このニュースが流れたのは昨年6月のこと。これまでの自社クラウドからSoftLayerへの乗り換えである。その後のIBMの熱の入れようは凄い。特に今年に入ってから世界的に展開されたマーケティング活動には目を見張る。しかし、この戦略再設定の成功はまだ道半ばである。
=CAMSが起こす変革!=
ThinkFORUM 2014 |
=売却と提携で集中へ!=
確かにIBMは新らしい潮流に大きく舵を切っている。
それがSoftLayerであり、Watsonへの集中だ。しかしこのところのIBMの経営環境は厳しい。10月20日に出た3Q決算は、顧客のIT投資が落ち込み減収減益となった。10四半期連続の減収だと聞く。もっとも今回の減益には3年間で$1.5B(1,500億円)を支払って半導体部門をGlobal Foundriesへ売却する費用が含まれている。さらに今年の初めにはPCだけでなく、X86 Server部門もLenovoに売却した。完全に退路を断って、新たな潮流に向かう覚悟である。3Qのクラウド売上げは50%アップだった。しかしクラウド市場全体が伸びている。Synergy Reaserchのデータではパブリッククラウド市場の27%をAWSが占有し、急伸するMicrosoftが10%、IBMは7%程度だ。もっと勢いがなければ離されてしまう。このような危機感からIBMの打った手は幾つかの大型提携だ。まず7月15日、Appleとの提携が発表された。IBMが開発したモバイル向けアプリ開発支援ソフトウェアやクラウドサービスなどをAppleの法人ユーザに提供し、その代わりにiPhoneやiPadをIBMユーザへ拡販する。これによってクラウドとモバイル連携の強化を図ることが狙いだ。次いで10月15日、今度はSAPと提携した。この提携はインメモリデータベースHANAのSAP HANA Enterprise CloudをSoftLayerでも利用できるようにするものだ。ただ大企業におけるERPのクラウド利用は今後急伸が期待されているが、これはOracleとSAPの陣取り合戦でもある。この構図の中でも、中小企業向けはSalesforce.comやMicrosoft Dynamicsが先行し、さらにSAPはAmazonと提携しているので、SAPから見れば、中小はAWS、大企業はIBMという棲み分け作戦のようだ。10月22日、もっとも衝撃的だったMicrosoftとの提携が発表された。両社は企業向けクラウドの競合相手である。その両社がお互いのソフトウェアを提供し会い、トップのAmazonを追撃しようという計画だ。考えられているのは、①IBMのWebSphereやMQ、DB2などをAzure上で提供し、②Windows ServerやSQL ServerをSoftLayerへ移行、さらに③Microsoft .NET runtimeをIBMのPaaS Bluemixで稼働させることなどである。
=戦略調整が始まった!=
IBMにとって、年末にはSoftLayerを買収して約1年半が経つ。
本格的にプロモーションを始めて1年だ。ただ期待されていたほどの結果は出ていない。Amazonは低迷しながらも首位を維持し、Microsoftは急伸している。IBMは昨年のSoftLayer買収時に、噂ではRackspaceも評価したが高額のため諦めた。価格と共にポイントとなったのはOpenStackだ。もうOpenStackに興味がないのだろうか。そんなことはない。現にIBMはSoftLayerを強力に進めながらも、一方でOpenStackに多面的に関わっている。市場ではエンタープライズクラウドがはっきりとハイブリッドに向かい出した。IBMはそのことを良く知っている。そして10月28日、IBMは動いた。IBM Cloud OpenStack Servicesを発表したのだ。このサービスはSoftLayerのベアメタルにOpenStackを乗せて企業のプライベートクラウドに供するものだ。勿論、IBM Cloud Manager with OpenStackを使えばSoftLayerとの連携もできる。来年、それは新たな現状分析に基づいた戦略調整への始まりかもしれない。