2014年12月15日月曜日

クラウド各社の戦略再設定(4)! -Rackspace-

 ホワイトナイト探しが終わった(注1)その後のRackspaceについて述べてみようと
思う。これこそ戦略再設定そのものである。新しいパートナーは見つからず、Rackspaceは自身で道を切り開くことになった。どのように活路を見つける作戦なのだろうか。そんな中、11月10日、3Q決算が発表された。結果は売上げ$460M(460億円)と好調だった。前期比4.2%アップ、前年同期比では18.3%の増加だ。既報(注2)のように2Qも順調だった。何か上手く軌道に乗り始めた予感がする。

=第1弾:Google Appsのサポート!=
10月7日、考えも及ばない発表が飛び出した。Google AppsをRackspaceがサポートすると言う。このサービスはGoogle Appsを業務として使う企業に向けたもので、アプリはGoogleクラウド上だが、煩雑なサポートは“Fanatical Support-徹底したサポート”としてRackspaceが担当する。これによって企業はクラウド管理から解放され、業務に集中できる。初のサービスのみのビジネスだ。現在は米国内でのユーザ傾向を分析中で、適切なユーザセグメントを割り出して、その後世界展開の予定らしい。周知のようにRackspaceは元来はHostingの会社だ。その経験で身につけたサービスの良さには定評がある。これこそ他社には出来ない芸当であり、自ら ‟#1 Managed Cloud Company”と自負する由縁でもある。

=第2弾:Microsoft Business Productivity Toolのサポート!=
続く作戦はMicrosoftに向けられた。意外だと思うかもしれないがMicrosoftとの付き合いは長い。Microsoft Gold Partnerとして、Windows ServerやSQL Serverのホスティング、そしてライセンス販売も手掛けてきた。このような背景のもと、10月23日、Cloud Office Suite at Rackspaceを発表。このサービスはCloud Office Suiteブランドの下でMicrosoft Exchangeをホスティングし、加えてDorpbox連携のRackSpace Webmailをメーラーオプションとして提供、さらにMicrosoft LyncMicrosoft SharePointのコラボツールもホスティング、これらにRackspaceの子会社Jungle Diskのバックアップサービスを組み合わせる。そして全体を同社が誇るFanatical Supportで支援する仕組みだ。読者諸兄はここまで読まれると、Google AppsとMicrosoft Officeのサポートは同社の新戦略のひとつだと気付かれるだろう。まさにSaaS領域のサービスだ。これまでの主戦場はIaaSだった。しかし、この領域は価格競争が激化している。Rackspaceが採った戦略のひとつはそこを避けた上位への移動である。

=目指すはUniversal Cloudだ!= 
さらに11月10日、Microsoftとの関係を一段と進めることとなった。同社はMicrosoftのCloud OS Networkに参加し、Private CloudでAzureをサポートすると表明した。これによって殆どのエンタープライズ向けMicrosoft Productsが利用できる。勿論、AzureのPrivate CloudにはAzure Packを利用する。Rackspaceは既にVMware Hostingは手掛けてきたし、遅ればせながら、OpenStack Private Cloudも発表(9/25)した。こうして元祖OpenStack Companyの同社は、OpenStackの基本技術の上に、Private Cloudとして、VMwareも、Azureも、勿論OpenStackも提供する複合適合型のHybrid化を目指し始めた。また、今年1月には同じOpenStack技術のCisco InterCloudのサポートも表明した。まさに目指すはUniversal Cloudである。道のりはまだまだ長いがこれが戦略再設定のふたつ目だ。

 
=次世代クラウドに向けて!=
クラウド市場は急激に変化し、淘汰が進んでいる。
これまで先行していたRackspaceもこの激流から逃れるために2つの作戦を採った。ひとつは上位縦展開としてSaaS領域の開拓、もうひとつは横展開のUniversal Cloudへの道だ。前者は当面Office Productivity関連だが、今後はヘルスケア、取り分けHIPAAで規定される医療保険の携行性関連分野なども有力視されている。後者のUniversal Cloud市場はどうか。デベロッパーが主要顧客だったPublic Cloud市場は飽和しつつある。次は企業の本格的なクラウド化だ。そのためには、個々の企業環境に合った多様なPrivate Cloudの提供と、主要なPublic Cloudとの連携が必要となる。自社技術への囲い込みではなく、柔軟性の高いOpenStackを基軸にRackspaceはUniversal Cloudを目指す。既存のサービスメニューに加え、新たな作戦を支えるのは6,000名の従業員だ。うち5,000名がエンジニア、彼らの双肩に全てが託されている。