2010年5月18日火曜日

Top 10 Cloud Players-その4 
      -ハイブリッドクラウドとWindowsで攻めるGoGrid-

「クラウド十傑(Top 10 Cloud Players)」の4回目。
前回はMicrosoftの挑戦を述べた。今年2月からWindows Azure(PaaS)は正式リリースとなり、一方で同社はIaaSの提供準備に入っている。今回はそのMicrosoftよりも2年、Amazonより1年早くWindowsベースのIaaSを提供し、独自の使い易さを追求するGoGridについて取りあげる。

GoGridの親会社はServerPathは1994年、ISPのInReachとして設立。
その後、2001年にホスティングを主業とする現社名となり、2008年4月、クラウド部門としてGoGridをスタートさせた。同社のIaaSクラウドは使い易さと、ホスティングでの豊富な経験を活かした利用形態“Hybrid Cloud”が人気を集めている。

1. 実用的なハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとは、クラウドとホスティングを組み合わせたもので、親会社から学んだものだ。一般にクラウドはWebアプリケーションを得意とするが、仕事によってはコンプライアンスやセキュリティ、さらにはパフォーマンスなどからユーザは専用のハードウェアを要求する。ハイブリッドクラウドでは、この要求に対する専用ホスティング(Dedicated Server)機を用意し、そしてクラウドアプリと組み合わせて利用する。下図の例ではバックエンドの大事なデータベースをDedicated Server(専用サーバー)に置いて、フロントエンドのアプリはGoGrid Cloud Server(仮想マシン)で処理をする。このクラウドフロントは必要があればいつでも追加投入が可能で、これによって拡張性が保持される。ホスティングでより安全に、そしてクラウドで拡張性を持つハイブリッドの人気の秘密はここにある。

実際のところGoGridは親会社ServerPathのデータセンタファシリティを利用している。このためホスティングのDedicated ServerとクラウドのCloud Serverは高速VLANで接続され、容易にコミュニケーションが可能だ。さらにネットワークやロードバランサーなど多くの機能もホスティングとクラウドが共用している。これらを使えば、クラウド上でWebアプリやデータベースを開発し、その結果をDedicated Serverでホスティングすることは簡単だ。

2. Windowsを徹底サポート
2008年、スタート時のGoGridのウリはWindowsのサポートだった。
AmazonもまだWindowsを手掛けてなく、Linux系ディストリビューションのみをサポートしていた時期である。親会社がホスティングから学んだことは、この分野は中小企業や部門内の仕事が中心だということだ。クラウドになれば、さらにこの傾向は顕著になる。
となればWindowsのサポートは欠かせない。そして仮想マシン上ではOSだけでなく、関連ソフトウェアのプロビジョニングを簡素化しなければいけない。Amazonの場合は
コマンドラインだ。だからこそ、それを補完するRightScaleが人気を博した。GoGridでは、ソフトウェアをアイコン化したドラッグ&ドロップやメニューから実行する。簡単に言えばRightScaleが内臓されていると思えば良い。Windows Serverのサポートは、2008年3月に2003版、同9月に2008版が開始され、SQL ServerやIISもサポートされている。Linux系ではCentOS、Red Hat、3QにはUbuntuがリリースされる予定だ。一方、IaaSクラウドで先行していたAmazonは、Windows Sever 2003版を2008年10月から、2009年12月にやっと2008版のサポートを開始、GoGridに比べ約1年遅れだった。

同社はWindows Azureについても積極的だ。
昨年11月のMicrosoft PDC 2009で発表した“Windows Azure Application Lifecycle Management(ALM)”は Blue Star Infotechとの協業の成果である。GoGridクラウド上でデベロッパーにAzureアプリを開発して貰い、Azureで実行させる。つまり、他アプリの関係など何らかの事情で実行はAzureで行うが、開発は廉価なGoGrid Cloud Serverでして貰おうという提案である。



3. ユーザに嬉しいプライス
GoGridのもうひとつの特徴は割安感のある利用料だ。
まずクラウドだが、ユーザが選択できるCloud Serverは、基本的にコア(1コアはIntel Nehalem 2.0 GHz相当)数とRAM(Random Access Memory)の容量(GB)が同じ値(0.5Core+0.5GB, 1Core+1GB, 2 Core+2GB, 4Core+4GB, 8Core+8GB)となっている。そして使用料は、サーバRAM時間(Server RAM Hour)がベースとなる。サーバRAM時間とは、クラウドとして展開しているサーバ上のRAMの総量に使用時間を掛けたもので、コア数には直接関係せず、1 Server RAM Hourは19¢となる。この使用量払いとは別に月額前払いもあり、2500 RAM Hourで$199(時間当たり8¢)、14,500 RAM Hourで$999(同7¢)、67,000 RAM Hourで$3,999(同6¢)、200,000 RAM Hourでは$9,999となって時間換算は5¢と相当割安だ。Amazonなどとそのままの比較は出来ないがGoGridの方がかなり割安であることは確かだ。さらにストレージは月10GBまで無償で追加は月15¢/GB、インターネットのデータ転送幅はインは無償、アウトは29¢/GB、ロードバランサーも無償で利用が出来る。