigDataの需要の高まりを受けて、同社が独自に開発してきた高性能Power ServerをSoftLayerインフラ基盤に組み込むことを発表。つまり、SoftLayerはこれまでのx86以外に、始めてPower ServerをIaaS基盤に採用、その上でアプリケーションを走らせる予定だ。発表によれば今年第2四半期にはWatson系の幾つかのサービスがこの上で登場、次いでにこれまで提供してきたDB2 BLU with AccelerationCognosのようなデータの最適化や解析などがSaaSとして予定されている模様である。

<発表3> =開発者向けPaaSに巨額投資($1B)=
IBMはユニークなデベロッパー向け開発環境をPaaSとして整備するため$1B(約1,000億円)を投資すると発表。IBMによると、この投資は、企業ユーザの持つデータとアプリケーションをクラウド経由で接続するHybrid Cloud化促進のためのもので、SoftLayerにCloud Foundryを載せ、この上で独自の開発環境を整備する模様だ。Evans Dataの調査報告によると、現在、全世界のデベロッパー人口は1,820万人だが2016年には2,640万人に増加する。彼らのうち現在は430万人しかクラウド上で開発作業を行っていないが、2019年には1,250万人に急増との予測だ。このような時代の到来によって、クラウドベースのソフトウェアの90%がデベロッパーによって購入の意思決定される時代となるという。

<発表4> =クラウド促進にオープンサポート=
IBMはまたクラウド促進のため、ecoサイクルの確立を狙ったオープンシステムサポートを改めて表明した。特に、今回、同社が推進する企業向けモバイルMobileFirstの普及を目指して、Java Script コミュニティーjQueryの創設メンバーとなった。また前述のデベロッパー向けPaaS開発に合わせ、Cloud Foundaryの親会社Pivotalとも関係を新たにした。これらとは別に、同社は継続してOASIS TOSCAOpenStackを支持している。TOSCAはPaaS機能をベンダー間で標準化することを目指し、昨年3月、第1版をリリースした。IBMは直後の同5月にエンタープライズクラウド環境の構築/管理自動化ソフトウェアSmartCloud Orchestratorを発表したが、これは勿論OpenStackやTOSCAに準拠したものである。同社はまた、Open Flowを推進するOpen Networking FoundationやSDNベースのプラットフォーム環境を整備するOpen Daylight、さらにKVM普及を進めるOpen Virtualization Alliance、クラウド利用者からみた利用推進のCloud Standards Consumer Councillなどもサポートしている。

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以上、見てきたようにIBMはクラウドに本気のようだ。
このような雰囲気が一般にかもし出されてきたのは、何と言っても、SoftLayerを買収したことが大きい。Pulse 2014でのアナウンスは、これら以外に、米クリエーティブデジタルエージェンシーThe Loft GroupがSoftLayerの採用を決めたことや大手ミュージックプロバイダーのMusic MastermindもSoftLayer上でのサービスを計画していること、さらには 課金制クラウドストレージサービスなどがあった。しかし、問題は、現IBMユーザや他のエンタープライズがこの一連の動きをどう受け止め、この流れに乗ってくるかである。IBMにとって、新たなクラウドの戦いは始まったばかりである。