Demoカンファレンスと言えば毎回、斬新なアイデアを引っさげて登場するスタートアップの登竜門だ。3月21日夕方、カリフォルニア州パームデザートのホテルのレセプションで始まったDemo Spring 2010(3/22-23)はいつもながらの盛況だった。今年の目玉は何と言ってのクラウド部門(DEMO focus on Cloud Technologies)である。登場したのは6社だ。以下はその概要を纏めてみた。
-パーソナルクラウドコンピューティングのAirset-
Airsetは無料1GBストレージを使った個人や少人数グループによるパーソナルクラウドを提供する。このストレージを使って何をやっても構わない。実際のアプリケーションはガジェットとして用意されたカレンダーやコンタクト、To-Do-List、バックアップ、フォト/ミュージックシェア、Office Tool(Zoho)などから選択できるし、Webパブリッシングも可能だ。これらアプリは自分の運営するクラウドコンピューティング毎にガジェット管理(右図)されて解り易い。利用上、気になる広告は、$2.95/月を払えば削除され、ストレージも5GBに増量される。これからは自分専用のクラウドを携帯電話のガジェットのように選んで使える時代が到来しそうだ。
-クラウドとExcelを連動させるCloudsel-
今日、どの企業にとっても増え続けるデータベース、それをどうやって分析するかに将来が係っている。IT部門は並列処理のMapReduceやHadoopなども動員しはじめたが、それでも間に合わない。実際に分析するのは1億人と言われるExcelに馴染んだユーザーだ。彼らにプログラミングすることなく、得意のExcelを使って大規模データが処理できるクラウドサービスが始まった。Cloudscale の開発したExcel 2007/2010用アドインCloudcelだ。ExcelのCloudcelタブをクリックすれば、ExcelからAmazonクラウド(S3)へのデータ・アップロードやダウンロード、さらにAmazon Elastic MapReduceベースの大規模並列処理などが簡単に実行できる。クラウド上で大規模データベースを処理する“Big Data Platform”の登場である。
-クラウドDBを売り込むFathomDB-
FathomDBの場合は“Database as a Service”を標榜する。今日、最も普及しているSQLベースのデータベースの欠点は拡張性が乏しいこと。しかしクラウドを使えばその欠点が補える。このサービスはAmazon EC2ないしはRackspace Cloud Server上にFathomDBとしてMySQLサーバーを生成、データベースはクラウド上に置いてサイズを変えることが出来る。勿論、バックアップも完璧だ。アプリケーションはクラウド上でも下でも構わないので、既存プログラムの使用もOKだ。運用にあたってはパフォーマンス分析ツールも提供されるので心配は要らない。気になる利用料はベースとなるAmazonやRackspaceの費用に若干マークアップされているようで、それがビジネスモデルとなっている。
-コンタクト管理クラウドのGwabbit-
eメールのコンタクト管理は退屈な仕事だ。Gwabbit の提供するアドイン(Microsoft OutlookとBlackberry)はeメールを開くと自動スキャンでコンタクト情報を見つけ、内容を確かめてクリックすればアドレスブックに簡単に保存してくれる。これまでのような面倒な手間はない。今回これを進化させて登場したのは gwab-o-sphereと呼ばれるコンタクトクラウド。これを使えば何だってOKだ。全てのコンタクト情報はクラウド上で管理され、その人が持つTwitter、Linkedin、Facebook、FedEx、Slalesforceなどのアイコンと共に表示される。同社曰く、世界初の“ユニバーサル・リモート・コンタクトマネージメント(Universal Remote Contact Management)”の登場である。今回は発表とでもだけ、サービスは近々開始の予定だ。
-モバイルプレゼンのMightymeeting-
携帯電話しかない出先でプレゼンをしたい。そんな経験をした人にはうってつけのモバイル用プレゼンテーションクラウドが登場した。MightyMeeting である。事前にPowerPointかPDFをクラウドにあげ、説明者はクラウド上のプレゼンを選んでその情報を相手のモバイルに送る。実際に送られるのはpptやPDFそのもののクラウドリンクではなく、そのプレゼンを動かすビューア情報だ。これによって互いにモバイルで話しながらビューアを操作し、理解を深めることができる。サービスはこれまで無償のパイロットとしてiPhone版とAndroid版だったが、iPad版も登場した。将来は有償化の予定のようだ。
-Infusionsoftのeメールマーケティング2.0-
クラウドを使って中小企業向けeメールマーケティングを提供するのはInfusionSoftだ。提唱するのは“eMail Marketing 2.0”。 2.0では専用のSaaSベースのCRMを核に宣伝母体となるその会社のWebサイトと連携する。そして人手を介さない自動化でeメールプロモーションだけでなく、郵便、Fax、音声、テキストMSGなども動員し、睨んだ顧客は逃がさない。一般に10,000件の広告から反応のある人たちは100人、実際に買う人は10人だ。反応の無かった9,000人、興味があるが買わなかった90人、この人たちに異なる方法で次なるプロモーションをどうやって仕掛けるか。これによって売上げ倍増を狙うのが2.0の手法である。サービスは15日間のフリー版(500 Contacts)と有償のBasic、Deluxe、Proが用意されている。