2010年5月25日火曜日

Synergy 2010カンファレンス 
                     -Citrix/Xenアップデート-

恒例のCtirix Systems年次カンファレンスSynergy 2010がサンフランシスコのモスコーンセンター西館(Moscone West)で開催(5/12-14)された。CitrixがMetaFrameでシンクライアント市場を切り開き、Microsoftと協調しながら成長したことは周知の事実だ。同社がXenSourceを買収したのは2007年8月のこと。Windowsのリソース管理をベースとした同社のSBC(Server Based Computing)技術はかなり普及したが、仮想化技術の台頭で市場が脅かされ始めたからだ。MetaFrameはその後機能アップし、Presentation Serverとなって市場に君臨し、Xen買収に伴う名称統一でCitrix XenAppとなった。並行してXenSourceにとって主力だったサーバー仮想化はXenServerとなり、その派生として登場したのがデスクトップ仮想化のXenDesktopである。これによってCitrixの本業であるシンクライアントのSBCは、仮想化技術のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)へと変わり、同社は従来からのXenAppを新しいXenDesktopに移行する戦略に大きく舵を切った。宿敵VMwareがサーバー仮想化を重点に売上げを伸ばしてきたのに対し、Citrixがデスクトップ仮想化でビジネスを伸ばしているのはこういう理由からである。

-デスクトップの仮想化に本腰、XenDesktop-
XenDesktopでは、XenServerで作られた仮想マシンにクライアントで必要なOSやアプリケーションなどのソフトウェアを載せて、ネットワークを介したPCやシンクライアント端末からアクセスする。この際、ネットワーク上ではSBCで実績のある高速圧縮技術ICA (Integrated Communication Architecture)を採用、アクセス端末もそのまま利用が可能となって、新しい環境に生まれ変わった。最新版XenDesktop 4ではこれまで普及の進んだXenAppも統合され、デスクトップ仮想化で想定される全ての形態がサポートされている。①MetaFrameベースのホスト共用型の“Hosted Shared Desktops”、②仮想マシンを用いたVDIの“Hosted VM-based Desktops”、この仮想マシンではXenだけでなくVMwareやHyper-Vでも構わない。さらに③ブレードPCを利用する“Hosted Blade PC Desktops”、そして④ストリーミング技術を用てアプリケーションを配信する“Virtual Apps to Installed Desktops”、⑤OSごとネットワークからブート配信する“Local Steamed Desktops”などだ。これら多岐にわたる情報配信にはFlexCastが開発された。まさにデスクトップ仮想化の集大成であり、こうなればXenAppからXenDesktopへの移行が加速されるのは想像に難くない。

-新たなデスクトップ仮想化の展開、XenClient-
そして今回のカンファレンスで登場したのがXenClientである。
正確には前回のSynergy 2009でXenClientの概要が発表され、今回は製品版レビュー用(Release Candidate)のリリースと詳細説明だ。この機能は、XenDesktopに6番目の機能、⑥“Local VM-based Desktop”として統合され、製品版は3Qが出荷予定となっている。さてXenClientだが、出先から仮想デスクトップを利用するモバイルワーカー向けだ。これを使えばインターネット接続が出来ないオフライン状態でも利用が可能となる。技術的にはまずラップトップなどのベアメタルにXenハイパーバイザーのXenClientをインストールする。つまりホストOSはなく、Linxベースのハイパーバイザーが乗り、その上にWindowsなどの仮想マシンが作られる。仮想マシンはビジネス用(Business VM)と個人用(Personal VM)に区分され、画面上からは区分アイコンでどちらかを選ぶことが出来る。各々の仮想マシン上では、個人用は基本的に何でもできる自由使用とし、ビジネス用はXenDesktop利用となる。XenDesktopは、通常センター接続だが、XenClientによって、オフライン状態でも処理継続が出来る。XenClientと共に提供される“Receiver”と“Synchronizer”によってとオフラインとオンラインが同期化されるからだ。尚、絶対条件ではないが、同社は処理効率から、適用PCにはIntel vPro(実際にはその中のVT-xとVT-dを利用)チップ採用製品を勧めている。

-サーバ仮想化を担うXenServer 5.6とEssentials for Hyper-V-
サーバ仮想化についてはXenServer 5.6が発表された。XenServerは昨年オープンソース化が決まり、今年始めXenServer 5.5(詳細記事)としてリリースされた。今回の5.6版はそのマイナーリリースである。Xen 3.3ベースの5.5版の大きな特徴は2つ。
まずバックアップや仮想ディスクフォーマットの機能強化、これによってシステム管理機能が大幅に向上した。その成果がXenCenterやEssentialsだ。さらに処理効率面では、第1世代のCPU仮想化支援機構(Intel VT、AMD-V)から進展し、第2世代(Intel EPT、AMD RVI)に対応してきた。その上で今回の5.6では、処理能力面で①Dynamic Memory Control、②Automated Workload Balancingが強化され、運用管理面では③Enhanced VM Snapshots、④StorageLink Site Recovery等が追加された。

今回のリリースで印象的だったのは、新設定されたXenServer製品の4つの区分だ。
まず無償のFee Editionは現在のもの比べ、ホスト機のメモリ、CPU、ネットワーク、サポートOSなどが拡張されている。続く有償のAdvanced Editionは初期導入の企業ユーザ向け、そして企業向け主力のEnterprise Edition、最上位にPlatinum Editionという構成となった。

ここでもうひとつ5.6版リリースに伴う大事なことがある。
XenCenterの取り扱いだ。XenServer 5.5まではシステム管理を司るXenCenter 5.5が別物になって、2つのインストールが必要だったが、5.6版ではXenCenterはXenServerに統合された。これに伴い、総合パッケージのEssentials for XenServerはなくなり、Microsoft向けのEssentials for Hyper-Vだけが残った。ただ、この製品のポジショニングは難しい。いずれは消えるかもしれないからだ。

Xenは結果的に言うと、上手く行っている。
当初、オープンソースが苦手で、シンクライアントだけのCitrix買収は懸念された。
しかし現状を見る限り、CitrixはXenServerをバックエンドとしたXenDesktopを全面に押し出してVMwareと戦っているし、Xen.org自身もXen Cloud Platformや次期4.0版開発などを順調にこなしている。このカンファレンスでもRackspace CEOのLew Moorman氏が同社のパブリッククラウドを今後XenServerに移行すると発表した。AmazonもGoGridもXen採用組だ。大手クラウドプロバイダーはどうやらXenに満足しているようである。